シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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 今回途中で戦闘シーンがあります。よければ『Fall AC4』で検索かけて戦闘シーンはその曲を聞きながらお読みください。


32話 テーマソング『Fall(星野康太)』

◎・アビドス高校・

 

 あの後、チナツに平謝りしたグランは大急ぎで、アビドスに来ていた。途中で、義足もしっかりと装着して車椅子は置いてきた。

 

「悪い! 待たせ「もうっ、一体何なのよ!」 ……状況説明を」

「グランさん! はい、こちらを見ながら聞いてください」

 

 セリカのあまりの怒り様にただ事ではないと感じ取ったグランが、声をかければアヤネが説明用に作成した資料を渡しつつ現状を説明してくれる。

 

「カイザー・コーポレーションはあそこで一体何を……?」

「宝物を探している……と言っていましたが……」

「あの砂漠には何も無い筈です。デタラメをいっているんだと思います」

 

 ノノミの言葉にアヤネが調べ上げたであろう、過去のアビドス高校の資料の山を出しながら否定する。

 

「石油など、お金になりそうな地下資源は何一つ残っていません……はるか昔にそういう調査結果が出ているんです」

「だとすると、どうして……?」

「だが、少なくとも『宝探し』ということは実体のあるものだと思う。まさかカイザーの連中が『頑張り』や『努力』、『友情』だとかを『宝』とは呼ばないだろうからな」

 

 グランが推測を述べる。あれだけの大規模捜索、大部隊、対象はかなりの重要物。カイザーがそこまで重視するもの……。

 

「まさか……兵器?」

「いやいや、今はそれよりも借金の方でしょ! 確か、3000%とか言っていなかった!?」

「保証金も要求してきたし……あと一週間で3億円だなんて」

「こんなの、ブラックマーケットでも珍しいレベルのふっかけだな……おい、シロコどこ行く」

 

 グランがアビドスにかけられた金利を見て唖然とする。その傍でシロコが何か、遠出の準備をしているのが見えて声をかけるグラン。

 

「……行ってくる。あそこで何をしているか調べないと」

「し、シロコ先輩!? 行くって何処へ?」

「PMCの施設。徹底的に対策すれば、何とか侵入できると思う。行って、何をしているのか確認する」

「待って、シロコ先輩! それより今は、借金をどうにかしないと!」

 

 ガンラックから銃を取ろうとしているシロコの手をセリカが掴んで止める。しかし、シロコはその手を掴み返す。

 

「……借金はもう、真っ当なやり方じゃ返せない。何か別の方法を……グランなにかない?」

「あるぞ」

「駄目ですよ! それではまた……」

「私はシロコ先輩に賛成! 学校がなくなったら全部終わりなんだから、もうなりふり構ってられない!」

 

 シロコの言葉を待っていたグランは、幾つかのファイルを取り出す。いつ頼られていても良いように、ブラックマーケットの中でも、比較的まともで報酬もそれなりの物を用意しておいたのだ。

 

「セリカちゃん待って! そんな事したら、あの時と同じだよ!?」

「でも! もう、そうでもしないと……もう手段なんて守っていたら何も守れないじゃない!」

「あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに、自分から進んで犯罪者になるの!?」

「私はッ!」

 

 アヤネとセリカが言い合いを始めてしまった。互いに冷静ではない様子だ、ドンドン顔を赤くして言い合う二人を見ながらグランはいつ止めたものかと考えていた。

 

「ほらほら、みんな落ち着いて~。頭から湯気が出てるよ~」

「……!」

「――!」

「ん」

 

 ホシノが声をかけて、注目を集める。そうして、言い合いを収め、シロコも止めたホシノに感心するグラン。ホシノの言葉を受けて、ヒートアップしていたセリカとアヤネも言い合いを止めて、

 

「は、はい、すいません」

「……ごめん、こんな風にしたい訳じゃなかった」

「だいじょーぶ。シロコちゃん、いい子だもんねー。あと代表君、それしまってね」

「そ、そうか」

 

 ホシノの睨みつける視線を受けて手元のファイルをしまう。

 

