シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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8話

◎・アビドス ヘルメット団 前哨基地・

 

「編成は前衛がホシノとグラン、中衛がセリカとシロコ、後衛がノノミ。アヤネはここでドローンで索敵と回復剤の投与。作戦開始!」

「「「「「「了解」」」」」」

 

 先生の言葉に返事をして駆けだす。

 

「遅れないでよ」

「わかってる!」

 

 小鳥遊ホシノが盾を展開し先頭を突き進む。その後ろに一列になってついく、そうして銃弾を防いでもらいつつ前進。十六夜、黒見、シロコはそれぞれのポジションの位置で盾の後ろから飛び出して攻撃を開始する。

 

「このまま突っ込むよ~」

「気をそらす、その隙に突っ込め」

 

 近くにあった街灯に向かって跳びその街灯をさらに蹴って飛ぶ。そして今回左腕に装備してきた武器、ヒートハウザー『KO-7H3/SVETLYAK』を上空から撃ち込む。一気に複数発射された榴弾が爆発し広範囲に被害を出す。

 

「ごほっ、ごほっ。ば、爆撃?」

「おい、早く立て! 敵が突っ込ん―――「おーしまい」

 

バガァッン!

 

 小鳥遊ホシノは素早くヘルメット団に接近してショットガンを撃ち込み、すぐさま離脱する。小鳥遊ホシノに意識が向いた不良たち目掛けて上から蹴りを叩き込む。そのままサイドステップをして近くの障害物まで後退しつつ、射撃して数人をダウンさせる。ある程度距離をとると再びヒートハウザーを撃ち込む。さらに数人が吹き飛んで動かなくなる。その爆発に紛れて小鳥遊ホシノが再び接近してシールドバッシュを叩き込む。その隙を狙う不良を見かけたので銃を向ける。

 

「何を!? あ、そういう」

 

 銃を向けられた小鳥遊ホシノは自分が撃たれると思ったのかすぐこちらに盾と銃を構えるがすぐさま俺の意図に気が付いた。

 

 

バガァッン!

ドバッァァァン!

 

 「「ぐはっ」」

 

 ……俺の後ろにもいたのか。こちらに銃を向けたまま引き金を引かれたときはいずれ受ける咎だとは思っているがさすがに今か!? と思った。

 

「……助かった」

「私も……ありがと」

 

 気まず。

 

「ちょ、ちょっとあの二人息ぴったりって感じじゃない! 私たち何もしないでも大半が片付いちゃったじゃない!」

「ん。二人ともお互いがどのタイミングで誰を攻撃するかわかってる……と、思う。でも近距離での連携は少しぎこちない気がする」

『シロコ、セリカ、ノノミ! 奥からさらに増援! 多分本隊だよ! さすがにあの二人だけだと今度は厳しそうだから援護するよ! ノノミは30m前進、左のビルの出窓から掃射準備。 セリカは50m位かな? 赤の看板が外れかかっているビルまで前進。途中でホシノとグランに大声で声かけて目を覚ましてあげて。シロコはその場でドローン準備、相手の出鼻をくじくよ。その後セリカと同地点まで移動、攻撃を開始して。以上、みんなお願い!』

「はーい♧」

「あのビルね。動くわ!」

「ん、ドローン起動」

 

 

 小鳥遊ホシノと目が合ったり、すぐそらしたり。そんなことをしていると後ろの方から黒見が走ってきているのが見えた。

 

「ホシノ先輩! 代表! ヘルメット団の本隊が来てる! ぼっーとしてないでさっさと動く!」

「わ、わかった!」

「うへ~、セリカちゃんに叱られちゃった~」

 

 互いに武器をしっかりと構えなおし、ヘルメット団本隊に向かう。

 

 

◎・数分後・

 

「敵の退却を確認、並びにカタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認!」

 

 武器を投げ出して撤退していくカタカタヘルメット団。その後ろ姿をヒートハウザーで破壊しつくしたアジトの残骸に座り込みながら眺める。撤退していくヘルメット団が乗っているトラックに照準を合わせる。引き金を引こうとして――――そっと抑えられる。

 

「……甘いな、先生」

「うん。それでも、あの子たちも私にとっては生徒だから。必要以上に傷つけてほしくないんだ」

 

 いつの間にか、VBMRから降りて隣に来ていた先生。危険だからあまり来てほしくなかったんだがな。キヴォトスの外からやってきた先生、その腕力は非力であり、この手だってその気になれば振り払って奴らに榴弾を叩き込むことだってできる。……でもその気が全く起きないのは先生の人柄故だろうか。

