◎・ブラックマーケット市街区・
「……ここまで来れば大丈夫でしょう」
チンピラ達を撤退させた後、追加部隊との戦闘を避けてそそくさとその場を離れた俺たち。
「ふむ……ここを随分危険な場所だって認識しているんだね」
「えっ? と、当然です。連邦生徒会の手が及ばない場所のひとつですから……。ブラックマーケットだけでも、学園数個分の規模に匹敵しますし、決して無視はできないかと……」
「そんな危険な地域にお前はなんで何回も来ているんだか」
「あ、あはは。ごめんなさい」
小言を言いながらヒフミの額を小突く。するとヒフミは苦笑いをしながら謝る。そしてまたブラックマーケットについての説明を続ける。
「それに様々な『企業』や『グループ』がこの場所で違法な事柄を巡って利権争いをしていると聞きました。それだけじゃありません。ここ専用の金融機関や治安機関があるほどですから……」
「ぎ、銀行や警察があるって事!? そ、それって勿論、認可されていない違法な団体だよね!?」
「はい……そうです」
セリカがヒフミの言葉に驚く。……俺のとこにもあるんだが黙っていた方がよさそうか?
「スケールが桁違いですね」
「中でも特に治安機関は、とにかく避けるのが一番です。騒ぎを起こしたらまずは身を潜めるべきです……」
「ふ~ん、ヒフミちゃん、ここのことに詳しいんだねー」
「えっ? そうですか? 危険な場所なので、事前調査をしっかりしたせいでしょうか……」
「うんうん。しっかり調べててえらいぞ~」
そういって先生はヒフミを撫でまわす。ヒフミも突然撫でられて驚きはしたものの次第に笑顔で撫でられている。その様子を見ながらホシノは何かを思いついた顔をした。
「よし、決めたー」
「?」
「助けてあげたお礼に、私達の探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうねー♪」
「え、ええっ?」
「わぁ☆ 良いアイディアですね!」
「なるほど、誘拐だね」
「はいっ!?」
……まぁ、案内役がいるのと、いないのとでは大分違うからな。ヒフミならここら辺の店の事は知り尽くしているだろうし。
「誘拐じゃなくて案内をお願いしたいだけでしょ? 勿論、ヒフミさんが良ければ、だけれど」
「ぐ、グランさん……」
「俺は知識としては知っているがこのあたりの店はあまり利用したことは少ない。実際に利用しているヒフミの方が案内役としては適任だ。……あと運が悪かったんだよ」
「うう……私なんかでお役に立てるかは分かりませんが、アビドスの皆さんにはお世話になりましたし、案内役引き受けさせていただきます」
「よーし、それじゃあ、ちょっとだけ同行頼むね~」
「その前に一軒だけ寄りたい店がある」
そういって歩き出す。あの不気味な店長少し苦手なんだよなぁ……。
◎・便利屋68事務所・
プルルル、プルルル
事務所内に響く電話の音。しかしデスクに座る社長の陸八魔アルは電話にでずに暗い表情で電話を見つめていた。その様子に疑問をもった便利屋の面々はアルに質問をする。
「アルちゃーん、何してんの? 電話でないの?」
「……」
「表情が暗い……もしかしてクライアント……?」
「アル様……」
「うわ、そりゃそんな顔にもなるわ。失敗報告しないとだもんね~」
カヨコが呟いた言葉にムツキがうげぇ、といった顔をしてアルの表情に納得した。今回の依頼はかなり大口契約だったため、クライアントからの圧もそれなりにあったのだ。そんなクライアントにこれから失敗を報告しなければいけないアルの心情は重く、苦しいものだった。
「……っく。――ガチャ―― はい、便利屋68です」
◎・しばらくの通話後・
『ふむ、興味深い報告だ。ここまでの練習は拝見したよ。で、実戦はいつだ?』
「……うえ?あれが実戦だったんですが……。あ、いえ、なんでもありません。も、もちろん実戦はすぐにでも……はい、という感じで……あ、えっと1週間以内には……はい」
聞こえてきたアルの言葉に驚く便利屋の面々。
「ふふっ。はい、そうです。……お任せください」
―――ガチャ――― 重々しく受話器を置くアル。その表情は真っ白だった。
「はぁ」
「やつれたねぇ、アルちゃん」
「社長、一体どういうこと?まさか、また戦うつもり?」
「あのクライアントは超大物なのよ。……この依頼失敗するわけにはいかないの」
「たけど、アビドスの連中、思ったより強かったじゃん。それに『シャーレ』と『ODI ET AMO』が一緒だから、私たちだけじゃ無理だよ。お金も使い果たしちゃったし、どう戦うのさ?」
「わっ、私がバイトでもしてきましょうか?」
ムツキが問題点を上げるとハルカがおずおずと意見を出す。しかしカヨコがあきれ顔でその意見に反対する。
「その稼ぎで傭兵を雇うには、全員で、しかも1年は働かないと。それに水戸グランに勝てる傭兵なんてそんなにいないだろうし。こんな高いオフィス借りてるから、無駄にお金ばかりかかってるし」
