◎・柴関跡・
「と、とりあえず。喧嘩はしないで二人でグランを治療して!」
「は、はい」
「先生がそういうなら」
先生が二人に声をかけてチナツの温泉発言の後止まっていた皆を動き出させる。テキパキと行動する二人。
「これは……。幸か不幸か、左バラに入っていたプレートのお陰で深くは刺さらずに済んでいます」
「麻酔、止血剤、縫合糸……このドローン素晴らしいですね。あらゆる状況に対応できるようになっています」
アヤネが患部を見て診断して、チナツが対策委員会の医療ドローンの物資を見て驚いている。グランは少し苦し気な表情をしているがおとなしく治療を受けている。その間先生たちは爆発から復活したイオリに話しかける。
「一応、所属を聞いても良いかな」
「それは……」
『それは私から答えさせていただきます』
イオリと先生の間に通信ホログラムである人物が現れる。イオリはその人物をみて気まずそうな顔をしている。
「アコちゃん……」
「アコ行政官……」
チナツも一度治療の手を止めてアコと呼ばれた人物の方を見る。
『こんにちはアビドスの皆さま。そしてそしてシャーレの方々。私はゲヘナ学園所属の行政官、天雨アコと申します。今の状況について少し説明させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?』
「アコちゃん……その」
『イオリ。反省文のテンプレートは私の机の左の引き出しにあります。ご存じですよね?』
笑顔のままイオリにそう言い放つ、アコ。その表情からは笑顔でありながら確かな圧を放っていた。
「行政官……風紀委員のナンバー2ということでしょうか?」
『あら、実際はそんな大したものではありません、あくまで風紀委員長を補佐する秘書のようなものでして―――』
「違う」
ノノミがアコに質問をする。アコはそれを否定しようとするが途中でシロコが声をかぶせてその声を否定する。
「本当にそうなら、そこの風紀委員たちがそんなに緊張するとは思えない」
「だ、誰が緊張しているって!?」
『……成程、素晴らしい洞察力です。確か……砂狼シロコさんでしたか? アビドスにまだ生徒会だけが残っていると聞きましたが皆さんのことのようですね。アビドスの生徒会は確か五名。代表は違いますし、あと一人はどちらに?』
「今は席を外しておりまして。そして私たちはアビドス対策委員会です、天雨行政官」
アコに真正面から相対するノノミ。そこには対策委員会の副委員長としての普段の姿とは違う、力強い姿があった。アコはノノミの言葉を聞いて怪訝な顔をする。ちなみに先生は片方はホログラムとはいえ、目の前で揺れ動く四つの大きな
『十六夜さんでしたか? それでは現在生徒会の方はいらっしゃらないということでしょうか? 私は生徒会の方と話がしたいのですが』
「アビドスの生徒会はずっと前に解散したの! 事実上私達が生徒会の代理みたいなものだから、言いたい事があるなら私らに言いなさい!」
「こんなに戦力を連れて『お話をしましょうか~』なんて言うのは、お話の態度としてはどうかと思いますけどね? まぁその戦力も大半はなくなってしまいましたが」
『そ、それもそうですね。 全員、一時後退してください。イオリとチナツのみその場で待機』
アコの言葉を聞いて風紀委員は幹部を除いて後退し始めた。
「あら……」
「本当に後退した……」
「どうせ、再配置して襲ってくるつもりだろ?」
『ふふふ、信用ありませんね』
「あたりまえだ」
後退する風紀委員を治療を受けながら見て再襲撃の可能性を示唆するグラン。アコは笑いながら返事をするが、『再襲撃がない』とはけっして言わなかった。麻酔が効いてきたのもあってグランはそれ以上何も言うつもりはなく、眠りにつく。
『先程までの愚行は、私の方から謝罪させて頂きます』
「なっ、私は命令通りにやったんだけど!? アコちゃん!?」
『命令に「まず無差別に攻撃せよ」なんて言葉がありましたか? まさかブラックマーケットの代表にこのような負傷を負わせるとは……』
「そっちは後で抗議させてもらうからな……」
『それに、他の学園自治区付近なのだから、きちんとその辺りは注意するのが当然でしょう?』
「……?」
アコの言葉に、何か違和感を感じるアヤネ。しかしそれよりも今はグランの治療を優先するべく頭の隅に避けておく。
『失礼しました、対策委員会の皆さん。私達ゲヘナ風紀委員会はあくまで、私達の学園の校則違反をした方々を逮捕する為に来ました。あまり望ましくない出来事もありましたが、まだ違法行為とも言い切れないでしょうし……ご理解いただけますと幸いです。風紀委員会としての活動に、ご協力お願いできませんか?』
「お断りします☆」
ノノミは笑顔を浮かべきっぱりと断る。
「他の学校が我が校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をする。自治権の観点からして、明確な違反ですね。グラン先輩も傷物にされて「おい」しまいましたし。便利屋も今はグラン先輩が雇った人材です。彼女たちの処遇は私たちアビドス対策委員会が決めます!」
「なるほど。そちらの皆さんは全員同じ考えのようですね。……ふぅ。この兵力を前に怯まないなんて。これは信じられる大人がいるからでしょうか? ねぇ、ニイ先生? あなたも同じ意見ですか?」
先生の方を見て笑みを浮かべるアコ。先生は胸から視線を移し、真面目な顔をしてアコに向き合い自身の意見を主張する。
「便利屋はちょっと困った子たちかもだけど、悪人じゃないから」
「いやいや、悪人ではあるわよ! 柴関吹き飛ばしたじゃない!?」
先生の言葉に一番柴関に思い入れがあるセリカが突っ込みを入れる。両手を振って猛抗議するセリカ。そんなセリカの肩に手を置く人がいた。シロコだ。
「多分あれは……間違って爆破させちゃって収拾がつかなくなってるだけ。つまり見栄を張ったまま言い出せずになってるだけだと思う」
「はぁ!?」
「私たちを狙っていたなら、私たちが店に来たタイミングで爆破させればいい。こんな大掛かりの爆発を、あんな状況で使う意味なんてないはず」
