シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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35話

◎・アビドス高校・

 

「ただいま~」

「ん、アヤネ、先生は?」

「あれ、確かにいませんね?」

「どこに行った?」

 

 グラン達がアビドスの校舎に戻ってくると、そこに先生はおらず、アヤネだけが立っていた。アヤネは何かを決心した表情でグランを見る。

 

「先生はホシノ先輩の行方を探りに行きました」

「当てがあるのか?」

「はい。そして私たち対策委員会にはこの(・・)問題を解決しておくように言いました」

 

 アヤネがホシノの手紙を差し出す。ちょうど、グランへホシノが宛てたページだ。それを見たグラン達の反応はそれぞれだった。ノノミは笑顔を深め、セリカは顔を赤くし、シロコは興味津々、グランは顔をそらした。そんなグランの様子が気に入らなかったのか、アヤネは机にバンッと手紙を置く。そしてズンズンとグランに詰め寄っていき、グランのネクタイを引っ張る。そして―――

 

「あ、アヤネちゃん!?」

「ん!?」

「わぁ☆」

「はへ?」

 

 引き寄せたグランの頬にキスをした。気の抜けた声を出したグランだが、すぐに正気に戻り後ずさる。アヤネは顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「私は! グランさんが好きです! 大好きです! だからこの手紙に書いてあることが許せません! だから! 全部、全部説明してください! ホシノ先輩との関係を! 過去何があったのかを! 私たちに話してください! なんとなく予想はしています! けどグランさんの口からきかせてください! 私は、貴方の口から聞きたいんです! そして貴方を誰にも譲りません! 例えホシノ先輩と付き合っていようとも諦めません! 寝取ります!」

「アヤネちゃん何言ってるの!?」

「お前、大丈夫か? 後で思いだして辛くなったりしなか?」

 

 セリカとグランが色々とはじけ過ぎているアヤネに突っ込みを入れる。シロコは『ほー』と感心して止める様子はないし、ノノミは先ほどから笑顔を浮かべたままずっと何を考えているかわからない。

 

「そんなのどうだっていいんです! 早く説明してください! なんですかこの鍵!? どう見ても住宅のドア用じゃないですか!? なんですか!? お互いの家に遊びに行くくらいの関係だったんですか!? 川辺を二人で笑いあいながら一緒に帰ったんですか!? 私もしたいです! これ私の家の鍵です! 受け取ってください! さあ、他に何をしたんですか! 何があってアビドスを離れることになってたんですか!? どうしてブラックマーケットのボスになったんですか!? 私は貴方を知りたいんです! これからを一緒に歩む人のことを理解したいんです! でもそれ以上にグランさんのことを理解してあげたいんです! 貴方はどうして私たちをそんなに優しい目で見るのか教えてください!」

 

 アヤネの怒涛の勢いに突っ込みを入れるのを諦めたセリカとグラン。ここまで来るとシロコもノノミもセリカまでも、グランの過去が気になり始めたようで、グランの方を見てくる。グランは溜息を一つ着いた後、全員に着席を促す。

 

「向き合うころあいなのかもな……」

「どうしたのよ?」

「覚悟をしただけさ。座れ、長い話になるからな……」

 

 グラン自身も椅子に深く座り込み、少しずつ語りだした。アビドスに入学したこと、ホシノとユメ先輩との出会い、ホシノと親交を深めていったこと、ファーストキスの話。そしてユメ先輩の死、ホシノとの大ゲンカ、左腕の欠損、アビドスはもうまともな手段では救えないと思ったこと、自主退学したこと、ブラックマーケットの違法バイトで稼いできたこと、後のキッド2との出会い、『ODI ET AMO』の立ち上げ、勢力の拡大、アビドスにどこにも負けない、武力と財源を与えるつもりだったことを。 

 

「グラン先輩は本当にグラン先輩だったんですね☆」

「ん、私も先輩と呼んだ方が良い?」

「よしてくれ今更。むず痒くなる」

 

 シロコの言葉に苦笑いしながら自嘲気味に言うグラン。ふと、その頭が暖かいものに包まれた。アヤネが椅子から立ち上がって座っていたグランの頭を抱き寄せたのだ。

 

「アヤネ?」

「話してくれて、ありがとうございました。思っていた以上のお話で、私、なんて声をかければいいか、分からなくなっちゃって……。私たちの為、アビドスの為にここまでしてくださっているんです。きっとなにかかけるべき言葉があるはずなんですけど。ありがとうございます? お疲れ様です? どれもしっくりこなくて。でもなんとなくこうするべきだと思ったので……」

