◎・アビドス 郊外 ・
「う、うーん……。へ?」
セリカは揺れを感じて意識を取り戻した。薄目を開くと見えたのは知らない天井。その天井を見つめつつ、記憶をさかのぼる。そうして自分がどうなったのを思い出す。
「こ、ここは! そうだ、私攫われた!―――くっ……あ、頭が」
立ち上がろうとするが両手は後ろで縛られており、いまだダメージが残る体では立ち上がることは難しかった。それでもできることをしようと周囲の把握に努める。
「ここ……トラックの荷台。……ヘルメット団め、私をどこに連れていくつもりよ。……暗い、けど。あの隙間から外が見れそうね」
揺れる荷台に苦戦しながら足だけで立ち上がる。肩を壁にこすりつけながら荷台の隙間に顔を近づけて外の様子を確認する。
「……砂漠……線路!? 線路がある場所って……ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」
一面の砂、点々と見える廃墟。砂に埋もれかけている線路。それを見て、少し考えこむ、そして自身が今どの地点にいるのかを理解して顔を青ざめさせる。
「……そ、そんな。ここからじゃ、どこにも連絡が取れない! もし脱出したとしても、対策委員会の皆にどうやって知らせれば……。どうしよ、みんな心配しているだろうな……」
愛銃もなく、連絡手段もなく、両手も拘束されている。セリカはどうにか脱出しようと色々な手を考えるがどれもこれも、難易度が高い、ましてや疲労しきっているこの体ではまた意識を奪われるだけだろう。脱出も難しいが、仮に脱出したとしてもこのあたりの通信設備はすべて死んでいる。助けも呼べずに嬲られるだけだろう。
どれだけ考えてもいい結果は見えず、最悪の結末しか思い浮かばない。そうしているうちに施行はどんどんネガティブな方向に沈み込んでいく。
「……このまま何処かに埋められちゃうのかな。誰にも気付かれない様に……。連絡も途絶えて……私も他の子達みたいに、街を去ったと思われるんだろうな……裏切ったって……思われるのかな。誤解されたまま、皆に会えないまま死ぬなんて……」
『死』その一言を口にしたとたん体集に寒気が走る。立っていられずたまらずへたり込んでしまうセリカ。そのまま縮こまってしまう。さらに思考はネガティブに傾き、動けなくなってしまう。それでも涙を流さないのは彼女の最後の意地だろうか。
「う、う、ぐぅ……! うっ、ううっ……」
ドガァァァァァァーーーーーーン
「う、うわあああっ!?」
巨大な爆音と衝撃。トラックが吹き飛んだのかセリカの体が浮遊感に一瞬包まれ。落ちる。あちこちに体をぶつけながらセリカは荷台の中を転がる。少しして、セリカは立ち上がる。幸か不幸か先ほどの衝撃で両手の拘束が外れたらしい。せき込みながら周囲を確認する。するといつの間にか外に吹き飛ばされたのか、トラックの荷台から脱出していた。トラックの方を見れば派手に壊れていた。荷台のドアも吹き飛んでいた。そこから外に放り出されたのだろう、やわらかい砂のお陰で怪我も少なく済んだ。
「カハッ、ケホッ! ケホッ……。な、何っ!? 爆発!? トラックが爆発した!?」
『セリカちゃん発見! 生存確認しました!』
「あっ、アヤネちゃん?!」
「こちらも確認した、半泣きのセリカ発見!」
「!?」
一機のドローンとシロコがセリカの前に現れた。シロコに涙目の事を指摘されたセリカは一瞬で顔を赤くする。少し遅れてホシノとノノミも到着する。
「なにぃ~!? うちの可愛いセリカちゃんが泣いていただと! そんなに寂しかったの? ママが悪かったわ、ごめんねー!」
「う、うわああぁあ!? う、うるさいっ! 泣いてなんか!」
「嘘! この目でしっかり見た!」
「泣かないで下さい、セリカちゃん! 私達が、その涙を拭いて差し上げますから!」
急いで涙をふくセリカ。そんな彼女たちの前に轟音が聞こえる。
「な、今度は何!?」
「ん~、これは警戒しなくていいよ~」
「はい☆とっても頼もしい味方です」
「ん、セリカ。あっち」
「シロコ先輩……? ……なにあれ」
シロコに視線誘導され、その方向を見れば見慣れない黒い列車が線路の砂を吹き飛ばしながら接近していた。その列車をよく見れば先生とアヤネがこちらに手を振っていた。その列車はセリカたちの前で停車した。アヤネと先生が列車から降りてくる。そして列車のスピーカーからグランの声が聞こえる。
『黒見、無事か!? 思った以上に主砲が高威力で地面を撃ったはずなのにトラックが吹き飛んだときは肝を冷やしたぞ!』
「……ええっ! 無事よ! 派手に吹き飛んだから体中ぶつけたし、砂まみれになったけどね! クリーニング代請求してやるんだから、覚え時なさい!」
『元気そうでなによりだ』
「というか、何よこの列車!」
セリカは目の前の列車に蹴りを叩き込みながら質問する。
『これか?これはEZ-06 ARGUS。うちの高層区エリアで運用予定の装甲列車だ。このアビドスの廃線を買い取って試運転をしていたのを持ってきた』
「やることが派手ねぇ」
「私も驚きました~☆」
「車より揺れなくて助かったよ」
「というか、先生まで!? どうやってここまで来たの!?」
「攫われたお姫様を助けるのは勇者の役目!」
先生がそう言い放ってセリカを抱きしめる。
「ば、ば、バッカじゃないの!? だ、誰がお姫様よ!! 冗談やめて!! ぶん殴られたいの!?」
「うへ、元気そうじゃん。無事確保ー!」
「ん、セリカの銃見つけた」
「あ、ありがとうございます。シロコ先輩」
「まだ油断は禁物。トラックは制圧したけど、ここはまだ敵陣のど真ん中だから」
シロコがセリカに銃を渡しながら、みんなの気を引き締める。ホシノはシロコの言葉に同意して、戦闘準備を始める。
「だねー。人質を乗せた車両が破壊されたって知ったら、敵さん怒り狂って攻撃してくるよー」
「前方にカタカタヘルメット団の兵力、多数確認!! さらに巨大な重火器も多数確認しました! 徐々に包囲網を構築しています!」
