◎・ノノミ・
私は実家の作った列車があまり、好きではない。私の実家のセイント・ネフティス社はアビドス自治区の土着企業だ。私は幼いころからアビドスで過ごしてきた。砂まみれで、人も少なかったが、嫌いではなかった。
そんな私たちが手掛けたアビドス鉄道は結果自治区外への移住を加速させてしまっただけだった。最初は出来立ての駅構内を歩き回るのが好きだったが、しばらくすれば列車は砂と空気を運ぶだけのものになり人影も殆どない静かで恐ろしい空間になってしまった。わずかにいる人たち中には、私がセイント・ネフティス社の令嬢と知っている人もいて、アビドスを衰退させた元凶として悪口を言ってくる人もいました。詰め寄ってくる大人は私にとって恐怖でしかなく、いつも縮こまっていました。当時から私の発育は良かった方ですし、中にはいやらしい目で私を見て、怒鳴るついでに体を触ろうとしてくる人もいました。
「あの。その子は悪くないでしょう」
私を守るように、私と大人の間に入ってきた男子がいました。その男子は綺麗な長髪のポニーテール、首元にかけられたタクティカルグラス。何よりも目を引くのは、手に持っている大きなスナイパーライフル……いえ、もうあれはキャノンと言った方が良いものでした。口調こそ丁寧ですがその目はとても鋭いものでした。指はトリガーにかけられいつでも撃てることを相手に伝えており、その様子に大人の方は足早にこの場を離れていきました。
「大丈夫だった?」
大人を追い払った男子は私の顔を覗き込んでそう尋ねてくる。その柔らかな笑みで私の体を縛り付けていた恐怖は取り払われた。
「あ、ありがとうございます。けど、助けてよかったんですか? 私は……その、セイント・ネフティス社の……」
彼は少しきょとんとした後、また笑顔を浮かべてこちらの頭をガシガシと撫で始めた。
「いいの、いいの! そんなこと気にしないで! それに僕はこの鉄道のお陰で通学が楽になったし!まぁ、サイクリングとかが趣味ならちょうどいい距離何だろうけどね。 だから感謝してるよありがとう!」
『ありがとう』その一言が胸の中を突き抜けていく。そう、その一言がずっとほしかったんです。胸に嬉しいという感情があふれてくる。良かった、たとえ少なくてもこうして喜んでくれる人がいるなら私の家のやったことに意味はあった、無駄じゃなかった。そう思うと笑みが浮かぶ。
「良かった、良かったです。その言葉が私はずっと聞きたくて……。ありがとうございます。あ、でも女の子を撫でるときは変に撫でると髪のセットが崩れるから軽くポムポムと叩く程度にしておいた方がいいですよ」
「え! ご、ごめん」
男子はさっき大人に見せていた鋭さとはまるで別人で焦ったように、頭から手を放す。……少しもったいない気がしますね。男子は私の頭から離した腕にある腕時計を見て顔色を変える。
「やば……。ごめん、僕はもう時間だから行くね! 君も気を付けて!」
「は、はい! ありがとうございました!」
男子は急いでホーム内を走っていく。その後ろ姿にお礼をかければ、一度だけ振り返って手をふってくれた。それから少しの間、私は学校がない日は駅に向かってその男子の様子を陰から見ていました。話しかけにはいきませんでした。その、彼の真正面に立つと今でも油断すると顔が赤く、にやけてしまいますから。いつも柱の後ろなどから彼の背中を見ていました。
でもいつからでしょう。彼の姿が全く見れなくなりました。最初は通学時間を変えたのかと思いました。だから私もいつもよりだいぶ早い時間に駅にいって、遅い時間まで駅にいましたが彼の姿を見ることはありませんでした。
しばらくして気が付きました。彼もこの自治区を離れてしまったのだと。おそらく、この列車を使って。とてもつらかった。もう彼の背を見ることはできないのかと、枕を濡らしたものです。
『水戸グラン。ブラックマーケットで活動している『ODI ET AMO』というグループトップをしている。今は連邦生徒会長からの依頼でシャーレの部長も兼任している』
アビドス高等学校に入学して、2年生になった。ホシノ先輩、シロコちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃんと共にアビドス対策委員会として活動しているときに現れた貴方。久しぶりに見た貴方は髪が短くなっており、大きなスナイパーライフルもなく、あの柔らかな笑顔もなくなり、常に鋭い目をしていた。 なにより驚いたのは左腕、左足が作り物だったこと、そしてホシノ先輩との『繋がり』。あの時はそんな様子もなかった。ホシノ先輩の狼狽えぶりから『二人には過去何かがあった』。
それこそ、私の事を忘れてしまうくらいの何かがあったんでしょう☆。あ、でもアヤネちゃんの頭を撫でるとき私の言ったことを守っているのは高得点です!
