シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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53話

◎・・・

 

「やるじゃん、忍者の子! あとは私たちに任せて!」

「だ、誰だ!?」

 

 吹き飛んだ廃墟の壁の奥からいくつかの影が先生の元に駆け寄ってくる。

 

「先生大丈夫ですか!?」

「お頭! お待たせしマシタ!」

 

 シズコとフィーナだ。そしてグランの前にも、修行部の面々がオールドキングに対しての盾になるように立つ。

 

「あなたはまた……傷だらけだね―」

「大丈夫ですか!? 今救急箱を……」

「もう、安心して私たちが来たからには丸っと解決しちゃうから!」

 

 ツバキが少し口元に笑みを浮かべながらグランを守るように盾を構えて、ミモリは救急箱を足りだしグランの傷を応急処置していく。カエデはグランの横にいて笑いながら勝利を宣言する。

 

「すまない……助かった」

「ここは謝罪よりもふさわしい言葉があると思いますよ?」

「……ありがとう」

 

 グランの謝罪にミモリが言葉を返すと、グランは恥ずかしそうにしながら感謝を伝える。ミモリはそんな様子のグランを見て少し笑った。

 

「お祭り委員会、それに修行部のやつらまで……!」

「やっぱり、犯人はあなただったんですね! 会長……いえ、ニャン天丸!」

「ニャン天丸じゃない、マサムニェだ!」

 

 シズコがビシッとマサムニェを指さしながら糾弾する。しかし呼んだ名前が会長としての名前だったことが気に入らないのかマサムニェはそこに突っ込みを入れる。

 

「それにとてもどうしてここを……!? 魑魅一座が誘拐してきた後、すぐに連絡手段は絶ったはず……!?」

「これのお陰です!」

 

 シズコは懐からスマホを取り出す。

 

「スマホ……? だから連絡手段は……いや、まさか!?」

「先生はあらかじめ、私にモモトークを送っていたくれていたんです!『今から誘拐される予定だから、遅くなる前に助けに来てほしい』って!」

「ぐっ……ここに来る前の段階で、既に連絡済みだっただと!?」

「誘拐する前に連絡手段の確認ぐらいしろ……素人が……」

 

 オールドキングは思わずそう言わずにはいられなかった。

 

「先生、おぬし攫われたのではなく、全部最初から分かってて……!」

「ふふふ、どうだろうね?」

 

 先生はマサムニェの言葉に唇に手を当てながら片目を瞑って答える。

 

「やはり侮れない奴め……! それにしても『やっぱり』と言ったな。つまりは、儂の正体にも薄々気づいていたということか……! やるではないか、お祭り運営委員会。儂が魑魅一座を束ねているという真実にたどり着くまで、さぞかし多くの困難があっただろう……。お祭り運営委員会、委員長、河和シズコよ!」

 

 不敵に笑いながら、大きく手を広げてまるで大物の悪役のように振舞いシズコに対してそう話しかけるマサムニェ。しかしシズコはいたって落ち着いた声で……というより若干冷めた目線と声で。

 

「いや、別に」

 

 ばっさり切った。

 

「桜花祭に来ていた人たちに、怪しい人を見なかったか聞いてみたんです!」

「そしたら結構な人数が、会長と魑魅一座がこの商店街の裏路地を通って廃墟に入っていくのを見たと言っていたので、そりゃもうあっさりと」

「そもそも魑魅一座も会長も、凄く目立つし……ふぁ……」

「くっ、会長という役職が、裏目に出るとは……!」

 

 そう項垂れるマサムニェの言葉にブラックマーケットに所属している二人は驚く。

 

「おいおい、変装したりもしなかったのかよ」

「糞が……ここまで間抜けだとは思わなかったぜ」

 

 敵であるグランはともかく、味方のオールドキングにもバカにされたのが気に入らなかったのかマサムニェは顔を真っ赤にして怒鳴りだす。

 

「ええいっ! もういい、この状況も計画の範疇だ! 最初からおぬしらがここに辿り着く可能性くらい考えていなかったとでも思うか!? 良いものを見せてやろう!」

 

 マサムニェが指を鳴らす。そうすると廃墟の裏の壁が崩れ沢山の魑魅一座が現れる。

 

「うわわわっ! こんなに!?」

「どんどん増えるね~」

「なんだか尋常ではない雰囲気になって来ましたね」

「……うわぁ」

「フィーナ、『仁義なきニャンニャンパンチ』でこういうシーンを見たことがありマス! 組員全員を集めて、襲撃に向かおうとするところデシタ!」

 

