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「わーっ! 海ですよ、海!」
そう言ってはしゃぐのはフリルの着いた白い水着のヒフミ。
「ようやく着きました! 本物の海ですよ、アズサちゃん!」
「……うん、海だ」
ヒフミは感動のあまり隣にいるアズサに抱き着く。アズサは抱き着いてきたヒフミを受け止めつつ海へと視線を静かに向ける。一見すると落ち着いているようにも見えるが初めての海、普段絶対着ないであろう飾りの多い水着などの要因が集まってそれなりに緊張している様子。
「あ、あれ……はしゃいでるの私だけです……? アズサちゃん、海に来るの初めてなんですよね? どうですか、この視界一杯に広がる海!」
「良いよね、海! テンション上がるな~」
アズサと自分のテンションの差に少しばかり戸惑うヒフミだが、すぐに気を取り直して海を指さしてアズサに乾燥を求める。その近くで先生は長時間の移動で固まった体を伸ばしながらテンションを上げていた。
「……うん、これでも結構感激している。なかなか悪くない。ただ……ここに来るまでに色々と問題があったせいで、というか……今も絶賛進行中というか」
話を振られたアズサは緊張はしているが確かに海に目を向けて感動はしていた。ただそれよりも気になることがあって仕方がないという様子でもあった。
「きへへ……ぐへへへへへ!」
「……ふぅ、ようやく着きましたね」
「けへへへへ、きひゃひゃひゃひゃ!」
視線の先には正義実現伊委員会の二人、ツルギとマシロが居た。二人ともそれぞれの水着に身を包み、バカンスの準備万全と言った風だ。
「こ、これから私たちどうしましょう……」
「どうもこうもないだろう、リストを渡されているんだ。それをさっさとこなして後は好きに遊べばいい」
戸惑うヒフミの頭にポンと手をおいてそう提案するのは海パンにアロハシャツと言う普段よりも大分ラフな格好のグラン。
「グランさん……はい!」
グランの言葉にヒフミは満面の笑みで返事をした。そんな笑顔を横目に見ながらグランはこう思う。『どうしてこうなった』と。
事態の始まりは数日前にさかのぼる。その日のグランは自らの組織『ODI ET AMO』の本拠地『塔』の執務室で内政業務を行っていた。とはいえね実際の仕事のほとんどはキッド達が終わらせているため、グランのやる事と言えば部下への報償の授与、視察、報告書を読み込む程度の事である。そんな中彼の机の上にあるシャーレからの直通電話が鳴り出した。それを手に取るグラン。
「俺だ。どうした先生?」
『グラン……落ち着いて聞いて欲しいの。ヒフミとアズサが正義実現委員会の戦車盗んで校舎を半壊させたらしいの』
「あぁ、ヒフミが遂に表でも犯罪行為に走り出したか」
そして正義実現委員会に拘束された二人は司法取引としてツルギとマシロの二人を連れて夏季休暇という形で海に行く事になった。そんな事情を聴いたグランは最初は理解できずに脳がフリーズした。そしてその休暇中にしっかりと夏を満喫できするためのウィッシュリストを渡され、その実現の為に先生とグランも海への小旅行に同行することになったのだ。
「そのリストちょっと見せてくれる?」
「はい、こちらです!」
先生がヒフミが持っているリストの中を見せてもらおうと話しかける。リストに掛かれていたのは『砂のお城と砂風呂作り』『泳ぎの練習をする』『ビーチバレー』『花火』『スイカ割り』『海の家』
「これらにツルギさと一緒にいって、写真を撮らないといけません」
「……夏の定番って感じだね」
「はい! 一つずつ書かれたことをやっていって楽しい夏休みにしましょう!」
ウィッシュリストに掛かれたツルギのやってみたいことの一つ、『砂の城』アズサが『どうせなら戦略基地としての価値あるものの方が良いだろう』と言い出し、マシロ、グランが同意、どことなく『塔』の意匠が感じられ、砂の中に装甲としてキヴォトス貝の甲羅を仕込んだ本格的な城が出来上がった。一方砂風呂では義肢に砂が混じるのを出来るだけ避けいたということでグランはパス。
