シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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29話

◎・柴関跡・

 

 便利屋が呼んだ傭兵たちは前回のフレイムフライとは違いそれなりに腕が立つようで、風紀委員会相手にかなり食いついている。その様子にアコは焦りを見せ始める。

 

『これ以上は流石に……。委員長に知られてしまったらイオリと仲良く反省文ですね……。では続いて―――『アコ』え? ひ、ヒナ委員長!?』

 

 アコの通信に白髪の低身長でありながら威圧感を感じさせる存在が割り込んできた。その姿を見た途端、アコは動揺し始めた。

 

「委員長?」

「あの通信相手が? 委員長ってことは、風紀委員会のトップ!? あってるの?」

「あってるよ。風紀委員長その人だね」

 

 セリカが隣のムツキに確認すればムツキは苦虫を嚙み潰したような表情で真実だと告げる。

 

『い、委員長がどうしてこんな時間に――』

『アコ、今どこ?』

『わ、私ですか? 私は……そ、その……げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです! 風紀委員会のメンバーとパトロールを……』

 

 目を泳がせ、しどろもどろに返答をするアコ。

 

「思いっきり嘘じゃん!」

「ん、嘘つき」

 

 シロコとセリカがアコの言葉を非難する。

 

『そ、それより委員長はどうしてこんな時間に……出張中だったのでは?』

『さっき帰ってきた』

『そ、そうでしたか……! その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして……後ほどまたご連絡いたします! い、今はちょっと立て込んでいまして……!』

『立て込んでいる……? パトロールなのに珍しい、何かあったの?』

 

 ボロが出た。ヒナの追求するような目がアコを突き刺す。

 

『え? そ、その……それは……』

「『他の学園自治区で、委員会のメンバーを独断で運用しないといけないようなことが?』」

『……え?』

 

 声が二重に響き渡った。通信からの声と……肉声だ。戦場のど真ん中に彼女はいた。制圧したであろう傭兵を足蹴にして風紀委員のコートを翻し、巨大な銃を担いで圧倒的な存在感を放つ。

 

「ついに……俺の番か……」

「え、あれっ!?」

「委員長!? い、一体いつから!?」

「!!」

『え、えええぇっ!?』

「ヒ、ヒナぁぁぁ!?」

 

 風紀委員会も対策委員会も便利屋も、戦場全体が驚愕に包まれた。

 

「……アコ。この状況、きちんと説明してもらう」

『ゲヘナの風紀委員長……空崎ヒナ。 外見情報も一致しますし、便利屋さんからの確認もとれました。間違いなく本人です。ですが、風紀委員長ということはゲヘナにおいてトップの戦力……この状況でそんな人物まで……』

「私たちが呼んだ傭兵ももう制圧されてる。不味いね」

 

 アヤネとカヨコに緊張が走る。二人はどうすればこの状況を切り抜けられるか頭を回転させる。そんなとき先生が声を上げる。

 

「みんな、今ちょうど撃ち合いが止まってる。一度残弾確認して。向こうもなんか話し込んでるみたいだから」

 

『そ、その…これは、素行の悪い生徒たちを捕まえようと……』

「便利屋68の事? それがどうして、アビドスとシャーレも対峙することになっているの? それにここまでの兵力運用、越権行為じゃないの?」

『え、えっと……それは……委員長、全て説明いたします』

「いや、もう良い、大体把握した。察するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除。そういう政治的な活動の一環ってところね」

『……』

 

 ヒナは周りを見渡して、状況を把握する。そしてアコを諫める。

 

「でもアコ、私達は風紀委員会であって生徒会じゃない。シャーレとかティーパーティーとか連邦生徒会長などの問題は全部『万魔殿』のタヌキたちにでも任せればいい。詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎していなさい、アコ」

『……はい』

 

 ヒナはアコに反論を許さず毅然とした態度で、アコに謹慎を言い渡す。アコもさすがにヒナの言葉には逆らえないようで、何も言わずに命令を受け取り、通信を切った。

 

「………」

 

 対策委員会も便利屋も風紀委員会も沈黙し、戦闘は完全に停止した。便利屋の面々はヒナに見つからないように隠れて、様子をうかがっている。便利屋が雇った傭兵たちもさすがにヒナには敵わないのか、手を出す様子はない。

 

「じゃあ、改めてやろうか」

「ちょ、ちょっと!?」

『待ってください! ゲヘナの風紀委員長といったら、キヴォトスでも匹敵するする人物を見つけるのが難しいほどの強者ですよ! ここは下手に動かず、一旦交渉しましょうよ! どうしてそんなに好戦的なんですか!』

 

 シロコがビルから降りてきてヒナに銃を向け、アルは驚き声を上げる。ヒナは銃を向けられても、微動だにしない。効かないからなのか、撃たれた後からでも制圧できる自信があるのかはわからないが、ヒナはシロコを一瞬だけ一瞥して目線をずらした。アヤネもシロコの好戦的行動に驚き大声でシロコを止める。

