シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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33話

◎・アビドス高校・

 

「はぁ、お疲れ様です……」

 

 翌朝、アヤネは暗い顔で登校した。昨日は一度解散となって一晩頭を冷やしたが、それでも考え事で頭がいっぱいでうまく休めなかった。第一声が『おはようございます』ではなく、『お疲れ様です』なのがその疲労状態を表していた。

 

「あれ、私が一番乗り……? グランさんも、ホシノ先輩もいないなんて……」

 

 対策委員会の教室に入ったときにいつもなら、武器、義肢の整備をしているグランも、机につんのめって寝ているホシノの姿もないことに疑問を思いながら机に座るアヤネ。

 

「……ん? これは?」

 

 一枚の紙と手紙を机の上に見つけて手に取るアヤネ。

 

「……嘘、なんで……どうしてッ!

 

 それはホシノが残していった退部・退会届、そしてみんなへの手紙がだった。

 

『アビドス対策委員会のみんなへ

 まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をする事になったこと、許して欲しい。おじさんにはこういう、古いやり方が性にあっていてさ。

 皆には、ずっと話していなかった事があって。実は私、昔からずっとスカウトを受けていたんだ。カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする……そういう話でね。……うへ、中々いい条件だと思わない? おじさんこう見えて、結構能力を買われててさ。『借金の事は、私がどうにかする。直ぐに全部を解決は出来ないけれど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う。

 ブラックマーケットでは急に生意気なことを云っちゃったけれど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。これで対策委員会も少しは楽になる筈。アビドス高校からも、キヴォトスからも離れる事になったけれど、私の事は気にしないで。勝手な事をしてごめんね。でもこれは全部、私が責任を取るべき事。

 私は、アビドス最後の生徒会だから。だから、ここでお別れ。じゃあね』

『先生へ

 実は私、大人が大嫌いだった、あんまり信じてなかった。シロコちゃんが先生をおんぶして来たあの時だって、なんか駄目な大人が来たなって思ったくらいだし? でも、先生みたいな大人と最後に出会えて、私は……いや、照れくさい言葉はもう良いよね。 先生、最後に我儘を云って悪いんだけど、お願い。シロコちゃんは良い子だけど、横で誰かが支えていないと、どうなっちゃうか分からない子で。悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげて欲しい』

『シロコちゃん、ノノミちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃん。

 お願い、私達の学校を守って欲しい。砂だらけのこんな場所だけれど……私に残された、唯一意味のある場所だから』

『グランへ

 貴方の左腕を奪って、痛めつけた私にこんな事を言う権利があるかわからない。だけど貴方にお願いがあるの。私たちの学校を、後輩をお願い。難しいことも、我儘なのもわかってるけど、できるだけ真っ当な手段でお願いね。「コレ」渡しておくから上手く使ってね。それから、もしこの先どこかで万が一、敵として相対する事になったら、その時は、私のヘイローを「壊して」。貴方にしか頼めないから、よろしくね。大好きだよ、グラン』

 

◎・キヴォトス 某所・

 

「……これで良い?」

 

 キヴォトスのあるビルで書類にサインをしていた。サインを書き終わると向かいに座る黒服に書類を差し出す。黒服は差し出された書類に一通り目を通す。

 

「はい、確かに。……契約書にサインもいただきましたし、これでホシノさんがお持ちの生徒としての全権限は、私の元に移譲されました」

 

 黒服は契約書を大事そうに懐にしまい。別の書類をだしてそれに自身の判と名前を書く。そしてその書類をホシノに見せて、確認させる。

 

「これで正式に、アビドス高校の背負っている借金の半額はこちらで負担することになります。 表に車をご用意しているのでそれに乗ってご移動ください」

「どこに行くの?」

 

 ホシノが問えば黒服は少し考えこむ素振りを見せてから、口を開く。

 

「アビドス高等学校本館地下です」

「ッッッ!? 馬鹿か!? あそこには、アイツ(・・・)が!?」

 

 ホシノが驚愕から怒鳴り声をあげる。そこはホシノにとって因縁の場所。ある意味、グランとホシノの運命を決定づけた存在……ユメ先輩の命を奪った存在がいる場所だった。

 

「ご安心を、かの熾天使(・・・)は今は動いておりませんので」

「だからってあんな場所……」

今のあなたに断る権限はありませんよ、ホシノさん

 

黒服が手元の書類を見せつけるように机にしまい込む。しかしホシノはそれ以降何も言えなくなり、黙って車に向かうのだった。

 

◎・・・

 

「何なのよ、この手紙。何なのよ、ホシノ先輩っ!」

「ふざけるなっ……。俺が、俺がそんなことできるわけ……」

 

 セリカが握りこぶしを机に叩きつけ大きな音が流れる。空き教室で寝かされていたグランも発見したアヤネは急いで、先生と対策委員会に連絡。集まってホシノの残した手紙を見ていた。

 

「何なの!? あれだけ偉そうに話しておいて! 切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分で分かってたくせにッ! こんなの受け入れるわけないじゃない!」

「……助けないと。私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、グラン、力を貸して」

「落ち着いてください、今はまず足並みをそろえないと……!」

 

ドカアァァァァン!

