シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

64 / 186
50話

◎・桜花祭露店通り・

 

「わぁっ……! 先生、カルメ焼きがありますよ! この甘い匂い……綿あめ!? あっ、焼きそば! 焼きそばも売ってます!」

「どうしてこうなった……」

 

 先生の提案でイズナと共にお祭りの露店をめぐることになった。イズナも最初の頃の困惑はどこへやら、今は先生と一緒に露店をめぐりを楽しんでいる。……先生も一緒になって次々に買い物するので出費が凄いことになっている。こういった祭りの露店はレシートが出ないからあとで早瀬に報告するときが大変そうだ。やっぱ味が薄いんだよなぁ……上手いけど。

 

「えへへっ、美味しいです! あっ、先生も一口いかがですか?」

「いただくね。ありがとう、イズナ。あ、こっちのりんご飴もおいしいよ! イズナもどうぞ」

 

 美人二人が色々食べさせ合ってるのは絵になるが……。

 

「えへへっ……コンコンッ! 百夜ノ春ノ桜花祭、イズナ本当に大好きなんです! ですのでこうやってお二人と一緒に楽しめて、イズナは今凄く嬉しいです……!」

「うん、こんなに楽しいのに、中止になって欲しくないね」

 

 先生の眼が一機に真剣な者になる。……気を引き締めるか。 後ろ手でイズナからは見えないように武器の動作チェックを始める。

 

「え……? ちゅ、中止? 急にどうされたんですか?」

 

 イズナが先生の言葉に混乱する。……あの表情に嘘はない。つまりイズナは……。

 

「この桜花祭を台無しにしようとしてる人がいるみたいで……。多分、イズナの雇い主の人なんだけど……」

「桜花祭を台無しに……? い、イズナが受けた雇い主の命令は……事業を邪魔する奴らがいるから、その者たちを倒せと……。それなのに、桜花祭が台無しに……? え、ええ……?」

 

 イズナがぐるぐる目になって頭を抱えている。……自身が人の為と思った行動が無駄だったもしくは逆効果だった時の苦痛はよく理解できる。

 

「イズナ、雇い主のこと教えてくれたりしない?」

「先生、それは流石に……」

「グラン殿の言う通りです! 誰に雇われているかを口にするなんて、忍びとしてやってはいけないこと……! い、イズナは立派な忍者になるんです!」

 

 やっぱ無理だよな……。イズナと関わった時間は短いものだが『忍者』に彼女がかける思いは本物だと分かる。そんな彼女が自身の雇い主を簡単に口にするわけない。……任務を忘れて買い食いしている現状はどう説明したものか……。

 

「ですから、いくら先生でも……」

 

 仕方がない、やっぱ身体に聞くことにするか。体をほぐす様に肩や首を回して準備運動をする。

 

「うん、分かった」

「……へ?」

「は?」

 

 先生の発言に準備運動が止まる。……『わかった』今、先生はそう言ったのか?

 

「イズナが話したくないなら、無理にとは言わないよ。それはイズナが自分で考えて決めたことみたいだから」

「待て! 先生本気で言っているのか!?」

「本気だよ」

 

 先生の肩を掴んで俺の方を向かせて詰問する。焦ってそれなりに力を入れて肩を掴んでしまったが、先生は痛そうな顔一つせず俺に真正面から向き合う。

 

「グラン、私たちの仕事は何?」

「何って……各校の面倒ごとを解決することだろ」

「ううん、違うよ。私たちの仕事は各校の問題を『聞いてあげる』ことだよ。各校の問題を聞いて、手を差し伸べて、寄り添って、生徒が、子供たちが自分たちで物事を解決して、成長に導くこと。それが、シャーレの仕事だよ。だから、イズナが自分で考えて出した判断は尊重してあげたいんだ」

 

 絶句。先生の考えを聞いて俺は開いた口がふさがらなかった。正しい……のかもしれない、大人として、先生としては……。でも、それでも!

 

「それで、桜花祭が失敗したらどうする!? シズコは、フィーナはどうなる!?」

 

 万が一のことが彼女たちにあったら……。大人の勝手な考えのせいで、子供が傷つくなんて……そんなの、そんなの、あんまりにも残酷じゃないか!(俺みたいにならないで)

 

「大丈夫、その時は私が責任を負うから。……責任は、『子供と共に生きていく大人(・・)が背負うべき事だからね』 だから、イズナを傷付けちゃダメ」

「……もう、いい。先生に任せる」

 

 先生の肩から手を放して離れる。少し先生たちから離れて道端のベンチに座り込む。体中から力が抜けていく気がして止まない。何なんだ、何なんだ、一体。殺しちゃいかん、壊しちゃいかん、俺の知っている戦場(キヴォトス)とは勝手が違いすぎる。戦場(キヴォトス)が変わったとでも言うのか……。先生、か……やっぱり、気に入らないよ、あんた。(なんでもっと早く来なかったんだ)

 

「でもお祭りを邪魔するのを放っておけない。だから私は、ここでイズナを止めようかな」

 

 ……いや、どっちだよ!? イズナを止めるけど、雇い主は聞かない、ということなのか? 銃を持って急いで先生の傍に戻る。

 

「……っ! 先生たちとイズナはやはりそういう宿命……! い、イズナ、この場は失礼します! 今回はこうして、一緒にお祭りを楽しんでしまいましたが……! 次は違います! 次こそは!」

「うん、じゃあまたね」

「……はい。では先生、また!」

 

 だから、どっちだよ!? 先生の言葉を聞いて思わずズッコケそうになる。先生とイズナは別れの挨拶をして別れた。イズナはあっという間に姿をくらまして消えていった。……ありゃ、追跡は無理だな。

 

「やっぱり、イズナは雇い主の命令に従って……」

「でも結局雇い主は分からずじま……、無駄ではなかったみたいだぞ、先生」

 

 周りの店の裏手からぞろぞろと魑魅一座が出てきて包囲してくる。

 

「さて、そろそろアタシらの出番かな。久しぶりだね~、シャーレのお二人」

「そんな少人数でこんなところをぶらつくなんて、危ないっすよ?」

「怪我したくなければ、大人しく投降しな!」

「反抗なんてすると、痛い思いするっすよ!」

 

 確かにこの人数相手に先生を守りながら戦うのは俺には無理だ。……どうする、どうすればこの状況を切り抜ける?