 

 アヤネはグランの頭を抱きしめながら、涙を浮かべこういった。横ではセリカもグランの服の袖をチョコンと摘まみながら俯いていた。その顔は見えないが、きっとセリカも涙を浮かべているのだろう。シロコはその様子を暖かく見守っている。その様子をみたグランはある思いが浮かぶ。

 

(ああ、なるほど。確かにこいつらには真っ当でいて欲しい。どれだけ辛くても、あのブラックマーケットの金に手を出させなかったホシノの気持ちもわかる気がする)

 

 アヤネとセリカを一度離れさせて、立ち上がるグラン。ポケットからホシノに託された鍵を取り出す。そして、鍵をギュッと握りしめてアヤネ達を見つめる。

 

「なぁ、一度だけ、こんな俺でも一度だけ、ホシノを助けるためにお前たちの『先輩』になっても良いか?」

 

 その言葉を聞いたアヤネ達は一度顔を見合わせた後、グランに笑顔を向ける。

 

「はい! お願いします、グラン先輩!」

「一度と言わずにずっとでも良いですよー☆」

「ん、生徒が増えるのは大歓迎」

「そうね! それともう、隠し事はないのよね、グラン先輩?」

 

 セリカの言葉に顔が引きつるグラン。一度深呼吸をしたあとにゆっくりと告げる。

 

「あるさ」

「ちょっと!」

「でもこれはプライベートの秘密だからな。この場で話すべきじゃない」

「プライベートって……」

「俺の女事情とか知りたいか?」

「やっぱ知らなくていい!」

 

 二名が物凄く知りたそうな表情をしていたが、セリカは努めてこの話題を断ち切った。絶対に厄介なことになるのが目に見えていたからだ。そんな様子のセリカを見たグランの心中は罪悪感でいっぱいだった。今回話した過去の出来事、グランはいくつかの事を隠していた。

 一つはユメ先輩の詳しい恰好や性格、これを話せば間違いなく、今のホシノがユメ先輩の真似をしていることに気が付くと思ってだ。これはグランだけの判断で話でいいのか解らなかったし、ホシノのこれからのアビドスでの生活を左右しそうだったので黙っておくことにした。

 二つ目は過去のホシノの格好、性格だ。これも1つ目に付随する問題だ。これらを説明しなかったせいでホシノが『うへ〜』というあの性格のままグランの腕を吹き飛ばした、若干サイコみたいな過去を持つことになってしまったが許して欲しいとグランは思った。

 三つ目は自身が人を殺した経験があること。この罪は自分一人が抱えて背負うのが良い。なんて思ってはいるが実際はグランはアビドスの後輩たちに触れ、絆されたが、同時に臆病になってしまった。アビドスの面々に嫌われるのを避けるため自身の罪を隠したのだ。覚悟をしたと言いつつ、結局その一歩が踏み出せないあたり結局グランはあの頃と変わらず弱いままだ。

 

「さてと、アイツに連絡して……。ホシノを助けるためにまずはここに向かうか」

 

 グランは握りしめた拳を開いて鍵を見せた。

 

◎・ホシノ宅・

 

 グラン達はアビドス市街を移動して、ホシノの自宅に来ていた。

 

「このアパートがホシノ先輩の家……」

「懐かしいな」

「初めて来ました〜☆」

 

 鍵を使ってホシノの部屋に入る。なんてことはない1LDKの部屋。過去に何度も来たことがあるグランは割と遠慮なく入っていく。それとは対象的にアヤネ達は周りを見ながら恐る恐るといった様子で入る。

 

「相変わらず物が少ねぇ……いや、多少増えたか?」

「確かに少しの装飾程度で後は必要な家具だけですね」

「まぁ、リビングだしこんなモンなんじゃない?」

 

 リビングまで入ったグランは辺りを見回す。

 

「?……ッ!!」

 

 グランは部屋にユメ先輩、ホシノ、自分で写ってる写真が飾られているのを見つけ急いで隠した。喋らずに黙っていたことが危うく無駄になるところだった。そして、写真の近くに来たことでその写真立ての下にある巨大なガンケースを見つけた。シーツがかけられていて一見ただのインテリアに偽装されていてこの写真に注目しなければ気がつけなかっただろう。

 

