◎・アビドス高校・
「みんな、ただいま」
「おかえり、先生」
「先生、お待ちしていました!」
「先生!」
「先生……」
先生がアビドスに帰ってきたとき、既に日はとっぷり暮れていた。先生の姿を確認した対策委員会はすぐさま駆け寄る。
「ホシノの居場所はわかったのか?」
「グラン、その恰好……。良かったね」
「……あぁ」
最後に、グランが先生の前に立つ。先生はグランの来ている服を見てにっこりと笑ってグランの頭を撫でる。
「それよりも! 何か掴んだか?」
「うん、問題ないよ」
グランが咳払いをして話を戻すと、親指を立てながら答える。そして先生が生徒を見回して声を上げる。
「それじゃあ、ホシノを助けに行こう!!」
「ん、行こう」
シロコが頷いて、ふんす、と息を入れる。
「ホシノを助けて、ここに連れ戻す!」
「はい、そういってくださると思ってました!」
アヤネが、ドローン操作用の機材を背負って笑う。
「助けて、その後は厳しく ってあげないと!!」
「うんうん! 自分で言ったことを守れなかったんですから、お仕置きです! きちんと叱ってあげないと!」
ノノミが笑顔を浮かべ、先生に激しく同意する。
「『おかえり』っていって、『ただいま』って言わせよう!」
「うん……えっ!? 何それ恥ずかしい! 青春っぽい! ぞわぞわする!」
セリカが顔を赤くしながら、うにゃる。そんな様子を隣でみていたシロコが片手をあげる。
「はい。私はする」
「え、え!?」
「セリカちゃんがしなくても、私もします☆」
「えっ、えぇっ!?」
「わ、私も。ちょっと恥ずかしいけど……」
「か、勝手にして! 私は絶対、そんな恥ずかしいこと言わないから!」
セリカがそう宣言して、教室内が苦笑する。その場にいるセリカ以外の全員が思った。『絶対言う奴だ』と。
「もう一度、皆で笑えるように頑張ろう」
「……そうだな。ホシノとアビドスには笑顔が似合う」
グランが少し間を置いて、先生の言葉に答える。全員に声をかけ終わる先生。アヤネが入れ替わりで話し始める。
「では、救出に向けての準備を……」
「でも、今の私たちだけじゃ勝てない。誰か協力者を……」
「便利屋は?」
「今、こっちで連絡を取ってる」
「……私に考えがあるの」
先生が呟く。
「え……? それはどういった……?」
「ごめん、もう少し時間を頂戴! また出かけてくる! ホシノの居場所はこの座標! 確認しておいて!!」
先生はすぐに教室を飛び出していった。グランは先生から渡された地図を見て、座標と照らし合わせて確認する。
「ここは……。そっか、また、ここなのか……」
「グラン先輩?」
哀愁の表情を浮かべ地図をグシャと握りつぶしたグランにノノミが恐る恐る話しかける。話しかけられたグランは怒りを納めて、努めて笑顔でノノミの相手をする。
「気にしないでくれ。お前たち、今日は保健室のベッドとかでもう休んでおけ。明日は朝から移動してカイザー基地に向かうからな」
「グランさんは……?」
「少し本部に連絡入れて、空き教室で寝させてもらうさ」
そういうなら……とノノミ達は休息に向かった。グランは教室に一人になると携帯をとりだして、本部に電話をかける。
「俺だ。事情が変わった、MASS BLADEを使う。日の出には行動開始だ、急げ」
連絡を入れ、携帯をしまうグラン。椅子に寄りかかり、一息つく。
「遺書ぐらいは残しておくか」
暗い部屋の中、便箋とペンを出して机に向かうグランだった。
◎・ゲヘナ学園・
先生は風紀委員会本部の前でイオリを拝み倒していた。
「お願いイオリちゃん!」
「あのなぁ……。ゲヘナの風紀委員長に、そんなに容易く会えると思ってるのか?」
「そこをなんとか!」
お願いと言いながらべたべたと触れてくる先生にイオリは青筋を浮かべる。
「そんなに会いたいのなら……。じゃあ、土下座して私の足でも舐めたら「舐めるね!」
先生の舌が土下座しながらイオリの太ももからくるぶしを撫でおろす。
「ひゃんッ!? ちょっ、まだ話の途中……んっ! 指の間まで! ちょっと!?」
ベロンベロンとイオリの足を舐める先生。足の甲から、足の指の間までを先生の長めの舌が入り込む。
「大人としてのプライドとか、人としての迷い、というか常識がないのか!?」
イオリの言葉に顔を上げる先生。そして今までにないぐらいの決め顔でいう。
「そんなものはないわ!」
「おかしい! 変態! 歪んでる!」
「随分、楽しそうね」
イオリと先生が大声でやり取りしていると本部の建物からヒナが歩いて出てきた。
「い、委員長!?」
「……自分の望みの為に膝をつく愚か者はこれまで何度も見てきた。でも、生徒のために跪く先生は初めて見た。顔を上げて頂戴、先生。言ってみて、先生。私に何をしてほしいの?」
