シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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31話

◎・ゲヘナ学園・

 

 便利屋の事務所に向かってから三日後、ゲヘナ学園を訪れる。アビドスの面々は今日は、柴大将の見舞いに行っていると聞いた……。自分も行きたかったんだが、前回病院を抜け出して便利屋の事務所に行ったことがばれてアヤネにしこたま怒られたからな……。ま、今回も抜け出してきているんだがな。

 

万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)……久しぶりだな」

「さすがゲヘナ学園。あちこちから銃声が聞こえるっス」

 

 キッド4が車椅子を押しながら感心する。……感心していいことなのかこれ? 暫く車椅子を押されながらゲヘナ学園を行くと迎えが来たらしい。

 

「だ、代表! すいません、遅れてしまって!」

「別に遅れてなんかいない。俺たちが来るのが速かったんだよ、チナツ」

「チナツさん、お久しぶりっス!」

 

  チナツが小走りしながら寄ってくる。うお、すっげ。何がとは言わないが。ここからはチナツに車椅子を押してもらってゲヘナ学園を移動することになる。風紀委員であるチナツと移動する方が何かと便利なんだよなー。一々風紀委員から身分確認されないですむからな。

 

「それじゃあ、ここかからはチナツさんにお願いするっス!」

「はい、確かにお送りします」

「今度は休みの時に来るっスから、お茶でもするっスよ!」

「ふふ、良いお菓子も準備しておきますね」

「それは楽しみっス! ではまた!」

 

 キッド4はチナツに車椅子のハンドルを渡して勢いよく走り出す。……まさか、ここから、ブラックマーケットまで走って帰るつもりか?あぁ、もう見えなくなった。アイツ、ホントにスペック高いな。

 

「フセちゃんはいつも元気いっぱいですね」

「俺の左足を持って行ったただけはある」

「あ、あはは」

 

 うーん、中々いい返しだと思ったがどうやら受けなかったらしい、チナツが微妙な笑いをしている。

 

「これからの予定を伺っても?」

「まぁ、間に別の用事が入ったりはするだろうが、最初に万魔殿、次に風紀委員会本部、最後にチナツの部屋」

「え? あっ」

「お前のことだ、怪我させたことを気にしすぎるだろうし、思いつめて落ち込んでそうだからな。慰めてやろうかと思ったんだか、不要だったか?」

 

 後ろを振り返ってチナツを見ると、その顔を朱に染めながらも口元は笑みを携えて、随分淫靡な表情をしていた。今までいろいろな女と関わってきたが流石に『私は二番でも構いませんよ』と唯一言ってきた女だけはある。

 

「グランさんは……本当にひどい人です。私は風紀委員なのに、ホントはいけないのに、グランさんの心には誰かが居るのを知ってるのに、抱かれて……。でもそんな関係に興奮している私が居て。どうやら私も立派なゲヘナの女だったみたいです。……たくさん慰めてくださいね?」

 

 嗤いながら車椅子を押すチナツ。うん、元気になってよかった。ムイをとった挙句、ここ数日チナツの元気がなかったせいか、セナからの鬼電がヤバかったんだよ……。アイツあんな無表情なのに抱いてる感情クソデカすぎんだろ……。部下思いなのは良いことだけど。

 ゲヘナ学園の校舎に入り、エレベーターをつかって、生徒会室のある階まで向かう。エレベーターから降りた所でチナツに声をかける。

 

「チナツ、ここまででいい」

「はい、いつもすいません」

「仕方がない、万魔殿と風紀委員会は犬猿の仲だからな。絶対、嫌味言われるだろうし」

 

 チナツと一度別れ、生徒会室まで一人で行く。しかし、ここまできてアレだが、アイツらはここにいるのか? うーん、不安だ。

 

「入るぞ、羽沼いるか?」

「あ! お兄ちゃんだー!」

「ごふっ」

 

 扉を開けると、こちらに気が付いた万魔殿メンバーから溺愛されている存在、イブキから勢いよく突撃される。は、腹に顔がぶつかってし、しょ、衝撃が傷に……。

 

「お兄ちゃん大丈夫ー? 汗びっしょりだよ?」

「あ、ああ。イブキに会いたかったからな、急いできただけだよ」

「本当!? ありがとう! イブキも会いたかったよ!」

 

 感激したのか、腹にぐりぐりと頭をこすりつけるイブキ。く、くそっ……耐えろ! 耐えるんだ、水戸グラン!

