◎・ゲヘナ学園・
トリニティを離れて、ゲヘナに着いた。……先に風紀委員会から行こうかな。なんだか万魔殿は時間がかかりそうな気がするし。すると向こうから銀髪のツインテールが歩いてくるのが見える。アイツは……。
「げ、代表」
「げ、とは随分なご挨拶だな。確か……イオリだったか? すまん、名字はあの時聞けなかったから良かったら教えてくれ」
風紀委員側も全員『イオリ』としか呼んでなかったし、先生は『良い脚している風紀委員』としか言ってなかったし。……確かに、良い脚してるしソックス、ブーツも良く似合っている。実用性がありながらおしゃれでもある。
「銀鏡イオリだ。……どこ見てるんだ」
「脚」
途端に、顔を真っ赤にして後ずさる銀鏡。おい、まて、何だその反応は。
「お、お前も、いきなり私の脚を舐めたりするつもりか!?」
「する訳な……『も』? まて先生は舐めたのか?」
「あ、あの変態は土下座する途中で頭を下げながら太ももからくるぶしを舐めて、そのあとブーツと靴下をあっという間に脱がして、足の甲から、裏、指の間まで舐めたんだ!」
「……ご愁傷様」
あの先生、たまに変態の一面が飛び出るからな。銀鏡はその被害を一新に受けたんだろう。先生は脚フェチなのか。ああ、だから早瀬と妙に距離が近いのか……。
「……代表は怪我、大丈夫なのか? その、私の砲撃の時の……」
「銀鏡は優しいんだな」
「い、いや、そういうんじゃない! ただ……ごめん」
下を向いて、口ごもる銀鏡。……俺は聞き逃すタイプの男じゃないぞ。
「気にしすぎんなよ。アレはお互いやるべきことをやった結果なんだから」
「……ありがとう」
「それよりも、暇なら風紀委員会本部まで連れてってくれないか? 風紀委員会の幹部がいるといないのとじゃ絡まれる量がやっぱり違うんだ」
「成程、それじゃあ案内するよ。付いて来てくれ」
先導するイオリの後ろをついて歩き出す。ゲヘナは自治区内にヒノム火山という火山があるせいか熱いんだよなぁ……。いつも、曇りか雨の高層区ともカラッとしているアビドスとも違う気候。今日は比較的静かなせいか気候や風景に気を配る余裕がある。というか……。
「ゲヘナにしては大人しくないか?」
「ああ、最近は万魔殿議長が張り切って仕事しているせいか、多少だけどゲヘナ全体で治安の向上が確認できたんだ。代表が万魔殿に面会したころからなんだけど、何したんだ?」
銀鏡がこちらを横目で見ながら質問してくる。……さてどうしたものか。正直に抱き潰したといっても良いが、銀鏡のこの感じ、こういう話題に弱そうなんだよな……。なんか少女漫画のシチュエーションに心のどこかで憧れていて俺の異性関係の話題と相性が悪い予感がするんだよな。
「……知りたいか?」
「そ、そんなに不味いことをしたのか! やっぱり知りたくない!」
うーん、何か勘違いされた気がする。でも、否定して別の言い訳考えるのもめんどくさいし、このままでも良いか。顔を青くして動きが鈍くなったイオリと共に歩いて、風紀委員会本部につく。執務室の扉を開けてなかに入っていく。そそくさと、銀鏡が離れる。……嫌われてしまったかな。
「貴方は!?」
「水戸グラン、もう動いて大丈夫なの?」
部屋の中には、風紀委員長である空崎ヒナと行政官の天雨アコがいた。……ん?
