シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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Chapter 01‐1 後悔の砂漠 テーマソング『Light My Fire (KOTOKO)』
5話


◎・???・

 

『お前が……、お前が■■■■を■したんだッ!』

「ッッッ!?」

 

 喉の奥から飛び出しそうになった絶叫を押さえつける。息が荒く、呼吸がうまくできない。苦しい、逃げたい、違う。もう俺は逃げ――――

 

「グラン様! 大丈夫ですか!?」

「ッ!」

 

 耳元の声で目が覚める。あたりを見回す、波に揺れる部屋、知っている天井、質素ではあるが高級感のあるベッド、一糸まとわぬ姿のキッド1。あぁ、意識がはっきりしてきた。昨日は艦隊の視察に来ていたんだ。提督のキッド1直々に艦隊の現状を解説させて、食事した後にこの艦長室のベッドで寝たんだった。ベッドから上半身を起こす。キッド1が心配そうにこちらを支えてくれる。

 

「すまない、キッド1」

「いえ、問題ありません。それよりも大丈夫ですか?ひどく魘されておりました。それと今は……」

「ああ、そうだった。すまないハルミ」

 

 キッド1こと大鷲ハルミは俺が名前を呼んだのを聞いて少し口角を上げて、立ち上がりサイドテーブルから水差しとコップを持ってくる。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 水を受け取り喉を潤す。一息入れてから口を開く。

 

「昔の夢を見た」

「昔……ですか?」

 

 コップをハルミに返す。もう一杯いるかとジェスチャーで聞いてくるハルミに下げていいと手を振って答える。ハルミはコップに水を入れ今度は自分で飲む。態々同じところに口をつける所を見せつけるな。流し目でこっちを見るな。

 

「まだ、俺が弱かった頃の夢だ」

「……グラン様の左腕を奪った存在の夢ですか?」

「まぁ、な。今何時だ」

「午前4時です」

 

 ずいぶん早起きしたな。確か今日はシャーレに向かう日だったか。俺が起きる準備をすると、ハルミはすぐさま義肢を持ってきた。義肢を着けて貰いながら最近のことを思い出す。

 本当に色々あった、シャーレの部長になったり、ワカモと戦ったり、早瀬に詰められたり。アレから数日たったがシャーレは今だ大きな仕事はなく、地道にシャーレ周辺の人々の問題などを解決していた。さらにシャーレ奪還作戦に参加した生徒とセリナがシャーレ所属になった為、『当番』という制度ができ、毎日シャーレに行かなくても良いことになっていた。……セリナはいつの間にシャーレにいたんだろうな、ホントに。

 

「装着終わりました」

「ありがとな」

 

 ベッドから立ち上がりいつもの服に着替える。となりでハルミも着替え始める。ハルミは白い髪をまとめ上げてポニーテールにして手早く下着を身に付けた後、白い軍服を着る。そして最後に艦長帽を被る。眺められているのに気が付いたのかこちらに目をやり顔を赤くするな、また脱ぎだすなァ!

 

「おい、脱ぐな」

「そうでしたか、てっきり着衣でした「船をD.Uに向かわせろ。連邦生徒会に事前連絡はしてある。シャーレ付近で降りる。その後は海上施設で補給だ」了解です」

「頼んだキッド1」

 

 キッド1と共に、艦長室を出て、ブリッジに向かう。ブリッジに入るとすでにいた航海長や砲術長が敬礼してくる。それに軽く手を挙げて答える。キッド1が艦長席を譲ろうとするがそれを断りブリッジの大型窓に近づいて外の景色を眺める。暗いな……。

 

「夜明けは?」

0446(まるよんよんろく)との予報です」

 

 海……か。初めて見た時にも思ったが、揺れる波はいつまでも眺めていられる気がする。潮風でべたつくのは勘弁だが。ゴォウンと音が響いたあと、ゆっくりと船が動き出した。船が波を切り裂いて進む、その過程で海面に白波ができる。……やっぱ何回見ても良いなこれ。

