◎・ブラックマーケット市街区・
「此処が、ブラックマーケット……」
「わぁ☆ すっごい賑わっていますね?」
「シロコ、先生から離れるなよ。ここら先は『ODI ET AMO』の支配領域じゃない」
「ん」
シロコが、先生にギュッと抱き着く。……それでいいのか? まぁ、良いか。
「けど、小さな市場を想像していたけれど、こんなにまで大規模だなんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」
「『マーケット』なんて言われているが、複数の学園を合わせても敵わないくらいの広大な面積を持っている巨大な都市群だ。勿論闇市もある、表じゃ手に入らない危険な火器や装備品に武装ヘリ、戦車などの兵器群、はてには学籍や個人情報まで売られている。俺らが今から行くのはその闇市が主なエリアをしめている市街区だ」
いつか先生にしたブラックマーケットについての説明を少し改変してシロコに話す。市街区、経済活動が盛んなエリアだ。金のない不良たち向けの簡易宿泊所や、闇仕事の斡旋所、武器などのショップ、銀行などもある。……経済活動とは言ったが、どちらかというと低所得者層がよく利用するエリアだ。ただ、それゆえに外部との交流も大きい。
「うへ~、普段私達はアビドスばっかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー」
「ホシノ先輩、ここに来たことがあるの?」
「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものが沢山あるんだってさー。ちょーデカい水族館もあるんだって、アクアリウムっていうの! 今度行ってみたいなー。うへ、お魚……お刺身……」
「よくわかんないけど、アクアリウムってそういうのじゃない様な……」
アクアリウムか……。確か、海上施設の養殖場に鑑賞用のものもあったはずだ……。どうする? いや、けど……くっ。
「今度、ウチの海上施設を案内しようか? 魚の養殖場に鑑賞用のものもあったはずだ」
「へー……。いいね、考えておくよ」
「そうしてくれ」
「よかったね」
先生が態々横に来て小声でそういう。一体何に対しての『良かった』なのか。そのニマニマとした笑顔を止めろ。そういうんじゃない。
『皆さん、油断しないで下さい。此処は違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起こるか分かりません。何かあった―――ダダダダダダダッきゃあ!』
アヤネが通信越しに皆の気を引き締めようとするが、銃声が響き渡り中断される。
「銃声だ」
シロコがぽつりと呟く。それに合わせそれぞれ愛銃を手に取る。先生も手に持っていたタブレットを抱えなおす。……あのタブレットいつも大切そうに持っているが、そこまで大事になものなのか?
「待て! トリニティ!」
「う、うわあああ! まずっ、まずいですー! つ、ついて来ないで下さいー!」
「そうはいくか!」
『あれ……あの制服は……』
あぁ、なんだか凄く聞き覚えのある声が聞こえてきた。あー、頭が痛くなってくる。アヤネが示す方向を見れば、見覚えのある女子がこちらに走ってきている。後ろを見れば数名のチンピラに追われているらしい……またかぁ。
「ちょっとグラン!」
「え?」
一気に駆けだした俺に先生と小鳥遊ホシノが驚愕の声を上げているのが後ろの方から聞こえる。
「ヒフミぃ!頭、下げろ!」
「ぐ、グランさん!」
追われていたヒフミが頭を下げるのと同時にチンピラたちに向けて横なぎに蹴りを放つ。
「「「ぐえっ!」」」
ヒフミの頭上を越えて繰り出された蹴りはチンピラたちを三人まとめて吹き飛ばす。チンピラは壁に激突して意識を失い倒れこむ。ヒフミはゆっくりとスピードを落として立ち止まる。
「はぁ、はぁ、はぁ。ありがとうございます、グランさん」
『思い出しました! その制服、キヴォトス最大規模のマンモス校、トリニティ総合学園のものです!』
「は、はい。あ、ありがとうございました。皆さんが居なかったら学園に迷惑を掛けちゃうところでした……。それに、こっそり抜け出して来たので問題なんて起こしたら……あぅぅ、想像しただけでも……」
そう言って何度も頭を下げるのはトリニティ総合学園の阿慈谷ヒフミ。
「えっとー、ヒフミちゃんだっけ? トリニティのお嬢様が、どうしてこんな危ない場所に来たの?」
「あはは……それはですね……実は探し物がありまして。もう販売されていないので買うことも出来ない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて……」
あぁ、やっぱり予想通りと言えば予想通りだが、こいつはまた……。呆れて声も出ず、ただ俯く。ただ、事情知らない対策委員会の面々は頓珍漢な質問をしていく。
「もしかして……戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学兵器とかですか?」
「変なブレスレットとか? そんなの買っちゃだめよ!」
それはお前しか買わない。
「えっ!? い、いいえ……そんな物騒なものではなくて、えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
「ペロロ?」
「限定グッズ?」
「はい、これです! ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定の縫い包み! 限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ! ね、可愛いでしょう?」
「またか、お前ぇ!」
「ご、ごめんなさい」
そんなことだとは思っていたが本当に予想通りで思わず大声を上げる。何回危ない目に合えば覚えるんだこのペロロキチが!
