◎・アビドス市街・
校内に侵入したPMC兵を撃退して、現在グラン達は市街地のカイザーPMCと相対していた。先生、アヤネ、ノノミの三人に止められた後は過剰にダメージを与えるヒートパイルは使わずに右手に『Eye of Horus』左手に『IRON HORUS』を装備して確実にPMC兵を倒していく、グラン。
「こんにゃろ!……それにしても」
「……グラン先輩、凄い」
「ん、まるでホシノ先輩」
前線で戦闘している、セリカ、ノノミ、シロコはホシノの写し撮りのようなグランの戦い方に感心していた。機動力を活かして戦場をかく乱しながら、同時にヘイトを集めシールドを駆使して敵の攻撃をしのぐ戦闘スタイルだ。
『何者かの接近を確認……カイザーの理事です!』
「カイザー理事? アイツがか……」
グランがアヤネの通信を聞いて、接近してくる集団を見やれば、護衛の兵士に囲まれながら戦場に不似合いな黒スーツをきた大男、カイザーPMC理事がいた。
「ふむ。学校まで出向こうと思ったのだが、お出迎えとは感心だ」
「これは何の真似ですか? 企業が街を攻撃するなんて……いくら土地の所有者だとしても、そんな権利はないはずです!」
『それに、学校はまだ私たちアビドスのものです! 侵攻は明白な不法行為! 連邦生徒会に通報しますよ!』
「スカウトなんて、最初っから嘘だったってこと?……いや、それよりもホシノ先輩はどこ?」
「この悪党め……ホシノ先輩を返して!」
対策委員会がカイザーPMC理事に抗議の声を上げるが、カイザーPMC理事は何が面白いのか笑い声をあげるのだった。
「くくくっ、何を言ってるのやら。連邦生徒会に通報? 面白いことを言うじゃないか、今すぐにでもやってみたらどうだ? 君たちはこの状況について、今まで何度も、連邦生徒会に嘆願してきたのだろう? それで……連邦生徒会は一度でも動いたか?」
『……』
「……」
アヤネが通信機越しに顔を伏せる。グランはそれを横目に見ながら、過去を思い出す。連邦生徒会への嘆願は自分がアビドスにいたころから行われていた。けれども、連邦生徒会は手を差し伸べるどころか、このアビドスの地に足を運んだことさえなかった。
「連邦生徒会じゃなくても良い。今までどこかほかの学園が、君たちのことを助けてくれたことはあったか?……そろそろわかっただろう? 誰一人! 君たちに手を差し伸べるものはいない!」
「……」
「アビドス生徒会、その最後のメンバー、小鳥遊ホシノが退学した。アビドスの生徒会は、もう存在しないはず。君たちはもう、何者でもない。公的な部活も、委員会も、生徒会も、自治区すらもないアビドスは、学園都市として自立・存続が不可能と判断……。仕方があるまい、この自治区の主人である我がカイザーコーポレーションがあの学校を引き受けるとしよう。そうだな新しい学校の名前は……代表のブラックマーケット内の物に倣って『カイザー職業訓練学校』にでもしようか」
「……!」
『!!』
「え……? な、何を言ってるの? アビドスには生徒会がなくても対策委員会がある!! 私たちがいるのにそんな言い分が通じるはずないしょ!」
『それは……』
「……アヤネちゃん?」
セリカの言葉にアヤネが苦い顔をする。セリカもアヤネの表情に何かを感じ取ったのか恐る恐るといった様子。
『対策委員会は、公式に許可を受けている委員会じゃない……」
「えっ!?」
『対策委員会が出来たときには、もうアビドスに生徒会が無かったから……』
「え、えっ……!?」
アヤネの言葉で発覚する驚愕の事実。セリカが驚いた表情をする横で、グランも驚く。あれだけ、大々的に活動していたのに、まさか非公式だったとは、と思いながら歯を食いしばる。
「そうだ。所詮非公式の委員会、正式な書類の承認も降りてない。つまり、君たちの存在を示すものは何もない。だが、喜べ。アビドス高等学校が無くなれば、君たちはあの借金地獄からは解放されるのだからな。そうだ、そこにいる代表に泣きついて、居場所を作ってもらえば良い」
カイザーPMC理事の言葉に絶望する対策委員会。
「そんな、そんなことになったら、今までの私たちの努力は……」
「ほう、まさか本気だったのか? 本気で何百年もかけて、借金を返済するつもりだったのか? これは驚いた」
「……まれ」
「てっきり、最後に諦めるときに『でも頑張ったから』と自分を慰める言い訳をするために、ほどほどに頑張っているのだと思ったが……」
「……黙れ」
「一体、君たちはどうしてあんなに努力していたんだ? 何のために?」
「あんた、それ以上言ったら―――「そんなの! この学校が好きで! 大切な思い出があるからに決まってるだろうが!!」
響き渡るグランの咆哮。両手にショットガンをもって今にもカイザーPMC理事に飛び掛からんとするグラン。
ドカァァァアアン!
