「ぐはぁっ!?」
「こ、こんなの手に負えないっす!」
グランとツバキがオールドキングを倒したころ、先生たちも魑魅一座を倒していた。次々と倒れていく魑魅一座。それを見てマサムニェの顔色は悪くなっていく。
「会長として、使える限りの資金をすべて使って動員した魑魅一座がこんなことに……! まだ、まだ足りないだと……?」
「先生の指揮もあるし、今の私たちならいくらでもお相手できますよ!」
「これがワタシたちの力! デス!」
シズコとフィーナが自信たっぷりにそう宣言する。カエデとミモリも笑顔だ。そして後ろで先生が当たりを見回して言う。
『私たちの勝ち、かな?』
先生の言葉にマサムニェは半ば放心気味に語りだす。
「……ふふっ、参ったな。儂の数年を賭した計画が……たかが学生と、先生ごときのせいで失敗せられるだと? 認められない……。認めてなるものか!!」
「大人しく諦めてください、ニャン天丸会長。名残惜しかろうと、もう全て終わりです」
叫びながら、握りこぶしを握りこむマサムニェ。手が白むほど強く握り絞められたところからマサムニェがどれほどこの計画に腐心していたのかが分かる。そんなマサムニェを諭す用に話しかけるシズコ。
「ふふふ……まだだ、まだ終わってなぁぁい!! 儂の資金すべて使ったんだぞ。その魑魅一座が本当に、これで全部だと思ったのか?」
「まさか……」
「まだまだいるということですか……!?」
『グラン、ツバキも合流して! もう少し力を貸して!』
先生の指示を聞いてツバキとグランは一度顔を見合わせて頷くとシズコ達の方に合流する。
「その通り、会長の資金力を甘く見るな! さぁ! まだこの街に残っている、全ての魑魅一座をここに集めよ!」
再び腕を広げて悪役ムーブをしだすマサムニェ。
「大量の魑魅一座……文字通り魑魅魍魎を、その目に焼き付けるがいい! これで今度こそ―――
「あー、その件なんだけど……実は元々来るはずだった子たちが、殆ど『やっぱりパス』って……」
「『ここで働くより百夜ノ春ノ桜花祭を楽しみたい』って言って、みんな遊びに行っちゃったんで、もうこれ以上いないっす」
遮るように言われた魑魅一座の言葉。その言葉にその場の空気が凍り付いた。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ふぁ、眠い」
「お、おい、春日! こっちに寄りかかってくるな」
唖然とするお祭り運営委員会と修行部の面々。ツバキは緊張が解けたのか、隣のグランに寄りかかって寝始める。グランは急にもたれ掛かってきたツバキを急いで支える。
「えっと、これっ……」
「もうダメかもしんないっすね」
「うん、よし! 解散!」
魑魅一座は劣勢を悟るとさっさと撤退を始めてしまった。それを見たカエデは指さしながら怒鳴る。
「あッ!? ここで逃げるとかズルでしょ!?」
「な! 待て! お、おい起きろ春日! 魑魅一座が逃げる!」
「ぐぅ~、『ツバキ』だよ~」
しかしながら、グラン達の方もグダグダだったせいで魑魅一座達を逃してしまった。そんな様子を眺めていたマサムニェ。そしてシュババと勢いよく身に着けていた眼帯や銃を外す。
「えっと、その、だな……諸君、全部水に流すというのは……どうだろう?」
そして手を揉みながらとんでもないことを言い出したマサムニェ。それを聞いたシズコは顔を真っ赤にして絶叫する。
「んなことできるかああぁぁぁぁぁぁっっっ! シズコ
腰の入った正拳突きをマサムニェに叩き込んだ。周囲にズドムッと鈍い音が響いて、マサムニェが崩れ落ちる。その様子を見ていたグランは余りの威力に顔をしかめる。
◎・・・
百鬼夜行商店街の会長、ニャン天丸ことマサムニェの計画はお祭り運営委員会と修行部のお陰で阻止することに成功。魑魅一座は、マサムニェと切り札たるオールドキングの敗北をしると、蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。その為身柄の拘束に成功したのは主犯のマサムニェとオールドキングだけだった。
「……と、まぁ報告書の内容としてはこんなところか。シャーレに戻り次第さらに詳細に詰めるとして―――「グランさーん! もうすぐ花火始まっちゃうよー!」……わかった。今向かう!」
アレグロブリーズの中で書いていた連邦生徒会へのシャーレ活動報告書の草案から手を放して、車外に出る。ここは百鬼夜行中心部から少し離れた位置にある修行部の部室と使われている建物。どうやら修行部の面々はここを部室としてだけでなく寮としても使っており、普段ここで寝泊まりしているらしい。
「はい! これ、グランさんの分!」
「ん、ありがとうな」
車外に出た俺に勇美が駆け寄ってきて桜花祭で買ってきたであろう焼きそばやかき氷を渡してくる。受け取り感謝を伝えながら空いている方の手で頭を撫でてやる。勇美は嬉しそうに笑いながら頭の上にある俺の手を掴み、引っ張る。
「やっほ~、グラン」
「グランさんもこちらにかけてください」