 

「あんたらに用があるって人達がいてな」

 

 雇い主か? まさか向こうから接触があるとは。というか『達』? 雇い主は複数いるのか?

 

「そうなんだ、じゃあ行こっか」

「そうだな」

 

 それを確かめるためにも行くしかない。

 

「ははっ! そりゃそうだ、でも抵抗するならこっちも……えっ!?」

「素直に応じるんすか!?」

「そう言ってるだろう?」

 

 何を驚いているんだか、断らせるつもりのない癖に。

 

「ええ……いや、計画通りなんだけど、これで良いのか……? まぁいい!わざわざ自分の足で来てくれるなら楽だし好都合だ、連れていくぞ!」

「はいっす!」

 

 そうして連れられてきたのは百鬼夜行商店街の裏路地、そこにある廃墟だった。

 

「命令通り連れてきたよ!」

「連れてきたっす!」

 

 魑魅一座が廃墟の奥の扉に向かって話しかけると、奥の扉が開いて雇い主がその姿を現す。

 

「よくやった、魑魅一座。やればできるじゃないか。……あえて嬉しいよ、シャーレの御二人さん」

「……商店街の会長の、ニャン天丸?」

 

 予想通り、だな。

 

「ふん、儂の本名はニャン天丸じゃない! 儂の名はマサムニェ……。 裏路地の独眼竜! ニャテ・マサムニェとは儂の事じゃ!」

 

 ……だっせぇぇぇぇぇ!! 何だ『裏路地の独眼竜』って。なんだ、あの中学生のころに陥りがちな例の病気なのか? ……俺は違うよな? え、どうなんだ? オーバードウェポン……セーフか? 

 

「おほん……類まれなる指揮能力を持つ『先生』とやらに邪魔されたと聞いて、誰の事かと思ったら。そのシャーレの先生がおぬしだったとは……たしか、一度百夜堂であったな?」

「そうだね」

 

 マサムニェの質問にはにかみながら答える先生。最初のシャーレ奪還作戦の時から思ってはいたが、時々クソデカ度胸あるよな……。

 

「ははっ! こんな状況でも余裕でいられるとは、大した奴だ。まるで何か奥の手でもあるみたいじゃないか。 ただ私はコミックの悪役なんかとは違う。その手に気が付かないとでも思うか? ……悪いが、その手段は封じさせてもらうよ」

「スマホを……」

 

 マサムニェが先生のスマホと俺の通信機を取り上げる。

 

「年を取ると用心深くなるでな、これは没収することにしよう。さて、これでおぬしたちが助けを求める手段はない。心の中で叫んだところで、お祭り運営委員会の連中は来ない。孤立無援という言葉がぴったりだな。あるいは飛んで火にいる夏の虫というところかな、先生?」

 

 ……さて、腹は立つがマサムニェの言う通り孤立無援の状態になってしまった。それにマサムニェが出てきた扉のさらに奥、姿は見えないが誰かがいる。この気配というか、雰囲気、俺はあいつを知っている気がする。俺が扉の奥を警戒している間に先生はマサムニェと話を進める。

 

「どうしてお祭りの邪魔をしているの? こんなことをして何か得があるの? 桜花祭の伝統を守るためだったり?」

「伝統……? ああ、花火のことか? ふははは! 人の話をよく聞いているじゃないか。だが違うわい、全部が全部口から出まかせってわけじゃあないが、本当に気にしているのはそこじゃない。儂の目的はいたってシンプル、金だよ」

「何……?」

 

 マサムニェの言葉に意識がそれる。金、だと?

 

「百夜ノ春ノ桜花祭……このお祭りが一度開かれるたび、一体どれくらいの金が動くと思う? この規模だ、それなりに大きいことくらいは分かるだろう。なのにその金をお祭り運営委員会、あんなチビ共が握っとる。儂はそれが気に食わんのだ。『お祭りを素敵なものに』? そのためなら、大枚はたいてミレニアムに依頼するのも必要なことだって? 何という青い考えだ! 儂に任せれば、あいつらよりはるかに多くの金を稼げたというのに!」

「それで、桜花祭の邪魔をしたの?」

「そうさ。桜花祭が中止になれば、お祭り運営委員会はその責任をとって運営を下りるしかない。自然と次にその役割が任されるのは儂だろう。これでも商店街の会長だ、そのコントロールも難しくはない」

 

 ……金か。俺もブラックマーケットで多くを犠牲にして大金を稼ごうとしていたし、あまり強く責められないな。目的(・・)については責めんよ、俺は。目的(・・)についてはだが。

 

「そんなことの為にイズナを騙したのか……」

 

 手段については許すつもりはないがな。

 




 ちょっとこれから惑星ルビコン3でコーラル採掘してくるんで次回から更新が遅くなります。ユルシテユルシテ。対戦で紺色皿頭の四脚ACと当たったらお手柔らかに。 

『代表の電波も支配しちゃうぞRadio』第二回いる?

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。