 

「イブキ、そこまでですよ。今回、代表は正式に『代表』として万魔殿の『マコト議長』に面会を希望です。遊ぶのはその後にしましょう」

「い、イロハか」

「相変わらず、顔色も悪いし怪我ばっかりですね。どうです? 代表なんて辞めてゲヘナ学園に来ませんか? そのほうが仕事も楽になりますし、イブキも喜びます」

 

 気だるげな表情の、めんどくさがりダウナー。万魔殿に所属する戦車長。棗イロハがそう提案してくる。

 

「ハハッ、冗談を」

冗談のつもりはないのですが……奥でマコト先輩が待ってるのでお早目にどうぞ」

「わかった。イブキ、あとで少し時間を作る。少し待っていてほしい」

「わかった! イブキ待ってるからね!」

 

 イブキの手を取ってイロハが離れていった。た、助かった。……少し傷が開いた気がするんだが? イブキの顔に包帯から染み出た血とかついてなきゃいいんだが……。 生徒会室をさらに奥まで進んでいく。会合などに使われる広間から、実質、万魔殿メンバーの私室と化している執務室に入る。

 

「キキキッ! よく来たな、グラン! ようやく、風紀委員会からマコト様に鞍替えするつもりになったか!」

「何の話だ」

 

 部屋に入るなり、部屋の中央に陣取り仁王立ちして素っ頓狂なことを言いだす羽沼マコト。 これがゲヘナ学園のトップの姿か……。ゲヘナ学園は生徒会に対しての関心が薄くて投票率が異常に低い(投票率は3.8%)とは知っていたが……。これを見ると少しばかり、関心を持て! と言ってやりたくなる。

 

「そもそも同盟なら既に結んでいるだろう」

「ふん、あんな書面上だけのつながりなど意味はない! 事実、お前は風紀委員の一人と懇意にしているではないか! ここからでも車椅子を押させているのが見えたぞ!」

「チナツの事か……それは風紀委員というより、医学交流会つながりだが」

「そんなこと知ったことか、お前が風紀委員会の一人と親しいという事実が問題なのだ! イロハなんてどうだ! アビドスのホシノとやらにも似ているからお前の好みだろ!」

 

 次の瞬間、俺は車椅子から立ち上がりマコトを張り倒し、銃を突き付けていた。

 

「誰に似ているって?」

「キキキッ、この怒りよう、どうやらお前が元アビドス生というのは本当のようだな」

 

 ……本当にコイツはどこから情報をもってくるんだか。今のところ先生しか知らないはずなんだがな。

 

「何が望みだ」

「キキキッ、そう睨むな。しかしそうだな……万魔殿のメンバーの誰かとも懇意にしてもらうとかはどうだ?」

「は?」

「お前と万魔殿のつながりをより強固にして、風紀委員会にも負けない組織として確立させる。……次第にこちら側に引き込んで……」

 

 驚愕の望みに顎が外れそうになる。まぁ、単純に風紀委員会にあって万魔殿にないものが欲しいというだけだろうが……。もしかして、俺とチナツの関係を『ただ親しい』だけと思ってる? でなければ流石に知り合いを差し出すヤバい奴ってことになるんだか……。傷に触りそうだが、試すか。

 

「じゃあ、お前」

「な、わ、私か!? イロハとか、サツキじゃないのか!? お、おい、なんで無言で近づいてッ! なに触って、ヒゥッ! まって、脱がすんじゃ、んん゛ん゛!?――――」

 

 

◎・・・

 

「いってぇ……絶対傷に響いてる」

 

 一人で執務室から書類を抱えて出てくる。あれだけヤッたから数時間は起きないだろう。……途中から随分しおらしくなったが、初めてだったとかビックリだよ。イロハとイブキに今日はもう帰るように連絡しておこう、イブキの教育に悪いし。エレベーターを使い下の階に降りる。

 

「代表! お疲れ様…でし……た……」

 

 エレベーターホールのソファで待機していたらしいチナツがこちらに寄ってくるが、途中で顔がどんどん険しくなる。

 