「う、うるさい! ちゃんとした会社なら事務所は基本でしょ! その方が仕事の依頼も増えるんだから!」
俯いていたアルは顔を勢いよく上げてカヨコの言葉に反対する。
「別に、私は前みたいに公園にテント生活でも構わないけどー?」
「黙りなさい! みんなうるさい! 静かに!……融資を受けるわ」
アルが言い放った言葉にアル以外の便利屋の面々は首を傾げる。
「は? アルちゃんブラックリスト入りしているでしょ」
「違うわよ! 私は指名手配されて口座が凍結されただけ!」
「そうだっけ? ……あ、そうだった。風紀委員会にやられたんだよね」
「くっ、風紀委員会め……ここまでやられるとは思わなかったわ」
「どうするの―? 中央銀行も、行ったところで門前払いだよ~?」
「うるさいってば! 私にいい考えがあるんだから!」
ムツキがアルの懐事情を問えば、アルは自身満々に答えた。そして目を細め、事務所のブラインドに指をかけ外を見ながらつぶやく。
「見てなさいよ、アビドス。このままじゃ終わらせないんだから。便利屋のミッションはこれからなのよ!」
◎・???・
「やつらのデータ自体は正確なものだったはず」
全身をサイバーウェア化した巨躯の男、カイザーPMC理事はビルの一室で椅子に座り込み考えこんでいた。
「計算ミスか? いや、水戸グラン本人は戦闘に関しては良く評価して中の上程度……しかしあの力は明らかに……」
4つのカメラアイを通してしっかりと手元の報告書を見て、数値を確認するが、間違いはない。幾度となく対策委員会にぶつけさせた不良たち、彼女たちとの戦闘を元に対策委員会それぞれの戦力を数値化したもの。それを見れば便利屋68は問題なく、対策委員会に勝利するはずだった。『ODI ET AMO』が部隊を投入していれば便利屋68が負けても何の疑問もなかったのだが、基本的に水戸グラン個人としてアビドスに肩入れしているようだった。水戸グランの戦力は過去に数値化してあったが、やはり大したものではない。しかし報告は敗北。いったいなにが間違っていたのか? カイザーPMC理事は悩む。
「……お困りの様ですね?」
自身の背後から声が聞こえた。振り返ればいつからこの場にいたのか、黒いスーツを着た『何か』がそこにいた。
「いや、困ってはいない。ただ計算に少々エラーが生じただけだ。アビドスの連中がデータより遥かに強かっただけのこと」
味方だとしても、コイツ相手に気を抜いてはいけない、弱みを見せてはいけない、そう感じているカイザーPMC理事はあくまで何も困っていない、という風にする選択をした。
「……データに不備はありません」
黒いスーツの『何か』、黒服はカイザーPMC理事の手元の資料を取り、少し眺めてからそういった。
「これは単に、アビドスの生徒が更に強くなった、と解釈すべきかと」
「この短時間でそこまで変わるものか」
「アビドスにどのような変化要因があったのか、確認してみましょう。……では」
そう言って黒服は部屋から出ていった。その後ろ姿がドアで見えなくなってからカイザーPMC理事はぽつりとつぶやく。
「部屋に入るときも普通にできんのか……」
◎・ブラックマーケット市街区・
「あらあら、いらっしゃいませ。ご自由に見ていってくださいな」
「久しぶりだな、オーレリア」
「あら、グランさん。お久しぶりですわね」
ブラックマーケットの裏路地、少し入り組んだところにある服飾店。店内は日の光が入りづらいため薄暗く、所せましに服が飾られているので余計に店内は薄暗かった。『オーレリアの服屋』そのまんまの店名のこの店は店長であるオーレリアがデザイン、製作した服しか置いていない変わった店だ。
「うへ~服が一杯だー」
「わー、可愛い☆」
「か、変わった店ね」
「ん、動きやすそうな服もある」
「結構過激なものもあるね。……ふーんエッチじゃん」
『ニ、ニイ先生?!』
「あ、あううう」
俺の後について入店してきた先生たちが後ろで好き勝手言ってる。……本来静かな店何だがな。オーレリアを見れば、笑って許してくれたから良いがやっぱり笑顔が不気味だぁ。
「グランさん。今日は何用で?」
「こいつらの服。ブラックマーケットを出歩くのに校章が丸出しなのは色々不都合だからな」
「なるほど、それでは皆さんどうぞこちらへ」
そういってオーレリアは先生たちを引き連れて奥の部屋へ向かった。さて、俺は……顔を隠せる何かがあればいいか。……コートも変えておくか。
何気にAC以外の作品からの登場のオーレリアさん。彼女がどの作品出身か分かった方いるかな……。 評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
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