「やっぱりここにあったか……」

「大きいガンケース?」

「それは?」

「このガンケース……あの時の

「デカッ! 何これ大砲でもはいってるの?」

 

 シーツを取り払ってガンケースを引っ張り出して中身を確認するグラン。中にあったのは『USC-26/H SALEM』グランがアビドスにいたころに使っていた、スナイパーキャノンだ。スナイパーキャノンを手繰り寄せ、状態を確かめるグラン。

 

「定期的にメンテナンスされている……。あの喧嘩で破損した部品も治ってる……。驚いたな」

「この銃、グランのなの?」

 

 シロコが整備状態を確認しているグランを見て聞く。

 

「ああ、俺が使ってた銃だ。……実は最近、俺がアビドスに居たころ住んでた家に行ってみたんだが、今は別の人が住んでるみたいなんだ。中の家具とか、こいつがどうなったのか気になっていたんだが、ホシノに鍵を渡されてもしや、と思ったわけだ」

「グラン(さん)(先輩)の家」

「どこに住んでたのよ?」

「あ? アビドスの○○区、■■町、▲の○○っていうアパートだが?」

「ん?」

 

 グランの言った住所に何か覚えがあるシロコ。念のためにとグランにいくつか質問する。

 

「アビドス高校まで結構距離ある?」

「ああ、サイクリングとかが趣味ならちょうどいい距離何だろうな」

「ん、最適」

「あ?」

 

 交差するシロコとグラン。

 

「えっーと、223?」

「ん、223号室に住んでる。朝日が綺麗に入る」

「そっかぁー、そうだったなー」

 

 グランがかつて住んでいた部屋に今、住んでいたのはシロコだった。まさかの事実に上を見上げるグラン。ふと脳内に流れる既視感。

 

(『サイクリングとかが趣味ならちょうどいい距離何だろうな』……なんか似たセリフを言ったことがある気がする?)

 

 今はそれどころではない、と頭からそのことを消し去るグラン。グランの後ろの方でノノミが何かを期待する目で見つめていたことには気が付かなかった。グランはスナイパーキャノンを一度ガンケースにしまい直して、再び部屋を見回す。そしてリビングにないと判断したのか、隣の部屋に移動する。そこは寝室だった。その壁に貼られているポスターを見て固まるグラン。

 

「……また、懐かしいものを。態々直したのか?」

 

 ゆったりとした足取りでポスターに近づき、その表面を割れ物を触るように撫でるグラン。アヤネ達は何か大切なものなのだろうと推測してその様子を見守るしかなかった。かつて、ホシノがビリビリ破いたアビドス砂祭りのポスター。今はセロハンテープで補修されており、色褪せたりしないように表面コートもされているそれを撫でながら、思い出にふけるグラン。

 

「よし、探すか」

 

 暫くするとグランはポスターから手を放して部屋の探索を始める。思いっきりクローゼットを開けて中を漁りだすグラン。

 

「こっちは制服、これは下着か、この段は「ちょっと何やってんのよ!? 変態!?」

 

 すかさずセリカのグーパンという突っ込みが炸裂した。吹き飛ばされて、壁に頭を打つグラン。

 

「いったぁ……いきなりグーパンはないだろセリカ」

「銃じゃなかっただけ良いじゃない! いきなり何漁りだしてんのよ! 信じらんない! サイってー!」

「ああー、いや、すまん。下着なんて見慣れてるし、うっかりしてたわ。そっちの探索は任せる」

「任せるって、何を探すのよ?」

「タクティカルグラスと俺の書いた退学届。スナキャがあったしその二つもこっちにあると思うんだよな……」

「はーい☆ 私たちで探すのでグラン先輩は寝室から出て行ってくださーい☆」

「そうです! 先輩はリビングで座っててください!」

 

 ノノミとアヤネに背を押されリビングに出されるグラン。どうしたものかと、考えながらダイニングテーブルの椅子に座るグラン。このテーブルでホシノの料理を食べたこともあったっけとテーブルを撫でる。そうして過ごしていると、インターホンがなる。外を確認するとキッド2、白羽ムイがスーツケースを持って立っていた。ムイを中に入れるグラン。ムイは通されたダイニングでスーツケースを広げながら喋り出す。

 

「一応、毎年サイズの調整や、クリーニングには出していましたが、まさかこれが必要になる日が来るとは思いませんでした」

「俺も思ってなかったよ。けど、今回ばかりは必要だと思ってな」

「……そうですか。では、こちらです」

「懐かしい。……今日はずっと懐かしがってるな」

 