「敵ながらあっぱれ……それじゃー、せっかくだから包囲網を突破して帰りますかねー。頼んだよ、代表くん」
『了解。全員貨物車両に乗れ。そこから外に向かって攻撃してくれ』
「……気を付けて、奴ら、改造した重戦車を持っているわよ。……気を付ける必要あるかしら?」
「知ってる、Flak41改良型」
対策委員会と先生たちが貨物車両に乗り込みながらそう言う。
「確かに、向こうは戦車一両に対してこっちはこの列車だもんね。でも油断はしないで、アビドス出撃!」
「「「「「了解」」」」」
轟音を響かせ、装甲列車が動き出す。
『戦車程度でこのEZ-06 ARGUSを止められると思うなよ。攻撃開始!』
グランの言葉で装甲列車の武装が稼働し始めてカタカタヘルメット団を攻撃し始める。その様子を貨物車両から眺める面々。
「いやー、楽だねー」
「ん、たまに突破できた奴を撃つだけ」
「それにこっちに着くころにはヘトヘトですから簡単なお仕事です☆」
「はははっ、良いザマよ!」
「セリカちゃん、顔が……」
「あ、あんまり怪我させないで上げてね」
先ほどまでの憂さ晴らしをするかのように銃を乱射するセリカ。その表情を見て、若干引くアヤネ、カタカタヘルメット団の方が心配になってしまう先生。
「黒見セリカさんですね」
「え、そ、そうだけど。貴方は?」
「私はキッド2。『ODI ET AMO』で医療部門のトップを任されています」
貨物車両内に現れた白いナース服を着て、小さい角と細い尻尾がある生徒。
「黒見セリカさん、診察をいたしますのでこちらへ」
「い、いや大丈夫よ。大丈夫! ほらこんなにピンピンしてる!」
セリカはまるでラジオ体操のような動きをして自身の無事をアピールするセリカ。しかしキッド2はそれを見ても納得せず、セリカの腕をつかむ。
「駄目です! 見かけは無事でもダメージが溜まっています! それに今はアドレナリンで痛みを感じていないだけです!!」
「ちょ、ちょっと!」
引きずられて別車両に連れていかれるセリカ。
「まぁ、治療受けておいた方がいいよね~」
「ちゃんと検査受けてくださいね☆」
「ん」
「こっちは任せてね、セリカちゃん」
◎・アビドス高校 対策委員会 教室・
「皆さん、お疲れ様でした。セリカちゃんも怪我がなくて良かったです」
「私が保健室に連れていく」
砂漠での包囲網突破線は装甲列車のお陰で割りと簡単に成功した。黒見も列車内でキッド2に治療うけたようで今はぐっすり眠っている。そんな黒見をシロコは保健室に連れて行った。
「うんうん、ゆっくり休ませてあげよー」
「大変なことになるところですか。先生とグランさんがいなかったら……」
「先生のお陰でセリカちゃんの居場所を見つけられましたし、グラン先輩の列車で救出作戦もスムーズに進みました」
「へへへー、先生頑張っちゃいました!」
「実戦データも取れたし、無事でよかった」
先生が鼻の下を擦りながらどや顔をする。しっかし、無事でよかった。本当に。……ん?
「アヤネそれは?」
「これは戦闘中にドローンを使って回収した戦車の部品です。確認したところ、キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種と判明しました。もうすこし調べる必要はありますが……ヘルメット団は、自分たちでは入手できない武器まで保有しています」
いつのまに回収していたのか……。やっぱこの対策委員会ってかなり高レベルの人材が集まっているよな……。
「この部品の流通ルートを分析すれば、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せますね!」
「はい。ただのチンピラがなぜここまで執拗に私たちの学校を狙っているのかも、明らかになるかもしれません」
「じゃあ、じっくり調べてみよっかー」
キッド2 『白羽ムイ』白いナース服をいつも着ている。薄桃色のローツインの髪型。小さい角と細い尻尾がある。元救急医学部。グランの最初の部下であり、キッドの中でグランの過去と内心の荒れ具合を知っている唯一の存在。ブラッドマーケットに入ったばかりで実力が通じず腹が吹き飛んだグランを救護したのが出会いの始まり。その後何度もグランを救護しているうちに彼に惹かれブラックマーケット入り、彼の部下になった。ちなみに彼の血を私的にコレクションしている。武器はUST-31 PHOENIX
EZ-06 ARGUS いくつもの車両が連結した兵器で、強固な装甲、巨大な砲台を併せ持つ。本来、高層区の防衛兵器として運用予定。試運転の場としてアビドスの廃線をセイント・ネフティス社から買い取り試験中だったものを今回は使った。砂漠地帯のアビドスを走るため先頭車両下部に線路の砂を飛ばす用のエアー噴出孔が取り付けられている。
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
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看板娘
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任侠娘
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眠り姫
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大和撫子
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カードバトラー
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陰陽部のアイドル
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キヴォトス最高の忍者