「弱い」
弱い。本当にその一言に尽きる。D/URF-15を持った傭兵を相手にした俺だったが、ものの数分で手持無沙汰になった。動きは鈍く、かといって打たれ強いわけでもなく、狙いもお粗末、ただ連射しながら突っ込んできたので真正面から蹴り倒した。発砲するまでもなかった。
――――キーンコーンカーンコーン
あ、チャイムだ。……まだ鳴るんだな、チャイム。チャイムが聞こえたからなのか、傭兵達が攻撃をやめた。
「……あ、定時だ」
「今日の日当だとここまでね。あとは自分たちで何とかして。みんな、帰るわよ」
さすが傭兵、どこまでも金に忠実で、ドライだ。ふと、傭兵のリーダーであろう存在がこちらに向かってきていた。
「こんにちは、『代表』。貴方が敵側にいたのは驚いたわ」
「お前がリーダーか? まだ戦うつもりじゃないんだろ?」
「ええ、私がリーダーをしているわ、これを貴方に」
すると、リーダーは胸の谷間からカードを取り出してこちらに渡してくる。名刺だ『MoH代表 エリザベス・ストラトフォード』
「……MoH? 聞かんな」
「ええ、まだ立ち上げたばかりのグループだもの。でもすぐにあなたのグループと同じぐらいになって見せる」
「やってみろ」
互いににやりと笑う。
「次会うときは敵じゃなくて、クライアントだと助かるわ」
「考えておく」
言いたいことは言ったのか、エリザベス・ストラトフォードはこちらに背を向けて仲間の元に帰っていった。
「終わったてさ」
「帰りにそば屋でも寄ってく?」
「こらー! ちょ、ちょっと帰っちゃダメ!」
便利屋の社長が撤退していくMoHの背に怒鳴っているが誰も立ち止まることはなかった。……はぁ、足元のコイツといい、なんだか拍子抜けだな。
「こりゃ、ヤバいね。まさかこの時間まで決着がつかないなんて。どうする……アルちゃん? 逃げる?」
「あ……うう……。こ、これで終わったと思わないことね! アビドス!」
「うるさい! 逃げ、じゃなくて、撤退するわよ!」
あ、逃げた。便利屋はあっという間に、消え去った。……作戦立案などに不安はあるが、便利屋の実力は確かなものだった。
「待って! ……あ、行っちゃいましたね」
「うへ~逃げ足速いね、あの子たち」
『詳しいことはわかりませんが、敵兵力の退勤……退却を確認しました。困りました。……妙な便利屋にまで狙われるなんて先が思いやられます。一体何が起きているのでしょうか……』
アヤネがうまいこといって、その後に不安をこぼす。表情も敵を撃退した後だというのに硬いままだった。その表情を見た小鳥遊ホシノが慰めるように言う。
「少しずつ調べよっか、まずは社長のアルって子の身元から洗ってみたら。何か出てくるよ、きっと」
『……そうですね。お疲れさまでした。一旦、帰還してください』
◎・アビドス高校・
「お待たせしました。変動金利等諸々適用し、利息は788万3250円となります。全て現金でお支払い頂きました、以上となります。カイザーローンとお取引頂き、毎度ありがとうございます。来月も宜しくお願いいたします」
スーツを着た男は笑みを浮かべて、礼をした。そうして現金輸送車に乗り込み、音を立てて出発した。
今日はカイザーローンが集金に来る日だったらしい。道理で朝から対策委員会の面々がピリピリしていると思った。そうして、輸送車が見えなくなったときようやくその雰囲気がなくなった。
「はぁ、今月も何とか乗り切ったね~」
「……完済まで後、どれくらい?」
「309年返済なので、今までの分を入れると……」
「言わなくていいわよ、正確な数字なんて知りたくない……さらにストレス溜まりそう」
「309年!? 一体どんな契約をしたのよ……」
ニイ先生が驚きの声を上げる。……というか、先生も大分アビドスの環境に慣れてきたな。今まではこのアビドス校に来るまででかなり体力を使っていたのだが、今朝は息の乱れ一つない。
「ところで、カイザーローンは何故現金でしか受け付けないのでしょうね? わざわざ現金輸送車まで手配して……」
ノノミがそう言う。……確かに、今の時代に現金限定なのは、不都合の方が多そうだ。カイザーほどの大企業がキャッシュレス化に対応できていない訳ではあるまい。考えられる理由としては……現ナマの方が足がつかないから……か?……ん? シロコ?
「……!」
「シロコ先輩、あの車は襲っちゃだめだよ」
「うん、分かっている」
「計画もしちゃ駄目!」
「うん……」
「……今度ウチの金庫で防犯訓練するが来るか? 襲撃役で」
「ん、行く」
あ、来るんだ。……中身は訓練用の疑似紙幣でもいいのか? ……本物の紙幣でやると思っていたりするのか!?
