◎・オーレリアの店・
「おー」
「ん、動きやすくて、丈夫」
部屋から出てきた面々を見て感嘆の声が上がる。シロコは白のノースリーブカットソーとデニムパンツのシンプルで動きやすさを重視した彼女らしさが表れた格好だ。
「ふふふ、似合ってますかー?」
ノノミはロングスカートにニットカーディガン。頭の上に被ったキャスケット帽子をかぶっている。普段と同じ、カーディガン生地だが、ロングスカートとキャスケット帽のお陰で、印象が大分違う。
「な、何よ! 似合ってないって言いたい訳!?」
……驚いた。セリカは白いタートルネックにオレンジのロング丈Aラインスカート、麦わら帽子。更に、いつものツインテールを解いて髪を下ろしている。……先生は誰にでも言うんだろうが、成程確かにお姫様、というかお嬢様に見えるな。
「うへ~、おじさんこんなフリフリの服似合わないよー」
小鳥遊ホシノは、髪をポニーテールにして、フリルブラウス、コーデュロイタイトミニスカートを身に着けていた。自身の持っていた『小鳥遊ホシノ』の印象とは大きく違うが、それでも
「似合っているよ。とても」
「え?」
「あっ」
「「……」」
「あ、ありがと」
無意識の内に声に出ていたのか。……めっちゃ恥ずかしい。顔が熱い、きっと耳まで真っ赤になっている。なんだか、彼女を見ていることができなくて、顔をそらす。
「ん、私たちももっと褒めるべき」
「……ふふ☆」
「二人ってホントに喧嘩したのかしら……」
『……』
そらした先には、シロコ、ノノミ、セリカ、通信越しで一人いつもの制服のアヤネがいた。4人ともジトッとした目でこちらを睨んでくる。タジタジな俺の姿に苦笑しながらヒフミが出てくる。
「あはは、大変そうですね。グランさん」
「ヒフ……ミ……。そのかばんは絶対か?」
「はい! もちろんです!」
こちらはいつもの服に近いが上着が真っ黒なパーカーに代わっており、黒マスクもしていることで印象が一機にブラックマーケットの住人に近づいた。ただ、それでも背中のペロロの鞄はマストアイテムだそうだ。……黒パーカーに黒マスクにキャラもののバッグ……地雷系か?
「ちょっとー、先生の服も見てよー!」
「「「「「「『!?』」」」」」」
更に先生が奥から現れた。しかしその先生の恰好を見て全員が唖然とする。デニムのショートパンツに黒クロップトップ、レザーグローブというどこの格ゲーキャラだと突っ込みたくなるような恰好で出てきた。……ハッキリ言うと先生はスタイル抜群の女性だ。胸なんて羽川ハスミといい勝負ができるだろう。だから、その、なんだ。属性こそ違えどまた目のやり場に困る人間が出てきた。
「ん? どうしたのみんな。さぁ行くよ!」
本人はこの調子だ。……いつか言ったが本当にいつか刺されるんじゃないか? このキヴォトスならいつか撃たれる、の方が正しいかもしれない。支払い金額を後で俺に送るようにオーレリアに言って店を出る。
◎・ブラックマーケット・
「はぁ。……しんど」
「もう数時間は歩きましたよね?」
「これは流石に、おじさんも参ったな~。腰も膝も悲鳴を上げているよ~」
「えっ……ホシノさん、お幾つなのですか……?」
「ほぼ同年代っ!」
服を着替えたおかげでチンピラどもに襲われることはなくなった。捜索はこれでスムーズに進むかと思ったのだが、パーツの情報は全く手に入らない。そのおかげでこの広大なブラックマーケットの中を歩き回る羽目になっていた。
「あら! あそこにたい焼き屋さんが!」
「あれ、ホントだー。こんな所に屋台があるんだね」
……確かに、めずらしい。ブラックマーケットの飲食店というのはレアだ。なんといってもこのブラックマーケットで飲食店を出すとその運命は2つだ。一つは粗悪品で儲けようとしてゲヘナの美食研究会に爆破される。もう一つは表ではなかなか手に入らない食材をふんだんに使った高級店化するかだ。……ああ、でも高級店化しても気に入られないと美食研究会に爆破されるか。
ともかく、このたい焼き店は爆破されていない。つまりあの黒舘ハルナが認めた店ということか。舌だけは確かだからな。
「あそこでちょっと休みましょうか? たい焼き、私が御馳走します!」
「えっ!? ノノミ先輩、またカード使うの!?」
「先生の『大人のカード』もあるよ~?」
「ううん、私が食べたいから良いんですよ☆ 皆で食べましょう? ねっ?」
そういってノノミはこちらに返事をさせる前に歩いてたい焼き屋にむかって行った。横で先生が小声で「良い女だぁ……」とつぶやいていた。いや、それはわかるがなんか吐息みたいに呟くな。
「まいどー!」
「なぁ、店主」
「ん?どうした」
「銀髪ロングのゲヘナ生が来たことは?」