 ムイがスーツケースから出したものを受け取るグラン。

 

「着替えるか……。手伝ってくれ」

「かしこまりました」

 

 ムイの手を借りながら着替えるグラン。義肢も日常で使う『生身に寄せたもの』から、『戦闘に特化したもの』に変更する。着替え終わったグランは姿見の前で自身の恰好を確認する。

 

「二年前の『制服』が入るのは喜ぶべきか、嘆くべきか……」

「それは、性差や個人の思考によって変るかと」

 

 『アビドス高校男子制服』に身を包んだグランはその恰好のままガンケースを背負う。そして鏡に映った自分の姿を見る。髪が短くなった、腕、足が一本ずつなくなったなどの差はあるが概ね、当時のままだろう。そう評価を自身に下したときに、隣の部屋からアヤネ達が出てきた。

 

「タクティカルグラスは発見しました!書類は多分この鍵付きの箱に……制服?」

「ホントだ! それ男子用の制服! 初めて見た!」

「ん、新鮮。……ノノミ?」

「………あっ……

「おい、ノノミいきなり座り込んで大丈夫か?」

「は、は、はいぃ~。ノノミは大丈夫です☆ あの、大丈夫ですから。その恰好で迫られると……

 

 顔を赤くして息を乱しながらそう言うノノミ。グランも『本人がそういうならいいが……あの状態は……え? 俺の気のせい? それとも何か興奮する要素あった? というかなんでいきなり?』とかなり混乱していた。しかし努めて気にしないことにしたグランはアヤネの持つ鍵付きの箱を見る。確かに退学届を入れて置けるような鍵付きのファイルボックスだった。

 

「四桁の数字か……1213」

「え、はい。……あ、開きました! 一体何の数字ですか?」

「俺の誕生日。12月13日」

「……」

「急にむくれるんじゃない」

 

 また、二人だけのやり取りですか。と言いたげにむくれたアヤネの頭を撫でて、ファイルボックスの中身を確認する。

 

「やっぱりとっておいたか」

 

 中には、グランが書いた退学届が厳重に保管されていた。それを取り出して懐にしまう。そしてシロコからタクティカルグラスを受け取り、首元にかける。視界の端でまたノノミが震えた気がするが気にしない方向に舵をとったグランはムイに向き直る。

 

「ありがとな、ムイ。あとは、本部に連絡、他のキッドたちと協力して強襲部隊の編制をしろ。相手はカイザーPMC、武器の使用制限は……一般兵器に止めておけ」

「了解いたしました。直ちに第一種戦闘配置に移行させます」

「あと、使う予定はないが一応確認だ。今、OVERED WEAPONは何が使える?」

「……GRIND BLADEとMASS BLADEの整備が終了してます」

「現地には持ってきておけ」

「……了解」

「よし、頼んだ。後の指示は追って出す」

「かしこまりました。失礼します」

 

 ムイは一礼した後、スーツケースをたたんで部屋を後にした。

 

「さて、一度アビドス高校に戻って先生の連絡を待つとしよう」

「はい!」

「ん」

「ええ!」

「はい☆」

 

 

 

「なぁ、ノノミ。本当に大じょ「大丈夫です☆」

 

 

 





『OVERED WEAPON』
『ODI ET AMO』の技術部が開発した規格外兵器と新型エネルギー供給システムからなるセット兵器。新型エネルギー供給システムが使用者のヘイローをハッキング(・・・・・・・・・・)することで、使用者が本来持ちえない量の神秘をヘイローに無理矢理出力させ、その神秘を燃料に規格外兵器を作動させて相手を破壊するという武器。実力としては中の上程度のグランが持つ対格上用の切り札。ヘイローをハッキングするというシステム上、使用者にどういった副作用が出るか未知数の為、グランが責任を持って自身の体でしかテストはさせていない。





  現在読者参加企画を計画中です。アビドス編終了後、幾つかのサイドストーリーとイベントストーリーをはさんでその時点での設定などを纏めた話を出します。その話り中で質問コーナーを少しやります。その名も、『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』 詳しくは活動報告にあげているので皆さん、是非ご参加ください。

グラン君がこの中で一番仲良くなるのは?その3

  • キャスパリーグ
  • 自称ロマンチスト
  • チョコミントフリーク
  • 絵に書いたようなツンデレ
  • 自警団のエースにしてみんなのアイドル
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