シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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9話

◎・アビドス高校 対策委員会 教室・

 

 翌日、アビドスの校庭に止めたVBMR内で一晩過ごした俺は起きた後、部室棟のシャワーを借り、教室に入り黙々と散弾実包のリロードをしていた。

 

「……」

「……何かあるのか?」

 

 少し前から教室に入ってきたが中にいるのが俺だけだと知ると何も言わず対面に座った存在。

『十六夜ノノミ』に話しかける。

 

「水戸さんと会った時から、その名前を聞いたときから、ずっと気になっていたことがあるんです。それで昨日実家に連絡をしました」

「……やっぱりセイント・ネフティス社の令嬢だったか」

「はい。と、なるとやっぱりあなたはあの時の……」

 

 一度リロード器具を横にどかして十六夜と向き合う。そこには普段の朗らかな雰囲気がない真剣な表情をした彼女がいた。

 

「お前がここにいるのは罪滅ぼしか? 滅びゆくアビドス、起死回生を狙った鉄道事業。結果は逆に自治区外への移住が加速してしまい衰退に拍車をかけただけだった。その責任か? 負い目か?」

「それがなかったといえば嘘になります。でも今は心からこの学校が好きです。私はこの学校を守りたい。だから教えてください。既に廃れた鉄道事業、その路線と車庫の一部を買い取って『ODI ET AMO』は何を計画しているのでしょう。何を車庫の中で作っているんですか」

 

 鋭い視線を向けてくる十六夜。本当に昨日と同一人物なのかと驚きを隠せない。風貌は似ても似つかないがその纏う気配はかつての彼女(過去の小鳥遊ホシノ)を彷彿とさせる。

 

「くくくっ。小鳥遊ホシノも幸せだな」

「?」

「これほど学校を思ってくれる後輩がいるんだ。彼女も心強いだろう」

「話をそらさないで下さい!」

 

 一層険しくなる視線。

 

「何を作っているか、何を計画しているか、だったな。……秘密だ」

「……」

「なに、安心しろ。アビドスに危害を加えるつもりはこれっぽっちもない。少しだけ話すなら試運転だ」

「試運転?」

「話せるのはここまでだぞ。こっちにも機密事項があるからな……。まぁ、いつかは明らかになるだろうしそれまで待て」

 

 十六夜はあまり納得はしていない顔をしていた。それもそうだろう。結局知りたいことは殆どわからないままだし、危害を加えないという言葉を信用するべきか判断しかねているのだろう。

 

「んー、わかりました☆」

 

 まじか。

 

「自分でも結構『答えになってない』と思った返答をしたんだが良いのか」

「そう思っているならちゃんと返事をしてほしいんですけど、かまいません。私、『グラン先輩』のこと信じることにしました!」

「騙されているかもしれないぞ?」

「ふふ、そうかもしれません。けど、グラン先輩悪い人にはあんまり見えないんです。秘密はあるけど嘘はついていない。そんな目をする人を私は知っているので」

「……なるほどな。その気持ち裏切らないようにするよ、『ノノミ』」

「はい。お願いしますね」

 

 そういったところで教室のドアが開き、枕を抱えた小鳥遊ホシノが入ってきた。

 

「うへ~、おはよー。今日もいい天気だねー」

「ふふ」

「くく」

「おや? おじさん、なんか変?」

 

 小鳥遊ホシノは俺たち二人に笑われたことを疑問に思い。その場で自分の身だしなみなどを確認し始めた。その様子が面白くてまた笑いそうになる。そんなときふと全員の端末が通知を知らせる。画面を確認すると先生からの連絡だった。

 

『セリカのバイト先知らない?』

 

 なんで俺にも送ったし。

 

◎・アビドス 市街・

 

「いらっしゃいませ、柴関ラーメンです! 何名様ですか? 空いているお席にどうぞ! 三番テーブル、替え玉追加お願いします!」

 

 あの後、先生とシロコ、アヤネも学校に到着し、小鳥遊ホシノの案内でアビドスのまだ比較的活気のある市街エリアに来ていた。そこにある紫関ラーメン、そこで黒見はバイトをしているらしい。店内に入ると響き渡る黒見の声。このアビドスでこれほど客が来ているとは……相当おいしいらしい。

