シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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22話

 ブラックマーケットでの銀行強盗を終え、ヒフミを連れて『ODI ET AMO』の本部、通称『塔』へと来ていた。塔内部の会議室を借りて、全員で書類の確認をしていた。

 

「なっ、なにこれ!? 一体どういう事なのっ!?」

 

 会議室にセリカの大声が響く、小鳥遊ホシノが手早くセリカの見ていた書類を取ってこちらに渡す。それを俺はプロジェクターにかけて、部屋全体から見えるように投影する。そこには、ヘルメット団とカイザーローンのつながりを示す明確な証拠があった。

 

「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されている。私達の学校に来たあのトラックで間違いない。……でも、その後すぐにカタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万提供』って記録がある……」

「ということは……」

「私達のお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行して任務補助金を渡したって事だよね!?」

「任務だなんて……ヘルメット団の背後にいたのはカイザーローン?」

 

 セリカは怒声を上げる。……セリカの怒りは色々見てきたつもりだが、ここまで怒っているのは初めてだ。それほどまでに許せなかったのだろう。アヤネはヘルメット団の背後の存在に驚いて言葉を失っている。

 

「ど、どいうことでしょう!? 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収出来ないでしょうに、どうしてそのような事を……!?」

「ふーん……」

「この件、どう考えても銀行単独の仕業じゃなさそうだね、カイザーコーポレーション本社の息が掛かっているとしか思えない……」

「敵はカイザーグループか……」

 

 ノノミは理解ができないのか困惑しているし、小鳥遊ホシノは考え込んでしまった。……相手がカイザーグループ全体として俺は、『ODI ET AMO』は勝てるのか? ……無理だな。確かに『ODI ET AMO』は強大な組織になったが、それもブラックマーケットという限られた地域の中での話。キヴォトス全体に根を下ろしているカイザーグループとは文字通り組織として規模が違いすぎる。

 

「……はい、そう見るのが妥当ですね」

「お金じゃない?」

「どうした先生?」

 

 先生が俯きながら何かを口にしたのが聞こえたので聞き返す。

 

「ねぇ、アビドスには何か特産品とか、他の自治区にはない珍しいものがあったりしない?」

「「砂」」

 

 小鳥遊ホシノと声が重なる。……本当に何もないしな。仕方がない。数年前に実施したという石油ボーリング調査も成果なしだったはずだ。結局結論は出ずにその場は解散となった。

 

◎・塔の屋上・

 

 解散後、対策委員会とヒフミは部下にそれぞれの自治領に送らせた。俺は一人、屋上で遠くを見ていた。境界線の向こう側、カイザーグループが幅を利かせているブラックマーケットの地域を見つめる。時刻は午後の4時、いつもなら夕日が見えるのだが、先ほどから雲行きが怪しくなっている。まるでアビドスのこれからを現しているようだ。

 

「まったく、忌々しい」

 

 胸ポケットから煙草を取り出して火をつける。雲と同じ色をした煙が立ち上る。感情が平坦になっていく。『シャーレ』『アビドス』『小鳥遊ホシノ』『借金』『ブラックマーケット』『カイザーグループ』いくつもの単語が頭に浮かんでは消えていく。ピリピリともう無いはずの左腕が痛む。

 

「……うッ。このっ、俺の体だろうが! 俺の意思に逆らうな!」

 

 震えだす体を無理やり抑え込もうとする。左腕の残っている部分を右手で握りしめ、タバコの煙を目いっぱい吸い込むことで感覚を鈍化させようとする。

 

「こーら。この不良生徒め」

 

 ふわっと、誰かに後ろから抱きしめられる。背中にほのかな体温を感じ、鼻孔をやさしい匂いがくすぐる。煙草も口から外される。後ろを見れば先生がいた。……しまったこの人は帰らずに残っていたんだった。

 

「はぁ、タバコなんてどこから手に入れているのやら」

「そ、それを返せ!」

「だーめ!」

「お、おい!?」

 

 先生は俺の手を躱して手に持ったタバコを塔から投げた。あー、あー、もったいない。

 