 

「代表、これを」

「んあ? おお、すまない」

 

 副長がどこから持ってきたのかハイスツールとコーヒーを準備していた。スツールに座りコーヒーを飲みながら、暗い水面を眺めて過ごす。……何でもないこんな時間が、どうしてこんなにも満たされているのだろう。

 

 

 ◎・D.U外郭地区河口近く・

 

「視察がてらに足に使って悪かったな。助かったよ」

「いえ、我々のすべてはグラン様の為に存在しているので」

「忠義に感謝しよう」

 

 限界水深まで来たので別の小型ボートに乗り換えてシャーレの最寄りを目指すことになった。乗り換えの時にキッド1に礼を伝えると、敬礼と共に返事が返ってきた。元々ゲヘナの万魔殿にいたとは思えないぐらい真面目だよな……。あぁ、でもかなりの変態だよなこいつ。ボートに乗り込み操縦士に合図を送る。ボートはスピードをあげ軽快に動き出す。

 

 暫くして船着き場に付きボートを止め、桟橋を歩く。時刻は午前5時頃、町に活気が生まれ始める時間。横の道路の交通量が多くなるのを横目に懐からタバコを取り出し火をつける。タバコの先の煙がゆらゆらと空へと昇り、白み始めた空へと解ける。

 

「あ゛ーー」

 

 何だかすごい声が自分の口から出る。夢見のせいか余り頭が動いていないな。くそっ、なんでまたあの頃の夢を見たんだ。最悪だ。……忘れちゃいけないし、忘れたい訳じゃないんだ。ただ、あんな形(悪夢)として見たくないんだ。しっかりと俺が向き合わないといけないんだ。あー、あー、あー!!本当に気分が悪い。シャーレの玄関まで来たのでタバコを消して、ポストの中などを確認する。地道な活動の甲斐あってかシャーレの噂も広まり、生徒たちから様々な依頼や助けを求める手紙が届くようになった。手紙や新聞などを回収し、シャーレに入る。先生が普段活動している上階までエレベーターを使い向かう、エレベーター中で回収した手紙などを確認する。

 

「!?」

 

 手が止まる。確認作業中に見覚えのある便箋を見つけてしまった。……三角形のうちに太陽のマーク。なぜこれが? いや本物か? 誰から? 過去を知っている存在からか? 俺の存在を快く思わない連中の悪戯?バサバサという音が聞こえ、意識を取り戻す。音の正体は自分が落とした、例の便箋以外の手紙などだった。まだ少し震える手で書類を拾いなおしたところでエレベーターが止まる。エレベーターを降りてオフィスへ向かう。視線は手元の便箋から離さない。

 

「おはようございます」

 

 オフィスへ入り挨拶をするが返事はない。その代わりに寝言が聞こえる。

 

「えへへ~~、アロナ~~」

 

 寝言の聞こえたほうを確認するとそこにいたのはソファで爆睡している先生だった。一瞬、徹夜仕事だったのかと思ったがテーブルの上に転がる空き缶を見て、ただここで晩酌をしてそのまま寝ていただけだということを理解する。少し迷った後、便箋を机の上に置き、ごみ袋を手に取り缶をそこに入れていく。後で絶対に先生自身でゴミ捨て場までもっていかせる、階段で。ゴミ袋を端に寄せ、部長席に座る。始業まではまだ時間があるし、先生は寝かしたままでいいだろう。……便箋に手を伸ばす。ゆっくりと開き、手紙を読み進める。

 

 ◎・数十分後・

 

「う、うううう――ん」

 

 手紙はすでに読み終わり机の端っこに置いて書類仕事をしていた。

 

「おはよう、先生。さっそくだが、自分の後始末をしっかり頼むぞ」

「ううう、おはよう。朝からきびしー」

 

