シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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20話

◎・闇銀行・ 

 

「お待たせいたしました、お客様」

「なにが『お待たせしました』よ! 本当に待ったわよ! 6時間も! ここで!」

 

 銀行審査官が書類を片手に持ちながら、窓口にやってくる。銀行審査官に対峙しているアルは腕を組んだ姿勢のまま大声を出す。

 

「融資の審査に、何で半日かかるの!? 別にウチより先に人もいなさそうだったのに! 私の連れは待ちくたびれてそこのソファーで寝ちゃっているし!」

 

 腕をといて、後ろを指さす。その指先には待合室のソファーで身を寄せ合っている他の便利屋の面々がいた。真ん中に位置して両隣のムツキとハルカから寄りかかられているカヨコの顔が若干寝苦しそうだ。

 

「私共の内々の事情でして、ご了承ください。ところで、アル様。あなたはそのような態度をとれる状況ではないと思うのですが?」

「あ、うう……」

「当行の助けが必要なら、辛抱強くお待ち頂く事も大事かと。……あ、それとお連れの方ですが、そちらでお休みになられては困ります。セキュリティ、あの浮浪者……いえ、お客様を起こして差し上げなさい」

 

 銀行審査官が指を鳴らすと銀行内を巡回していたガードがソファーに近づいて便利屋たちをたたき起こす。

 

「ほら、起きた起きた!」

「むにゃ……うは!? 何々!?」

「………はッ!」

「ああっ……す、すみませんっ、居眠りしてすみません!」

 

 驚いて飛び上がる三人。三人が起きたことを確認して銀行審査官が書類を広げてアルに向き直る。アルはその圧に苦し気な表情をしてしまう。

 

「さて、では一緒にご確認を。お名前は『陸八魔アル』様。ゲヘナ学園の二年生ですね。現在便利屋68の社長、ですか……この便利屋はペーパーカンパニーではありませんか? 書類上では、財政が破綻していますが?」

「ちゃ、ちゃんと稼いでいるわよ! まだ依頼料を回収できていないだけで……」

「それと、従業員は社長を含めて4名のみですが、室長に課長、そして平社員……肩書の無駄遣いでは? 会社ごっこでもしているのですか?」

「そ、それは……か、肩書があった方が仕事の依頼を……」

「あとですね。必要以上に事務所の賃貸料が高いです。財政状況に合った物件を見つけて頂かないと」

「ちゃ、ちゃんとしたオフィスのほうが……仕事の依頼を……」

「……」

 

 アルの言葉に銀行審査官は呆れて言葉も出てこなかった。彼は一度目を伏せた後、手元の書類をかたずけ始めた。

 

「アル様。これでは、融資は難しいですね」

「えっ、えーっ!?」

 

 白目で絶叫するアル。銀行審査官は別の書類をとりだしてアルの前に広げる。

 

「まずは、より堅実な職に就いてみては如何でしょうか。日雇いや期間工など手っ取り早く始められるものもありますが」

「は? はぁぁぁ!?(ムカつく! もう大暴れして、銀行のお金持ち出しちゃおうかしら? ……いや、駄目ね。ここからお金を持ち出せたとしても、ブラックマーケットから抜け出すのは至難の業。あちこちにブラックマーケットがいるし、すぐ隣の領地は敵対中の『ODI ET AMO』のもの。……でも、もしかすると、実は大したことない連中なのかもしれない。私たち4人なら、全員叩きのめして逃げ切れそうな気も……。あーっ!やっぱり無理。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ……)」

 

 アルは顔を伏せ、唇をかみ、涙をこらえる。あらゆる意味で、現実は厳しい。

 

(くそっ、何よこれ、情けない……キヴォトス一のアウトローになるって心に決めたのに。私は……。融資だのなんだの……こんなつまらないことばかりに悩まされて……。私が望んでいるのはこれじゃない……何事も恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー……そうなりたかったのに……)

 

 そうアルが落ち込んでいるさなか、銀行中の電気が消えた。

 

「な、何事ですか? て、停電!? い、一体誰が、パソコンの電源も落ちたぞ!?」

 

ダダダダダダダッ! 

 

 辺りに銃声が響く。

 

「銃声!?」

 

 アルは素早く屈み、近くの障害物に隠れる。そして肩から愛銃を外し、暗がりの中で構える。何千、何万と行ってきた動きだ。暗闇の中でも素早く各所をチェックし、マガジンを挿入する。

 

「うわっ!?あああ!」

「ぐァッ!?」

「な、何が起きて!」

 

 暗闇の中なり続ける銃声と悲鳴。そして何も聞こえなくなったころ不意に電気がついた。銀行の中央ロビーに覆面を着けた5人組と中折れハットにサングラス、チェスターコートの男がいた。

 

「全員その場に伏せなさい。持っている武器は捨てて!」 

「言う事聞かないと、痛い目にあいますよ☆」

「あ、あはは……皆さん、怪我しちゃいけないので……伏せていて下さいね……」

「動いたら、頭部に集中砲火させてもらう」

「ぎ、銀行強盗!?」

「非常事態発生! 非常事態発生!」

 

 銃を持ってそう宣言した覆面の銀行強盗にアルと銀行審査官は驚愕した。銀行審査官はすばやく警備システムの起動を図るが、何の反応もなかった。

 

