シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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165話

 臨時オペレーションルーム

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 グランはオペレーションルーム内の適当なモニターの前の椅子に腰かけアコが各所の報告を受けているのを眺める。

 

「あ、う、な、なんで代表が……」

 

 グランが座っている椅子に本来座るはずだった風紀委員会のオペレーター担当の生徒が自身の席にどっかりと座っている代表の姿を見て声をかけるべきか、そもそもどういう声をかけるべきか悩みオペレーションルーム内をオロオロとしている。

 

「ん? あぁ……。ほら」

「え゛えっ!?」

 

 そんな風紀委員の姿に気が付いたのかグランが自身の膝をポンポンと叩きながら手招きをする。まかのグランの行動に風紀委員の子は仰天して喉の奥から可笑しな声が出てしまう。それから少し固まった後恐る恐るグランに近づいていく風紀委員。

 

「し、失礼します……」

「ん」

 

 小声でそう言ってからチョコンと膝の上に座ったのだ。隣で一部始終を見ていた別の風紀委員オペレーターの子が『マジカコイツ、やった、やりやがった!』とでも言いたげな目でグランの膝の上の子を見ている。各組織の幹部や先生はオペレーションルーム中央にある海岸周辺マップの広げられた会議机に集まっているため気が付いていないが機材の設置や各モニターの調整、テスト通信などを行っている一般生徒たちはグランと膝の上で縮こまっている子のやりとりに少し前から気が付いており風紀委員の子がとった行動に仰天していた。

 

「お前、名前は?」

「は、はい。ゲヘナ学園3年、風紀委員会所属の風間(かざま)キイです。オペレーターを担当しています……」

「3年……? の割には随分小柄……」

 

 そこまでいってグランの脳裏に浮かぶホシノ、ヒナ、キサキ、ネルの姿。

 

「……まぁ、3年といっても色々あるからな」

「あはは……」

 

 グランとキイが穏やかに(一方は緊張しきっているが)話している間先生も思っていたことをアコ達に話す。

 

「来る途中から思ってたんだけど、良い感じの場所だね?」

 

 その先生の言葉にアコはニヤリと笑って説明を始める。

 

「そうです! 何と言ってもここ『アラバ海岸』は、ゲヘナの中でもかなり閑静な場所として知られていまして。この1年で発生した事故の数は100件以下。最近のものでも海の家での無銭飲食、爆音ライブ、海岸での無許可建築程度です!」

「かん……せい……?」

 

 アコの説明をきいていた先生は今一度『閑静』という言葉の意味を思い起こす。

 

「先生、混乱するのはわかるけどゲヘナだったらそれくらい子供の悪戯みたいなものだよ」

 

 イオリがポンっと先生の肩に手を当てながらそう言う。

 

「まぁ、ともかく、静かなところが良かったので。なにせ、夏季の合宿訓練ではありますが、一番重要なことはヒナ委員長にしっかりと休息をとっていただくこと! その為に『万魔殿』も『ODI ET AMO』も協力してくださっているんです。訓練は普段委員長に頼り切りな部分が多い私たちだけで十分です!」

「そうですね」

「じゃ、やろうか!」

 

 アコの言葉にイオリは自身の愛銃を手に取る。

 

「ゲヘナの突撃隊長……。どれほどのものか確かめさせてもらうぞ」

「あぁ!」

 

 イオリの気合十分な様子にハルミは笑顔で話しかけてを差し出す。それにイオリはニカッと笑い返してハルミと握手をする。

 

「血気盛んなのは構いませんがどうか安全第一で。訓練で張り切り過ぎて大けがなんて笑い話にもなりませんからね」

「ムイ先輩の言う通りですよ、イオリ」

 

 今回戦闘には関与せず演習中の怪我や熱中症対策の為救護所に詰めることになったムイとチナツが好戦的な二人の様子を見てやれやれと呆れている。

 

「それじゃあ、天雨行政官? 僕とフセは訓練全体のバックアップに入るね」

「演習エリアの設置も障害物もトラップも! 全部っぱぱっと作っちゃうっス!」

「えぇ、よろしくお願いします。……それから先生」

「どうかした、アコ?」

 

 それぞれが訓練へ向かおうと準備しているとアコは非常に不服そうな顔をしながら先生に近づいて先生の肩にポン、と手を置く。

 

「ひっじょうに! 不服ですが貴女はヒナ委員長と共に行動して委員長がしっかりこの休暇を楽しめるようにしてあげてください。……あなたといる時の委員長はとても笑顔ですから」

「分かった。……で、肝心のヒナはどこに?」

「今はホテルの部屋にいると思います。貴女が遊びに誘ってあげてください。あ、勿論委員長が部屋で寝て居たいといった時は無理やり連れだしたりはしないようにお願いします!」

「りょうかい」

 