「ま、取り敢えず先に解決するべきは目の前の問題の方でしょ、とにかく教室に戻ろ~」
小鳥遊ホシノがそう言い、締める。そうして全員対策委員会の教室へ向かう。振り返り、現金輸送車が消えたほうを見つめる。まさか……な?
「どうしたのグラン? 顔、怖くなってるよ」
「ぐっ」
隣に先生が立って、こちらの眉間をグニグニと揉む。まったく、この人は相変わらず人の感情の変化を感じ取るのがうまい。 先生の方を見れば、その目はとてもまっすぐで『嘘はつかせない』という考えが見て取れる。
「……一つ。……現金での取引に固執する理由に一つ、思い当たるものがある」
「それは?」
「……ブラックマーケットなどでの裏取引」
「!」
驚愕する先生を置いて、教室に向けて歩き出す。……対策委員会のみなが、一生懸命働いて、返済のために努力しているのを知った。そんな金が裏取引、犯罪に使われているかもしれない。……俺が今まで稼いだ金にももしかしたら……?
「今更、罪悪感なんて……クソッ!」
◎・対策委員会 教室・
「全員揃ったようなので始めます。まずは、2つの事案についてお話したいと思います」
全員が教室の席に座ったところでアヤネが話をしだす。
「最初に、昨晩の襲撃の件です。私達を襲ったのは『便利屋68』と呼ばれる部活です。ゲヘナではかなり危険で素行の悪い生徒達として知られているようです。便利屋とは頼まれた事は何でもこなすサービス業者で、部長は陸八魔アルさん、自らを社長と称しているようです。彼女の下に3人の部員がいて、それぞれ室長、課長、平社員の肩書を持っています」
アヤネの言葉を引き継いで便利屋の面々について説明する。
「室長は浅黄ムツキ、課長、鬼方カヨコ、平社員の伊草ハルカだ」
「いやー、本格的だね~」
「社長さんだったんですね☆すごいです!」
「いえ、あくまでも『自称』なので……現在はアビドス内のどこかに入り込んでいるようです。今朝も合いましたし」
なんだか疲れた様子でそう呟くアヤネ。……攻撃をされたわけではなさそうだが。何か、こう、精神的に疲れているようだ。……浅黄ムツキあたりと出会ってしまった感じか?
「ゲヘナ学園では起業が許可されているの?」
「それはないと思います……勝手に起業したのではないでしょうか」
「あら……校則違反って事ですね。悪い子達には見えませんでしたが……」
「いえ、それが今までかなり非行を積み重ねてきたようでして、ゲヘナでも問題児扱いされているようです。そんな危険な組織が私たちの学校を狙っているんです! もっと気を引き締めないといけません!」
「次は取っ捕まえて取り調べでもするかー」
「はい、機会があれば……」
うーむ、かなり個人的な恨みを感じる。
「続きましてセリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです! 先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果……現在は取引されていない型番だということが判明しました」
「もう生産してないってこと?」
「そんなのどうやって手に入れたのかしら?」
……方法は一つしかない。先ほどの嫌な考えが頭をよぎる。
「生産が中止された型番を手に入れる方法は……キヴォトスでは『ブラックマーケット』しかありません」
うぐっ
「ブラックマーケット……とっても危険な場所じゃないですか」
「そうです。あそこでは中退、休学、退学……様々な理由で学校を辞めた生徒達が集団を形成しており、連邦生徒会の許可を得ていない非認可の部活もたくさん活動していると聞きました」
うぐぐっ
「便利屋68みたいに?」
「はい。それから便利屋68も、ブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしていると聞きました」
……そんな報告あったか? 確認の連絡しておくか。
「二つの出来事の関連性を探る機会です。ホシノ先輩」
「決まりだね、ブラックマーケットに向かうよー。代表、しっかり案内してよね」
小鳥遊ホシノがそういうと残りの対策委員会の面々がこちらを向いた。
「あっ、そっかぁ! グランがいるなら楽勝じゃない!」
「そういえば、グランさんは『ODI ET AMO』のトップでしたね」
「おい、まて。お前らは俺を何だと思ってる」
俺がそう聞くと、
「大切な生徒」
「んー、知り合いかな?」
「お友達です☆」
「ん、良い人」
「た、頼りにしてる人よ!」
「なんだか、最初からこの学校にいたみたいに馴染んでいたので……つい」
……そうかい。集合場所を指定してその場は一度解散となった。
ホント、不思議なぐらいアビドスに馴染んでるよ。
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
-
看板娘
-
任侠娘
-
眠り姫
-
大和撫子
-
カードバトラー
-
陰陽部のアイドル
-
キヴォトス最高の忍者