◎・アビドス 紫関ラーメン・
「いやぁー、悪かったってば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」
「怒っていません……」
グランを除いた先生と対策委員会の面々は紫関ラーメンで食事をしていた。
「はい、お口拭いて。はい、良く出来ましたねー☆」
「赤ちゃんじゃありませんっ!」
怒り心頭のアヤネは対策委員会の面々にとってかなり恐ろしいらしく、両隣のホシノとノノミが機嫌を取ろうと努力している。ただその努力も虚しく、アヤネの機嫌は直りそうにない。
「……なんでも良いんだけれどさ、なんでまたウチに来たの」
そんな様子を呆れた目で見ながらバイトをするセリカ。
「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」
「ふぁい」
シロコからチャーシューを受け取りモゴモゴと打減るアヤネ。アヤネはチャーシューを食べ終わった後、水を一口飲んで、一息つく。
「グランさん、大丈夫でしょうか?」
「キレ―に顎に決まってたねー」
「あー、不幸な事故だったわ」
「いや先生、グラン死んでないから」
ホシノと先生が遠い目をしながら先ほどの光景を思い出す。アヤネが吹き飛ばした机は見事にグランの顎を直撃し、脳を揺らした。グランは一瞬で意識を手放し、教室で崩れ落ちることとなった。セリカはまるでグランが遠くへ行ってしまった人のように語る二人に突っ込みを入れる。
「ん、保健室に寝かしておいたし大丈夫」
「いやー、アヤネちゃん。『ODI ET AMO』のボスを倒しちゃうとは、将来はブラックマーケットのボスかな~」
「やめてください……」
その時の事を思い出したのか、顔を赤くして縮こまるアヤネ。
ガタッ、ガラララララ
「あ…あのぅ……」
そうして話していると誰かが入店したのか扉があく音がする。セリカがそちらを確認すると、軍服のような恰好をした紫髪の少女がいた。すぐにセリカはその少女の近くにいって接客をする。
「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「……こ、ここで一番安いメニューって、お、御幾らですか?」
「えっと、一番安いのは……580円の柴関ラーメンです! 看板メニューなんで、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
ガララッ
「ん?」
それを聞いた少女は店を出ていった。その様子をセリカは不振に思い首を傾げる。するとすぐ再び扉が開いて先ほどの少女が幾人かを引き連れて入ってきた。
「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるのよ。全て想定内だわ」
「そ、そうでしたか、流石社長、何でもご存知ですね……」
「はぁ……」
一番派手な格好をした生徒が自信ありげに喋っているが、後ろの白黒髪の子が気だるげにしているのと、最初の小柄の子がやっと見つけた、と言っているあたり、その自信が正しいものかは明白である。
「4名様ですか? お席にご案内しますね」
「んーん、どうせ1杯しか頼まないし大丈夫」
「一杯だけ?でも……どうせならゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いている席も多いですし」
「おー、親切な店員さんだね! ありがとう、それじゃお言葉に甘えて。あ、わがままついでに、箸は4膳でよろしく。優しいバイトちゃん」
「えっ? 4膳ですか? ま、まさか1杯を4人で分け合うつもり?」
小柄な子の言葉にセリカが驚きの声を上げた。その声に驚いたのだろうか、一番最初の少女が頭を下げて謝りはじめた。
「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!! お金がなくてすみません!」
「あ、い、いや……! その、別にそう謝らなくても……」
「いいえ! お金がないのは首が無いのも同じ! 生きる資格何てないんです。虫けらにも劣る存在なのです! 虫けら以下ですみません……」
「はぁ……ちょっと声でかいよハルカ、周りに迷惑」
ハルカと呼ばれた少女はこのようにネガティブに囚われることが良くあるのだろう。白黒髪の少女がハルカを連れて行こうとする。その手をセリカが止める。
「そんな! お金が無いのは罪じゃないよ! 胸を張ってッ!」
「へ? ……はい!?」
「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし! それでも小銭を搔き集めて食べに来てくれたんでしょ!? そういうのが大事なんだよ! もう少し待っていてね。直ぐに持ってくるから!」
そういって、セリカは厨房に向かっていった。
「……何か妙な勘違いをされてるみたいだけど?」
「まぁ、私達もいつもそんなに貧乏って訳じゃないんだけどね、強いて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」
「『アルちゃん』じゃなくて社長でしょ? ムツキ室長、肩書はちゃんと付けてよ」
「ん? だってもう仕事終わった後じゃん? ところで、社長の癖に社員にラーメン一杯奢れない何てどうなの?」
「……うっ」
「今日の襲撃任務に投入する人員雇う為に、ほぼ全財産使っちゃったし……」
小柄な少女、ムツキが社長と呼ばれた少女、アルに笑顔でグサグサと言葉のナイフを突き立てる。アルは苦し気に声を上げる。