「あー、1週間ぐらい前に来たよ。たしか美食研究会だったかな?」
「そう、そいつ。ありがとな」
店主に黒舘ハルナが来店していたか確認する。やっぱり来ていたか。しかし爆破されていないということは、本当に美味しい店だったのだろう。これは期待できるな。
「美味しい!」
「いやぁ、ちょうど甘いものが欲しかったんだよー」
「あはは……いただきます」
「ん、先生。あーん」
「あーん」
「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私たちだけごめんなさい」
『あはは、大丈夫ですよ。私はここでお菓子とかつまんでますし』
そうなのか、以外な真実を知れた。まぁ、確かにあの教室で一人ドローンの映像にずっと食いついているのは暇だしな……。俺が名を上げ始めたころからずっと俺を監視していた、とか言ってたキッド3はよく飽きなかったな。
「しばし、ぶれいくたいむ~」
「けど、ここまで情報がないなんてありえません……妙ですね」
ヒフミが手元のメモ……ブラックマーケット内の店の情報がぎっしりと書かれていた。……こうやってペロログッズなどを取り扱っている店を探しているんだろうが、すこし怖いよヒフミ。
「お探しの戦車の情報、絶対どこかにある筈なのに、探しても出てきませんね……。販売ルート、保管記録……すべて何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします。いくらここのエリアを牛耳っている企業でもここまで徹底してブラックマーケットを統制することなんて……」
「無理だろうな」
「そんなに異常なことなの?」
「異常というより、ここまで徹底的にする理由がない。ここはブラックマーケット。開き直って悪行をしているのがほとんどだ。それに情報を盗むことを生業にしている専門の奴らもいる、セキュリティなんてコストをかける程無駄だ」
マジで。いっそ大っぴらにしていた方が狙われないし、興味を引くことがないという状態だ。
「そうですね。例えばあのビル。あれがブラックマーケットでも有名な闇銀行です」
「闇銀行?」
ヒフミの差した指の先にあるピル。ブラックマーケットにしては小綺麗なビルだ。
「ブラックマーケットでも大きな銀行の一つです、聞いた話だとキヴォトスで行われる犯罪の15パーセントの盗品があそこに流されているそうです。横領、強盗、誘拐、あらゆる犯罪行為で獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられて、また別の犯罪に使用される。そんな悪循環が続いているんです」
「……そんなの、銀行が犯罪を煽っている様なものじゃないですか」
「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです」
「酷い! 連邦生徒会は一体なにやってんの?」
「そこんとこどうなのさー」
セリカが憤慨して地団駄を踏んでいる。そしてベンチに座りながら横目でこちらを見てくる小鳥遊ホシノ。
「うちは一度連邦生徒会に喧嘩売って負けてる」
「え?」
『そうなんですか?』
「……あまり思い出したくない思い出だ」
組織が勢い着いてきたころ、ブラックマーケットの外部侵略を計画していた俺たち。連邦生徒会を襲撃して組織に箔をつけ、組織の名を轟かせようとしていた。その計画決行の前日、『アイツ』は現れた。拳銃1個で単身で当時のアジトに突っ込んできた連邦生徒会長。当時のアジトは壊滅され、構成員も倒され、俺自身拘束された。
その後計画の撤回、ブラックマーケット内勢力の安定させることを約束させられ、解放された。以降、俺たちは連邦生徒会長からの裏取引で素早く勢力を拡大し、ブラックマーケットの半分を平定した。このままブラックマーケットすべてを平定し、あの連邦生徒会長はこのキヴォトスのう表裏すべてを支配するはずだった。だが急にシャーレの部長に任命され、アイツは消えた。現在ブラックマーケット平定計画は一時停止中だ。
「……生徒会は生徒会でできることはしようとしていた」
「ほんとー?」
「現実は、想った以上に汚れているんだね。私達はアビドスにばかり気を取られすぎて、外の事をあまりに知らな過ぎたかも……」
シロコがそう言う。お前は現実どころか、常識も知らなすぎだ。捨て子か、記憶喪失かオメー。
『お取込み中失礼します! そちらに武装した集団が接近中!』
「!!」
『気づかれた様子はありませんが……まずは身を潜めたほうが良いと思います』
視線をたい焼きから上げると視界の端に黒い全身サイバーウェアの兵士が見える。
「う、うわあっ! あ、あれは」
「あれがここらの治安機関」
「「マーケットガード」」(です!)