「……というか、先生ともあろう人がタバコのポイ捨てなんてしていいのか?」

「……あ、あとで拾うから! それに今のは生徒を救うためだから! 超法規的存在だし!」

 

 すっげぇ理論。しかし先生はすぐに真面目な顔をしてこちらを見つめる。

 

「そこまで自分を卑下しなくても大丈夫」

「は?」

「対策委員会のお金がブラックマーケットに流れていたことでそのお金の一部を自身も利用していたかも知れないって思っちゃったんでしょう? それで罪悪感を感じてしまった。そうでしょう?」

 

 この人には本当に敵わない。……まったく、その通りだ。アビドスに来た銀行員が現金でしか借金返済を受け付けないと聞かされた時から薄々予想はしていた。領地が違うとはいえ同じブラックマーケット。こちらの資金があちらに流れることもあったし、その逆もしかりだ。

 

「今まで何も考えなかった。……考えないようにしていた。自分の今の立場がどうやって作られているかなんて。ブラックマーケットに来た時はただ金を稼ぎたかった。けど、対策委員会の奴らを見ていて今更罪悪感を感じている単純な自分が嫌になった」

 

 屋上のフェンスに寄りかかりながらそう語る。眼下に広がるビルの明かりを睨む。この街は俺のもの、彼女たちの努力を食い散らかして手に入れた街。そう思うとなんだか気分が悪くなってきた。

 

「そっか」

 

 先生は俺の隣に来て、同じようにフェンスに寄りかかる。

 

「私はなんだかホッとしているよ。罪悪感を感じているってことは更生できるからね!」

「ハハッ……なんだそれ」

「更生の第一歩としてタバコは止めよっか」

「……」

「ほーら、さっさと出す。ある程度のおいたは見逃してあげるけど、お酒とタバコはどんな理由があっても生徒には吸わせないし、学園に持ち込ませない。Unwelcome Schoolだからね!」

 

 なぜそこだけ英語に? この人はこういうときは絶対に譲らないだろうし、仕方がない。渋々とタバコを先生に渡す。

 

「それにグランにとってアビドスは大切な後輩たちだから余計に罪悪感を感じるんだろうね」

「は?」

 

 今、先生はなんて言った?

 

「……こ、こう……はい?」

「あ、ごめんね。アビドスに来た時からグランの様子が変だったからアロナに頼んで調べて貰ったの」

 

 まて、待ってくれ。それは……

 

「そしたら2年前のグランの学歴が出てきたの。

『アビドス高校1年 生徒会書記 水戸グラン』って」

「……それは、誰かに言ったか?」

「いや、まだだよ」

「そっか、黙っていてくれると助かる」

「うん。わかった。私はもう戻ってるよ。もう、雨も降りだしそうだしグランも中に戻ろ?」

「……少しだけまだここにいるから先生は戻っていて構わない」

「そう? じゃあ、グランも早いうちに中に入りなよ。可愛い後輩たちの為にも頑張ろうね! 私も力を貸すから!」

 

 先生は塔内部に戻っていった。フェンスから体を起こす。先生に悪気がなかったのはわかる。ただ、あのままだとフェンスの向こう側へ体を投げそうだった。屋上に座り込む。記憶にこびりついている光景が頭の中を埋める。

 

 

◎・いつかの記憶・

 

 

 砂にまみれた学校。迎えてくれたほわほわした先輩。キツい感じの同級生。

『こんにちは~。君たちがグラン君とホシノちゃんだね? ようこそアビドス高等学校へ!』

『小鳥遊ホシノです。よろしくお願いします』

『はい! 水戸グランです! これからよろしくお願いします!』

『ほえ~、おっきい銃。君はスナイパーかな?』

『はい!』

 

 そのちんまい見た目からは想像できないぐらいキツイ性格だった同級生。

『ユメ先輩、どうしたんですかそれ?』

『アビドス砂祭りのポスター……だったものかな』

『……ホシノさんですか。少し、僕が言ってきましょうか?』

『ううん、大丈夫。私がもっとちゃんとしてればよかったんだよ』

 

 少したって棘が取れてきた同級生。晴天の元、写真を撮る。

『グラン君! 急がないとタイマー切れちゃうよ!』

『早くしてください。グランはいつもどんくさいんですから』

『わかってるよ、ホシノ! 二人もほらポーズとって!』

 