どうしてそれで私を撫でてくれないんでしょう?
私とっても寂しいです。でも、貴方にとっては一回しか私に会ったことがありませんし、思い出してくれるまで待ちましょう。私、駅でずっと貴方の事を待っていたぐらい、待つのは得意なので☆
だから、ここで貴方に倒れられちゃうと困るんです。貴方にはしっかり、私を思い出してほしいんですから、そしたら貴方に伝えたい言葉があるんです。だから今度は
「私が貴方を守りますね☆」
「ノノミ先輩!?」
力なく横たわる貴方とアヤネちゃんを抱きしめて伏せる。響く轟音、地面を伝わってくる衝撃。背中に感じる瓦礫の当たる感覚。ゲヘナの風紀委員会さんも容赦がないですね。
◎・柴関跡・
「制圧射撃完了」
『風紀委員会、攻撃を開始してください。対策委員会と便利屋を制圧して、先生と代表を確保してください。先生はキヴォトス外部の人間なのでケガさせないように十分注意を』
風紀委員たちは命令を実行するべく前進して包囲を縮める。
「ん、先生、大丈夫?」
「ありがとう、シロコ。大丈夫だよ。みんな、聞こえる? 無事だったら返事して!」
シロコと先生が、瓦礫の裏から起き上がる。先生は自分を助けてくれてくれたシロコの頭を撫でまわす。そうして通信機に声をかけて全員の無事を確認する。
『こちら、便利屋68。全員無事よ』
「アル! 良かった、座標を送るけど合流できる?」
『確認したわ。大丈夫、向かえるわ。それから先生、風紀委員が包囲を狭めてきているわ。防衛戦の準備を』
「了解、ありがとう」
便利屋との通信が切れる。先生はシッテムの箱と自身の目を使って防衛線に向きそうな場所を探す。
『こちらセリカ、ブレザーがダメになったわ! 先生指揮を! こうなったら、とことんヤッてやるわ!』
「セリカも無事だったんだね。風紀委員会が包囲を縮めてきてるみたい。防衛戦をするから一度集まって」
『わかった』
「……シロコ、この瓦礫をあのビルまで運んで壁にすることはできる?」
「出来る」
「お願い」
「ん」
シロコに指示をしていると遠くから手を振りながら近づいてくる人影が見えた。グランを抱えた、ノノミとアヤネだった。アヤネは涙目で、ノノミは制服が所々破れていてかなり過激な形になってしまっている。二人に走り寄る先生。
「二人とも無事!?」
「はい~☆」
「はい、じゃありません! ノノミ先輩が私たちを庇って……ホントに心配したんですからね!」
ノノミの言葉にアヤネが食って掛かる。ノノミは少し汗をかきながら謝る。
「あはは、ごめんなさい。でもアヤネちゃんやグラン先輩に怪我をしてほしくなかったから」
「ノノミ、ちょっとごめんね」
「先生?」
ノノミの背後に回って、髪をかき上げて背中を見る先生。ノノミの背中には瓦礫による大小の切り傷や打撲痕があった。
「一度を奥に行って治療しよう。グランもビルの奥の方に寝かせる」
「はい、それと先生」
「ノノミ?」
「実は私の銃、壊れてしまって。ごめんなさい。攻撃には参加できなさそうです」
「大丈夫、気にしないで。私たちが何とかするから」
そういってノノミ、アヤネ、そしてグランはビルの奥に入っていく。ノノミにはああ言ったが、ノノミのリトルマシンガンⅤの火力は絶大だ。それが失われたのはかなりの痛手だ。リトルマシンガンⅤに近い火力はムツキの持っているトリックオアトリックぐらいだろう。
「先生! 待たせたわね!」
「お待たせ」
「むふふ、風紀委員たちに一杯プレゼント置いてきちゃった♪」
「こ、これ。私が埋めた爆弾の場所が書かれた地図です。指示があればいつでも吹っ飛ばせます!」
「ありがとう。アル、これ狙撃ポイントをまとめておいた。頼める?」