 修行部とお祭り運営委員会が困惑の声を上げたのにいい気になったのか、再び余裕のある声になったマサムニェ。したり顔で説明を始める。

 

「まさにその通りだ! 魑魅一座をここに集めておいたのは、おぬしらを一網打尽にするためでもあったのさ! さぁ、実は自分たちが罠にはめられていたと気づいた時の心地はどうだ! ふはは、覚悟しろ!」

「うーん……どう考えても負けフラグな台詞」

「サスガ委員長! いつも通り辛辣デス!」

「小物が……」

 

 ミモリからの治療が終わり立ち上がるグラン。再び銃を構えてオールドキングと対峙する。

 

「ふぁぁ、とにかく荒らすのを辞めるつもりがないなら~……」

「素敵なレディーになるためにも! 私たち修行部も相手するよ!」

「皆さん、行きましょう!」

 

 ミモリの掛け声で戦闘が開始した。先生は倒れたイズナをフィーナと一緒に抱えて一時退避する。それをシズコが援護して、残りの修行部の面々とグランが主に戦闘を担当する。対する魑魅一座はオールドキングを先頭に全員攻撃の構えだ。

 

「オールドキングとは俺が戦う! お前らは他の奴等を!」

「一人で戦って怪我したんでしょ~。私も一緒に戦うよ~」

 

 ツバキがグランの前に出てオールドキングにシールドバッシュをぶち当てる。

 

「ぐぅっ!」

「今だよ~」

「……盾持ちの奴ってのはマイペースなのが鉄則なのか!?」

 

 グランは脳内にユメとホシノの姿を思い浮かばせながら、体勢の崩れたオールドキングにショットガンを撃つ。そのあと他の魑魅一座に囲まれるが――

 

「信号弾、発射!」

「あっづぅ!?」

「おおっ、信号弾で俺たちと魑魅一座の間に火花の壁を……まるで火花のシールドだな」

 

 火花のシールドで守られながら攻撃をするツバキとグラン。するとグランの耳にかけられた通信機に通信が入る。

 

『グラン、こっちはイズナと避難した! シズコとフィーナも戦線に加わるよ。通信機を修行部のみんなはまだ持っていないからグランから私の指示を伝えて!』

「了解した」

『グランとツバキが前衛、オールドキングを抑えて。シズコ、ミモリが中衛、主に前衛の援護を。カエデ、フィーナが後衛、魑魅一座を蹴散らして!』

 

 グランは先制からの指示を伝達して戦闘を再開する。その様子を見て攻撃から立ち直ったオールドキングはほくそ笑む。

 

「くくく、やはりぬるくなったな」

「ん?」

「昔のお前はもっとギラついていた。目的の為になんでもやる、という焦りにも見えた覚悟。貪欲で、闇が深くて、冷酷だったお前はもういない」

 

 前線でぶつかり合うグランとオールドキング。その最中オールドキングは過去のグランと現在のグランに対する評価を語りだす。

 

「今のお前は温過ぎる。世の中変えるには結局、殺すしかないのさ。そうだっただろう?」

「……黙っとけ!」

 

 交差する蹴りと射撃。元ブラックマーケット代表と現ブラックマーケット代表。どちらも譲れないものがあり、考え方がある。それゆえ激突ししのぎを削る。

 

「グラン、一度離れてー。熱くなりすぎ」

「春日! くっ!」

 

 ツバキがグランとオールドキングの間に弾幕の壁を作って一度グランに距離を取らせる。そして盾で攻撃を防ぎながらグランの顔をジッと見つめるツバキ。

 

「……なんだよ」

 

 ジッと見られているグランは居心地が悪そうにしながらツバキに問う。

 

「私たちは二人で前衛。一人で急いじゃ駄目だよー」

「……俺は一人でも大丈夫だ。お前は自分の身を守る事とそこらの魑魅一座を相手することだけに集中してろ」

「どうしてグランはそんなに一人で戦おうとするの?」

 

 ツバキはグランの眼を見つめそう語り掛ける。

 

「……もう盾持ちの女が傷つくのを見るのはゴメンなんだよ」

「え?」

 

 グランはそう呟いてツバキの傍を離れるグラン。盾裏から走り出して魑魅一座に向けて突撃する。オールドキングは真っすぐ突撃してくるグランにライフルを向けて攻撃をする。それをグランは左腕を盾替わりにして突っ込む。オールドキングの攻撃で左腕の義手が外れる。これは以前ホシノに対しても使った戦法だった。ただ、以前と違うところはオールドキングはグランの義手に対して動揺しないこと、そしてグランもそれを理解していること。グランは外れた義手を蹴り跳ばす。