「チナツはどうした?」
いつもなら他の幹部に見えないように、隠れて手を振ってくるチナツが部屋の中にいない。
「そんなことを聞ける位だし体調は問題なさそうね。チナツなら今日はお休みよ。最近はマコトが真面目に仕事をしているお陰で私たちにも余裕ができたの」
ああ、それで前見たときよりも顔色が良いわけだ。
「貴方が来ることは伝えておいたのだけど、なんでか今日に希望休を出してきたわ。……喧嘩でもした?」
「……いやー、分からん。前回来た時に途中でアビドスから連絡があってとんぼ返りしちゃたことかな……。でもあれはチナツも納得してた様子だったし……」
んー、携帯を確認するが連絡もなし。……本格的にわからなくなってきたな。……いや、先に本題を片付ける方が先か。
「先に本題を済ませてしまう。……今回の作戦における支援、『ODI ET AMO』の代表として、アビドス高校の者として正式に感謝する」
「なっ!? 頭を下げ……」
「……あの時とは真逆ね」
俺が頭を下げると天雨の驚いた声と空崎の落ち着いた声が耳に入る。
「感謝はありがたく受け取っておく。でも、アレはあなたの支援というより先生のお願いを聞いてあげたという面が強いわ。私たち風紀委員会は『ODI ET AMO』がブラックマーケットに一定の秩序をもたらしているから見逃しているの。……私たちをがっかりさせるようなことがあればいつでも取り締まるから、そのつもりで」
空崎が椅子に寄りかかり脚を組みながらこちらを見る。その気迫はまさにキヴォトスの最強格と言われるにふさわしいものだ。あ、そうだ。
「天雨、風紀委員会で使用した弾薬費はシャーレに回せ、
「了解しました、それではそのようにしたいと思います。よろしいですか、委員長?」
「そうね、お願い」
二人が了承したのを確認したので席を立つ。さてと……これで残りは万魔殿か。
「ちょっと待って、水戸グラン」
「んぁ?」
空崎から、声をかけられて動きを止める。
「アコ、例の書類を」
「委員長、やっぱり今からでもやめませんか……?」
「アコ」
「うっ……了解しました」
何やら、空崎と天雨の間で意見の食い違いみたいなのがあったが、すぐさま封殺される。にしても、天雨の奴は、空崎の言うことならなんでも聞くと思っていたが、反対意見も述べられるのか……驚いた。ウチで俺の意見に反対しそうなのは……いるわけないか。そういう意味では風紀委員会の方が組織としては健全だよな。比較対象が『ODI ET AMO』、万魔殿、便利屋68とかのせいもあるだろうが。
「代表……いえ、部長。これを先生に届けて頂けますか」
天雨が持ってきた書類を受け取り中身を見る。シャーレの応募用紙、それも三人分。天雨アコ、銀鏡イオリ、空崎ヒナのものだ。チナツは既にシャーレに所属していたから……。
「風紀委員会幹部集結か」
「そうなるわね」
呟きに空崎が反応する。ゲヘナ最高戦力が加入とか、一気にシャーレの戦力評価が跳ね上がるな。
「ニイ先生によろしく、部長」
少し頬を染めて先生の名前を呼ぶ空崎。……え? 何、先生、空崎にパーフェクトコミュニケーションでも決めたの? あんな表情の空崎初めて見たんだが? あ、天雨が血涙流してる。
◎・万魔殿・
風紀委員会の本部を後にして、万魔殿までやってきた。ノックして中に入ると、やっぱり来た!
「お兄ちゃーん!」
「よし、来い!」
こちらに勢いよく走りこんでくるイブキを受け止め持ち上げる。そしてくるくると回す。キャッキャッとして喜んでくれるイブキ。前回は結局遊ばずに帰ってしまったからな。少しはこうして遊んでやらないとな。
「お、そうだ。これ、トリニティでもいいところの菓子屋のクッキーだ」
「ありがとー!」
「イブキ、まだおやつの時間ではないので預かっておきますね」
「えー、今食べちゃダメー?」
イブキにクッキーを渡すと、後ろからイロハがやってきて。クッキーを預かってしまう。おいおい、そんな厳しくしなくても。
「別にクッキーくらいいいんじゃないか?」
「駄目ですよ。代表はイブキを少し甘やかしすぎです」
「これくらいの歳なら甘えるのが仕事みたいなもんだろ」
イロハはイブキに少し厳しすぎないか? イブキを肩車しながらイロハに抗議する。
「……一枚だけですよ」
「「いえーい!」」
頭上に手を伸ばしてイブキとハイタッチする。そうしてイブキはクッキーを一枚手に入れ食べ……。
「待て! 頭の上で食べるなイブキ! ああ、カスが、ポロポロと頭に!」
「代表って偶に残念な所がありますよね」
あの後、イブキを下ろして頭に落ちたカスを払って、マコトの執務室に入る。イロハはイブキを連れて出ていった。……察せられてるなぁ。
「入るぞ、羽沼」
「お、おおう! 来たかグラン! 待ってたぞ!」
「……」
「ど、どうしたグラン?」
空崎が最近真面目に働いていると言っていたが、本当らしい。以前は机の上になかった書類の束があった。執務机の前にあるソファーに座る。すると驚いたことにマコトが少し席を外したと思ったらコーヒーを入れて持ってきた。
「お前が?」
「ああ、グランの好きなコーヒー豆も調べて入れ方も勉強したんだ。ぜひ飲んでくれ!」