突如、爆発が起きる。
「き、北の方で大きな爆発を確認!」
「合流予定のブラボー小隊が巻き込まれました!」
護衛の報告に驚愕するカイザーPMC理事。
ドカァァァアアン!
「東の方でも爆発を確認、マイク小隊も壊滅しました!」
ドカァァァアアン!
「南でも爆発が! シータ小隊も全滅!」
「何が起きている!? アビドスの連中はここにいるので全員のはず……!!」
驚愕するカイザーPMC理事を見ながら先生がシッテムの箱を抱えて宣言する。
「『連邦捜査部S.C.H.A.L.E』の特権、制限なく生徒を加入させ、いかなる地域での戦闘行為も容認される……。あまり使いたくはなかったんだけど、これ以上私の生徒を侮辱するなら容赦はしない。……これよりカイザーコーポレーションに対して、強制捜査をします。みんな、お願い」
「ええ、任せて先生。この新生便利屋68の実力見せてあげるわ!」
「あ、アンタたちは!」
姿を現したのは便利屋と幾人かの傭兵たちだった。便利屋は瓦礫を降りながら、声を上げる。
「今までの努力を笑われた? 大切な思い出を怪我された? ここを切り抜けても苦難しかない? だから何なのよ!」
「え、えっ?」
「『目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を往く』それがあなた達のモットーじゃなかったの? 仲間が危機に瀕しているんでしょう!? それなのに、うじうじと! このまま良いように言われて納得できるの!? 代表もそんな姿がブラックマーケット内最大グループのトップの姿なの!?」
CYCAD SR03-2を構えたアルが激を飛ばす。
「いやいや、アルちゃん。その辺で勘弁してあげてよ。メガネっ娘ちゃんも、代表もなんだか繊細な所ありそうだし、そんなこともあるって」
KO-5K4/ZAPYATOIとST-04を持つムツキが怒れるアルをどうどうと落ち着かせる。
「それにしても、先生の依頼で来てみれば、可愛いメガネっ娘ちゃんを曇らせた罪は重いよ? これはもう……ぶっ殺すしかないよねっ!!」
「ふふっ、ふふふふふ……準備はできてます、先生、アル様。仕込んだ爆弾もまだまだたくさんありますので……」
ZINNIA SG54を抱えながら、爆弾を次々に爆破させ、カイザーコーポレーションの部隊を壊滅させていくハルカ。
「はぁ、まさかこんな大掛かりな依頼になるなんて……。爆弾で、敵増援を遮断。その間に敵の指揮官を無力化させて、指揮体系を崩壊させる。これで相手を一気に瓦解させる。…・・・本来、風紀委員会相手に使うつもりの戦術だったんだけど。ま、予行練習ってことにしておこうか」
SOPHORA BHG 16-2を手に慣らすように色々と構えたりするカヨコ。『ODI ET AMO』製の武器を装備した新生便利屋68が先生の依頼の元、再びアビドスに現れた。そして便利屋が雇った幾人かの傭兵も戦場に降り立つ。
「来たぜ! おい、ホントに全開でいいんだな?」
「弾代は保証するって話だ、撃ちまくれ! アッヒャャャャ!」
「そんな武装で勝負する気か、なめられたものだ」
「てこずっているようだな…手を貸そう」
「これも巡り合わせだ。共に、壁越えと行こうじゃないか」
五人の傭兵もそれぞれ武器を手に取り戦闘準備に入る。アルが傭兵たちの先頭に立って、マントを翻す。
「見ていなさい、腑抜けたあなた達に今から、真のアウトローの戦いを見せてあげるわ。ハルカ、やりなさい」
「はい、アル様」
ハルカが手元のスイッチを押すと再び爆発が巻き起こる。アルは先生の隣に歩いていく。
「先生、この依頼完璧にこなして見せるわ。成長した私たち、見ていて頂戴」
「わかった。アルたちの活躍しっかり見させて」
先生はにっこり笑って、アルたちに場を譲る。
「さぁ、行きなさい、傭兵たち! 私たち、アウトローの力を味合わせてやりなさい!」
爆発が響き渡る街。便利屋68と傭兵たちが、先生の指揮のもとカイザーPMC兵士を蹴散らしていく。
「ぐあああぁぁぁ!? 貴様ら、飼い犬の分際でよくも……ッ!」