 

「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンで――「あの~☆6人なんですけど~!」わわっ!」

「ん、お疲れ」

「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」

「へー、セリカのバイト姿かわいー。ツインテ三角巾、新しい、惹かれるね」

「み、みんなに、先生まで。何でここに!?」

「セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん? だから来てみたの」

「ホシノ先輩かっ!」

 

 次々に現れる顔なじみに驚愕する黒見。……俺はあまりそうは思わないんだが、バイト先に知り合いが来るのってそんない恥ずかしいものなのか?

 

「アビドスの生徒さんか。 セリカちゃん、お喋りはそれくらいで、注文受けてくれな」

「あ、うぅ……はい、大将。それでは広い席にご案内します……。こちらへどうぞ」

 

 厨房から顔を覗かせたのは右眼に傷を持っているがたいの良い男性。どうやらこの店の大将らしい。大将にそういわれては仕方がないのか、黒見はしぶしぶといった様子で席に案内する。案内されたのは店の奥の方にあったコの字型の席だった。小鳥遊ホシノが一番奥の席に座り、隣に無理やり座らせれる。隣にノノミが座ってくる。小鳥遊ホシノの反対の隣にはアヤネとシロコが座る。

 

「はい、先生はこちらへ! 私の隣、空いています!」

「……ん、私の隣、空いている」

「んー……」

 

 シロコとノノミが同時に自身の隣に座るように先生を誘う。しかし先生はどちらに座ることもなく、腕を組み何かを考えこむ。

 

「先生何をしている?」

「いや、どちらに座るべきかと思って」

「……」

 

 あっそうですか。

 

「シロコの隣……ノノミの隣……。どっちも……いや、でも」

 

 なかなか決まらない先生の席。はぁ、仕方がない。

 

「先生は小鳥遊ホシノのところに座れ、それで隣にシロコとノノミが行けばいい。構わないか?」

「そうですね、それが一番良い解決法でしょうし」

「おじさんもおっけー」

 

 そういうことでそれぞれが席を移動した。……先生がシロコとノノミのサンドイッチに挟まれて幸せそうにしている。前から薄々思ってはいたんだが、先生は多分女好きだよな。

 

「セリカちゃん。バイトのユニフォーム、とっても可愛いです☆」

「いやぁー、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」

「ち、違うって! 関係ないし! ここは行きつけの御店だったし……」

「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけばひと儲けできそうだねー。……どう? 一枚買わない、先生?」

「欲しい! というか、撮らせて!」

 

 どこからか一眼レフを取り出した先生。どっから出した。店に入ったときにも言っていたが先生はこのバイト姿の黒見が大分お気に入りのようで、どうにか写真を撮ろうとしている。黒見のほうはその撮影から逃れようとメニュー表でうまく顔などを隠している。

 

「おいおい、先生さんよ、うちは従業員の撮影会はしていないぜ」

「うっ、……残念」

 

 少しした後に大将からの声がかかり先生も諦めたようだ。

 

「バイトはいつから始めたの?」

「い、一週間ぐらい前から……」

「そうだったんですね☆時々姿を消していたのはバイトだったという事ですか!」

「も、もう良いでしょう! ご注文は決まったの!?」

 

 ノノミの笑顔に耐えきれなくなったのだろう。メニュー表で口元を隠しながら顔を横に向けてしまった。 

 

「『ご注文はお決まりですか』でしょー? セリカちゃーん、お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃー」

「あうう……ご、ご注文は、お決まりですか……」

 

 小鳥遊ホシノ……。やっぱり昔の君とはだいぶ変わった。……嫌だなぁ、こんな形で再認識するの。まるで酔っ払いおやじのように、黒見に絡む小鳥遊ホシノを見ながら過去の彼女を思い出して意識を保とうと、奮起する。……そういえば今はないけど肘にサポーターを着けてたな。

 

「私は、チャーシュー麵をお願いします!」

「私は塩」

「えっと……私は味噌で……」

「私はねー、特製味噌ラーメン! 炙りチャーシュートッピングで! 先生も遠慮しないでジャンジャン頼んでねー。このお店めちゃくちゃ美味しいんだよー。アビドス名物、柴関ラーメン!」

「えー、それじゃあ、醤油ラーメン。トッピングに味玉、コーンで!」

「俺は醤油ラーメン小。トッピングにメンマ、メンマ、メンマで」

「「「「「「……」」」」」」

「何だ」

 

 俺の注文後になぜか周りの視線が集中する。……何かおかしいことでもあったか?