 アコの言葉に頷いて先生もオペレーションルームを出てヒナの元に向かおうとしたとき、ドアが外側からノックされる。

 

「失礼いたしマス。私、当ホテルの支配人を務めているものです。今お時間よろしいでしょうか?」

 

 一番ドアに近かったハルミが一度振り返りアコに視線を送る。アコが頷いたのを見てハルミはドアを開ける。

 

「お待たせした。どうかしましたか?」

「おお……フロントで聞いた時は耳を疑いましたが……本当に来てくださったんですね、ゲヘナ風紀委員の皆さま! それに『ODI ET AMO』の皆様まで!」

「……は? どういうことだ?」

「何だか嫌な予感がしますね」

「キッド3、周辺情報の検索。この海岸に関わる噂、モモッターの呟きなどなんでもいい。最近の出来事を洗いだせ。キイ、お前は海岸で待機中の風紀委員会の部隊と通信をとれ、通信出来ない部隊がないか探るんだ」

「了解だよぉ、グラン」

「は、はい、代表!」

 

 支配人の言葉を聞いたイオリは言っている意味が分からず首を傾げ、チナツは手で頭を押さえて嫌な予感がどうにか当たらないようにと願う。グランはキッド3と自身の膝に座っているキイに指示を出す。

 

「えっと……? 皆様は私共の救援要請を聞いて、こちらに来てくださったのですよね?」

「何かがすれ違ってますね。初めから説明をお願いできますか?」

 

 先生が一歩前に出て支配人と向き合う。

 

「今この辺りは大変なんです! もともとスラム街を占拠していたヘルメット団と、最近になって急に現れたスケバンが衝突を起こしていて……! 最初は小競り合いだったのが、どんどん激しくなって……どちらがこの辺りの地区を牛耳るのか、約4時間後にはその決着をつけると言っているんです!」

「え……?」

「なるほど、領地戦」

「それがネット上でも騒ぎになり、色んな所から面白半分で見物客が来るだとか、どっちが勝つか賭けになっているだとか……それで逆に、その噂を聞いたこの地域の方々は殆どお店を閉めて、逃げてしまっているんです! これでもし本当に見物客まで巻き込んで、大暴れなんてことになったら……! うぅ、せっかく改装の一環として、温泉の開発も始めた所だったのに……! しかし、天は私たちを見捨てて居ませんでした! こうして皆様方が来て下さるなんて! どうかお願いします……彼女たちの『全面戦争』を止めてください!」

 

 そう言って深々と頭を下げる支配人。

 

「「「「全面戦争!?!?」」」」

「ま、待ってください! そんな大規模な抗争になりそうなんですか!?」

「アコちゃんさっき、ここはゲヘナの中でも指折りの静かな場所って言ってなかった……?」

「そんなことを今、私に言われましても!?」

「ネットの情報も集め終わったよ~。ディヒヒ、こりゃ確かに大きな抗争になりそうだねぇ~。壁面スクリーンに出すよー」

 

 そう言ってアムは壁面のスクリーンに集め田情報の数々を映していく。

 

『GehEricha0201:そういえば今日だっけ?』

『#Nyanko&:海辺でスケバンとヘルメット団が、ド派手な勢力争いするんだって』

『akusi-girl:今年の夏、一番デカそうなイベントじゃん!』

『EATorDIE Official:何だか面白そうな匂いがしますわね?』

 

「確かにこれは、かなり対規模になりそうな……。ムイ先輩、セナ部長に連絡入れておきますか?」

「……そうですね。どう転ぼうとも怪我人が多数でることには変わりないでしょうし」

 

 チナツとムイが相談しているとキイが通信を受けて真剣な表情を浮かべた後、驚愕の表情でアコへと報告する。

 

「アコ行政官、待機中の部隊から報告! 現在、海辺で正体不明のスケバン及びヘルメット団の小規模集団が、小競り合いを始めた模様です。指示を待ってます!」

「こ、これは……」

 

 アコの身体がビクリと震えて着信音が流れ出す。アコはすぐさま携帯を取り出して耳に当てる。

 

「い、委員長!?」

『……もしもし、アコ? 今どこ? それに今外から銃声が聞こえたけど、訓練はもう少し先のはずよね。何かあったの?』

「アコちゃん、どうする!?」

「悪いことは重なるものですね……どうしましょうか?」

 

 風紀委員会の視線はアコに集まり『ODI ET AMO』の目線はグランに集まる。それに対してアコは深く息をすって吐いて深呼吸をしてグランは首を傾げたあと顎でアコの方をさす。今回の演習での監督はあくまでもアコだという意思表示だった。

 