「いや、その、委員長。先生は跪いているんじゃなくて、その、足を舐めて……」
「……?」
ヒナはイオリの言葉に数秒固まって、
「!!??」
一気に赤くなった。
◎・トリニティ総合学園・
「……なるほど、ご説明ありがとうございます。ヒフミさんが仰っていることはよくわかりました。例の条約も目前に迫っていますし、今は下手に動くわけにはいかないのですが……。ただ、そのPMCの存在が、我が校の生徒たちに良くない影響を及ぼしそうなことはたしかですね。今回は例外ということで、何か考えた方がよさそうです」
「あ、ありがとうございます、ナギサ様……」
トリニティ総合学園、ティーパーティーのテラスで、トリニティの生徒会『ティーパーティー』の一人
、桐藤ナギサはヒフミからのカイザーについての報告を聞いて、そう告げる。
「そうですね……確かちょうど、牽引式榴弾砲を扱う屋外授業の予定があったはずです。せっかくですし、ちょっとしたピクニックなどいかがでしょう」
「牽引式榴弾砲……しいうことはL118の……?」
ヒフミがトリニティにある榴弾砲の中から、該当の物を思い浮かべる。
「はい、他ならないヒフミさんですし、全てお任せします。細かいことはこちらで調整しておきます。愛は巡り回るもの……いつか、ヒフミさんが愛を返してくれる時を楽しみにしていますね。ふふっ」
「あ、あぅ……」
ナギサは目の前で困惑しているヒフミを見つめながら、微笑して紅茶を口にする。その心中にある考えを抱きながら。
(以前に小耳にはさんだヒフミさんがブラックマーケットに入り浸っているという噂。以前であれば笑って流していましたが、確か、シャーレの部長はあの『水戸グラン』が担当していたはず。そして今、ヒフミさんはそのシャーレを助けに行きたいという。……ヒフミさんと水戸グランの間に何かつながりが……? だとしたら、あの噂ももしかして……)
◎・アビドス市街・
「うん、だいたいこんなもんかな」
「わっ! 屋台も良い感じじゃん!」
「元々、柴関ラーメンは屋台から初めてな。懐かしい気分だよ」
アビドスの町で柴大将は新しく出来たラーメンの屋台で調理をしていた。カウンターには便利屋68の面々が座っており、ムツキが屋台の雰囲気に興奮していた。
「わ、私が……私のせいで、お店が……し、死にましょうか? 死んでもいいですか? 死にますッ!」
「まぁまぁ、落ち着いてハルカちゃん。それにしても、やめるって聞いたけど、またお店を開くことにして良かったよ~」
隣で銃を咥え始めたハルカを抑えながらムツキが柴大将に感激を伝えると柴大将はふっ、と笑う。
「ああ、どっかの誰かさんが、お店の前にお金を置いてくれて行ったこともあったからな。本当なら、引退してゆっくりしようと思っていたんだが……営業してほしいと言われちゃ仕方ない」
「……ここのラーメンはホントに美味しいから、営業してくれて助かってるわ」
アルは腕を組みながら、格好つけて柴関ラーメンを褒める。
「580円の柴関ラーメン4杯、お待ち!」
「これ、また量を間違ってない?」
「くふふ~、良いじゃん、良いじゃん」
「「「「いただきまーす」」」」
目の前のラーメンに舌鼓する便利屋68。しばらくして、ラーメンを食べ終わった面々。ムツキがコップの水を飲みほして語りだす。
「あー、やっぱり美味しい! さて、じゃあそろそろ依頼に向かう?」
「……先生に続いて代表からの依頼。文面だけなら一級の組織になったね、私たち」
「……まだよ」
カヨコの言葉にアルが不満気に言葉をこぼす。
「まぁー、代表が家賃を持ってくれてるから助かってるけど、あのビルの連中に利用されるだけの時もあったし、まだまだ一流とはいえないよね」
「ええ、私たちはまだ外面しか整ってないわ。今回の依頼、『ODI ET AMO』本隊も動員されるらしいわ。『代表』……そのアウトローとしての面をより近くで確かめる絶好の機会。逃す手はないわ」
「さすが、アル様! わ、私も真のアウトローになるため頑張ります! 今度こそ、全部、全部吹き飛ばします!」
カウンターから立ち上がり各々の武器を手に取る便利屋68。
「大将、申し訳ないけど今日のお題はツケといて貰える?」
「なんだ? また無駄遣いしたのか?」
「違うわよっ! ……ただ今回の依頼、かなり危険でもあるわ。それでもまた必ずここに来る、という願掛けみたいなものよ。 良いかしら?」
アルの言葉を聞いた柴大将は意図を理解してニカッと笑い、親指を立てる。
「いつでも来いよ! 帰ってきたらうまいラーメン何杯でも作ってやるからな」
「期待してるわ。……さぁ、便利屋68! 仕事の時間よ!」
