◎・ アビドス市街 ・
「いやぁ~! ゴチでした先生―!」
「御馳走様でした☆」
「ん、お陰様でお腹いっぱい」
「うまかったな。ありがとう先生」
食事を終え、店を出る。紫関ラーメンか、上手かった。本当においしかった。味、良し。値段、良し。立地……。通うには少し遠いんだよなー。……月一……月二ぐらいなら通うか。店の方を振り向くと黒見がこちらを睨みつけていた。
「早く出てって! 二度と来ないで! 仕事の邪魔だから! 良い!?」
「月三ぐらいで通うぞ」
「一人で来なさいよ! みんなを誘うんじゃないわよ!」
「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……」
「ホント嫌い! 皆死んじゃえー!」
「あはは、元気そうで何よりだー」
「それじゃあ、みんな帰ろっか!」
そう先生が言って解散した。ん? 今日何もしてないな。……まぁ、そういう日がたまにはあっても良いか。……昨日とか凄く忙しかったし。
◎・ アビドス市街 夜 ・
「お疲れ様でしたー!」
挨拶をして店からでる。セリカはバイトを終え、帰ろうとしていた。外は日が落ち、すっかり暗くなっている。帰り道を歩きながら今日の事を思い返すセリカ。
「はぁ……やっと終わった。目まぐるしい一日だったわ。皆で来るなんて……騒がしいったらありゃしない。人が働いているってのに、先生先生って、チヤホヤしちゃって。ホント迷惑、何なのアレ」
いまだ先生を認めていないセリカにとって今日の先生のしつこさは中々答えるものがあったのだろう。足音を心なしか力強い。
「……ふざけないで、私がそう簡単に絆されると思ったら、大間違いなんだから」
そういって歩くセリカの背を何者かが見つめていた。
「………」
「あいつか?」
「はい、そうです。アビドス対策委員会のメンバーです」
「準備はいいか? 次のブロックで捕獲するだ」
◎・ アビドス市街 夜 少し後 ・
「ふう。……そう云えば、この辺も結構人がいなくなったなぁ、前はここまで静かじゃなかったのに。治安も悪くなったみたいだし……」
セリカはアルバイトの帰り道、マンション街に入る。セリカは電気のついていないマンションを見上げてつぶやく。セリカは空を見上げて溜息をつく。周りのビルなどに電気がついていないため、星空が良く見えた。それが良いことか、悪いことかはセリカに判断できなかった。
「このままじゃ駄目だ。私達が頑張らないと……そして学校を立て直さないと……。とりあえずバイト代が入ったら、利息の返済にあてて……」
続きの言葉が紡がれることはなかった。なぜならセリカの前に特徴的なヘルメットをかぶった不良たちが多数出現したからだ。
「黒見セリカ……だな?」
「カタカタヘルメット団! ……あんた達、まだこの辺うろついてんの? でも丁度良かった、虫の居所が悪かったのよ。二度とこの辺りに足を踏み入れられない様にしてやるわッ!」
セリカは愛銃を構え、今、正に飛び掛からんとする勢いと気迫だ。性格に狙いをつけセリカはトリガーを引こうとしたが―――
ダダダダダダダッ
「く、ううっ!」
セリカの背後の廃墟から銃弾が殺到した。その時セリカは最初から自身が目標で待ち伏せされていたこちを悟った。 廃墟の町に何度も銃声が響く。その度にセリカの体に傷がついて行く。そうして動きが鈍る。するとヘルメット団のリーダーであろう生徒がどこかに無線機で話しかける。
『捕らえろ』
―――シューーーーードドドドドーーーーーン
銃声の代わりに砲撃音が当たりに響き渡る。吹き飛ばされるセリカ。彼女は薄れゆく意識の中で少しでも抵抗しようとしていたが、虚しく崩れ落ちた。
「……続けますか?」
「いや、生かさなければ意味がない。回収しろ、ランデブーポイントに向かうぞ」
◎・アビドス高校 校庭 夜・
「……」
校庭のVBMRで『ODI ET AMO』の書類を片付ける。……先生もアビドスのホテル内でシャーレの仕事を片付けていることだろう。……しかし、アビドスへ行くというのにリュックに補給物資と仕事の書類しか入っていなかったことに気が付いたときは驚いたな……。水筒、財布、シッテムの箱はスーツのぼっけに入れていたとはいえ、砂漠を舐めすぎだろう、あの人。下手したらレッドウィンターにもあの恰好と装備で向かいかねん、一度各学園の地理的特徴と各気候に対応した衣服、装備講習でも開くか……。まだレッドウィンターからの依頼は来ていないが、あの書記長のことだいつか問題が起きるだろう。そんなことを考えていると不意に通信機がなる。画面を見るとアヤネの名前があった。
「もしも『グランさんっ! セリカちゃんがっ! セリカちゃんがいなくなっちゃったんです!』アヤネ、今どこにいる? 周囲を警戒してそこから絶対に動くな。先生や他の対策委員会にも連絡を入れろ。誰かに連絡し続けろ、良いな」
