「あいつらいっつも呼ばれてなくても来るくせに、なんでいざ探そうとすると出てこない訳!?」
「フィーナ、分かった気がしマス! リモコンと同じデス! いざ探そうと思うと見つからないものデス! フィーナ、リモコンを探してて最終的には冷蔵庫から出てきたことがありマス!」
お祭り運営委員会、修行部と共に夜の百鬼夜行の街をパトロールすることになったのだか目当ての魑魅一座は一行に現れない。そんな中シズコがついにキレて絶叫する。……フィーナはどうして冷蔵庫の中にリモコンを?
「わかる分かる! 確かマフィンの法則だっけ、そんな感じの!」
「美味しそうな法則だね、なんか違う気がするけど~」
「……物欲センサー」
「先生?」
横目で先生の方を確認するとなにやら遠い目をしている先生がいた。たしか『くらぶ・ふわりん』だったか? 先生がやっていたスマホゲームは。また爆死をしたのだろうか。
「早瀬に連絡は入れておくからな」
「ぐ、グラン!? 待って、それだけはやめて!」
知らん、自業自得だ。それに俺が先生の浪費癖を見逃すと早瀬は俺の方まで怒りはじめるんだ。報告しない訳にはいかないだろう。
「ですが、騒ぎがないお陰で、皆さん普通にお祭りを楽しめていますね」
「ううぅ……それは良いことなんだけど。何で出てこないの魑魅一座……っ! ううん、きっと今にもどこかで暴れようとしているはず……!」
おうおう、シズコが色々限界で葛藤してやがる。ん?あれは……。
「うあああん~! パパ、ママー! どこー!?」
「あらっ、迷子の子が……?」
迷子の姿がそこにあった。修行部の水羽がいち早く気が付いて声を上げる。
「放っておけない事案発生!! ツバキ先輩!」
「うん、出動~」
「は?」
「え、えっ? ま、待って……!?」
アイツらマジか……。修行部の面々は全員で迷子の方に行ってしまった。あんなガキ放っておいても良いだろうに。今はそれよりも魑魅一座の方をどうにかしないとあんな感じの迷子が明日には溢れかえるだろうが……。それに泣けば何とかなると思ってるあのガキも気に入らない……。
「……っち」
「グラン、なんとなくあなたの考えていることが分かるよ。でもその考えは良くないよ。グランだって小さい頃はああいう子だったでしょ?」
「……そう、だな」
◎・・・
『お父さん、お母さん、今日もいない……。コンビニのお弁当、買ってこないと』
テーブルの上に無造作に置かれたお金を手にとって、暗い家から出ていく。このアビドス自治区ってところは人が少ないみたい。だからお仕事する場所も限られてるから、お父さんもお母さんも朝はやく家を出て夜、僕が眠っている間に帰ってくる。二人とも仕事してぱっかっりで『ホーニンシュギ』というやつみたい。もともと、『シュッセ』というもの為に結婚して出来た子供って僕は二人にいわれたけど、『シュッセ』って何なんだろう? 最後に三人で寝たのってどれくらい前だろう。ちょっと前までは寂しくて泣いたこともあったけど、泣いても二人が返ってこないことに気が付いた後はもう泣くことはなくなった。
この街には僕以外に子供も見たことないから友達もできない。……なんでこんな街に僕はいるんだろう。アビドス高校までいけばある程度の子供がいるみたいだけど……。僕もそこで友達とかできるのかなぁ。
◎・・・
友人はできなかったが、初恋の人と彼女が出来たんだよなぁ。……結局両方失うけどな。あの両親も俺がブラックマーケットで犯罪に手を出していると知ってもなんとも思ってもなかったもんな。それよりも俺が出世して2人よりも稼いでることを知った時の方がショックを受けていたし……。しかも自殺なんてしちゃってさ、後片付けが大変だったんだから、勘弁してほしいよ。結局、川の字三人で寝ることはなかったな。