「……」
「ど、どうだ!」
「旨いよ。とっても、ありがとう『マコト』」
「!? そ、そうだろう! このマコト様は優秀だからな!」
んー、微妙。正直に言えば余り上手くはないが、今日は舌の調子が悪いみたいだし、マコトが精一杯淹れてくれたんだ。それだけで十分な価値はあるだろう。それにしてもあのマコトがこんなに変わるとはなぁ……。それになんだか、恰好もいつもと違う。帽子はしていないし、髪はポニーテールにしてうなじを出している。コートは椅子に掛けられており、よく見れば生足だ。それに目の前で忙しく脚を組み替えてくる。……誘われてるな。
「今日はあの時の礼をしに来た。態々戦車部隊まで動かしてくれたみたいだな。ありがとう」
「キキキッ、気にするな。これも貴様とわた……万魔殿の関係の為だ。そうだな、礼をしたいというならまた今度合同演習でもしてみようじゃないか。互いの部下がどこまでやれるかを"一緒に"遠くから眺めるなんてどうだ?」
「前向きに検討しよう」
「そうか! あ! 打ち合わせグランが万魔殿に来い、それか私が塔に向かうかだけだからな!」
「了解した」
合同演習か……確かに一度大規模に他組織とはやっておくべきだな。どの程度の兵装をつかうかも大事だか、場所の手配も大変だな。キッド1とキッド4案件だな。さてと……。
「今回の訪問理由は以上だ。弾薬やら、燃料やらの代金はシャーレ当てに出してくれ。こちらで補填する」
「え? ああ」
椅子から立ち上がる。
「繰り返すが、本当に感謝している。これからもよろしくな」
「お、おい? これで終わりか? なんかこうもっと……」
"何故か"オロオロしているマコトを置いてドアに向かって歩き出す。
「ま、待って」
「どうした?」
ドアノブに手がかかりそうというところでマコトがこちらの袖を引っ張った。しかし何かを言うわけでもなく、もじもじとしているだけだ。少しの間目線を泳がせたり、口をパクパクしていたマコトだったが、小さな声で何かを喋りはじめた。
「その……仕事をするようになってから、私専用の仮眠室を作ったんだ。そこにベッドがあって……私、頑張ったから、"ご褒美"がほしくて……ダメか?…………」
片手で袖をつかんでもう片方の手でベットがあるであろう仮眠室を指さす、マコト。わずかに震えていたし、蚊の鳴くような声だ。これがあの羽沼マコトか? 顔がにやけるのが止まらない。ドアノブから手を放し、マコトの腰に手を回して、ベッドの方に無言で連れていく。そのとき、マコトの下腹部を回した手で押し込むようにする。腰、ほっそいなぁ……。
「……」
「あっ……フーっ♡フーっ♡」
仮眠室のドアを開く。間接照明にキングサイズのベッドと小さめとは言えシャワーと冷蔵庫付きサイドテーブルの上には『玩具』まである……何が仮眠室だ。なぜか、キラキラした目でこちらを見るマコトをベッドに放り投げる。
「ギャッ!」
「ひゃっ!」
「ん?」
悲鳴が二つあった? 不思議に思い、ベッドに近づくと掛け布団の中に誰かがいる。……さっきの声からなんとなく予想はつけているが、まさかな。恐る恐る掛け布団をめくる。
「こんにちは、グランさん」
「やっぱりチナツだったか」
そこにいたのは蠱惑的な赤い下着を纏ったチナツが居た。チナツは仰向けになりながらこちらの顔に手を伸ばす。そして俺の顔を自身の顔に誘導して唇を重ねる。舌を絡ませて深く繋がり、そして息が切れるまで続く。
「……はぁ、はぁ。嫌われたかと思ったよ」
「そんな訳ないですよ。ただ、こうやって準備して待っていただけです」
チナツは自身の唇に指を這わせながら、こちらを流し目で見つめる。本当にチナツはこっちをその気にさせるのがうまいな、と感心していると後ろからマコトが絡んできた。
「おい、私の事を忘れるんじゃない!」
「うおっ!?」
「あっ」
マコトがいきなり背中に乗ったため体勢をくずしてうつ伏せだったチナツに圧迫するように覆いかぶさってしまう。
「お、おい大丈夫かチナツ? あといきなり背中に乗ってくるな、バカ!」
「だ、大丈夫です。逆にグランさんの体が密着してきて、程よい圧迫感もあって……その、もっと体重かけても大丈夫ですよ? それにマコト議長にも構ってあげてください」
「お、おう」
「火宮チナツ……感謝する。ほらグラン、私にもキスしてくれ」
ベロンと長めの舌を出すマコト。うつ伏せでチナツを押しつぶすような恰好のまま頑張って横を向いてマコトと舌を絡ませる。その間、マコトは俺のコートやらシャツを脱がして、チナツはベルトやズボンに手をかける。
「今日は二人でご奉仕しますね、グランさん」
チナツがそう耳元で呟いて耳を舐め始める。……今日は泊りだなこれ。
今回から新たなアンケート開始です。
現在読者参加企画を計画中です。アビドス編終了後、幾つかのサイドストーリーとイベントストーリーをはさんでその時点での設定などを纏めた話を出します。その話り中で質問コーナーを少しやります。その名も、『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』 詳しくは活動報告にあげているので皆さん、是非ご参加ください。