「うるさいわね、そんなこと知ったこっちゃないわよ! あなたなんかより先生の方が、一緒に仕事しやすかった! それだけの話!」
「あはっ、雇い主を裏切ることくらい、悪党としては当然でしょ! そんなことも知らないの?」
カイザー理事が便利屋たちに向けて叫ぶが、銃弾と共に返事が返される。その様子を見ていた対策委員会とグランは目が覚めた気がした。
『便利屋の皆さん……』
「ん、悪党としては正解」
「……お陰様で目が覚めました。私たちに今、こうして迷ってる時間はありません」
「そうだよ! 何よりもまず、ホシノ先輩を取り戻さないと!! 非公認だか何だか知らないし、不法組織だって構わない! そんなこと関係ない!」
そうだったな……アビドスの為に手段も何も選ばないと決めたはずなのに、今の組織の為にカイザーと戦うかどうかばかり考えてた。変わってしまったホシノに気を取られてばかりで大事なことを忘れていた。俺の原点はアビドスを救うことだった。
「今、重要なのはホシノを救い出すこと。そしてアビドスに再び生徒会を存在させること。そうすればカイザーの攻撃も止む。手段は選ばない」
武器を取り戦列に加わる、グランたち。
「くっ、この期に及んで無意味な抵抗を……! よくも……」
「ホシノを返してもらうよ、カイザー理事」
「先生、指揮を。すべてを焼き尽くしてやる」
先生がシッテムの箱を構えて、戦闘指揮を始める。ハルカとグランが真っ先に飛び出して、暴れまわる。ハルカが被弾しそうになると、シールドで庇いながら攻撃を繰り出すグラン、グランが攻撃を防いでくれるため遠慮なく乱射するハルカ。
「大丈夫か? 俺が防ぐから、存分に暴れろ」
「は、はい! 一人残らず倒します!」
シロコ、カヨコ、セリカがハルカとグランの手の届かない位置にいる敵を確実に仕留めていく。カヨコが射撃をしながら隣のシロコに話しかける。
「また、貴方と一緒だね」
「ん、砂狼シロコ。よろしく」
「鬼方カヨコ」
「そういえば、アンタ達でしょ! 柴大将のところにお金置いてったの! ありがと!」
「うちの社長が決めたことだし、お礼はそっちに言って上げて。……カッコつけると思うけど」
ムツキがセントリーと爆弾をバラまいて、カイザーに連携を取らせない。そして統率のなくなった集団からノノミとムツキの掃射を受けて倒されていく。二人は笑顔を浮かべてこそいるが、その心中は穏やかなものではなかった。
「くふふふ~、一人も残してやらないから!」
「お掃除しちゃいま~す☆」
アヤネとアルは後方からの援護、支援を徹底する。アヤネがドローンを駆使して、戦場の状況をリアルタイムで更新。先生がそれを精査、アルに指示を飛ばす。アルはその指示を受けて狙撃する。
『支援のタイミングは逃しません!』
『アル、徹甲弾用意。敵戦列左後方、戦車の足を止めて』
「ふふふ、任せて頂戴!」
傭兵たちも好き勝手暴れまわるのでカイザーPMC部隊はドンドン瓦解していく。要であったであろうゴリアテも傭兵たちにハチの巣にされていた。
「くっ、なぜ、なぜこれ程押されてる!」
「理事っ! 正面に敵が! グァッ!?」
「よぉ、カイザー理事ィ」
カイザー理事の護衛の何人かを上空からの射撃で無力化してカイザー理事の目の前に降りたつグラン。『Eye of Horus』と『KO-3K2』を両手に持ち、カイザー理事に向けるグラン。懐から拳銃を出してグランを撃つカイザー理事。しかしそれを受けながらもグランは両手のショットガンを連射してカイザー理事に傷を負わせる。
「理事、傷が……! すぐに治療を!」
「くっ、一時退却だ! 兵力の再整備に入れ!」
「はいっ!」
カイザー理事は射撃を受け傷つく。すぐに他の護衛が駆けつけてくる、グランとしてはもう少し攻撃をしたかったが、護衛が集まってきているのを確認して離脱する。その隙に、カイザー理事は全体に退却指示を出す。
「覚えておけ、この代償は高くつくぞ……!」
「退却命令ッ!」
『本部から退却命令が下った。繰り返す、本部から退却命令が下った。戦列を整えHQに帰投せよ』
