◎・紫関ラーメン 店前・
「それじゃあ、気を付けてね!」
「お仕事、上手く行きますように!」
「あははっ! 了解! あなた達も学校の復興、頑張ってね! 私も応援しているから! じゃあね!」
紫関ラーメンを出て、対策委員会と握手をして別れるアル。彼女は対策委員会の姿が見えなくなるまで手を振っていた。そして対策委員会が見えなくなると、やっと手を下ろした。
「ふう……良い人達だったわね」
そう満足げにつぶやく、アル。
「社長。……あの子たちの制服、気付いた?」
「えっ、制服? 何?」
「アビドスだよ、あいつら」
「ななな、なっ、何ですってーーーー!?」
「あははは、その反応ウケる~」
「はぁ……本当に全然気づいていなかったのか」
「……えっ! そ、それって私達のターゲットって事ですよね? わ、私が始末してきましょうか!?」
「あははは、遅い、遅い。どうせもうちょっとしたら攻撃を仕掛けるんだし、その時暴れよ、ハルカちゃん」
驚愕の声を上げるアル。その様子を見て呆れる白黒髪の少女こと、カヨコ。笑い声をあげるムツキ、混乱しながらも己の武器を構えだすハルカ。アルは体を震わせながら気の合う友人が倒さなければいけない相手という事実に打ちひしがれていた。
「う、嘘でしょ……あの子たちが? アビドスだなんて……。 う、うう、何という運命のいたずら……」
「何してんのアルちゃん。仕事するよ?」
「バイトの皆が命令を待ってる」
「本当に……? 私、今からあの子達を……?」
ムツキとカヨコの言葉に若干涙目になりながら自問自答をするアル。
「あははは、心優しいアルちゃんに、この状況はちょっとキツいね。『情け無用』『お金さえ貰えれば何でもやります』がウチのモットーでしょ? 今更何を悩んでいるの?」
「そう、そうだけど……」
涙目を通り越して白目をむいているアルを見てカヨコは溜息をはく。
「これ、完全に参っているね……」
「こ、このままじゃ駄目よ、アル! 一企業の長として、このままじゃ! 行くわよ、バイトを集めて!」
◎・アビドス高校・
「……なつかしい天井だ」
目を開いた先に見えたのはいつかの記憶にある天井だった。確か……ああ、アヤネの吹っ飛ばした机が直撃したんだったか。
「幸い出血やひどい腫れはありませんでした。ただ気を失っただけでしたが、一応安静にしていてくださいね」
「っ!?」
横から声が聞こえたのでそちらを向けば、いつからいたのか鷲見セリナがいた。トリニティ総合学園の救護騎士団に所属している少女で、ボランティア活動などにも顔を出している正に『善良』という言葉がにあう存在だ。ブラックマーケットに所属している俺が主催ということで最初は身内しか参加してくれなかった医学交流会。その場に最初に訪れてきたのも彼女だった。ただ、まぁ、一つ言いたいことがあるとすれば……
「シャーレの時といい、お前は本当に一体どこから現れるんだよ!?」
「私は患者さんが困っているなら、いつ何時でも駆けつけます!」
「限度!」
……くっ、叫んだせいで頭に響く。
「ほーら、安静にしていてくださーい」
セリナが氷枕を取り換えてくれる。あ゛ーーーづめ゛だい゛。
「それじゃあ、私は帰りますので、お大事にー」
「気を付けてかえれよ……マジで」
お前がチンピラに捕まるとは思えないから無用の心配かもしれないが。……もう帰ったか。ベッドから起き上がり隣のベッドにたたまれていた上着を漁る。上着の中から精神安定剤の入ったケースを出す。最近飲んでなかったし……。ケースを傾けるとジャラジャラと手のひらに薬がこぼれてくる。ケースにはキッド2の一日何錠までという注意書きがあるが無視する。確かなことは手のひらにある薬の量が既に許容量を超過していることだった。それを一気に飲み込む。何錠もの薬が喉を通過する、胃の中に薬が落ちていく感覚がわかる気がする。
「はっー、はっーッッ!?……ふっ、ふーッ! ふー、ふーっ、ふーッ!」
体の末端が冷たい、それなのに胸が熱くて、苦シくて、ドクドクと鼓動が聞こえテクル。膝ヲがたがたト揺らしながら洗面台マデ寄る。胃が締め付けられその痛みで全身カラ汗が噴き出ル。体がふらふらと揺れる……本当ニ揺れている? 視界が定まっていないダケジャナイ?