「まっ、とりあえず今日はこの辺にしておこう。うへ~、じゃあ解散解散~。一回頭を冷やして、また明日集まろうよ。これは委員長命令ってことで」

「……そうだね。とりあえず、皆帰って休もう」

 

 ひとまず、その場は解散となった。

 

「グラン、ちょっと良い?」

「先生?」

 

 先生に呼び止められたグランは足を止めて先生を見る。そちらを見ればいつになく真剣な表情をした先生がグランを見つめていた。

 

◎・アビドス高校・

 

「私が大人として、先生としてどうにかする! だから……!」

「うん――ありがとう、先生」

 

 先生と、ホシノが上の階のベランダで話しているのを下の階に潜んで聞く。あの後先生から告げられた、小鳥遊ホシノの退部・退会届……吐きそう。一度先生と別れて、空き教室で薬イッキしてなかったら不味かった。先生、悪いがそれではダメだ。小鳥遊ホシノはそれじゃあ止まらない。

 ……そろそろ動くか。念入りに武器のチェックをして校庭に出る。しばらく待っていれば小鳥遊ホシノが校舎から出てくる。

 

「よう、小鳥遊ホシノ」

「グラ……代表くんじゃん。どうしたの? 今日はおじさんモテモテだなぁ~」

「先生は優しくて、真っすぐしていて、『奇跡』を信じてる。見ていてつらい時があるよな。俺たちにとってはユメ先輩を思い出すから

 

 小鳥遊ホシノが真顔になる。……俺からこうやってユメ先輩について話すのは初めてだからな。

 

「何が言いたいの?」

「もし、あの時、先生があの場にいてくれたら……。なんてこと、俺は先生に会ってから何度も考える。お前はどうだ? ホシノ(・・・)? あの場に先生が居て、ユメ先輩も助かって……皆笑顔でアビドスに帰るんだ。……目が覚めて自己嫌悪する。そんな日々を送ってないか?」

 

 俺の言葉にホシノの顔が過去の物になる。ああ、相変わらずおっそろしい目だ。どれだけユメ先輩の真似をしていても、根っこは変わっていないようで良かった。

 

ホシノ(・・・)初耳だったよ、スカウトの話が合ったなんて。」

「……盗み聞きとかサイテーだよ。グラン(・・・)

 

 ッッッ! 今、名前! ふフふ、へへへへ。 

……落ち着け……落ち着け。

 

「どうだ? この機に今まで黙って、腹にため込んでたものをお互いに吐き出して見せるか?」

「駄目、歯止めが利かなくなる」

「何のだよ……」

「鈍感」

 

 懐かしいなぁ、この感じ。この言葉足らずのぶっきらぼう、これこそ小鳥遊ホシノだよな。……ホシノ、お前は本当に強いよ。いくらお前の真似をしても近づいている気が全くシナイ。いや、もう、近づくための道は途切レテいるのかもしれなイ。でも俺はそんな強いホシノが好きだった。好きで、大好きで、もう敬愛しているとイッテモ良い。

 だからな、今のその姿を見るのが辛いんだ。大好きなホシノが自分を押し殺しているその姿。俺が逃げたせいで、ホシノにアビドスすべての重圧が乗った。その結果がその姿だとしたら? ……今のお前の在り方こそが、俺の罪なんだろウナ。

 俺は俺の罪を償うためにここにいる。……俺は『アビドスを存続させ、ホシノがホシノとして笑えるようにする』それが俺の贖罪だ。アビドスを助けるためにホシノを犠牲にする? そんなことさせない、じゃあアビドスを諦める? そんなことは許さない。アビドスも、ホシノも犠牲になんてしない。犠牲になるのは、俺だけで十分だ。

 

「お前は小鳥遊ホシノだ」

「?」

「頑固で、意地っ張りな面もある小鳥遊ホシノ。アビドス対策委員会の委員長であいつらの大切な先輩だ。お前……黒服とかいう奴の所に行く気だろ?」

「もう『仕方がない』じゃん。そうしなきゃもう何も守れないよ」

 