手を引かれた先は百鬼夜行のご神木が綺麗に見える縁側だった。縁側にはツバキと水羽が腰かけており花火を今か今かと待ちわびていた。……因みににツバキは名前でよばないと相手されなくなってしまったので名前で呼ぶようになっている。
「本当なら皆さん一緒に見れればよかったのですが」
「お祭り運営委員会の二人はフィナーレの準備、先生はイズナと一緒だ。俺で悪かったな」
水羽の言葉に少しばかり声を低くして答える。
「え!? いえいえ、そういうつもりじゃなくて……」
そうすれば水羽は焦ったように手と首を振りながら否定してくる。……ふふっ。
「知ってる。揶揄っただけだ」
「……もうっ!」
種明かし、というほどではないが本当のことを話せば水羽はむくれてしまう。揶揄ったことを謝りながら縁側に腰かける。するとツバキが右隣りに、水羽が左隣にやってきた。……なぜ態々挟んだし。――ん? 勇美、何故ジャンプの体勢を……っ!? まさか―――
「じゃあ、私は膝の上ー!」
「がはぁっ!?」
「か、カエデちゃん!?」
「グラン、大丈夫ー?」
勇美が勢いよく膝の上に乗ってきた。こ、コイツ小柄な割に結構重いぞ……。一体どうし―――あー、
「カエデちゃん! 行き成り飛び乗ったら危ないでしょ!」
「うー、ご、ごめんなさいミモリ先輩」
「謝るのは私じゃないでしょ、カエデちゃん」
「うん。グランさんごめんなさい」
「あー、うん。大丈夫だから気にすんな。ほら、もう花火始まるぞ」
勇美の頭を再び撫でながら前を向かせて花火が始まるのを待つ。
「グランは優しいねー」
「……どうだか」
ツバキが隣から話しかけてきたのを顔を向けずに声だけで返事する。本当に優しい人ってのは先生みたいな人のことを言うんだ。
「グランに何があったか私は知らないし、聞かないよ。でも私にとってグランは優しい、良い人だよ」
「……」
返事はできなかった。しかしツバキも気にしないようで、それ以上は何も言わずにいてくれた。そして花火が始まる。花火は流石、ミレニアム製と言ったところで本物に見まがうものだった。花火が撃ちあがっている最中は膝の上で勇美がはしゃいで何回か膝から落ちそうになって急いで抱え直したり、そんな様子を見て水羽が笑ったり、ツバキがマイペースに食いもんを口に突っ込んできたり、賑やかに楽しく過ごした。
◎・・・
「……知らない天井だ」
目が覚めたら知らない部屋で寝ていた。昨日は確か、花火の後部室の中で花火の感想を言いながらお祭りで買ったものを食べて過ごしていて……。
「ん?」
右手が誰かに握られている。そちらを見やれば勇美が俺の手をギュっと握って寝ていた。周りを見れば、ツバキや水羽も寝ているのが見える。祭りの空気に当てられてそのままのテンションで騒いだ結果の寝落ち……と言ったところか。にしても久々にぐっすり寝れた気がする。勇美のお陰かな?
「ありがとな」
左手で頭を撫でれば寝ながら笑う勇美。……娘ってこんな感じなのかな? 俺が人の親に成れる可能性なんて殆どゼロに近いだろうが。所詮俺はどこまで行ってもあいつと同じ……戦争屋なのだから。
勇美に握られた手を起こさないようにゆっくりと抜いて、置手紙とシャーレの連絡先を置いて修行部の部室を出ていく。アレグロブリーズに乗り込み、先生がどこに居るのかを確認して途中で先生を拾ってシャーレへの帰路に就く。先生はイズナと花火を見てそのまま彼女の部屋で一晩ともに過ごしたそうだ。互いに桜花祭での思い出話を語りながら帰る。
「うへー、おかえりーグラン」
シャーレに着いた俺を迎えたのは、小鳥遊ホシノだった。
ラスボス登場。
あと一話で桜花爛漫も終わります。
小話
「うぅーん。アレ? グランさんは?」
日が昇りある程度した頃カエデは目を擦りながら起きる。そして自分が手を握っていたはずの男が居なくなっていることに気が付き辺りを見回す。机の上に手紙が置かれているのを見つけ手紙を読む。その顔色はドンドン悪くなる。
「つ、ツバキ先輩、ミモリ先輩! グランさんもう帰っちゃってる!」
「どうしたのカエデー。むにゃ……」
「ん、んんぅ。床で寝ちゃったみたいですね」
もぞもぞと動き出すミモリとツバキ二人は寝起きでうまく頭が動いていないらしい。
「二人とも! グランさんが帰っちゃったんだって!」
「「え?」」
二人はカエデの言葉を完全に理解すると固まる。その朝、修行部の部室に絶叫が響いた。因みに後日、修行部の面々は『とてもイイ笑顔』をしながらシャーレに所属応募用紙を持って現れた。
ここで置手紙に書くのが自分の連絡先じゃなくて、シャーレの連絡先なのがグランらしい所。
正義実現委員会でグランくんと仲が良いのは? ハスミはプロローグで出会っているため除外
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ツルギ
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マシロ
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イチカ
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正実モブ