「あっ、シズコさん! ようやく見つけました! 明日の花火の準備で、ご相談なのですが……」
「うっ!? よりによってこのタイミングで……!」
修行部が立ち去っただけでなく、シズコにまで公演スタッフが訪ねてきた。
「でもお祭り運営委員会の委員長として知らんぷりなんてできないし……フィーナ! 後はお願い! 先生たちと三人で魑魅一座を見つけて、監視しておいて!」
「了解デス! フィーナにお任せあれ!」
「お願いね!」
そう言ってシズコはスタッフと一緒に走り去っていった。しかし……せっかくの戦力がもう二人だけか……。
「急にみんな忙しくなってきマシタね!」
「魑魅一座がいなければ、これが普通の光景なんだよね」
「ハイ、お頭の言う通りかと! 魑魅一座がいなかったら、ワタシたちお祭り運営委員会も他のみんなも、準備や何やらで走り回ってたと思いマス! そうやって良い意味で忙しくしてたはずなのに、こうして違う意味で忙しくなってしまうダナンテ……」
フィーナは下を向いて唇を噛み締めている。先生はそんなフィーナの頭を抱いて撫でる。そうしている間にフィーナは元気を取り戻したようで、頭をブンブンと振って頬を叩く。
「はっ、がっかりしている場合ではアリマセン! 今お頭と一緒にいるのは、フィーナと代表さんだけ!特攻隊長として、隙を見せたらマズイシーンですね! 『仁義なきニャンニャンパンチ』で見ました!」
「よろしくね、フィーナ」
「……俺も特攻隊長なのか」
……いや、まぁ、戦い方的には確かに特攻気味だけど。
「ハイっ! お頭の身辺警護、そして桜花祭の治安……。どちらもこの特攻隊長フィーナにお任せあれ、デス!」
ガッチャーーン!
「言ってる傍からトラブル!?」
大きな音が響く。これは魑魅一座か? 先生たちと一緒に音がした方に向かう。そこにいたのは……。
「はぁ? これが失敗!?」
「本気で言ってんのか!?」
「で、でもここ、端っこが割れて……」
「よく見えねぇなぁ! 成功したんだから、大人しく商品券を出しな!」
「3千円のお祭り商品券を貰ったら、それを使ってまた挑戦して、この店のかたぬきが無くなるまで無限ループし続けてやる!」
ただの不良だった。しかもかなりセコイ感じの……。小さい、やることが小さすぎる。
「ひ、ひいいっ!! どうしてそんな残酷なことを! そんなのうちはどう対処したらいいんだ!?」
「くくくっ! これがあたいらかたぬきの達人の、桜花祭の楽しみ方さ!」
「あたしたちの眼に留まったことを後悔しな!」
……いや、銃ぶっ放して抵抗したらいいんじゃないか?
「あれは……! 桜花祭で毎回現れるという『かたぬきチンピラ』!」
「何その風物詩」
「え、あれ恒例行事みたいなものなのか?」
まさか名在りのチンピラだとは思わず驚愕する。先生も驚いて唖然とした表情でつぶやく。
「かたぬき屋サンたちなら誰もが恐れる相手デス! お頭! ここは私たちの出番かと!」
「そうだね、魑魅一座ではなかったけど見過ごすことはできない!」
「え……あんなの相手にするの?」
「桜花祭の平和を乱す問題児は、フィーナたちが許しマセン!」
先生の指示を受けて、不良たちに向かう。
「グラン、病み上がりで悪いけど前衛をお願い」
「ああ、了解」
「フィーナはここからグランの援護射撃を!」
「ハイ! 任せてくだサイ!」
建物の壁を蹴って上に飛び上がり、チンピラ達を上から強襲する。
バァッン!