 

「……アジトを失った奴らがどこへ向かうかは部下に監視させる。俺の領地内に来られたら困るからな」

「ありがと。あの子たちを一時的に保護とかできない?」

「あいつら次第だな。おとなしくしてくれれば保護はできるがな」

「それを願うばかりだね」

 

 先生も隣に座りこみ、地面に転がっていた何かを拾い上げる。それを見るとカタカタヘルメット団のマークが書かれた旗だった。所々破けていて穴が開いている。

 

「それ、どうするんだ?」

「どんな形であれ、これはあの子たちの結束の証。皆で過ごした思い出が詰まってるの。だから綺麗にして返してあげようかなと思って。……その時に悩みとか聞いてあげれば不良から足を洗ってもらえないかなー、なんて」

「悩みの一つ、二つ解決して足を洗えるなら不良になんてなってないだろ」

「それでも、努力することを諦めちゃいけないと私は思っている」

「……あっそ」

 

 先生から目をそらしてヘルメット団の消えていった方向を見る。ヘルメット団のトラックは既に遥か遠くに行ってしまっていた。……先生に感謝するんだな、お前ら。部下に連絡をし、R14 WATCHERの準備を要請する。あとでアヤネに一声入れておくか。

 

「二人とも学校に戻るわよー!」

 

 後ろの方から黒見の声が聞こえる。振り返るとシロコがVBMRを運転してこちらに向かわせていた。

 ん!?

 

「おい、こらシロコぉ! 一応それウチの備品だぞ! アビドスじゃあ、運転する機会がないのは分かるが遊ぶんじゃない!」

「ん、慣性ドリフト」

 

 急いで立ち上がり車を止めに向かう。

 

◎・アビドス高校 対策委員会 教室・

 

 どうにかシロコからハンドルを取って、アビドス高校に戻ってきた。行きとは違い、シロコが助手席に座ってことあるごとに運転をしたがるのでそれを抑えるのに疲れた。次の機会にもっと軽快に動くジープを持ってくることを約束しどうにか、落ち着かせた。

 

「皆さん、お疲れさまでした」

「ただいま~。疲れたよ~」

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」

「そうだね、これでやっと重要な問題に集中出来る」

「うん! 先生のお陰だね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ! ありがとう、先生! この恩は一生忘れないから!」

 

 ……やっぱりか。

 

「いやいや~、皆が頑張った結果だよ。お疲れ様。それと、借金返済?」

「……あ! わわっ」

「そ、それは……」

 

 喋るつもりはなかったのだろう。黒見が『しまった』という顔をして口を塞ぐ。アヤネも言っていいのか、悪いのか判断に困っている。俺は隣にいる小鳥遊ホシノの方に目線だけを向け聞く。

 

「予想はしていた。けど、相変わらずか?」

「まーねー。でも今は後輩たちもいるし、私一人だったころと比べれば大分楽だよ」

「……」

 

 それは、その、まぁ、そうだろうな。小鳥遊ホシノから視線を外す。危なかった。彼女が声だけで返事してくれて助かった。もしこちらを向いて言われていたら立ち直れなかったかもしれない。いつか! いつかしっかりと腹を割って話さないといけないのはわかっているが! さすがにまだ覚悟ができていない。(アビドスに来てまだ初日)

 

「ちょ、ホシノ先輩!」

「良いんじゃない、セリカちゃん。隠すことじゃないし。それに彼は知っているから、先生に教えなくても彼から先生に伝わるよ」

「そ、そうだとしても、態々話すような事でもないし。代表が黙っておけば良いのよ!」

 

 そういってこちらに指を差しながら言う黒見。確かに、無暗に知られたくないなら黙っておいてやるが、多分もう手遅れだぞ。先生がもう真剣な目をしているし。

 

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー? それに、先生は私達を助けてくれた大人でしょー?」

「ホシノ先輩の言う通りだよ、セリカ。先生とグランは信頼していいと思う」

「そ、そりゃそうだけど! 先生だって、代表だって結局部外者だし!」

 

 部外者……。まぁ、そりゃそっか。俺と先生を置いて対策委員会の話し合いはどんどんヒートアップする。

 

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけれどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん? 悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー? れとも他に何か方法があるのかなー、セリカちゃん」

「う、うぅ……。で、でも、さっき来たばかりの大人でしょ! 今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」

 

 慟哭。まさにその表現が合う叫びだった。今までの苦労、苦悩、様々な感情が感じ取れる。確かにそうだった。このアビドスの住人達のほとんどはこの自治区が苦境に立たされても、力を貸してくれなかった。ただ、立ち去っていくだけだった。今更、先生のような大人が来ても信用するにはなにか切っ掛けが必要か。

 

「この学校の問題は、ずっと私達だけでどうにかしてきたじゃん! なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんてさ……。私は認めない!