撤退を開始したカイザーPMC。その様子を見ながら一息つく、対策委員会。
『敵兵力、撤退していきます……』
「……ふう」
「ん」
「はっ、ザマぁ見なさい!」
「いや~、あれこそ、三流悪党だよ。『覚えておけー』なんて実際に聞くとは思わなかった」
「想定通りの効果がでた。風紀委員会相手でも通用するといいけど……」
『お疲れ様、一度帰ってきて、しっかり体を休めて』
喋る生徒たち相手に通信を繋げて注目を集める先生。
『はい、先生。きっとこの次は……今までで一番大きな戦いになると思います。まずは帰って、ホシノ先輩を助ける方法を探さないといけません』
◎・アビドス高校・
「ねぇ、アヤネ。私はこれからホシノの事で行かなくちゃいけない所があるんだ」
「先生?」
グラン達の帰還を持っているアビドス高校で、先生は隣にいるアヤネに話しかける。
「私はホシノがどこに連れていかれたのか調べてくる。だからその間に
「そっち、って……」
困惑するアヤネに先生は机の上に置かれていたホシノの手紙を指さす。
「みんな気になってるんでしょ、グランとホシノの関係」
「そ、それは……。そうですけ……先生は知っているんですか?」
「知ってる。けどグラン本人から『喋らないでほしい』と言われてるから。だからアヤネ達が自分から聞いて……できれば彼を受け入れてあげて」
「受け入れる……?」
先生は唇に人差し指を当てて秘密というジェスチャーをしたあと、少し悲し気な表情をしてアヤネに告げる先生。アヤネは先生の発言に要領を得ないのか疑問符を浮かべる。
「それじゃ、お願いね」
先生はすぐにいつものぽやっとした優しい表情を浮かべて、教室を出ていく。残されたアヤネは一度オペレーター席を離れ、対策委員会の教室の中央机に置いてあるホシノの手紙を手に取る。そこに書いてある『私のヘイローを「壊して」。貴方にしか頼めないから、よろしくね。大好きだよ、グラン』という一文を見て思考する。ヘイローの破壊、それはこのキヴォトスでは死を意味する。過去に大喧嘩をしたとグランは言っていたが、たびたびホシノとグランは微妙な空気になっていた。さらにこのホシノの『大好き』という文。そして机の上に置かれていたホシノの盾と銃と……鍵。見た限り金庫や、車などではなく、住居の物。そこから、アヤネの頭脳はある結論に行きついていた。ただ、グランに対してかなり好意を持っているアヤネとしては、そんな場合ではないとは思いつつもこの結論を否定したいという願いがあふれ出る。
「多分……、グランさんはアビドスの生徒で、ホシノ先輩の同級生だった……。そして恋人だった?」
脳が震える気がした。グランさんが私に与えてくれた、笑顔も撫で方も贈り物も、全てホシノ先輩にした経験を流用しているのだろうか。……私が最初だと思ったのに。アビドスで、一番最初に、私が、グランさんを好きになったと思ったのに……。認めない、負けたくない。私が、私がグランさんを手に入れる。こればっかりはホシノ先輩が相手でも譲れない。……ホシノ先輩、過去のグランさんは確かに、貴女のものです。けれど、ここから先、未来のグランさんは私が私色に染め上げます! 正々堂々とグランさんを取り合って、私が勝利します! だからまず、勝負するためにも絶対貴女を助けてみせます!
……それよりもこの推測があってるのかグランさんに聞かないといけませんけど。……違ったらどうしよう……恥ずかしい。
アビドス編もクライマックスです。……長かったぁ。
現在読者参加企画を計画中です。アビドス編終了後、幾つかのサイドストーリーとイベントストーリーをはさんでその時点での設定などを纏めた話を出します。その話り中で質問コーナーを少しやります。その名も、『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』 詳しくは活動報告にあげているので皆さん、是非ご参加ください。
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