シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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170話

ブラックマーケット 塔

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 風紀委員会との合同合宿も終わって数日。夏休みもそろそろ終わる頃が近づいてきた。計画通り勉強を続けてきた人間はそろそろ宿題と言う苦行から解放されて、残りの余暇を穏やかに過ごし、無計画に遊び惚けていたものは泣き目を見るような頃。水戸グランは『塔』の自室にて頭を悩ませていた。

 

「……調印式の前までには……。ここはいつも通りに……いや、だが……」

 

 椅子に座り込み、頭を抱えて苦悩するグラン。キッドたちはそんなグランの様子を部屋のドアから覗き見ていた。

 

「代表はさっきから何悩んでるんスか?」 

「小鳥遊ホシノをどうデートに誘うかです」

 

 フセの質問にムイが答える。

 

「は?」

「事実だ」

「悔しいですが、やはりグラン様にとって小鳥遊ホシノという女性は特別な存在のようです」

「それで何時も見たいに誘えばいいのに変に焦り散らかしちゃってるんだよねぇ。ディヒ……いや、笑えねぇわ」

 

 底冷えするようなフセの声にハルミが事実だと伝え、ムイが悔しそうな声で補足をした。途中まで挙動不審なグランを見て笑っていたアムもスンっと無表情となった。彼女たちキッドにとっては小鳥遊ホシノとは自分たちが愛してやまないグランを傷つけた最悪の元カノである。しかし彼女がグランを傷つけたからこそ自分たちと出会ったのも事実で複雑な感情を抱いてしまう相手であった。

 

「そもそもデートってどこ行くんスか?」

「海上施設の養殖場だ」

「……なんであんなところ?」

「知らん。だが、以前から約束していたそうだ」

「ふーん……」

 

 自分に向けられている熱視線に気が付かずグランは何を思いついたのか机の引き出しを開けてあるものを取り出していた。

 

 

アビドス高校

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「ん? これ……。グランからだ」

「シロコ先輩おはようー!」

「おはようございます。シロコ先輩」

「ん、おはよう」

 

 アビドス高校に登校してきたシロコは学校のポストに何かが入っているのを見つけた。最初は不良どもの脅迫状か、危険物かと思い身長にポストを開けていたシロコだが、取り出した手紙にグランの名前と『ODI ET AMO』の封蝋がされているのを見て警戒を解いた。丁度その時セリカとアヤネが一緒に登校してきてシロコに声をかけた。

 

「シロコ先輩なに持ってんの?」

「グランからの手紙」

「手紙ぃ? なにかあるならモモトークで良いのにわざわざ?」

「わぁ、封蠟もされてるし、これ紙も良い奴ですよ。なんだかロマンチックですね。中身は?」

「まだ見てない。これホシノ先輩宛てになってる」

「あ、ホントね。先輩たち教室にいるだろうし持って行っちゃいましょ」

「ん」

 

 三人は手紙の中身に興味心身でありいつもより少しだけ速足で階段を上って教室へと入る。

 

「おはようございます、ホシノ先輩、ノノミ先輩」

「お~、おはよ~」

「おはようございます☆ 皆さん一緒登校ですか?」

「校門の所であった。ポストにホシノ先輩宛てにグランから手紙が届いてる」

「ほへ?」

 

 シロコの言葉に枕を抱え机の上でダレていたホシノがガバリと立ち上がる。

 

「そうなのよ! しかもなんかやたらしっかりした手紙なの! それで私たち気になっちゃって急いで教室に来たの!」

「ん、ホシノ先輩開けて見せて」

 

 そう言ってシロコはグイとホシノに手紙に渡す。

 

「わぁ、本当に良い紙ですね。手触りも良いし、四隅に模様も入っていて封蝋まで……。こだわってますね」

 

 ノノミも手紙を見て驚き、ホシノの周りに対策委員会が集まる。手紙を渡されたホシノもグランがこの手紙に書けた手間というものをそれとなく理解して緊張が身を包む。

 

「み、みんな、そんなに見られてたら開け辛いよぉ……」

「ん、気にしないで」

「私が気にするんだけど……」

「ホシノ先輩、これペーパーナイフです」

「え……やっぱりここで開けなきゃダメ?」

「ダメです☆」

 