「ふふふ。でもこうして実際ラーメンは口にできるわけでしょう? これも想定内よ」
「たった一杯分じゃん。せめて4杯分のお金は確保しておこうよ……」
「ぶっちゃけ、忘れていたんでしょ? ねぇ、アルちゃん、夕食代取っておくの忘れていたんでしょ?」
「……ふふふ」
二人からの追求に表情を硬くしたまま笑うアル。彼女たちの間に微妙な空気が流れる。
「はぁ。ま、リスクは減らせた方が良いし、今回のターゲットは、ヘルメット団みたいなザコみたいに扱えないってことは同意する。でも全財産を叩いて人を雇わなきゃいけない程、アビドスは危険な連中なの?」
「それは……」
「多分、アルちゃんも良く分かってないと思うよ。だからビビッていっぱい雇っているんだよ」
そういうムツキの言葉に反応して、アルはテーブルを手でたたきながら立ち上がって宣言する。
「誰がビビっているって!? 全部私の想定内! 失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して臨むわ。それが我が便利屋68のモットーよ!」
「初耳だね、そんなモットー」
「今思いついたに決まっているよ」
「うるさい! なら今回の依頼を成功させて報酬が手に入ったら、すき焼きよ! だから気合を入れなさい、皆!」
「すっ……すき焼きとは!? それは一体?」
「大人の食べ物だね、すごく高価な……」
「う、うわぁ……私なんかが食べて良い物なのでしょうか? やっぱり、食べた後は腹切りですか?」
「ふふふ、うちみたいな凄い会社の社員なら、それ位贅沢はしないとね」
未だ見ぬすき焼きに目を輝かせるハルカ。まるで悪役令嬢のような表情で笑う。
「はい、お待たせしました! お熱いのでお気をつけて!」
アルが宣言し周りの面々も盛り上がっていると、セリカがラーメンを持ってきた。テーブル中央に置かれたラーメンは全員が驚くほど、大盛だった。
「ひぇ、何これ!? ラーメン超大盛じゃん!」
「ざっと、10人前はあるね……」
「こ、これはオーダーミスなのでは? こんなの食べるお金、ありませんよぅ……」
「いやいや、これで会っていますって。580円の柴関ラーメン並! ですよね、大将!」
「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ、気にしないでくれ」
大将はそういって爽やかな笑顔で親指を立てていた。
「大将もああ云っているんだから、遠慮しないで! それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」
「う、うわぁ……」
「良く分からないけど、ラッキー! いっただきまーす!」
「……ふふふ、さすがにこれは想定外だったけれど、厚意に甘えて、有難く頂きましょう」
「食べよっ!」
セリカがテーブルから離れたあと、全員が小皿にとりわけ、ラーメンを口に運ぶ。
「!!」
「お、おいしいっ!」
「なかなかイケるじゃん? こんな辺鄙な場所なのに、こんなクオリティなんて!」
それぞれが感動したようだ。白黒髪の少女も声には出していないが、驚いた表情をしており口角が上がっていた。
「でしょう、でしょう? 美味しいでしょう?」
「あれ……? 隣の席の……」
ノノミが身を乗り出し、隣の席のムツキに話しかけていった。
「うんうん、此処のラーメンは本当に最高なんです。遠くから態々来るお客さんもいるんですよ」
「えぇ、分かるわ。色々な場所で色なのを食べたけれど、このレベルのラーメンは中々お目に掛かれないもの」
ノノミの言葉にアルも賛同する。徐々に打ち解けていったのか、謎の少女たちと対策委員会の交流が始まった。
「えへへ……私達、此処の常連なんです、他の学校の生徒さんに食べて頂けるなんて、何だか嬉しいです……」
「その制服、ゲヘナ? 遠くから来たんだね」
「私、こういう光景を見た事があります、一杯のラーメン、でしたっけ……」
「うへ~、それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」
「うふふふっ!良いわ。こんな所で気の合う人達に会えるなんて、これは想定外だけれど、こういう予測できない出来事こそ、人生の醍醐味じゃないかしら!」
アルはそういって対策委員会の面々と交流を続ける。そんな様子を見ながら、何かを小声で話しているムツキと白黒髪の少女がいた……。
主人公? 伸びて駄目になってるよ(ラーメンだけに)
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
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看板娘
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任侠娘
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眠り姫
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大和撫子
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カードバトラー
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陰陽部のアイドル
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キヴォトス最高の忍者