 

 混沌に包まれる対策委員会。そこに追い打ちをかけるように爆音が響く。

 

「爆発音!?」

「近いです、場所は……!? ……そんな!?」

「あいつらはッ!……ふざけるなよ……」

 

 なにかを見つけたグランは怒りに震える。

 

 

◎・・・

 

「行け、行け!」

「進めー!」

「うわああぁぁぁ!?」「早く、早く逃げろっ!」

 

 カイザーPMCの兵士たちが、アビドス自治区に対して攻撃していた。

 

「……この自治区にはもう、退去命令が下った」

「ふふふっ、ふふふふふ……。ついに、条件はすべてクリアした。最後の生徒会がアビドスを退学……これで実質的にアビドス高等学校は消えた!! 後は我らカイザーコーポレーションが、アビドスを吸収合併するのみ! さぁ、アビドス高等学校を占拠せよ!」

 

 前線で護衛の兵士に囲まれながらカイザー理事はそう宣言してさらなる戦力を進撃させる。

 

◎・・・

 

「こちらに向かって、数百近いPMC兵力が進行中! 同時に、市街地に無差別攻撃をしています!」

「カイザーPMC!? なんでこのタイミングで……!?」

 

 アヤネが確認した情報にセリカが焦る。この短時間に様々なことが起こりすぎている、セリカの混乱も仕方がないものだろう。

 

「お、応戦しましょう!! 何はともあれ、アビドスが攻撃されているのを見過ごすわけには……!」

「いや、良い。お前たちはここに居ろ」

「はぁ!?何言ってるのアン――ヒッ!」

 

 ノノミが応戦を提案するがグランが俯きながら手を出して止める。セリカが文句を言って、グランの肩を掴んで文句を言おうとするが、グランの眼を見た瞬間悲鳴を上げて後ずさる。先生が後ずさったセリカを受け止めて、グランを見る。

 

「……」

 

 グランの顔はまるで能面のようだった。顔に生気がなく、暗い瞳には殺気だけがこもっていた。グランは黙々と装備の準備をして右手にホシノが置いて行った『Eye of Horus』を持つ。背にKO-3K2と『IRON HORUS』を背負い、左腕にヒートパイル『KO-4H4/MIFENG』を装備する。

 

「グラン。貴方の気持ちはわかる。だけど今はアビドスの為にも冷静になって」

 

 先生がそう言ったのに数秒遅れて、カイザーPMCの兵士が対策委員会の部屋に突撃してくる。

 

「対策委員会をはっ――ガシュン!―― げ゛げげけげ゛け―――」

「グラン!?」

「グラン先輩!?」

「……!?」

「……嘘……」

 

 PMC兵は最後まで言葉を紡ぐことはなかった。グランが左腕に装備したKO-4H4/MIFENGを叩き込んだからだ。PMC兵は胴体に大穴が空きサイバーウェアから生命危機を知らせるアラートが鳴り響く。先生と対策委員会は目の前でグランが人を殺そうとしたショックで固まる。

 

「斥候がここまで来た……。校舎まで汚すか、カイザー。……殺してやる、一人残らず殺して、その首、街灯につるしてやる。……その前にホシノの居場所を吐いてもらおうか?」

「た、助けて。あ、アラートが……――ズドン!

「ホシノはどこだ?」

 

 PMC兵を足蹴にしてホシノの居場所を聞くグラン。しかし答えはホシノと何の関係もない命乞いだったため『Eye of Horus』を撃ち込む。

 

「もう一度聞く。ホシノの居場所は?」

「じ、じら゛な゛い゛ん゛だ! お゛れ゛は゛こ゛こ゛を゛ぜいあ゛つずるよ゛うに言われだだげでっ!」

「用済みということか」

 

 ヒートパイルを構えるグラン。大きく振りかぶって腕を振り下ろそうとした瞬間。

 

「まっ、まって!」

「駄目です!」

「嫌っーー!」

 

 先生がグランとPMC兵の間にも立って、ノノミが左腕を抑え、アヤネが背に抱き着く。グランの動きが止まる。

 

「グラン先輩、もう、やめてください。それをしたら、この腕を振り下ろしちゃったらもう、後戻りできなくなっちゃいます! 私、そんなグラン先輩見たくないです……」

「そうです! グランさんは冷たかったり、意地悪な時もありますが、根は良い人です。こんな事をしたら、心が壊れちゃいます! 私は絶対そんなことさせません!」

「グラン、これ以上は先生として全力で止めるよ。貴方のこれからの未来の為にも、殺しだけは絶対にしちゃいけない」

 

 三人の言葉にグランは激しく目の色を変えた後、腕を下ろす。それを見て三人はほっ、と息を吐く。そしてPMC兵に緊急処置をする。そうしている間にも他のPMC兵が校内に侵入してくる。

 

「と、とりあえず、学校に侵入した奴らから片付けるわよ! アヤネちゃん、お願い!」

「はい、先生の安全を確保しつつ、学校に侵入した敵を撃退します!」

「ん、任せて」

 

 対策委員会が行動を開始する。その背中を見るグランの言葉に気づくことなく……。

 

「もう、手遅れなんだよ……」

 




フセ「ハハハッ! この人達知らないんっスか? ハハハッ、代表はもうとっくに後戻りできないのに、 まるでお笑いっス!」
ハルミ「まったくだ。代表がどれだけ殺したかを知ったら、もうあいつらは代表の事を諦めるんじゃないか? それにしても……力なく項垂れるグラン様、良い、凄く良い。んアっ……イッ! んっ……ふう……。少し席を外す」
ムイ「『水戸グラン』(縋るだけの過去)は差し上げましょう。ですが、『代表』(価値ある今)は我々の物です。代表がいるべきはこちら側(・・・・)なんですよ」
未登場のキッド3「REC」(落ち込みグランハスハス)

グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その3

  • キャスパリーグ
  • 自称ロマンチスト
  • チョコミントフリーク
  • 絵に書いたようなツンデレ
  • 自警団のエースにしてみんなのアイドル
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