◎・アビドス高校・
アビドス高校はその日朝から、大忙しだった。校庭と学校の周辺には『ODI ET AMO』のテントが立てられ、戦車や歩兵が多く訪れていた。 グランはインカムを着けて、正面登校口近くに建てられた臨時指揮所のテントで部隊の確認などをしていた。
「現在、カイザーPMC基地包囲の為に二個師団が動いています。あり一匹逃しません。また代表たちが離れている間この校舎、アビドス市街については偵察型、高機動型を中心とした三個小隊が担当いたします。師団長はキッド4、小隊長はキッド3、統合指揮官はキッド1となっております」
「よし、包囲状況は?」
「軽車両と歩兵による包囲は完了しています。ただ、このままだと突破される恐れがあるため、B-44 ROKHを使ってR2BシリーズとSz11シリーズを各部隊に届けさせます」
「……」
編成表を見ながら考え込むグラン。その時指揮所にキッド1が入ってくる。キッド1はグランの考え込む姿を見ると、すぐさま駆け寄る。
「代表、何か不備がございましたでしょうか?」
「キッド1、包囲師団の方、航空戦力が少なすぎやしないか?」
グランの言葉にキッド1は説明を始める。
「実は、ブラックマーケットからアビドス砂漠の中央まで行きますと、大型の輸送機ならともかく、戦闘用の航空機は燃料の問題で運用が不可能であることが発覚いたしました。その為、旧アビドス車両基地にあった数台のF17 FLAMINGOしか戦闘に参加させられませんでした」
「そして、車両基地もあくまで車両整備がメインだから航空燃料をたいして貯蔵してなかった、と」
「仰る通りです」
「……各学園自治区に交渉して航空機の補給所でも作らせて貰うか?」
グランが頭を掻きながら立ち上がりテントの外へ向かう。
「では、後を頼む」
「了解いたしました」
敬礼をされて、それに軽く手を上げて答えながら、校門前に到着するグラン。そこには既に先生と対策委員会が集結していた。
「ん、準備完了」
「補給も十分、おやつもたっぷり入れておきました!」
「こっちも準備できたわ! 睡眠もしっかり取ったし、炊事車のお陰でお腹もいっぱい! すぐにでもドンパチ始められるわ!」
「私の方も、アビドスの古い地図をすべて最新化しておきました、指揮所にも共有済みです。ルートは侵攻部隊の方々が切り開いてくれます! 行きましょう!」
先生もシッテムの箱で情報を確認したのか頷いている。そして顔をあげ、声を上げる。
「それじゃあ、始めよう」
「了解だ、先生。こちら、代表。キッド1、侵攻を開始しろ」
『キッド1、了解。キッド1から全軍に通達、戦闘開始。キッド4、師団を率いて包囲を縮めろ』
『了解っス! 師団前進っスよー!』
グランが手を降ると一台の大型輸送車がグラン達の前で止まる。
「これに乗って前線まで行く。乗れ」
「ん、了解」
「さぁ、やってやるわ!」
「行きましょー☆」
「失礼します」
最後に先生が乗り込む前に一度振り返ってグランに話しかける。
「絶対助けようね」
「ああ、絶対助ける」
先生の言葉に返事した後、ふと振り返ってアビドス高校に向き直るグラン。
「いってきます」
そんな様子のグランを医療テントからムイさんが真顔で見ていました。
本編との大きな差として便利屋の成長とナギサ様の疑心暗鬼率アップ。
現在読者参加企画を計画中です。アビドス編終了後、幾つかのサイドストーリーとイベントストーリーをはさんでその時点での設定などを纏めた話を出します。その話り中で質問コーナーを少しやります。その名も、『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』 詳しくは活動報告にあげているので皆さん、是非ご参加ください。
いつか書く不思議時空のサイドストーリー。どれが見たい?
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代表、女体化騒動
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みんなでカラオケ
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グランの誕生日
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代表asmr
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『もしも用の遺書が流出した』
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