「こうなったらもう、何でもかかって来なさい! この私が委員長の為に、このくらいの試練すら乗り越えられないとでもお思いですか! ヒナ委員長!」

『なにかしら、というかやっぱり何か起きてるのね。なら私も行った方が……―――』

「いいえ、今回の目的は風紀委員会の訓練とヒナ委員長に休暇を取っていただくことです。さらに今は『ODI ET AMO』の方々もいます、我々だけで対処して見せます! なので委員長はそのままお休みください! ……ただ、本当にどうしようもなくなった時だけお声がけさせていただきます」

『そう。なら任せるわよ、アコ』

「はい!」

 

 アコはヒナの『任せる』発言に感激しながらも電話を切る。そして再び深呼吸した後真剣な顔へと戻り指示を出し始める。

 

「まずは先生! 貴女は予定通り、ヒナ委員長の所に行ってください。なにはともかく、委員長に絶対仕事をさせないで下さい! 分かりましたね!?」

「は、はいっ!」

 

 先生はアコのあまりの迫力に敬礼で返事をしたあとヒナの部屋へと向かった。

 

「それからハルミさん! イオリとチナツの両名と風紀委員会の部隊も連れて海辺の小競り合いの収拾をお願いします。全体の指示は私が出しますがこまかな指示は前線指揮官として臨機応変にお願いします! イオリ、確かに貴女は突撃や切り込み役の方があっているのかもしれませんが、次代の風紀委員会は貴女に任せるのです。前線の指揮官としての戦い方をハルミさんから学んできてください!」

「アコちゃん……。わかった!」

「了解した。イオリ、チナツついてこい」

「よろしくお願いいたします、ハルミさん」

 

 イオリはアコの言葉に思うところがあったのか真剣な表情で頷く。ハルミはそんなイオリとチナツを引き連れてオペレーションルームを後にする。

 

「それから『ODI ET AMO』の部隊を連れて周辺に他の勢力が潜んでいないかの偵察をフセさんお願いできます」

「はいはーい、了解っス――「いや、それは俺が行こう」スっスー?」

 

 アコの指示に割り込むグラン。

 

「フセ、キッド4には少し頼みたい仕事が出来た。その代わり俺が行こう。構わないか?」

「……代表にはあの万魔殿(たぬき)共の相手をお願いしたかったのですが……」

「了解した、そっちもやっておく」

「それなら構いません」

 

 アコの了承をとった後グランは膝からキイを下ろして立ち上がりフセの前へと向かう。

 

「フセ、部隊を多少分けるから少し新たに食料の調達を頼む」

「代表の指示っスからそれは構いませんが……なんでまた食料を?」

 

 フセの言葉にグランは壁面スクリーンの方を振り返りあるアカウントの呟きに目を向ける。

 

「……まぁ、念のため、だな」

 

 




・風間キイ
 バニーチェイサーに出てきたリロに続き名前付きのサブキャラその2。名前を漢字表記にすると風間紀依。『風紀』の文字をそれぞれ名字、名前の頭文字にしました。見た目は勿論風紀委員モブです。ただし、『ヒナ委員長の夏休み』イベント内スチルであった上は通常だけどしたがスク水だけというスト魔女かよみたいな見た目。
 しかし冷静に考えるとスク水の女の子を膝上に乗せるのって大分不味くない……?

 以下、グランがキイを膝の上にのせている間にあった会話。

「だ、代表?」
「なんだ?」
「少しだけお話良いですか?」
「話ぃ? 構いやしないが、相談事なら先生とかの方が良くないか?」
「いえ、アナタに聞いて欲しいんです。私、小さい頃から体があまり強くなくて」
「(小さい頃……今も小さいだろうに。とは口に出さない方が良いだろうな)」
「だから前いた学校の土地が合わなくて……。ゲヘナに転校してきたんです」
「へぇー……」
「ただ、元居た学校には何も言わずに転校届だけ置いて出てきちゃったからちょっと後悔と言うか、負い目があって……」
「身体の問題なら仕方がないだろう。きっと元の学校の奴等も許してくれるさ」
「そっか、そう思ってくれるんですね。書記くんは……」
「ん?」
「いえ、何でもないです。少しだけ胸のつっかえがとれました。ありがとうございます」
「ん、あ、ああ。こんなんで良かったのか……?」
「はい!書記くんは相変わらず優しいんだね。アビドスに居たときからずっと変わってない。だから本当にあのとき何も言わずに転校しちゃってごめんなさい。砂嵐のせいでせき込むことが増えて、肺がドンドン衰弱しちゃってたの。アレさえなければずっとアビドスにいれたのに。私も生徒会に入ってずっとずっと支えて上げたかったのに。だけどあなたにはあの子がいた。だから私は諦めたのに、アビドスのこともあなたの事も。なのに、どうして、どうしてあなたは今ここにいるの? あの子とはいったいどうなったの? ねぇ、書記くん。どうしてそんなにつらそうに笑うの? 本当のあなたの笑顔はどこにいったの? 書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん書記くん……ホシノなんかよりずっとずっとあなたのとアイシテルヨ?

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