ハルカから爆弾の地図を受け取る。先ほどの攻撃で暴発してしまったりしていくつ使えるのが残っているのかはわからないが、かなりの爆弾が埋没しているらしい。地図を確認した後に別の地図をアルに渡す。地図を確認したアルは胸を張る。
「ええ、任せておいて! 完璧な仕事を見せてあげる!」
「先生、入り口の防壁完成した」
「みんな、これ持ってきたわ!」
シロコが声をかけてきて、防壁の完成を告げる。それと同じタイミングでセリカが何やら荷物をもって現れる。セリカに怪我がないか確認して防壁の内側に入る。先ほどの砲撃で電気系統が行かれたのだろう。防壁内は薄暗かった。奥では、グランが寝かされていて、アヤネがノノミの治療をしている。
セリカは荷物を広げて、中から水のペットボトルや乾パン。柴関にあったであろう、切られていないチャーシュー、調味料などがあった。
「大将にはあとで謝るわ。ほら、便利屋も食べなさい。一緒に風紀委員会をぶっ飛ばすわよ」
まな板と包丁を出して、チャーシューを切るセリカ。乾パンと一緒にして口に含む。微妙な味わいだが、何も食べないよりかは良いだろう。
「わぁ、美味しそ~」
「こら、ムツキ! チャーシューだけとるんじゃないわよ!」
「ありがと、頂きます」
「美味しいです!」
軽い腹ごしらえをした後、各々が行動を始める。
「アルは狙撃ポイントへ、カヨコ、シロコはビルの上階から攻撃。シロコはドローン、カヨコはムツキから爆弾を受け取って、投げつけて」
「ええー、私爆弾使えないのー?」
「ごめんね、ムツキ。けど、今はムツキの銃の火力が必要なの。ムツキ、ハルカ、セリカはこの防壁から攻撃、アヤネはここから各種ドローンを使って、偵察、治療をお願い」
「先生、便利屋で雇っていた傭兵たちにも連絡した。少ししたら到着する」
「ありがとうカヨコ。それでは行動開始!」
「「「「「「了解!」」」」」」
アルがビルの合間を風紀委員会に見つからないようにかけていく。ルートは先生が教えてくれるので、迷うことはない。彼女の心はかつてないほどに昂っていた。
「今の私はブラックマーケットの代表から特別な依頼を受けたお金次第でなんでもやる便利屋……。今、最高にアウトローしてるわ!」
狙撃ポイントについたアルはしっかりと銃を構え狙いをつける。この程度片手でも狙い撃てるがそんなことはしない。確実に当てて、この依頼をこなすのだ。余裕を見せる暇なんてない。
「風紀委員会の攻撃が始まった。社長が狙撃をしているけど、全然数が足りない。」
「ん、焦らない。私たちの仕事は防壁やビルに致命的ダメージを与えそうな重火器、兵器を破壊するだけ。大丈夫、セリカは強い、撃ち負けるなんてことは決してない。勿論あのハルカとムツキという子も」
「うん。ウチの社員は優秀だから」
ビルの上階から四方を確認し、防壁を崩しかねない兵器などに狙いを定めてドローンや爆弾で攻撃をしていくシロコとカヨコ。
「死んでください! 死んでください! 死んでください!」
「ねぇ!? 前から思っていたんだけど、その子アンタたちの中で一番ヤバいんじゃない!?」
「ムフフー、気が付いた? ハルカちゃんは一度キレたらヤバいよ~」
絶叫しながらショットガンを連射するハルカ。その様子を隣で見ながら戦々恐々としながら風紀委員会に攻撃するセリカ。セリカがビビっている姿を見て笑いながら機関銃をブッパするムツキ。確実に風紀委員会の数を減らしていく、対策委員会と便利屋。
『なるほど……』
「第一小隊全滅! 退却し、再整備に入ります!」
「第三、第四、第五、第六小隊戦闘の続行不能! 補給のため、一時撤退します!」
