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それから風紀委員会と『ODI ET AMO』は一丸となってアラバ海岸の掃討に奮闘を続けた。その奮闘は約二時間にもわたり全ての先頭が終了したときには全員がぐったりとしていた顔になっていた。
「ふぅ、ふぅ……」
「はぁ……」
「皆さん、生きていますか……?」
「まぁ、なんとか、ギリギリ?」
息も絶え絶えのイオリに深く息を吐くチナツ、そして天井を見上げて疲れ果てた様子のアコ。そんなアコの声掛けにソファでぐったりと寝ころびながらグランが返事をする。オペレーションルームには怪我人一人いないというのにその様相は死屍累々であった。
「実力は大したことなかったが、数が異常だった。私もこれだけ疲れるのは久々だ」
「拘束した不良、および怪我人は先ほど救急医学部のセナ部長が回収してくれました。何人かは取り逃しましたが既に撤退を始めているようです」
ぐったりとしたグランの隣で軽くストレッチをしながらハルミは感想を話して、書類の束をもったムイが現状の報告をしている。
「ですがこれで、スケバン集団『破茶滅茶』並びに『びしょびしょヘルメット団』どちらも完全な退却を確認しました。それにインターネット上でも、全面戦争は中断という噂が広がっているようです。無事に作戦終了です、お疲れさまでした」
「あぁもう、ようやく終わったー!」
「本当に……せっかくビーチまで来たのに大変でしたね」
アコの言葉が終わると同時にイオリが疲労と鬱憤を晴らす様に大声を上げる。そしてチナツはまるで真っ白に燃え尽きたボクサーのように椅子に深く座り込みながらしみじみとする。するとノックと共にホテルの支配人がやってきて頭を下げる。
「風紀委員会の皆さま! ありがとうございます! 本当にありがとうございます……! これで当ホテルはもちん、周辺のお店も戻ってこられるはずです! お礼と言っては何ですが、今度当ホテルの管轄区でのオープンを予定している温泉のチケットをプレゼントしますので、どうか後日お使いください!」
そう言って支配人がチケットを取り出すとアコが代表として受け取る。
「いえいえ、私たちはやるべきことをやっただけですから。一応そちらは頂くとして……あらためまして、風紀委員会、『ODI ET AMO』一同、お疲れさまでした。次の予定まで残り一時間ですが……ちょっと一旦待機で。各部隊の損耗状況などを確認して予定を組みなおします。皆さんはゆっくり休息を取っておいてください」
「お! それなら僕も手伝うよぉ、行政官」
「ありがとうございます、アムさん」
そう言ってアコとアムはオペレーションルームのモニター前にタブレットやら、各部隊の報告をまとめた書類を持って集まった。その間外で戦闘してきた面々はソファや椅子に座ったり寝ころんだりと各々好きに過ごす。
「一旦待機だぁー。良かったあ……。このあと一時間休憩した後に先輩と模擬戦だって言われても絶対勝てないし……」
「ふふふ、随分弱気だなイオリ? そうだ、私が編み出した短時間で効率的に体を休めれる方法を教えてやろう」
「うぇ、こんな時まで? でも、学んでおいて絶対損ないし……。頼むよ先輩」
そんなイオリとハルミのやり取りを見たグラン、僅かに目を開いて驚く。
「ハルミ」
「はい、どうかしましたか代表!」
「いや、その、いつの間に仲良くなったな?」
「ん? あぁ! はい。ゲヘナは私の古巣ですので、イオリがそう呼んでいるだけです」
「の割には、随分嬉しそうだが?」
「……イオリは、良い後輩です。素質に溢れていてこちらの教えたことをするすると覚えていきます。もし、私がゲヘナにいたころに彼女と出会えていれば……」
「戻りたいなら構わんぞ、俺は」
少しだけ顔を伏せてそう話すハルミにグランは優しい声でそう話す。
「い、いえ、そんなことはあり得ません! 確かに違う未来もあったかもしれませんが、それはあくまで空想の話です。今の私はここに! 代表の傍にいます、最後まで!」
ハルミはグランの言葉に顔を青くして大きく首を振りながらグランの横になっているソファに駆け寄る。そして大きな声で弁明を始める。そのあまりの必死さにグランは僅かにほほ笑み、ハルミの頭を撫でる。
「ふふっ、必死過ぎだろうお前。まぁそれなら良かったよ」
「よ、良かった?」
「あぁ、お前がいなくなると少し……寂しくなるからな」
「代表……今から一発ハメま―――ドガァァッッッッン!」
ハルミの言葉を遮るように大きな爆発音が響く。空気が固まるオペレーションルーム。
「それでこんどはなんですか!?」
チナツが大声を出して立ち上がる。それとほぼ同時に風紀委員がオペレーションルームに転がり込んで聞きた。
「襲撃です! 相手は―――」
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「ねぇどうして誰もいない訳!? ここでお祭りが始まるって言ってたじゃん!」