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見てきます」

 

 黒見が勢いよく教室を飛び出していった。その後を十六夜が追いかけていった。黒見には少し時間が必要だな。今は何を言っても無意味だろう。

 

「えーと、簡単に説明すると……この学校、借金があるんだー。……まぁ、ありふれた話だけどさ」

「ど、どのくらい?」

「9億円くらい」

「……9億6235万円です。アビドス……いえ、私達『対策委員会』が返済しなくてはならない金額です。これが返済出来ないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。ですが、事実完済できる可能性は0%に近く……。殆どの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました……」

「そして私達だけが残った」

 

 シロコの言葉に二年前のアビドスの姿を思い出して俯く。

 

「学校が廃校の危機に追い詰められているのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、全てこの借金が原因なんです」

「どうしてそんなに借金をすることになったの?」

 

 先生が聞く。

 

「借金の理由ですか? それは……。数十年前、この学区の郊外の砂漠で砂嵐が起きました。この地域では以前から砂嵐が起きていたのですかが、その時の砂嵐は想像を絶する規模の砂嵐でした。学区の至るところが砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも、砂が溜まり続けてしまい、その自然災害を克服する為に、わが校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした。しかし、このような片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる銀行は中々見つからず……」

「黒い奴らを頼った。だろう?」

「……はい。最初のうちは、すぐに返済できる算段だったと思います。しかし砂嵐はその後も、毎年更に巨大な規模で発生し……学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられない程悪化の一途をたどりました。そして遂にアビドスの半分以上が砂漠に呑まれ、借金はみるみる膨れ上がっていきました」

「……」

「……」

「私達の力だけでは、毎月の利息を返済するだけで精一杯で……弾薬も補給品も、底をついてしまっているんです」

「セリカがあそこまで神経質になっているのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは先生、あなたが初めて」

「そうだったんだね……」ズビズビ

「!?」

 

 さっきから先生が俯いていると思ったら泣いた。この人ホント表情豊かだな。すぐ泣くし、よく笑う、私生活では酒買いまくってだらしないし、車酔いには弱いし。……でも戦闘指揮の時はバリバリに決まっててカッコいいし。……そしてこっちのこと(生徒のこと)もしっかり見ているんだよな。いつか刺されて腹に穴開くんじゃねぇか?

 

「まさか、泣いてくれるなんて思わなかったよ。でもそんなに悲しい話ばかりじゃないよ。先生のお陰でヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球出来る様になったてわけー。もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金の事は気にしないでいいからねー、話を聞いてくれるだけでも有難いし」

「そうだね、先生は十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」

「……この先生はそう言われても止まらんぞ。ほれティッシュ」

「うう……ズビッ。ありがと。私も対策委員会の一人として、一緒に頑張るよ。対策委員会のみんなを見捨てるなんてしないよ!」

 

 先生がティッシュで鼻をかんで立ち上がる。そして握りこぶしを掲げそう宣言する。先生ならそう言うと思っていた。

 

「それって……。はいっ!よろしくお願いします、先生!」

「へぇ、先生も変わり者だねー、こんな面倒な事に自分から首を突っ込もうなんて」

「良かった……。『シャーレ』が力になってくれるなんて。これで私達も希望を持って良いんですよね?」

 

 小鳥遊ホシノとアヤネが返事する。アヤネはこれからの状況が良くなっていくことを感じているのか、先ほどまでの思いつめた表情はなくなっていた。

 

「そうだね。希望が見えてくるかもしれない」

 

 シロコもそう続ける。小鳥遊ホシノも、アヤネも、シロコも、先生も、皆笑顔だ。いいなぁ、無邪気で。奇跡なんて起きっこないないだろ、先生。そんなものあるわけないじゃないか。あるのは実力から導かれる必然だけ、奇跡があるなら

 

なんであの人は死んだ

 




 君のせいだよ、グラン君。

評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。

グラン君はこの中の一人と知り合いです。さてどなた?

  • 海綿体
  • 昆布茶
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