 

「っ!?」

 

 蹴り飛ばされた義手を避けるためにオールドキングは顔を逸らして、目線をグランの方から外してしまう。その一瞬があればグランの脚力なら接近するには十分だった。

 

「確実に、落とす!」

「ガキがぁっ!」

 

 渾身の蹴りを放つ。寸でのところでオールドキングは右手のショットガンでグランの蹴りを防ぐ。しかしその結果として盾として使ったショットガンは折れ曲がりオールドキングは攻撃手段を一つ失った。

 

「クソっ、仕留めきれなかったか」

 

 グランはオールドキングを仕留めきれなかったことを悔しがる。蹴りが阻まれたことで動きが止まる。その隙を見逃すオールドキングではない。すかさずライフルをグランに向けトリガーを引く。

 

「痛くない……!痛くなぁい……!」

「ツバっ……! 春日!」

「ちっ、外れか」

 

 発射された弾丸はグランには当たらなかった。ツバキがグランとオールドキングの間に入り体を張って攻撃を防いだのだ。自分を庇って攻撃を受けたツバキにグランは驚きを隠せずにいた。

 

「離れろ!」

 

 再びオールドキングの体に蹴りを放つグラン。二人の間に居たツバキのお陰で視界が遮られていたオールドキングはまともに蹴りを喰らう。蹴りの反動でツバキを抱えたまま跳んで距離を取るグラン。またもや障害物の後ろに隠れる。そしてツバキを横たえる。

 

「おい、おい! なんで庇った!?」

「……また」

「は?」

 

 ツバキはグランの眼を見ながら呟く。グランはその言葉の意味が分からずに首を傾げる。するとツバキはグッと両手でグランの頬を掴んで自身の普段は眠たげな眼を開いてグランとしっかり目を合わせる。

 

「ねぇ……あなたは私を通して誰を見ているの(・・・・・・・)? 私はその人みたいに盾を持ってるし、マイペースかもしれないけど、私は私(・・・)。『春日ツバキ』だよ」

「……」

 

 ツバキの言葉に黙りんでしまうグラン。そんなグランに対してまるで年下の子に言い聞かせるように喋るツバキ。

 

「もう一度言うよー、私たちは二人で前衛。一緒に戦おう? あのお~るどきんぐっていう人も二人ならきっと倒せるよ。そしたらぐっすり眠ろう? 何を悩んでいるのかは分からないけど今よりかは悩みもスッキリするよー!」

「おっ、おい!?」

 

 喋りながら立ち上がったツバキはグランの手を引きながら前線に走り出す。突然、敵射線に走り出したことに驚いたグランだが素早く戦闘準備に入る。

 

「っっ! 分かったよ! 一緒に戦ってやる! けど、合せられるか!?」

「うん、修行の成果を見せるよ! 私が先頭に立つよ、行こう!」

 

 ツバキは盾を構えながら右手に持ったサブマシンガン『安眠のお供Ⅱ』で弾幕を張りながら前進する。その後ろにグランは良きを整えて奇襲のタイミングを伺う。

 

「はっ! 結局、一人の力では俺を倒せないみたいだな、首輪付きィ!」

「……」

 

 前進してきた二人を見てオールドキングは笑う。グランはその言葉に顔を曇らせる。

 

「黙って! 私はあなたとグランの関係がどんなものだったかは知らない! けど、私がグランに協力したのは先生に言われたからじゃない。私がグランに協力したいと思ったから! これはお金や力でしか人をを従わせることしかできないあなたとは違うグランの魅力だよ! ならこれもグランの実力と言えるでしょ!」

「……お前」

「あんな大きな声だしたツバキ先輩初めて見た」

「ええ、そうですね……」

『良かったね、グラン』

 

 ツバキが大きな声でオールドキングの言を否定する。その言葉の勢いにカエデとミモリは驚く。グランの事を否定せずに、グランの事を思ってくれる人が増えたことを先生は喜ぶ。グラン本人も驚きで目を丸くする。

 

「はっ! 魅力も実力ねぇ……。それで俺を倒せるかね!」

「行くよ、グラン!」

「あ、ああ!」

 

 ツバキはオールドキングの攻撃を盾で防ぎながら突撃しバッシュを仕掛ける。それをジャンプで避けるオールドキング。

 

「そこだ!」

「それぐらい予想してるぞ!」

 