「お祭りと言いますか、全面戦争ですけどね。まぁ似たようなものですけど★」
「どっちでも良いわよ! とにかく、この状況どういうこと!?」
「確かにこれでは、今回の目標である『夏の海岸やお祭り騒ぎの中で食べる焼きトウモロコシは、どうしてこんなにも美味しいのか?』が研究できませんわね……」
「ねぇねぇ~いつになったら焼きトウモロコシ食べられるのー!」
「食べに来たんじゃなくて、売りに来たの! わざわざこんなに重い荷物抱えてここまで来たのに! スケバン集団もヘルメット団もどこに行ったわけ!? どうなってるのよぉ!!」
海岸に到着した面々が目撃したのは大荷物を抱えて立ち尽くす四人組。しかしその周りには襲撃を受け倒れたであろう風紀委員たちが転がっており、四人組が只者ではないことを現していた。それを見たグランは最初にオペレーションルームでとあるアカウントを見つけたときから警戒していた予感が的中したことに頭を抱えることになる。
「やはり現れたか……『美食研究会』」
「び、美食研究会!? なんでお前たちがここに……! 今度は何をやらかすつもりだ!?」
「代表は知っていたんですか?」
イオリは驚愕し、すぐに警戒態勢へと移った。そしてチナツはグランの『やはり』という言葉に反応してツ指紋をする。チナツの言葉にグランは頭を軽く押さえながら答える。
「いや、オペレーションルームで全面抗争のことを調べたモモッターの画面が表示された時があっただろう?」
「はい」
「そのときにこいつらのアカウントがあって、な……」
「成程、あの時に」
グランの言葉にチナツが納得しているとハルナが戦闘態勢を取っているイオリに待った、と言わんばかりに手を上げて話しかける。
「あら、失礼ですわね。私たちは何も、事件を起こしに来たわけではありませんわ?」
「そうよ! 私たちはただ焼きトウモロコシを売りに来ただけ!」
「なに……?」
「……とうもろこし?」
「食べる方じゃなくて、食べさせる方だと?」
ハルナとジュンコの言葉に首を傾げるグラン達。何が何だか分からないという様子のグラン達にハルナは両手にトウモロコシを持って見せて説明を始める。
「海辺やお祭りなどで食べる焼きトウモロコシは、なぜあんなに美味しいのでしょうか……? その理由、気になりませんか? 同じトウモロコシのはずなのに、海辺というだけで、お祭りと言うだけで、あんなにも味が違うだなんて……ただ考えるだけでは仕方ありません、これを解明する方法はただ一つ。そう、試してみれば良いのです。つまり実際に作ってみましょうと。ちょうどここで、私たち以外のサンプルもかなり確保できそうでしたし」
ハルナの言葉にグランは内心『フェリーで食べるカップラーメンみたいなものだよな』と考えて確かにアレは上手い、と思考が若干食事に支配される。
「そういうことです★ 今日ここで全面戦争があるとインターネットで話題でしたし、海でお祭り騒ぎだなんて丁度良いなと思いまして~」
「スケバン集団にヘルメット団! それに結構規模の大きい抗争らしいし、見物人も沢山来るって言ってたし、ここで焼きトウモロコシなんて売ったら大繁盛間違いなし!」
「うんうん! まぁもし売れ残っても私が食べるよ!」
「何言ってんの、売り切るわよ! 運ぶの大変だったんだから!」
ハルナの背後でやいのやいのとするイズミとジュンコ。そんな二人を微笑ましいものを見る目で見つめてからハルナは風紀委員会の方に向き直る。
「……と思っていたのですが、どうしてここまで閑散としているのでしょうか?」
「いや、お前らの事情とか知ったこっちゃないし……取り合えずお祭り騒ぎは中止になったから、ほら帰った帰った!」
ハルナの言葉にイオリはしっしっ、と手を振るって解散を促す。しかしそれを見たハルナは妖しい笑みを浮かべる。
「……ふふっ」
「あらあら、つれないですね★」
「私たちは美食研究会……美食の追求において如何なる障害があろうとも、背を向けるなんてことは致しません」
「ハルナも言っている通り、まあそういうことです。ですから―――「そこでストップ」あら?」
美食研が武器に手をかけてイオリ達も瞬時に構えて空気が正しく一触即発となった瞬間グランが両方の間に立って双方の動きを止めた。
「双方、武器を下ろせ。そして俺の話を聞け、それがもし気に入らなければドンパチ初めて構わんから」
「……代表がそういうなら」
「ハルナ?」
「えぇ、言う通りにしましょう。ブラックマーケットの代表の顔を立てて差し上げます。それで話とは?」
全員が武器を下ろしたのを確認した後グランはハルナの方を向いて真剣な表情をする。その表情に少しばかり気圧されるハルナ。ずかずかとハルナの近くに歩いて行き彼女の手を取るグラン。そして少し手のひらを観察した後グランはハルナに改めて向き直る。
「ハルナ、付き合ってくれ」
「……な、なななななっ!?」
「「「「はぁ!?」」」」