 そう言いつつもしっかりとゴミ袋をもってオフィスを出て行った。次に先生がオフィスに姿を現したとき、スーツは新しいものになっておりメイクもしっかしやり直していた。先生は自身の机に向かい、自身の頬をかるくたたいて気合を入れていた。

 

「先生、気合を入れた所に水を差して悪いがこれを見てくれ」

「これは?」

 

 先生は手紙を受け取り首を傾げながらも中身を読んでく。

 

『連邦捜査部の先生へ

 こんにちは。 私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

 今回どうしても先生にお願いしたい事がありまして、こうしてお手紙を書きました。

 単刀直入に言いますと、今、私達の学校は追い詰められています。それも、地域の暴力組織によってです。こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。どうやら、私達の学校の校舎が狙われている様です。

 今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます……。このままでは、暴力組織に学校を占拠されてしまいそうな状況です。

 それで、今回先生にお願いできればと思いました。先生、どうか私達の力になっていただけませんか?』

 

 手紙を読み終わったのだろう。丁寧に手紙を机に置いた先生に話しかけようとしたが。先生の異変に気が付く。先生はタブレットに手を置いたまま目をつむり動かなくなってしまった。ごくまれに口が「アロナ」と言っているのが聞こえる。

 ……アロナ。俺たち生徒には見えないが、先生は認識が可能なあのタブレット『シッテムの箱』のメインOSのことらしい。先生の口ぶりからどうやら俺たちよりも小さい子供の見た目をしているらしい。こうなってはこちらはできることがないのでコーヒーを準備してそれを飲みながら待つ。少したって……

 

「グラン!」

「どうした先生」

「アビドスに出張するよ。今から」

「今からっ!? 先生、アビドスがどんなところか知っていってるのか?」

「アロナに教わった!それじゃあ準備して行ってくるね!グランも今日は帰っても大丈夫だよ。施錠だけしっかりね!」

 

 そういって、先生はオフィスから飛び出していった。……どうすっかなぁ。溜息を吐きながらソファに体を沈ませる。アビドスはその広大な土地と気象の問題からその大半が砂漠化している。なれない人間が考えなしに立ち入れば砂漠のど真ん中で遭難することになる。おそらく先生も遭難することになる。先生はキヴォトス人ではないし、すぐに死んでしまう。スマホを取り出して部下に連絡を入れる。

 

 部下と落ち合って砂漠地帯にも対応している車両に乗ってアビドスに向かう。……はっきり言ってアビドスには向かいたくないが、先生が死んでも目覚めが悪い。

 

 

 

ああ、本当に……気分が悪い。

 

 




主人公の部下にはキッド1~4の四人の幹部がいる。

 キッド1 『大鷲ハルミ』紫のファーがついた白い軍服を着ている。スカートではなくパンツスタイル。白い髪でポニーテールにしている。ポニーテールの長さは大体肩甲骨あたりまで。主人公以上の実力者で、先生とも五分五分の戦術家。グランの所有している私設軍隊の総督であり艦隊の提督。実はキッドの中で一番最後に仲間になっているが忠誠心は一二を争う。常に敬意をもって主人公に接している。が、それはそれとして内心主人公が自分の力には敵わないことに興奮を覚えており『ここで私が押し倒したらこの方はただ陵辱されるがままなのだな』と考え、妄想している。元々はゲヘナの万魔殿所属だった。武器はTANSY RF12

評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

 

いつか考えているイベント回グランが若返ります。1年や幼児は体の年齢。記憶は頭の中身、なしだとその体の当時の記憶しかない。ケガは主に四肢欠損のありなし。

  • 一年、記憶あり、ケガあり
  • 一年、記憶なし、ケガあり
  • 一年、記憶あり、ケガなし
  • 一年、記憶なし、ケガなし
  • 幼児、記憶あり、ケガあり
  • 幼児、記憶なし、ケガあり
  • 幼児、記憶あり、ケガなし
  • 幼児、記憶なし、ケガなし
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