「わぁ☆ モモフレンズですね! 私も大好きです! ペロロちゃんかわいいですよねぇ、私はミスター・ニコライが好きなんです」
「分かります! ニコライさんも哲学的なところがカッコよくて! 最近出たニコライさんの本、『善悪の彼方』も購入しました! それも、初版で!」
「……いやー、何の話かおじさんさっぱりだぁ」
「まさか、ノノミが知っているとは」
「ホシノ先輩はこういうファンシー系に全く興味ないでしょ」
「ふむ、最近の若い奴にはついていけん」
「歳の差、ほぼないじゃん……」
そんな軽口をしながら親交を深めるヒフミと対策委員会。それにしても……ノノミもまさか……もも? フレンズ? のファンだったのか。ヒフミ以外にも知ってる人間がいたんだな。ヒフミと対策委員会は彼女がチンピラに追われる事になった理由を話していた。
「そ、そのトリニティ総合学園はキヴォトスで一番金を持っているお嬢様学校と、言われているのでまれにですが拉致されて身代金を要求されるという事件がありまして……。普段なら正義実現委員会の方々が解決してくださるのですが、ここはブラックマーケットですので正義実現委員会の方々も手がおよびません」
「だから俺が何回か過去に助けたことがあったんだよ。そのたびに注意はしたんだか……。効果はないみたいだな? ええ? ヒフミ」
「あ、あはは」
ヒフミを睨みつけるが、笑いながら目をそらされた。そして話も逸らすようにヒフミが話題を振る。
「ところでアビドスの皆さんとグランさんは、何故こちらへ?」
「私達も似たようなものだよ。探し物があるんだー」
「そう、今は生産されていなくて手に入れにくい物なんだけど、ここにあるって話を聞いて」
「そうなんですか、確かに似たような感じなんですね」
ヒフミがそう関心しているとアヤネが大声を上げた。
「皆さん、大変です! 四方から武装した人たちが向かってきています!」
「何っ!」
周りを見回せば、チンピラどもがぞろぞろと現れた。
「あいつらだ!!」
「よくもやってくれたな! 痛い目に合わせてやるぜ!」
おー、おー、また大勢やってきてるな。
『先ほどのチンピラたちが仲間を呼んだようです! 完全に敵対モードです!』
「望むところ」
「まったく、なんでこんなのばっかり絡んでくるのかしら!」
「グラン、上をとって!」
銃の安全装置を外して壁を蹴り一気に上を取る。ブラックマーケットはこう建物が多く、上がとりやすくて助かるよ。チンピラたちが俺を追って視線を上に向ける。
「こっちだよー」
「しま―――!」
その隙に先頭のチンピラを小鳥遊ホシノがシールドバッシュで吹き飛ばす。
「今です!」
「ん?」
「何これ?」
「わぁ☆ ペロロちゃんです!」
小鳥遊ホシノとチンピラの間に巨大なペロロ人形が出現した。うわっ、キモ。このデコイは何度言ってもブラックマーケットに訪れるヒフミの為に俺が渡したデコイだ。本当はもっとちゃんとしたものだったのだが、『ペロロ様の姿にできませんか!?』というヒフミの言葉に開発部が一から開発し直したものだ。目立つ音楽と照明、そして腹立つあの人形。相手の意識を引き付けるには十分だろう。……作り直しを要求されたときも思ったんだが、自分の好きなものがハチの巣にされるのに何も思わないのか?
「くそっ何だこれ!」
「イライラさせやがって!」
チンピラどもの攻撃がペロロデコイに集中する。そもそもこの道幅ではペロロデコイをどうにかしないと攻撃できないしな。それはアビドス側にも言えることだ。……跳んで上をとれる俺以外は。
「喰らえ」
「ぐぎゃ」
「ごぺっ」
「いたっ」
上空からショットガンの連射をぶち込む。そして着地して回し蹴りでペロロデコイを潰す。
「みんな今だよ!」
「撃てー!」
「いっきますよー☆」
「ドローン攻撃開始」
「やっーー!」
「あ、あーーペロロ様ーー!」
ペロロデコイを壊した先には、対策委員会とヒフミが銃を構えて一斉攻撃の準備をしていた。ペロロデコイでチンピラ達の視界を塞いだ後に人員の再配置、一斉攻撃の準備というわけか。そして先生が合図をして射撃を開始する。
「いだだ!」
「あだっ!」
「無理無理、撤退!てったーい!」
戦闘は一気にアビドス側が有利になり、終了した。
『敵、後退していきます! だけどこのままでは……』
「仲間を呼ぶつもり? いくらでも相手してあげる」
「ま、待って下さい! これ以上戦っちゃ駄目です!」
シロコは前から思っていたが、ずいぶん好戦的だよな……。とはいあえ、これ以上の戦闘は確かにまずいな。
「ブラックマーケットで騒ぎを起こすと、ここを管理している治安機関に見つかってしまいます! あうう……そうなったら本当に大事です……まずはこの場から離れましょう!」
「最初に言った通りここは『ODI ET AMO』の支配領域じゃない。はっきり言うと俺が見つかるもっと余計な争いを呼ぶかもしれん」
「ふむ……ここの事は二人の方が詳しいから、従おう」
「ちぇっ、運のいい奴らめ」
「こっちだ」
他の面々を連れてブラックマーケットを先導する。さて、このあたりの店は……。あー、あそこがあるか……。
ブラックマーケット市街区。様々な店、低所得者向けの宿泊所や闇仕事の斡旋所などがある地域。自身の信条などがないチンピラ達が大半のエリアの為、ある意味ブラックマーケットで最も危険な地域。そして他校の生徒が最初に落ちる場所でもある。ブラックマーケットで最初に落ちるのがもっとも危険なこのエリアの為、一度堕ちればズブズブとさらに墜ちていくか、物言わぬ体になるだけである。
最近このエリアで蜂のマークを持つ集団を見かけるようになったとか。
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
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任侠娘
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眠り姫
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大和撫子
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カードバトラー
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陰陽部のアイドル
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キヴォトス最高の忍者