「ゔぇっ! ……おげえぇッ!! はぁ、はぁ、はっ!? う゛ぉえ゛!! う゛げぇッ......!」
胃が大きく脈動する。そして洗面台に胃の内容物を吐き出す。薬の過剰摂取による拒絶反応が起きている。吐き気は波が寄せるようにやってくる、何度も何度も。しばらく洗面台に寄りかかりながら吐いて体を震わせていた――――
「ふぅーー、ふうーー、ふう。大分落ち着いた」
吐いて、震えて、見っともない。洗面台から崩れ落ちて床に寝転がる。目から涙が止まらない。
『屋浦ニイ先生』、シャーレの部長として活動をして少し経ったが、彼女の行動、言動、を見るたびに勝手な逆恨みと、恐怖が胸に募っていく。
一つは後悔からのもの。頭では先生に文句を言ってもどうしようもないと理解はしているが、『どうして、先生はあの時助けに来てくれなかったのか』、『先生がいれば苦しまなくて済んだ』という考えがよぎる。
もう一つは現状の立場からの不安。先生は『連邦生徒会』の『シャーレ』の先生。そして俺は『ブラックマーケット』の『ODI ET AMO』その巨大さから一目置かれているが結局、居場所をなくした不良たちのグループ。不可侵条約だって相手がその気になれば破れるものだ。そんな気など起こさせないように力は蓄えてはいるが、シャーレはキヴォトス中の戦力を自由に使える。しかも先生の指揮のもと攻撃してくる。……勝てない。どうすれば勝てる? 戦力を一か所に集中させての短期決戦? いや、シャーレはキヴォトス中の戦力を自―――。駄目だ、思考がループしている。薬の入った今の状態じゃ碌な考えは出てこない。そもそもこんな事を考えていること自体、自分の幼稚さと惨めさを感じて先生との差が浮き出るようだった。
「……掃除するか」
のそのそと立ち上がり保険室の掃除を始める。
◎・数十分後・
「ただいま~」
「ただいま戻りましたー☆」
「ん、戻った」
「あー、バイト終わった」
「グランさん、起きてますかー?」
「ただいまー、グラン!」
掃除が終わり、対策委員会の教室でくつろいでいると先生たちが帰ってきたらしく、騒がしい声が聞こえてくる。対策委員会の教室にはメモ書きが残されており、それによれば紫関ラーメンからの帰りだろう。
「あ、起きてるじゃない」
「グランさん! 良かった」
「おーう」
教室の扉が開いて一年生コンビが入ってくる。セリカは起きている俺を見て、起きているなら返事しなさいよ、とでも言いたげな目で見ながら席に座る。アヤネはこちらに駆け寄ってきてくれて、心配してくれる。
「グラーン、何も食べてないでしょ。これお見上げ」
「ん?」
先生がビニール袋をこちらに渡してくる。受け取ると中から匂ってくる。コメと肉のにおい。中を開けると、丼が出てくる。
「これは?」
「紫関ラーメン、サイドメニュー『マヨチャーシュー丼』! グランも男の子だし、これくらいガッツリしたものの方がいいかなと思って」
「あ、ありがとう先生」
さんざん吐いた後の胃にこれをぶち込むのか……。ん? 『坊主、お前は線が細かったからな。これでも食って体力つけな』 丼の側面にこう書かれたメモ用紙があった。あの大将……、頂かない訳にはいかなくなったな。
「いただきます」
「「……」」
割りばしを割って丼を食べる。その最中にふと視線を感じる。視線の元をたどればノノミと小鳥遊ホシノがこちらを見ていた。丼が食べたい訳ではなさそうだ。……顔色を窺われている? 気づかれた? いや、顔色に関しては鏡を確認して問題なかった。第六感的なもので感じ取っているという方が正しいのだろう。ほんと、恐ろしいよ、その感覚。冷や汗がにじみ出したころ、アヤネが手元の端末を見て叫ぶ。
「校舎より南15km地点付近で大規模兵力を確認!」
「まさか、ヘルメット団が?」
「ち、違います! ヘルメット団ではありません! ……傭兵です! 恐らく日雇いの傭兵!」
「へぇー、傭兵かぁ。結構高いはずだけど」
それぞれが武器を手に戦闘準備を始める。先生もタブレットを手に取り、戦術指揮の準備を始める。俺も急いで丼をかきこむ。KO-3K2を手に取りふらつく体を無理やり押さえつけて立ち上がる。