 

「そーいえば加工食品好きだったよね、君。カニカマとかピクルスとか」

「……ところで、みんなお金は大丈夫なの? もしかして、またノノミ先輩に奢って貰うつもり?」

「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら限度額までまだ余裕ありますし」

 

 キヴォトスゴールドエキスプレスカード!? 本物なのか……。令嬢だとは知っていたが、よもやここまでとは。

 

「いやいや、また御馳走になる訳にはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね、先生?」

「え。初耳……」

「初耳? あはは、今聞いたから良いでしょ!」

「……じゃ!」

 

 先生がスッと立ち上がり店の外に向かおうとするが、先生がいるのはコの字型の一番奥。逃れられるわけもなく、すぐに捕まった。シロコとノノミに抑えられた先生の懐に小鳥遊ホシノが手を伸ばす。

 

「うへ~、大人のカードがあるじゃん。これは出番だねー!」

「大人のカードを使うような場所でもなさそうですが……。先輩、最初からこうするつもりで、私たちをご飯に誘ってくれたんですね」

「へへへ、先生としてはかわいい生徒たちの空腹を満たしている絶好のチャンスじゃーん?」

 

 う、うーむ……、凄い理論だ。しかし先生は本当に払えるのか?いざとなったら俺が払っておくか……。ん? ノノミが何かを先生に耳打ちしている? よくわからんが先生は拒否したな。ノノミがカードでも渡したか? それを先生は拒否したわけか。ふふふ、流石に体面が悪すぎるものな。まぁ、この人のことだ結局は生徒にご飯を奢ってあげる事が、生徒の笑顔が大好きなんだ、この先生は。

 

 




ちなみに腹の半分に傷を負った後遺症で主人公君は小食です。メンマおいしいよね。

おら、性癖展開!

 7話のあとがきでも語っていますが、ホシノは既に過去の事を乗り越えている、と考えています。ただ、後輩たちの為に良い先輩であろうと努力している。その結果が自分にとって良い先輩だったユメ先輩の真似をすることだったんですね。あぁ~、そんなホシノに後輩たちの前で取り乱してほしい! ユメ先輩の真似なんて忘れてただ一人の人間『小鳥遊ホシノ』として感情のまま泣き叫んでほしい! 対策委員会の面々も初めて見るホシノの姿に呆然としてほしい! ホシノにはいくらでも曇って欲しいし、いくらでも涙を流してほしい。ホシノが執着したもの、愛したもの、興味を引いたものすべて壊してやりたい! それで俺だけ、俺だけが、ホシノの憎しみの対象になって、俺がホシノにとって最後に執着するものになるんだ。ホシノはもちろん俺をこちらを殺しに来る。でもホシノは殺せないんだ。なんだって自分にとっての最後の『執着』という意味あるものだから。俺もいなくなったらホシノは本当にすべてを失ってしまうから。憎しみだとしても何かしらにも意味を見出せない人生なんて怖いもんね。…・・・そんなホシノの前で自殺してぇ~。ホシノはなぜかこちらを助けようとしてくれるんだ。

『おい! 死ぬな! お前は私がッ! 私が殺さなきゃ意味がないんだ!』

てね。殺せもしない癖に口ではそういうんだね。あーあー、介抱さえ、意味なく死んじゃった。憎む相手も、大切だったものも、全部なくなっちゃった。ホシノのこれからの人生何に意味あんの? 遺品すら壊されて何もなくなった部屋で呆然としているホシノ可愛いね。

 

グラン君はこの中の一人と知り合いです。さてどなた?

  • 海綿体
  • 昆布茶
  • ゴリラ
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