「ぐあッ!?」
「お、おい!? う、上からだと!?」
一人のチンピラにKO-3K2をぶち込む。もう一人のチンピラが驚いて固まったところに蹴りで足払いをして転ばす。するとそこにフィーナからの援護射撃が来て転んだチンピラに直撃した。背後で最初にKO-3K2を撃ち込んだチンピラが立ち上がったのを感じたので、後ろ回し蹴りを叩き込んでその回転を活かしたまま、銃口をチンピラの腹に叩き込む。そしてトリガー。
「グボォッ!!」
地面を二回、三回跳ねながら転がっていくチンピラ。
「な、なんなんだこいつらは!?」
「くそ! お、覚えてけよ!」
「背を向けて逃げるとは、武士の恥! 逃がしマセ……あっ、でもフィーナはお頭も守らなくては……! ど、どうすればいいのデショウ!?」
そもそもあいつらは武士じゃないって突っ込みは野暮……なのか? フィーナが悩んでいると先生はフィーナに目線を合わして、語り掛ける。
「大丈夫、かたぬき屋さんたちの仇を取ってあげて」
「……ハイっ! 分かりマシタ! フィーナ、お祭りの平和の為に行ってきマス! お頭たちは百夜堂に戻っててクダサイ! 魑魅一座に合ってしまっても包囲できマセンから!」
確かに先生の護衛をしながら魑魅一座を相手するのは俺一人だけだと無理がある、妥当な判断だろう。フィーナがチンピラたちを追っていくのを見送り先生を連れて百夜堂に戻ろうと思ったその時、見覚えのある影が視界の端を移動する。
「きょろきょろ……サササッ! イズナは今、闇に紛れて暗躍せんとする熟練の忍び……! ……先生は、きっとこの辺りにいるはず……」
武器を素早く向けると先生に抑えられる。
「グラン、少し待って」
「……」
はぁ……仕方がない。 武器を下ろして先生にイズナの対応を任せる。
「イズナ、そこで何しているの?」
先生がイズナに話しかける。そんなフランクに……良いのか? けど、対応は先生に任せたわけだし、見守るしかないか。
「あっ、えっとですね、イズナは今先生を探して……。って、先生たち!? い、いえ! イズナは慌ててなどいません! 前回の宣言通り、先生たちを倒すためにここへ来たのです! イズナ、あの後もう一度考えました! 前回イズナが負けたのはなぜなのか……それは先生たちを騙しているあの、他の人たちまでわちゃわちゃと出てきてしまったせいなのでは、と! ですので次は忍者らしく! こっそりと忍び寄り! そして一人で戦えば、先生たちを倒せるはず!」
……不味いな。最初に会った時に喰らわそうとした蹴りを避けられたときから思っていたがイズナの身体能力は馬鹿にできない。一対一だとヤバいかもしれない。銃のグリップを握りしめる。
「さぁお覚悟です、お二方!」
「っ!」
「うん。じゃあとりあえず、お散歩でもしよっか」
「喜んで!」
「っっっ!?」
思いっきりつまずく。何なんだ、何なんだ一体!? 戦いに来たんじゃなかったのかイズナは!? なんで、先生は散歩を提案した、なんでイズナは承諾した!?
「……ではなく! で、ですからイズナは、先生たちを倒しに……!」
「よぉし! 先生は下がれ! やっぱりそうだよな、戦いに来たんだよな!」
「私と一緒じゃ、嫌?」
「うぇ、い、いえ、決してそんなことは……え、えぇ?」
……えぇ? その場はすでに戦いの空気ではなくなってしまっていた。何なんだかなー、もう。
『グランの両親』彼らは良く言えば仕事人間、悪く言えば金の亡者だった。働く場所は少ないが、ライバルも少ないアビドスで、ある企業に勤めていた。互いに出世のために結婚をして周りへの『良い夫婦』アピールの為にグランをこさえた。彼らにとって金を稼ぐことが生きがいで、結婚も子供もその為の道具だった。その為グランに対する愛情も薄く、本当に幼いころに面倒を見ていた程度であとは放任していた。彼らはグランがどうなろうと知ったことではなかった。たとえ片腕、片足をなくしたとしても。そんな『道具』が自分たちよりも稼いでいることこそ、二人には耐え切れないことだった。ユメを失い、ホシノに拒絶され、ブラックマーケットで人殺しもしてボロボロだったグランの心に2人の自殺はさらに決定的な罅を入れることになった。
『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』第二回いる?
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いる
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いらない