「うへ~無駄無駄ー。外部に通報される警備システムの電源は壊しちゃったからねー」

「ひ、ひぃ」

「動いたな」

「ま、まって―――ダダダダダダダタッ―――

 

 サングラスの男が構えたトンプソンM1928から銃弾が放たれ銀行審査官はそれ以上喋らなくなった。

 

「ほらそこ! 伏せてってば! 下手に動くとあの世往きだよ!」

「皆さん、お、お願いだからじっとしていて下さい……あぅう……」

「うへー、ここまでは計画通り! 次のステップに進もうー! リーダーのファウストさん、指示を願う!」

「えっ! えッ!? ファウストって、わ、私ですか? リーダーですか!? 私が!?」

「はい。リーダーです。ボスです。ちなみに私は……。覆面水着団のクリスティーナだお♧」

 

そういってポーズをとる3という数字が書かれた覆面。その様子を見た4番の覆面が溜まらんといった感じで声を上げる。

 

「うわ、何それ! いつから覆面水着団なんて名前になったの!? それにダサ過ぎ!」

「……」

「うへ、ファウストさんは怒ると怖いんだよー? 言う事聞かないと怒られるぞー?」

「あぅ、リーダーになっちゃいました…… これじゃティーパーティーの名に泥を塗る羽目に……」

「ブラックマーケットに入り浸ってるだけで大分ももう泥塗ってるから気にするな」

 

 銀行員とガード達を1か所に集めて縛り上げる覆面の集団。その中から数人だけを連れ出し金庫の前まで連れていく。その様子を見ていた便利屋の面々。

 

「あれ、あいつら……」

「あ……アビドス……なの?」

「だよね、アビドスの子たちじゃん。知らない顔も居るけど。……ここで何やってるんだろ? 覆面なんかしちゃってさ」

「ね、狙いは私たちでしょうかっ!? それなら返り討ちにしちゃいましょうか!?」

「いや、ターゲットは私たちじゃない。……あの子たちまさかここを……?」

 

 カヨコはアビドスの面々が借金返済のために銀行強盗に出たものと考えた。一緒に水戸グランもいるし、ここは彼にとっては領地ではない。ここの銀行をアビドスに襲わせてこのエリアの力を削ぐつもりなのか? そうすれば領地を奪いやすくなるし。と考えた。

 

「監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内部の構造、すべて頭に入ってる。ん、抵抗は無駄。さぁ、この金庫を開いてバッグに少し前に到着した現金輸送車の……―――」

「わ、わかりました。何でも差し上げます! 現金でも債券でも金塊でも!、幾らでも持って行ってください!」

「そ、そうじゃなくて……集金記録を……」

「どっ、どうぞ! これでもかと詰めました! どうか命だけは!」

「あ……う、うーん」

 

 2番の覆面に銃を突き付けられた銀行員は先ほど容赦なく、頭部に連射された同僚の事を思い出し、半狂乱になりながら、バッグに片っ端からものを詰めていく。その様子を障害物越しに見つめていたアルは感動していた。

 

(や、ヤバーイ! この人達何なの!? ブラックマーケットの銀行を襲うなんて! どう逃げるつもりなのかしら? いや、それ以前に、こんな大胆な計画を立てちゃうアウトローが、未だに存在するなんて!! めちゃくちゃ手際良いし、超プロフェッショナル。 まるでこのためだけに生まれて来たみたい。ものの5分でやってのけたわ! かっ、カッコイイ……! シビれるっ! これぞ正に真のアウトロー! うわぁ……涙が出そう!)

「社長は全然気づいてないみたいだけど……」

「むしろ目なんか輝かせちゃって」

「はぁ……」

「わ、私たちはここで待機でしょうか?」

「……あの子たちを手助けする理由も、銀行側につく理由もない。それに社長があんな状態だから、取り敢えず様子見」

「は、はい」

 

 覆面集団に感動して動きを止めているアルを放置して便利屋3人は巻き添えを喰らわない場所まで移動して待機することを選んだ。

 

「あの、シロ……い、いや、ブルー先輩! ブツは手に入った?」

「あ、う、うん。確保した」

「それじゃあ逃げるよー! 全員撤収!」

「アディオ~ス☆」

「ケガ人は居ないみたいですし……すみませんでした、さようなら!」

 

 一番の覆面が撤収を呼びかけ、全員が出入口に向かう。覆面集団が撤収したあと銀行員が大声を上げる。

 

「や、奴らを捕まえろ! 道路を封鎖! マーケットガードに通報だ! 一人も逃がすな! ん?」

 

 銀行員が出入口を見ると、サングラスの男がこちらに向かってこん棒のようなものを両手に構えているのが見えた。

 

「発射」

「うわぁぁぁぁ!」

 

 男が構えていたのはパンツァーファウストだった。弾薬部分直撃して出入口を崩壊させた。それを確認してから男は覆面集団に合流するのだった。

 

 




グランの恰好はシルバーシュラウドだと思ってください。パンツァーファウスト、良いですよね。ゲヘナ帰宅部のどっちかが持っていてくれたりしないだろうか。
 あと今回から新しいアンケートが始まります。グラン若返り回のアンケートは前話のページまでしか表示されないので、良ければご投票ください。今回のアンケート、何が誰か分かるかな?

グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その1

  • 看板娘
  • 任侠娘
  • 眠り姫
  • 大和撫子
  • カードバトラー
  • 陰陽部のアイドル
  • キヴォトス最高の忍者
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