「これ以上接近されるのは危険です! 先生、出撃命令を!」
「みんな、出動だー!」
「「「「「「おー!」」」」」」
アヤネと先生を除いた面々が学校から出撃する。校舎を、校庭を、駆け抜けて傭兵集団の元に向かう。先生とアヤネの姿が端末から映し出される。
『前方に傭兵たちを率いてる集団を確認!』
「あれ……ラーメン屋さんの?」
「え? 誰?」
目の前に現れたのは派手なコートを着た女子。なんだこいつら? 知り合いか?
「ぐ、ぐぐッ……」
「誰かと思えば、あんただったのね!? ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」
……? 俺が行かなかった紫関ラーメンで何かがあったらしい。
「あははは、その件はありがと。でもそれはそれ、これはこれ。だまして悪いけど仕事なんだよ」
「残念だけれど、公私はハッキリ区別しないと。受けた依頼はきっちりこなす」
「……成程。その仕事っていうのが、便利屋だったんだ」
ついて行けない……。仕方がない後ろの傭兵でも観察しておくか。
「もう! 学生なら他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう? それなのに便利屋だなんて!」
「ちょ、アルバイトじゃないわ! れっきとしたビジネスなの! 肩書だってあるんだから! 私が社長! あっちの子が室長で、こっち彼女が課長、奥にいる子は一般社員よ!」
一般的な傭兵バイトが大半だが、一人気になるのがいるな。あれはウチの開発した武器だな。URF-15……大分状態が悪いな。D/URF-15とでも言うべきか。
「はぁ……社長。ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ……」
「誰の差し金? いや、答えるわけないか」
「ふふふ、それは勿論企業秘密よ?」
「なら力尽くで口を割らせる」
シロコが素でに臨戦態勢だ。こちらも銃を構えようとすると便利屋の一人がこちらを見て驚いた顔をしていた。……知り合い…では……ないな。
「水戸グラン。『ODI ET AMO』のトップがここに?」
「え!? 『ODI ET AMO』!」
社長と自称していた少女がひどく狼狽える。……この便利屋、こいつがトップで大丈夫か? 俺の事を知っている課長の子の方が、賢そうではある。だが、彼女がトップでないことに何か意味があるのだろう。すると一人の傭兵が一団を飛び出してきた。例のD/URF-15を持っている傭兵だった。燃えている蠅の姿のようなヘイローをもっている。そいつはこちらを見て武器を構える。
「やっと出番が来やがった。『ODI ET AMO』?偉そうにしやがって、マジで強いのかよ?今日で後進に道を譲ってもらうぜ! 老害が!」
潰す。
D/URF-15を持った傭兵。通り名は『フレイムフライ』偶然で何回も戦果を挙げたため、自分の実力に過度の自信を持っている。
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
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看板娘
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任侠娘
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眠り姫
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大和撫子
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カードバトラー
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陰陽部のアイドル
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キヴォトス最高の忍者