「まさか、マコト議長まで手を出すとは思いませんでした」

「向こうから、煽ったんだ。自業自得さ」

「その言い分だと、随分激しかったみたいですね」

「傷に響く程度には」

 

 チナツの顔が呆れたものに変わっていく。いや、確かに女とヤッてて傷が開いたは笑い話にしかならないんだが。チナツは俺の頬を突きながら膨れっ面になる。

 

「確かに二番でも良いと言いましたが、無闇に数を増やされるのは嫌です」

「そうか、留意はしておくよ。さて、次は風紀委員会だな、この書類を届ける」

「わかりました」

 

 車椅子を押して貰いながら移動する。

 

「そういえば、あの後はどうだった?」

「あの後ですか……私とイオリはアコ行政官の命令に従っただけだからと厳重注意だけでした。アコ行政官は今だ反省文を書かされています」

「大変だな……何枚だ?」

「1000枚です」

「……終わるのか?」

「さぁ?」

 

 ……気の毒に。しかしそれもこれも自身が招いた結果だ。しっかりと受け止めるんだな天雨アコ。目の前に風紀委員会の執務室が見えてきた。扉を開けて中に入る。執務室にはカリカリとペンを走らせる音が響いていた。

 

「委員長、その……これは、いつまで書けば宜しいのでしょうか……?」

「今、200枚目くらいでしょう。私が帰ってきたとき自分で1000枚書くって言っていなかった?」

「それはその、それくらい反省していますという比喩でして……」

「口より手を動かしなさい」

 

 ああ、反省文の山がすさまじいことになっている……。

 

「1000枚分も反省するべきこと、そいつに書き出せるのか? 空崎ヒナ」

「……水戸グラン」

「ほれ、これ仕事。万魔殿から持ってきてやったぞ」

 

 チナツを自分の席に向かわせて、空崎の机まで移動して抱えていた書類を机に置いてやる。うわ、すっげぇ嫌そうな顔。

 

「何、これ?」

「前に言ってた万魔殿を通しての抗議。今、万魔殿自体を活動不能にしてきたからそのしわ寄せをお前たちにして貰おうと思って。今回のいざこざはこれでチャラだ」

「万魔殿を活動不能に……? まぁいいわ。 流石に学園運営が止まるのはいただけないし、これでチャラになるなら安いもの。その仕事引き受けるわ」

 

 そりゃよかった。これで羽沼が数時間は起きなかったとしても問題はないだろう。それに羽沼を気絶させた後に色々と物色させてもらったが、興味深いものも見つかったことだし、今回のゲヘナ来訪は成功だったな。さて後は、チナツと楽しむだけ……――――?

 

「失礼」

「ええ、どうぞ」

 

 ポケットに入れた携帯が鳴る。空崎に一言入れてから画面を確認すると『奥空アヤネ』の文字が。

 

「アヤネかどうした?」

 

 アヤネの名前を出すと、チナツが視界の端でピクリと反応する。

 

『グランさん! 砂漠でカイザーが、学校の借金が!』

「お、落ち着け、アヤネ。一体何があった?」

 

 混乱、そして焦りに支配されたアヤネの声。今日は柴大将のお見舞いに行っていたんじゃないのかとは思うが、何かが起きているようだ。落ち着くように言うと、本当に参っているのだろう。弱弱しい声が聞こえる。

 

『……助けてください。グランさん』

「待ってろ、今すぐそっちに向かう」

 





 マコトはこの一件以降、グランによく連絡を取り『面会』の予定がないか聞きだすようになった。

グランの携帯の連絡先。
先生、キッド1~4、ブラックマーケット内の取引相手など、奥空アヤネ、十六夜ノノミ、小鳥遊ホシノ、棗イロハ、羽沼マコト、火宮チナツ、氷室セナ、陸八魔アル、聖園ミカ、阿慈谷ヒフミ、救護騎士団全員、生塩ノア、エンジニア部全員、竜華キサキ、薬子サヤ、七神リン、連邦生徒会長、ユメ先輩(三日に一回はトークを送ってる。当然返信はない)。

グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その3

  • キャスパリーグ
  • 自称ロマンチスト
  • チョコミントフリーク
  • 絵に書いたようなツンデレ
  • 自警団のエースにしてみんなのアイドル
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