 まぁ、そうだよな。先生が大人として、先生としてどうにかする、とは言っても不安なことに変わりはないし。大人が嫌いなホシノにとっては先生が良い人と分かっても信頼しきれないだろうからな。どれだけ言葉を重ねようと聞く耳を持たないだろう。

だから……。

 

 

 

 

だから俺ハ、ホシノに銃を向ける。

 

「行かせない」

「ッ!」

 

 あ、あああアアあ! 向けた、向けテしまった。あの時もついぞホシノに銃を向けることなんてシタコトナカッタノニ……。俺は遂に、ここまで、ホシノに銃を向けるまでに……堕ちたのか(Fall)。手の震えが止まらない。きっとこんな事、先生も、ユメ先輩も、ホシノも、誰も、望んでいないはずだ。けど、こうシナければホシノは止まらない、止まってくれない。だから『仕方がない』んだ……。だから、そんな顔しないでくれ、そんな顔するぐらいなら止まってくれよ……ホシノッ!

 

「お前をアヤネ達にとってのユメ先輩にはさせない。ここで朝まで俺と踊ってもらう。そして登校してきた後輩に叱られろ、ホシノ」

「……私とやる気? その傷も塞がってない体で?」

 

 ホシノが左肩にしょっていたシールドを落として、両手でショットガンを構える。この空気、この感覚……懐かしいな。相変わらず恐ろしい。

 

「やってみなければわからないだろ? 怪我をしているとは言え俺も一年のころにくらべ―――ドヂュ

「遅い」

 

 話している最中にホシノの体がぶれたかと思ったら、一瞬で距離を詰められ右わき腹の傷口に蹴りを叩き込まれる。校庭を転がる俺。立ち上がりホシノに銃を向けるがそこに既にホシノの姿はなかった。づづっう、完全に傷が開いた。

 

「ッ!」

「……」

 

 嫌な予感がして反射的にその場を離れると、今までいた場が散弾でえぐれた。地面のえぐれから位置を判断して銃口を向ける、そこにホシノがいてこちらを狙っていた。こちらも銃口を向け発砲。しかし避けられる。姿勢を低くして、接近してくるホシノ。蹴りを放って牽制するが、それさえ、避けられて足を掴まれ投げられる。どうにか着地して体制を立て直す。

 

「その程度じゃ、私は止められないよ。……今度は右腕がなくなることになる」

「なら、左右のバランスが整うなっ!」

 

 今度はこっちから仕掛ける。ホシノの手前を態と蹴って大量の砂でホシノの視界を限定する。さらにホシノの武器を持っていない、左側に回り込むようにフェイントをかける。実際はあえて武器を持っている右側に回り込んで、武器破壊を狙う――

 

「マジか……」

「残念」

 

 ホシノにとって砂の壁は何の障害にならなかったようで、事前に予測していたようにこちらに銃を向けていた。そして発砲。

 

「うぐぅ!」

「……」

 

 確実に傷を狙ってきてるな、すっげぇ痛い。再び右脇腹に攻撃を受けて、痛みでうずくまる。くそ、血が溢れてきた……。蹲る俺の前にホシノが立つ。

 

「ほら、もう諦めて。グランじゃ私に勝てない」

「……後で文句は受け付けてやる!」

「え?」

 

 無防備なホシノ足を左手で払って姿勢を崩す。転びそうになってるホシノとは逆に立ち上がって右手でチョークスラムをホシノを地面に叩きつけるようにかける。校庭を転がっていくホシノ。

 

「当たった。……ふふ、フハハハハハ。まるで夢みたいだ。あのホシノに一撃入れられるなんて……。よし、行くぞ! ホシ―――ノ―――?」

「やってくれるじゃん」

 

 世界が、まわって? 何が起き―――。あ、ヤバ。

 

「グハッ!?」

 

 ホシノにアイアンクローをされ、地面に叩キツけられる。さっきまでよりも、スピードもパワーも段違いだ。……これが『小鳥遊ホシノ』、これでこそ『小鳥遊ホシノ』だ! 左足でホシノを蹴り飛ばして、アイアンクローを無理やり外す。体を仰向けからうつ伏せに入れ替えホシノに向けて射撃する。効いてないな。

 

「ホント、硬いよなホシノ」

「その言い方はなんか嫌」

 

 姿勢を低くして、射撃しながら突撃する。ホシノは迎撃に射撃をする。俺の射撃がホシノに当たり、同時にホシノの射撃が俺に当たる。どんどん近づく距離と比例して増える互いの傷。まだ、まだ、まだだ、今!