 周囲からの期待と圧力、とくにアヤネとノノミからの圧力にホシノは屈していそいそと手紙を開封する。

 

「これは……? 入館証?」

 

 手紙を開けて真っ先に出てきたのは一枚の入館証。それは『ODI ET AMO』の海上施設へ立ち入るための許可証だった。もう一つの便箋にはシンプルに日時と場所が指定されており一言添えられていた。『迎えに行く』と。

 

「これって……」

「初めて私たちがブラックマーケットに入った時の約束ですよね?」

「あー、確かホシノ先輩を海上施設の魚が見れるところに連れていくみたいなこと言ってたわね」

「ホシノ先輩! これってデートのお誘いですよ!」

 

 やいのやいのと騒ぎ始める対策委員会たち。その喧騒のなかホシノは笑顔でグランからの手紙を抱きしめる。

 

「うへへへ。その日に外せない用事があったらどうするつもりだったのさ。……まったくグランは」

 

 幸せいっぱいの様子のホシノを少しだけうらやましそうに見るノノミ。その寂しさも合わさっているような表情も一瞬だけですぐにいつもの笑顔に戻ったノノミは手叩いて注目を集める。

 

「そうだ! 今日は皆でショッピングに出かけませんか?」

「ノノミちゃん?」

「ホシノ先輩せっかくのお誘いなんです。名一杯おしゃれして可愛い恰好をグランさんに見せて上げましょう?」

「え、ぇぇ!? そ、そんな私は……別に」

「そーですよ! その……正直グランさんの周りには多くの女性が見ますからこんな機会なかなかないですよ! それにいくつかの備品も少なくなってきてますし一緒に買い物してきちゃいましょう!」

「なら今日の活動は決まりね!」

 

 当の本人は照れ顔でもじもじとしている間にあれよ、あれよと進んでいくホシノのお洒落計画。一行はさっそく出かける準備を始めたのだった。

 

「……」

 

 シロコだけがジッとノノミの横顔を黙って見つめていた。

 

 

 数日後、グランの指定した日。対策委員会の面々はいつもより早く学校に集まってホシノの準備を手伝ったり、応援をしていた。

 

「う、うへ~。やっぱりこの服、私には可愛すぎない?」

「いいんですよ、それで! ホシノ先輩は可愛いんです! 自信持ってください! というか、ホシノ先輩とグランさんって元々お付き合いしてたんですよね? 何今更恥ずかしがってるんですか?」

「あ、アヤネちゃん当たりきつくなーい? ……実は、その当時は私今と全然性格違うし、あんまり余裕なくて……いっつもそもそもデートらしいデートってしたことなくて……」

「え? 逆に何してたの?」

 

 ホシノの告白にセリカが質問する。

 

「えっと……一緒に登下校したりとか、一緒にパトロールしたりとか、銃のメンテしたり?」

「ん、ド素人」

「五月蝿いよ、シロコちゃん」

「な、なんか甘酸っぱい思い出とかないんですか?」

「……帰り道でキスしたりした」

 

 その時の事を思い出してポッと頬を赤く染めるホシノ。そんなホシノを見てセリカは『え、ホシノ先輩ってこんな顔もするんだ』となぜか見ている自分まではずかしくなってきて赤くなった頬を隠す様に横を向く。

 

「それじゃあ、今日はグランさんとの初デートなんですね☆ だとしたらホシノ先輩それこそちゃんとお洒落しましょう! こっち向いてください。少しだけメイクもしましょう!」

「あ、ありがとうね~、ノノミちゃん。私こういうの普段余りしないから助かるよ~」

 

 暫くしてグランがアビドス高校に訪れる。校門前で待機していたホシノはグランの姿を見るとパタパタと走り寄る。

 

「おはよう、グラン」

「……おはようホシノ」

 

 グランは自分の前に現れたホシノの姿に仰天していた。白い肩だしワンピースに可愛らしいクジラのポーチ。いつもより鮮やかな唇。グランの眼にはホシノがとても魅力的に映っていた。自分の方を見て固まったグランを見てホシノは頬を掻いて笑う。

 

「今日のこと皆が知ったらいろいろ手伝ってくれたんだ。……似合ってる?」

「あぁ、とても綺麗だよ、ホシノ。それじゃあ、行こうか?」

「うん。今日はよろしくね」

 

 二人の初デートが始まった。

 

 

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