 最近はチンピラの数も少なく、穏やかな日常が続いている。

『グラン君の髪長いしサラサラでいいなー。私毛先の方くるくるだし~』

『私はショートですが確かにこの長くてきれいな髪は少し憧れます』

『あの……二人とも撫でるのをやめていただけると……』

 

 帰り道、顔を少し赤くしながら控えめにこちらの袖を引っ張るホシノ。

『あ、あの。グランの事は信頼しています。だ、だから、これから先も私の隣で一緒に……――――

 

 崩れゆく地下通路。鳴り響くアラート。ホシノを担いで駆け抜ける。

『離してッ! まだユメ先輩が! 離せッ! 離せよッ!』

 

 こちらを殺さんとする表情で手に持ったショットガンを向けてくるホシノ。

『お前が……、お前がユメ先輩を殺したんだッ!』

 

 ホシノに一方的に攻撃されて地面を転がる。涙に塗れた顔でこちらを見下ろすホシノ。

『出て行って……出てけ! もう顔も見たくない!』

 

 アビドスを出てたどり着いたブラックマーケット。左腕は壊され激痛に呻きながら決心する。

『もう……もう、アビドスは真っ当な手段じゃ救えない……。力がいる。もう誰もアビドスを害そうなんて考えないぐらいの圧倒的な財力と暴力が……』

 

 ブラックマーケットはまさに地獄だ。アビドスにいた不良なんて本当にただのチンピラだった。実力に差がありすぎる。ただ、仲間もできた。

『あなたはいつも怪我をしていますね。そんなになってまであなたは何がしたいんですか?』

『ムイか……。力、力が必要なんだ。財力も、暴力も……そうだな、お前の知力も欲しい。どうだ?俺の最初の部下になるつもりはないか?』

『考えておいてあげますから、今は休んでください』

 

 力。他を圧倒して追随を許さない圧倒的な力。目を閉じれば浮かぶ、彼女の姿。そうだ、彼女のようになる必要がある。

『髪を切って、防弾ベストとグローブ。……あとはショットガンか』

 

 個人の力も大事だが、組織としての力も無視できない。故に裏切り者には容赦はしない。これは組織の運営上必要なことだ。だから仕方がない。

『あ゛あ゛あ゛あ゛アあ゛あ゛あ゛! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛!』

『五月蠅いなぁ……。腕と足を一本ずつ吹き飛ばしただけだろうが。俺はこんな声上げなかったぞ』

 

 裏切り者の手足を俺と同じようにしてから解放して少し立った日、部下から報告を受ける。

『リーダー。あの〇〇ですが、ブラックマーケット市内の公園で自殺したようです』

『あぁ、自殺?』

『はい。手足のない生活に耐えきれなかったようです』

『……そうか』

 

 部下と別れ自室で一人考える。自殺……人が死んだのか。……俺が殺したようなもんだよな。……ユメ先輩。俺、貴方だけじゃ無くて他にも人殺しちゃった。もう、もう止まれない。止まっちゃダメなんだ。どこまでもやってやる。どんな手でも使ってやる。数多の死体の山を築いて俺はアビドスを救って見せる。そうだ……ユメ先輩もホシノもアビドスが救われることを望んでいる! そうに違いない! 

 

 暫くして、300近い大小のグループが鎬を削るブラックマーケットで俺は立った1グループでブラックマーケットの50%を支配する巨大組織のトップに立っていた。その強大な力の前に『ブラックマーケット代表』として連邦議会にも出席できるほどの力を手に入れた。これだ、この力があればアビドスを――『そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ』――ホシノ?(ユメ先輩?)

 

 ……じゃあ、俺が今までやってきたこと(築き上げた死体の山)の意味は?





あーあ、グラン壊れちゃった。あなた達(覆面水着団)のせいだよー!

初期案だと『小島アクア』という名前でどちらかというとギャグ作品だったんだけどなぁー。

グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その2

  • ヒゲ
  • 側近
  • 突撃
  • 望遠鏡
  • カンポット
  • 文学少女
  • ストライキ
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