 

「……ご、ごめん」

『こちらはアビドス対策委員会所属、奥空アヤネです。ゲヘナの風紀委員長ですね、初めまして。この状況については理解されていますでしょうか?』

「もちろん。事前通達無しでの他校自治区に於ける無断兵力運用、及び他校生徒との衝突。……けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

『……ッ!?』

 

 ヒナがそういうと同時に威圧感を強める。その威圧感は通信越しのアヤネも寒気を感じる程のものだった。対策委員会と便利屋が動きを止める。

 

「便利屋68は現在俺が雇っている。雇っている間は俺の部下だ。そいつらを連れて行こうとしたんだ、抵抗するのは当たり前だろ」

「……水戸グラン。あなたもいたの?」

 

 ただ一人、その威圧感をものともせずにヒナに近づく存在がいた。グランだ。グランは右わき腹を抑えつつも自分の足で立ってヒナに向かい合う。ヒナははグランがこの場にいたことに驚き、傷に目が行く。

 

「それは?」

「お宅の砲撃の功績」

「……そう」

 

 ヒナはジロリとイオリに目線を向ける。ヒナに目を着けられたイオリは顔を青くして縮こまってしまった。隣にいるチナツはグランの怪我を途中までとはいえ治療していたため、現在グランがかなり無理をして立っているのを察してオロオロしている。

 

「で? どうする、うちとも一戦交えるか?」

『な、なんでグランさんも好戦的なんですか!? あぁ、もう。こういうときにホシノ先輩がいたら……』

 

 まさかのグランも好戦的だったことに驚きの声を上げるアヤネ。思わずこの場にいない先輩がいてくれたらと愚痴をこぼすが、その一言にまさかのヒナが反応をした。

 

「ホシノ……? アビドスのホシノって、もしかして小鳥遊ホシノ……?」

『は、はい。そうですが……」

 

「うへ~、こいつはまた何があったんだか。凄いことになってるじゃ~ん」

 

 新たな声が渦中に加わる。その声は対策委員会のみんなが待ち焦がれ、求めていた声だ。ヒナとグランが声のした方に顔を向ければ、瓦礫の中をえっちらおっちらと歩いてくるホシノが目に入った。

 

「!!」

「えっ!?」

『ほ、ホシノ先輩!?」

「ごめんごめん。ちょっと昼寝していてね~、少し―――……なにそれ」

 

 ホシノがグランの傷口に気が付いた。先ほどまでの笑顔が消え去り、ずかずかとグランに詰め寄るホシノ。そして何の遠慮もなく、グランのシャツをまくり上げる。

 

『ホシノ先輩!?』

「ッ!?」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!?」

 

 往来のど真ん中でいきなり上裸に近い形にさせられるグラン。ヒナは間近で初めて男の体を見て、アヤネはホシノの行動に驚愕して、セリカは突っ込みを入れようとするが赤くなって口が回っていない。シロコはこの場にノノミが居なくて良かったとおそらくホシノ、アヤネに続いてグランになにか特別な感情を持っているであろう生徒の事を思っていた。

 

「これ、大丈夫なの……?」

「応急処置は受けた。あとはこの状況を切り抜けて病院に向かうさ」

「この状況……ノノミちゃんは?」

「彼女も俺ほどじゃないが怪我をした。壁の奥で休んでる」

 

 グランから状態を聞いたホシノはシャツを下ろして周りを見回す。ここで再起動したセリカが大きな声を上げる。

 

「そうよ、先輩! こっちは色々大変だったのよ! ゲヘナの奴らが……!」

「もう少しで全員撃退できた」

『その前にこちらの弾薬が尽きるのが先かと……』

 

 後輩たちの言葉と彼女たちのすぐ近くにいる便利屋を見やるホシノ。そしてヒナに問いかける。

 

「ゲヘナの風紀委員会さぁ……便利屋を追ってここまで来たの?」

「………」

「うーん、だんまりかぁ。別に構わないけどさ、これで対策委員会は勢ぞろいだよ。ということでまた改めてやり会ってみる? 風紀委員長ちゃん?」

 

 顔こそいつもの笑顔だが、そこからあふれ出ている威圧感は先ほどのヒナも及ばないほどの物だ。ヒナはそれを感じ取り、自身の銃を持つ手が僅かに震えているのを感じ取った。威圧感に耐え切れなかったのか、後ろで数名の風紀委員が倒れたのがわかる。

 

「……1年生の時とはずいぶん変わった、人違いじゃないかと思うくらいに。……でも変わったのは見かけだけだったようね」

「ん? 私の事知ってるの?」

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒はある程度把握していたから。特に小鳥遊ホシノ……あなたの事を忘れる筈がない。あの事件の後、アビドスを去ったと思っていたけれど」