次のリスト『泳ぎの練習』では途中までは順調だったものの先生が手を引きながら泳ぎを教えるとなった時に何故か先ほどまで問題なく泳げていたアズサやマシロまで泳げないふりをし始めたのにはグランも苦笑を浮かべていた。そんな中自分のシャツがちょっこんと引かれているのに気が付き、そちらに視線を向けるとヒフミが少しだ恥ずかしそうに立っており『泳ぎ方を教えて欲しい』と頼まれたのだった。
皆で泳ぎの練習をしたあと、時間も頃合いだったため一同は『海の家』に向かった。何故か海の家では美食研究会の一人、イズミが店番をしていた。彼女の独特な味覚によるケミカルクッキングとも言うべき代物の被害に遭ったスケバンたちが攻撃してくるというハプニングがあったもののこれを撃退。
『スイカ割り』ではスイカを割る棒を忘れてしまい何かを勘違いしたアズサが目隠しをしてスイカに対して射撃をしてしまう。しかし、それを見たマシロとグランは狙撃者として何かに火が付いたのかそのまま、弾丸を使った水代わりに興じることに。ある意味キヴォトスらしいスイカ割りとなった。勿論的になったスイカはみんなで食べた。
『ビーチバレー』キヴォトス人の体力について行けない先生と、同じような感じで体力に自信のないヒフミは見学し、ツルギ、マシロの正義実現委員会チーム対アズサ、グランの物騒連合チームの対決となった。試合は大いに白熱したが自力の差でツルギのアタックに耐え切れなかったグランのミスにより物騒チームの敗北に終わった。グランは『蹴りがありならまだやれてた』と言っていたがバレーボールは足を使わないので言い訳にしかならなかった。
そして残すはリストの最後、『花火』だけとなったこれは暗くならないとやっても意味がないということで皆は空が暗くなるまで海辺手アソビックスのだった。そして空が暗くなったころ、近くの店で買いそろえた花火に火をつけて真っ暗な空を彩っていく。手持ち式から打ち上げ式のものまで、数多くの花火を愉しむヒフミたち。そんな後ろ姿を先生は優しく見つめながら写真を撮っていた。花火の後はゴミを纏めて帰ることとなった。
ヒフミの運転する戦車に揺られながらグランは徐々に遠ざかる海を眺めていた。
「グランさんは海……というか水が好きなんですか?」
「ん? 何故そう思う?」
「いえ、その、よく海を眺めてらっしゃいますし、ブラックマーケットでも雨が降っているとき偶にわざと傘をささない日があるって聞いたことがあったのでそうなのかなーって」
ヒフミが運転しながら自身の隣に座るグランに質問を投げかける。ヒフミの質問にグランは少し顎に手を当てて考えた後答える。
「水と言っても水道水とかじゃなくて、まぁ自然界の水かな海や、雨。あぁ、そういう意味ではヒフミの答えはあっているな」
「理由を聞いても?」
「憧れ……に近いのか? いや、不思議な物を見る感じが近いか……? うーん、俺にとってはどちらも余り馴染みがないものだったから物珍しさもあるのかもしれない」
「馴染みがない……ですか?」
「アビドスの環境を思いだせ」
「あ、す、すいません」
グランの言葉にハッとなったヒフミは急いで謝る。別にそこまで怒ってない、とグランは手を軽く振って空気を紛らわせる。
「ともかく、なんか見ていて飽きないんだよ。雨粒が落ちるさま、波がひいては押し寄せる光景、ザーザーという不思議な音、ザパーンという何故だか懐かしく思える音。全て同じような光景、音なのに砂漠と違って飽きが来ない。なんでだろうな?」
「確かに波の音や景色は見ていて飽きないですもんね! 私も好きです! ……それでもし波の揺れや音が好きなら何ですけど……」
「ん?」
ヒフミは深呼吸をして何かを決心したような表情をして口を開く。
「また今度、夜の海に生きませんか! 夜光虫で有名な場所があるんです。 その海で岸にロープで繋がったボートの上でユラユラと揺れるんです。波の音だけが聞こえて、夜光虫のお陰で海が青く光ってるんです。とっても綺麗な景色ですよ」
「へぇ、そりゃ面白そうだ。そうだな、行ってみたい」
「はい! ぜひ一緒に生きましょう! ふ、二人で!」
「あぁ、楽しみにしてる」
グランは海を眺めながら笑みを薄く浮かべ返事をしたのだった。
今回は試験的な意味でこんな書き方をしてみました。多分もうやらないと思います。時間と話数掛かってもちゃんと書いた方があってる感じがしますね……。