 ツバキの攻撃を避けた隙に攻撃を仕掛けるグラン。ジャンプしたオールドキングに対して射撃をするが壁を蹴って体勢を変えられ避けられる。屋内ということもありジャンプや壁蹴り移動の足場が多い、それ故、攻撃が回避されてしまう。グランも脚力はあるので同じことは可能だ。

 

「ツバキ!」

「! 任せて!」

 

 攻撃を回避した後にライフルで攻撃をするオールドキング。しかしその瞬間にグランは何も詳しいことを説明せずにただツバキを『名前』で呼んだ。それに反応したツバキはオールドキングに射撃をしてさらに体勢を捻らせ行動を制限した。十分に射角をとれなかったのでグランも楽々オールドキングの攻撃を回避する。

 

「そこっ!」

「くっっ!」

「まだまだ!」

 

 攻撃を回避したグランはオールドキングに対して着地狩りを行う。攻撃を受けてよろめく、オールドキング。そこに後ろからツバキがもう一度シールドバッシュを仕掛け、今度こそ直撃させる。更に体勢を崩すオールドキング。その間に接近して蹴りを叩き込む構えをするグラン。流石に不味いと思ったのか無理な体勢から跳んでその場を離脱するオールドキング。

 

「っち、また外した」

「ハハハ、あぶねぇな」

「グラン、また行くよ」

「ああ」

 

 蹴りを外した後舌打ちするグラン。そんなグランを見て少しは昔を取り戻したのかと思うオールドキング。再び共に攻撃準備に入るグランとツバキ。

 

「今度は俺が前で行く」

「わかった」

 

 グランが戦闘になりその後ろでツバキがついて行く。

 

「真っすぐ突っ込んでくるか、狙い撃ちだぜ」

「グラン!?」

「構わない、このまま行くぞ!」

 

 ライフルの攻撃を受けて怪我しながらも突撃するグラン。

 

「ツバキ、盾を足場にさせてもらう!」

「え? 分かったぁっ!?」

 

 ツバキが言い終わる前に盾を足場にして水平に方向に加速するグラン。ツバキは思った以上の衝撃によろける。急加速したグランに狙いがぶれるオールドキング。左足の義足が衝撃に耐え切れず壊れる。ミレニアム製の義足が壊れる程の加速、衝撃、それらを込めて右足の蹴りを叩き込む。

 

「ぐはぁっっ!?」

 

 構えていたライフルを破壊しても止まらない蹴り。ライフルが暴発して炎に包まれるグランの右足。加速、衝撃、炎、それらをすべて合わせた一撃がオールドキングに直撃する。膝をつき屈みこむオールドキング。

 

「はぁ、はぁ……。この辺りが俺の器らしい……」

「……」

 

 それを無表情で見下ろすグラン。そんな表情のグランを見てオールドキングは笑う。

 

「へっ、もっと笑いやがれってんだ。所詮俺もお前も同類さ」

「誰がお前なんかと―――「何が違うんだ? 何かをしようとするたびに誰かを傷つけて、暴力でしか訴えることしかできない戦争屋。それが俺らだろうが」

「お前はこれからも今回の俺みたいに自分の気に入らない奴をぶっ飛ばしていけば良い。それがその立場(代表)の在り方だ。……なるんだろう? このキヴォトスで何にも脅かされないトップに……」

「あぁ」

 

 かつてグランがオールドキングに師事していたころ語った夢を喋るオールドキング。グランはオールドキングが自分の夢を覚えていたことに衝撃を受けながら肯定する。

 

「楽しみにしてるぜ、お前がどこに行く着くのかな……」

 

 そう言ってオールドキングはついに倒れた。

 




グランに刺さるポイントホシノツバキ
ショート髪×
マイペース
今のグランに対して昔に戻ってよ辛そう、大丈夫?
グランからの印象好き、けどもう一緒に居れない俺の為に怒ってくれた人


 小話 グランはミレニアムに義肢の調整に訪れていた。

「やぁ、グラン。ついに右腕と右足も義肢に変えるのかな?」
「ははっ、あいにくそんな用事はねぇよウタハ」

 義肢の開発者たるエンジニア部の部長のウタハはグランに義肢を増やすのかと言えば、グランは笑いながら否定する。このやり取りは二人の間のジョークであり、挨拶替わりになっていた――。

 
 冗談が冗談で済まなくなったときのウタハの顔見たいよね。見たくない?

正義実現委員会でグランくんと仲が良いのは? ハスミはプロローグで出会っているため除外

  • ツルギ
  • マシロ
  • イチカ
  • 正実モブ
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