 

 その言葉にグランとホシノの顔がピクリと動く。

 

「そうか、そういう事か……だからシャーレが。……まあいい、私も戦うためにここに来たわけじゃないから……イオリ、チナツ、撤収準備、帰るよ」

「……了解」

「……はい」

 

 少し何かを考えこんだ後、ヒナは後ろに振り返り風紀委員会に撤収を命じる。イオリとチナツはその命令を受けて直ちに撤収準備に入った。どうやら二人ともアコの砲撃辺りからこの作戦に対して疑問を持つようになり、戦闘にも積極的ではなかった。作業が開始されたのを見て、ヒナは対策委員会の方に向き直り頭を下げた。

 

「えっ?」

『頭を下げました……』

「事前通達なしでの無断兵力運用、他校の自治区で騒ぎを起こした事、ブラックマーケット代表への加害行為、この事については私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員長として対策委員会、『ODI ET AMO』両組織に対して公式に謝罪する。今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することはないと約束する。どうか許してほしい。『ODI ET AMO』には……あとで話し合いの場を設けてほしい。そこで詳細に謝罪内容を決めたい」

「おう、万魔殿を通して手紙をだしてやるよ」

「そこは直接風紀委員会に出してほしいのだけれど」

「ちょっとした嫌がらせだ。我慢しろ」

「……はぁ」

 

 グランの言葉に少し頭を抱えたくなるヒナ。しかしグラン本人がどこに手紙を出そうと止める権利はないので、甘んじて受けることにしたヒナだった。

 

「……あなたが、シャーレの先生」

「初めまして、ヒナちゃん。私は屋浦ニイ、よろしくね」

 

 ヒナはグラン達から離れて先生の目の前に来て話しかける。ヒナに声をかけられた先生は笑顔を浮かべて屈み、ヒナと目線の高さを合わして話始める。

 

「風紀委員会のみんなを止めてくれてありがとう」

「それはお礼を言われることじゃない。元々私たちのせいだし。それより、あなたに伝えておきたいことがある」

「ん? 伝えたいこと?」

「そう。これは直接言っておいた方がいいと思って。カイザーコーポレーションのこと、知ってる?」

 

 『カイザー』その名前が出た瞬間先生の顔は真剣なものになった。

 

「……ざっくりだけどね」

「そう……。これはまだ万魔殿もティーパーティーも知らない情報だけど。あなたには伝えておいた方が良いかもしれない。……アビドスの捨てられた砂漠……あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでる」

「アビドスの砂漠で……カイザーコーポレーションが……?」

 

 ヒナの言葉を聞いて先生はカイザーコーポレーションが砂漠で何をしているのか考える。しかしこれで以前カイザーグループは何が欲しいのかという問題が答えに一歩近づいたと思う先生。

 

「そう。本当なら廃校予定のアビドスに教える義理はないのだけれど……一応、ね」

「ありがとう、ヒナちゃん。とっても助かる」

「じゃあまたね、ニイ先生。次に会うときにはちゃんづけは無しでお願い」

 

 ヒナはそういって風紀委員会の中に戻っていった。

 

「……先生、何を話してたの?」

 

 入れ替わるようにシロコが先生の前にやってくる。

 

「後で、みんなの前で話すね」

「わかった。それじゃあ、グランとノノミを病院に届けないと」

「そうだね! シロコ、グランの代わりに運転お願いね」

「任せて」

 

 そうしてアビドス側も撤収して、長かった戦いは終了した。

 




「組み分け生徒会長か……。一体俺はどのルートに……」

 組み分け生徒会長が、歌を歌いだす。

「セリカンドールに行くならば、姉キャラ好きが進む道。
 時に厳しく、時に優しい女房で他とは違う純愛ルート

 ノノプルパフに行くならば、君は正しくスケベェで
 巨乳に甘えるのが真実で、貧乳を乳と思わない。

 賢き後輩アヤネンクロー、君に眼鏡フェチがあるならば、
 エチな良妻の後輩を、ここで必ず得るだろう。

 ホシザリンではもしかして君はまことの愛をしる。どんな手使っても
 アナタを手に入れる狡猾さ」

「ホシザリンは駄目。ホシザリンは駄目」
「ほう、ホシザリンは嫌か? 君は偉大になれる。ホシザリンに入れば君は間違いなく偉大なハーレムへの道が開けるのだが……嫌かね?」
「お願い、ホシザリン以外の所にして。ホシザリンは嫌だ、ホシザリンは嫌だ」
「ならば……ホシザリン!
 

キキキッ、この活躍。グランには……

  • 頭を撫でてもらう!
  • 手をつないでもらう!
  • 一日、私の隣で書類仕事だ!
  • お、お出かけデートをしてもらう!
  • 一日中、家でゴロゴロするぞ!
  • ……(裾を引っ張ってベッドを指さす)
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