「た、確かにそうね。罠の準備中に間違えて爆破させたってこと?……どんだけ馬鹿なのよ、あいつら……」
「でも結果的に柴関ラーメンを攻撃したのは事実。このまま引き渡す訳にはいかない」
シロコの推理を聞いて、すっかり落ち着いてしまったセリカ。もう先ほどの強い怒りは感じられない。
「彼女たちの背後にいる存在の正体もまだ分かっていませんし、先にお話しを書きせてもらいませんと。
……というわけで、交渉は決裂です。対策委員会の副委員長としてゲヘナの風紀委員会に退去を要求します」
ノノミの要求を聞いたアコは暫く考え込むような動作をしたあと目を細め対策委員会を見る。
『これは困りました。……本当は穏便に済ませたかったのですが……。ヤるしかなさそうですね?』
「白々しいよ、天雨アコ」
『あらッ?』
声がした方を見ればジト目をしたカヨコがアコを睨んでいた。
「偶然なんかじゃない。アンタは最初からこの状況を狙ってた。風紀委員会が私たちを狙って他の自治区まで追ってくる? 中隊規模の兵力で? こんな非効率的な運用、いつもの風紀委員長ならまずしない。だからアコ、これはアンタの独断行動に違いない。 この多すぎる兵力も私たち以外の勢力との戦闘を想定していたとすれば、説明が付く。アンタはその風紀委員に文句を言ってたが、誰よりもアンタがブラックマーケット勢力との戦闘を想定していた。アコ、アンタの狙いはシャーレ。先生と水戸グランを狙ってここまできたんだ」
「!?」
「何ですって!?」
「先生とグラン先輩をですか……」
「私?」
カヨコの言葉を聞いたアコは口元に笑みを浮かべながらタブレットを操作する。
『便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。のんきにお話ししている暇なんてありませんでしたね。まぁ、もう構いませんが』
それと同時にアヤネのタブレットに通知が届く。急いで確認すれば武装集団確認の文字が。
「12時、6時、3時、9時……風紀委員会の戦力再び四方から侵攻してきます!」
『少々やり過ぎかとも思いましたが……シャーレを相手にするのですから、この程度はあっても困らないでしょうし。まぁ、大は小を兼ねると云いますからね☆ チナツ、イオリ、撤退して本隊と合流しなさい』
「行かせると思う?」
イオリとチナツに向けてカヨコやシロコが一斉に銃を向ける。いくら兵力があろうと、幹部を人質にとればある程度やりようは出てくるという考えだった。しかしアコもそれは想定していたようであった。
『いいえ、撤退させます。あなた達はイオリ、チナツを捕まえるよりも重要なタスクができますから。しっかり先生と代表を守ってくださいね。ああ、先生の方だけでも構いませんよ? チナツ、せっかくですし代表はあなたが持ち帰ったらどうです? かなり好意を寄せているようですし』
「アコちゃん何を? まさか!?」
「アコ行政官?」
ドォン! ドォン!
ヒューーーー、
「これは……砲撃音!?」
「遠距離から砲撃確認!」
「ここに!? ここに撃ったの!?」
「先生、退避してください!」
シロコが先生を担いで走り出す。目の前にいるイオリやチナツの事など確かにどうでも良くなった。弾丸一発でも致命傷になりうる先生だ。砲撃なんか耐えれるはずがない。少しでも遠くに、少しでも障害物があるところへ向かわなければいけなかった。時間はもうない。便利屋も退避を開始していた。
「……代表はあなた達が連れて行ってください。さすがにこれはやりすぎです。私はこんな形でグランさんを手に入れたくはありませんから」
「は、はい! わ、渡しませんからね!」
「火宮チナツです」
「あ、奥空アヤネと言います」
「それではまたアヤネさん」
「チナツ、早く!」
「ええ、イオリ」
そういって軽く自己紹介をすましたアヤネとチナツ。今回の事はさすがにチナツも思うところがあったらしく、グランを対策委員会側に預けることにしたそうだ。イオリの急かす声に返事をして走り去っていった。
残されたアヤネはノノミと協力してグランを抱え、近くの障害物に隠れる。いくら頑丈なキヴォトス人とはいえ、今の状態で砲撃を喰らえばグランがどうなるかはわからない。少しでも後輩とグランにダメージが行かないように二人に覆いかぶさるように抱きしめるノノミ。
そして轟音と熱と衝撃が響いた。
やることが派手だねェ。 ずっとタイミング逃してたんですけど、先生の細かいプロフィール載せておきますね。
プロフィール
名前 屋浦ニイ
身長 166
スリーサイズ B99 W62 H90
所属 連邦捜査部『シャーレ』
武器 ステア―TMP
服装 基本的に便利屋先生と変わらないが、まれに白シャツ、黒タイトスカートになることもある。
特徴 腰まであるマゼンタの髪。酒とニチアサが趣味。女性の割にはかなり性に奔放。心におじさんが住んでいるとは自身の談。因みにバイ。お酒や性癖関係で割と残念美人であるが生徒のためにいつでも全力の『大人』で『先生』である。正しく、誠実な彼女の『大人』としての在り方は多くの人を惹きつけるが……。
キキキッ、この活躍。グランには……
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頭を撫でてもらう!
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手をつないでもらう!
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一日、私の隣で書類仕事だ!
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お、お出かけデートをしてもらう!
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一日中、家でゴロゴロするぞ!
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……(裾を引っ張ってベッドを指さす)