各部隊長からの報告を聞いて思案するアコ。
『だいたい把握できました。シャーレの力、必要となるであろう兵力……。予想を遥かに上回っています、素晴らしいですね。決して甘く見ていたわけではないのですが、もっと慎重に事を進めるべきだったかもしれません。それでも限界は来るでしょう……。第四中隊、待機を解除します。突入を』
アコが後方に待機していた四個目の中隊を行動させる。その様子をドローンで確認したアヤネは悲鳴に近い声を上げる。それにより対策委員会側の通信が荒れる。
『風紀委員会、4つ目の中隊が出現しました! まだこんなに兵力が……』
『はぁ、はぁ……まだ来るの!?』
『この状況で追加の中隊増援……!?』
『こっちはもう、弾も狙撃ポイントも残り少ないわ! 今はポイントΘに移動中よ!』
『ん、弾も爆弾ももうなくなる』
物量作戦となると、もともと金欠のアビドスと便利屋の方が劣勢になるのは必然だった。そしてこの量の兵力運用にゲヘナ学園出身の便利屋たちには嫌な予感がよぎる。
『この兵力……これはもう、アコの権限で動かせる兵力を超えている。この襲撃、アコの独断じゃなくて、まさか……』
『……風紀委員長が絡んでるかもね』
『え、ヒナが来るの!? 無理無理! にげ……。いえ、覚悟を決めなさい!』
『まだ決まったわけじゃないけど。そうだね、覚悟を決めておこうか』
だんだんと接近してくる風紀委員会に対して覚悟を決める面々。このまま、捕まれば自分たちはどうなるのだろうと不安に駆られるが、それでも最後まで足掻いて見せると決心した際、それは起きた。
ドカーーーーン
『何事ですか!』
「部隊後方から敵襲! 包囲が破られていきます!」
アコ驚愕の声を上げる。
「先生! 私たちが呼んだ傭兵が到着した!」
「ナイスタイミングー!」
カヨコとムツキが歓喜の声を上げる。傭兵は五人、二人組が二組と一人らしい。
「若造が……調子付くなよ。始める前から勝負はついている……この武装で負けるはずがない!」
「この前のように武器をバラバラにするなよ。値が下がると、何度言えばわかる」
「難しいこというねぇ」
「汚すのはかまわんぞ、純潔とかな」
「ヒデぇな、おい。ハハッ」
「あれだ同志よ。この地の平穏を乱す、愚か者たち」
「消さねばならぬ。さもなくば、この荒れ果てた地は救えぬ」
「「世に平穏のあらんことを」」
「世に平穏のあらんことを」
「世に平穏のあらんことを」
「世に平穏のあらんことを」
「世に平穏のあらんことを」
「世に平穏のあらんことを」
あ、新アンケートを二つも実施しちゃいます!
追記、アンケートって二つ同時には表示されないんですね……。
キキキッ、この活躍。グランには……
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頭を撫でてもらう!
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手をつないでもらう!
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一日、私の隣で書類仕事だ!
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お、お出かけデートをしてもらう!
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一日中、家でゴロゴロするぞ!
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……(裾を引っ張ってベッドを指さす)