VBMRの後部から運転席にすぐさま移動する。エンジンを駆けて一機に急加速する。アヤネは現在黒見の家にいるらしい。メールで住所が送られてきた。……案外いいところ住んでんなぁ!? まぁ、そもそもアビドスには人が少ないからいい部屋も安く余ってる状態なんだがな。急ぐか……。
「アヤネ!」
「グランさんっ!」
数分後、黒見の住むマンションの部屋についた。部屋に声をかけると中から、アヤネが飛び出してきた。手には愛銃、コモンセンスをもって少し震えていた。肌寒い深夜、消えた親友、よぎる最悪の考え、今のアヤネは精神的にかなり動揺している。その証拠にいまだに銃を抱えていてトリガーに指がかかったままだった。手も震えているせいで間違ってトリガー引きそうで心配だ。
「……落ち着けアヤネ」
「ぁ」
ヘルメット団の前哨基地を襲撃したときに先生にされたように左手で銃を下に向けさせる。その後、左手でアヤネの銃を握りしめる右手をほぐして銃から手を離させる。変わりに左手でしっかりとアヤネの右手を握り、右腕をアヤネの背中に腕を回し抱きしめる。……大分効果はあったのか、震えが止まり顔を覗き込めば目の焦点も合ってき……顔が赤くなってきたな。
「正気になったな」
「……はい」
体を放してその場にしゃがみ込むアヤネ。顔は見えないが、耳が真っ赤になっているのが見える。―――ッ!? 殺気!? この感じは小鳥遊ホシノ!? どこからか見てるのか? あたりを見回すが周りに小鳥遊ホシノはともかく、人っ子一人いない。……遠距離から察知して殺気を送ってきたというのか……。
「他の奴らは?」
「みんな学校に集まっていってるようです」
「向かうぞ」
黒見の部屋を出て、VBMRに乗り込む。アビドス高校に向けて車を走らせる。車内でアヤネと話しをする。
「一応の確認なんだが、電話もつながらないんだよな?」
「……はい。でも数時間前から電源が入っていないみたいで。今先生とホシノ先輩が調べているようです」
「なるほど」
すると車内の通信装置に連絡が入った。
『アヤネちゃーん、代表くん、聞こえてる―?』
「ホシノ先輩!」
通信機に連絡を入れてきたのは小鳥遊ホシノだった。後ろの方を見れば黒見とアヤネ以外の対策委員会のメンツと先生がいた。
『今、先生が持ってる権限を使って、連邦生徒会が管理するセントラルネットワークにアクセスしてきたよ』
「セントラルネットワーク……先生そんな権限まで」
「おい、先生。俺は始末書書くの手伝わないからな!」
『ええっ!』
当たり前だ。連邦生徒会のセントラルネットワークなんて、いくらシャーレでも申請なしでアクセスできるわけないし、こんな短時間で申請が通る訳ない。つまり、先生は黙ってセントラルネットワークを利用してきたということだ。絶対後でリンに怒られる。悪いが、俺はそんなのは御免だからな。
『これが連絡が途絶える直前のセリカちゃんの端末の場所、ここだったよー』
『砂漠化が進んでいる市街地の端の方なんです』
『ん、住民もいないし、廃墟しかないエリア。治安が維持できなくて、チンピラがいっぱい』
画面にどんどん対策委員会のメンツが寄ってきて小鳥遊ホシノが見えなくなっていった。奥の方から『うへ~』と聞こえた。画面に映った地図を見る。
「このエリア、以前危険要素分析をした際に、カタカタヘルメット団の主力が集まっていると確認出来た場所です。……やはりカタカタヘルメット団の仕業」
『なるほどねー、帰宅途中のセリカちゃんを拉致して、自分たちのアジトに連れて行ったってことだ』
『学校を襲うのが難しくなったから人質をとったってことかな』
……線路があるな、よし。
「先生、黒見を助けに行くんだろ?」
『当たり前だよ』
「集合場所を変更だ」
『へ?』
ハンドルを切る。横からアヤネの驚いた声が聞こえる。すまない。行先を変更しながら別の端末である場所に連絡する。
「ノノミ、こんなに早く来るとは思わなかったが約束のものを見せてやるよ」
『ホントですか☆』
『ん?』
『なになに?』
『グラン、任せてもいい?』
「任せろ。黒見セリカは絶対助ける」
あの時は見捨てたのにセリカちゃんの時は助けるんだ
評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。
グラン君はこの中の一人と知り合いです。さてどなた?
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海綿体
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昆布茶
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ゴリラ