 

「ぐっ」

「あ、ああ!? グラン!?」

 

 ホシノの前で態と左腕に被弾して、義手を吹き飛ばす。予想通り、ホシノは狼狽した。あの日(12話)ずっと左腕の断面を撫でていたから、もしやと思っていたが、やっぱりホシノはこの腕の事をかなり気に病んでいるようだな。目の前でその腕が吹き飛んだんだ、絶対動揺すると思ったぜ、ホシノ! 渾身の蹴りを叩き込んで朝まで眠ってもらう!

 

「骨折は覚悟しろ!!」

「うん」

「え?」

 

 思いっきり足を引いてホシノに狙いを定めると、ホシノは目を瞑って棒立ちになった。……ッ!

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああ゛あああ゛゛!」

 

―――ブォォォンッッッ!―――

 

 足は空を切ることになった。なんで、受け入れるんだよ。抵抗しろよ、そんな悲しそうな顔するなよ。そんな顔されたら……

 

「無理に決まってるだろ……」

「……ごめんね、グラン」

 

 ホシノがこちらに銃を向ける。あぁ、やっぱりぼくはよわいままだったみたいごめんなさいゆめせんぱい

 

◎・・・

 

 私はグランに散弾を撃ち込んで気絶させる。

 

「……ほら、やっぱり私の勝ちじゃん。……まさかこんなに強くなってたのは予想外だったけど。……でも何が『やってみないとわからない』だよ! 体もフラフラで! 少し動いただけで息が上がる程度に弱ってるくせに! カッコつけて無理しちゃって! 本当に最後は心配したんだよ……?」

 

 グランのコンディションが最悪なのは傍から見ていても伝わるぐらいに明確だった。そんな体でも私を止めようとしてくれたという事実にキュンとしなかったというと嘘になるが、私も譲れないものがある。もうこれしか先輩として私があの子たちにできることがないんだ。こうすれば、アビドスの借金も減るし、グランもいることだし、今までよりも楽に過ごせるはずだ。……ただ、少し……我儘が許されるなら。

 

「まだ、グランと一緒に居たかったな……」

 

 倒れている彼を抱えて校舎に戻る。私がいつも昼寝に使っている空き教室に寝かせて、傷の処置をする。

 

「でも、グランもこんな目に合わせた奴とはもう一緒に居たくなくなったよね……? 嫌われちゃったかな?」

 

 あれだけ傷を痛めつければグランもきっと嫌気がさして、私の後追いなんてしないだろう。嫌われるためとはいえ、最初のキックはやりすぎだったかな? ううん、あれは必要なことだった。そう嫌われ……

 

「私……グランに嫌われちゃったんだ。……あれッ? 私泣いて……。どうして、こんなに……ぐずっ、や、やっぱり嫌われたくながっだな゛ぁ゛……グスッ。ううぅぅぅ、グラン、一緒にいたいよぉ……」

 

 暫くの間私は眠るグランの胸に顔をうずめて見っともなく泣いた。

 

 

 泣き終わった後、涙を拭って立ち上がる。眠るグランの唇にそっと自身の唇を合わせる。 いつぶりだろ……ユメ先輩が亡くなる前だから……二年ぶりか、懐かしいなぁ。 

 

「またね、グラン」

 

 私は教室を後にした。





グラン君、お薬キメすぎてテンションもフォントも何もかもグチャグチャしすぎだよ。せっかくコラボグランより長い寿命がもりもり減っちゃうよ? もったいない。もー、ホシノのせいだよー。

グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その3

  • キャスパリーグ
  • 自称ロマンチスト
  • チョコミントフリーク
  • 絵に書いたようなツンデレ
  • 自警団のエースにしてみんなのアイドル
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