「皆さん、隠れましょう!」
ヒフミが先導して路地に隠れる。それに続く面々。お、良い高さに室外機が。飛び上がり上からの視界を確保する。
「……パトロール? 護衛中のようです」
「車両が見える」
隠れた俺たちの前を装甲車両が通る。
「トラック……現金輸送車だね」
「闇銀行に入りましたね」
「グラン、気が付かれないように近くまで飛べる?」
先生がこちらを見上げてそう話す。偵察か……任せろ。本業はそっちだったしな。
「了解」
壁や木を足場に飛んで闇銀行まで近づく。
「今月の集金です」
「ご苦労様、早かったな。ではこの集金確認書類にサインを」
「かしこまりました」
「……良いでしょう」
「では、失礼します」
現金輸送車のわきで守衛となんだか見覚えのある男が書類のやりとりをしていた。その様子を通信機で撮影し、先生の端末に送る。向こうで先生と対策委員会とヒフミが見ているはずだ。
「見てください、この人」
「あれ……? な、なんで? あいつ、毎月ウチの利息を受け取っている銀行員じゃない!」
「あれ、ほんとだ」
「どいうこと?」
『ほ、本当ですね! 午前中に利息を払ったカイザーローンの車がどうしてここに?』
「か、カイザーローンですか!?」
対策委員会の面々の顔がどんどん曇っていく。アヤネが車を確認して声を上げるとヒフミがさらに大きな声を上げる。……あっぶねぇ、少し離れた所で撮影していて助かった。こいつら、俺が偵察していること忘れて大声出しやがる。
「ヒフミちゃん、知っているの?」
「カイザーローンといえば、かのカイザーコーポレーションの運営する高利金融業者です……」
「有名……マズイ所?」
「あ、いえ、カイザーグループ自体は犯罪を起こしていません。しかし合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振舞っている多角化企業で。カイザーは私達トリニティ自治区にもかなり進出しているのですが、生徒たちへの影響を考慮して『ティーパーティー』でも目を光らせています」
「『ティーパーティー』……トリニティの生徒会が、ね」
ティーパーティーか……ミカは元気だろうか。最近会っていなかったし、近頃尋ねてみるか。
「ところでアビドスのみなさんの借金はもしかしてカイザーローンから?」
「借りたのは私たちじゃないんですけどね……」
「話すと長くなるんだよねぇー……アヤネちゃん、さっき入って行った現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください……駄目です。すべてのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません」
「だろうな」
「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それってつまり」
「私たちが支払っていた現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた?」
「じゃあ何? 私達はブラックマーケットに、犯罪資金を提供していたって事!?」
シロコの言葉にセリカが怒声で続ける。セリカは今までバイトをしたり、怪しげなものに手をだしたり……まぁ、色々あったが純粋にアビドスの借金解決のために努力していた、だからこそこうしてその努力を踏みにじられたのが悔しいのだろう。
『まだ、そうハッキリとは……証拠も足りませんし』
「……あ、さっきサインしていた集金確認の書類……。それが証拠になりませんか?」
ん?
「さすが」
「そりゃナイスアイデアだねー、ヒフミちゃん」
「あはは、でも考えたら、書類はもう銀行の中ですし無理ですよね」
銀行の中……。
「うん、方法は一つしかない」
「えッ?」
シロコ……?
「ホシノ先輩、ここは例の方法しか」
「なるほど、あれかー。あれなのかー」
本気か?
「あ……! そうですね、あの方法なら!」
「何、どういう事? ……まさか、私が思っているあの方法じゃないよね? う、嘘!? 本気で!?」
……こいつら、マジか。
「……あ、あのう。全然話が見えないんですけれど……『あの方法』って、何ですか?」
「残された方法は、たった一つ」
あーあーあーあー。シロコ、お前本当にウチの組織に来ないか。
ガトリングや、ショットガン、マシンガンの一斉射撃の中をスイスイと避けて「お話があります」とか言って接近してくる連邦生徒会長。さすが超人だぁ……。 当時グランくんは本気で死ぬ覚悟をしました。
評価、感想は作者の承認欲求モンスターが満たされるので執筆速度向上につながります。どうぞよろしくお願いします。
グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1
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