シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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55話『愛に狂う(たべっこ)』

◎・シャーレオフィス・

 

 百鬼夜行からシャーレに戻ってきた俺たちを迎えたのは何やら随分機嫌のよさそうな小鳥遊ホシノだった。……あの別れをしたのにこんなふうに接してくるとは、一体何を考えてる? ああっ! クソ! あんな別れをしたのにいまだこうして笑いかけてくれることを喜んでいる自分がいる! にやけるな、俺!

 

「小鳥遊ホシノ……」

「あ、アレ? 今日の当番は……」

 

 視界の端で先生が当番表を確認しているのが見える。やっぱり気を使って俺と小鳥遊ホシノが一緒にならないようにしていたらしい。

 

「んー? 今日の当番はあそこの風紀委員長ちゃんだよ」

「せ、先生」

「ヒナ!?」

 

 小鳥遊ホシノが指さした方を見れば何やらソファーに縮こまって座り、シナシナになっている空崎ヒナがいた。……何があったし。先生はシナシナになっている空崎に駆け寄って様子を見ている。

 

「いやー、今日シャーレに先生が戻ってくるってシャーレ公式モモッターに書いてあったからさ、グランも帰ってくると思っておじさんアビドスからここまで来たわけよ。そしたら当番の風紀委員長ちゃんがオフィス内に居てね? そーいえば、柴関ラーメンのお店跡でグランが怪我したことあったじゃん。その時のお話を少ししたらあんな風になっちゃって。うへー、おじさんそんなに厳しく言ったつもりはなかったんだけどさ……」

 

 あぁ、あの便利屋が柴関を誤爆したときの話か。別に俺は気にしていないんだがなぁ……。

 

「それで? 一体何の用だ」

「ふへへ、そんなに警戒しなくてもいいよー。ただ、お話ししに来ただけだから」

 

 ……嘘は言ってないみたいだな。

 

「先生、空崎と一緒に外のカフェでも言ってきてくれ。その間に俺は小鳥遊ホシノと話してる。だからそのシナシナの空崎をどうにかしてくれ」

「わ、分かった! それじゃあ二人ともごゆっくり―! ほらヒナ、一緒に美味しいもの食べよ?」

「うぅぅ、せんせぇい」

 

 そしてシナシナの空崎は先生に手を引かれてオフィスから出ていった。先生に手を握られた時点で大分笑顔になってたし、二人で楽しくお喋りしてうまいもの食えば回復間違いなしだろう。……さてと。

 

「二人っきりだね、グラン♪」

「……そうだな。で、話は?」

「うへー、グランも大分せっかちになったんだねー。うん、昔とは違うんだねー」

 

 うんうんと、腕組みしながら頷く小鳥遊ホシノ。駄目だ、まったく考えていることが分からん。言っている内容から、俺があの時に言ったことを確かめに来た感じか……?

 

「私ね、あの雨の日から色々考えたんだ。アビドスに帰って泣きながらグランの退学届にサインもした。『これでグランはアビドス生じゃなくなっちゃうんだ』って辛かった。もう後戻りできないんだって、昔には戻れないんだって思ったの」

 

 小鳥遊ホシノは胸の前で両手を握りしめて上目遣いでこちらを見ながら語りだす。何だか目の色が妖しい気がする。なんというか、ブラックマーケットの路地裏で座り込んで雨に濡れるままだった所を拾った女も次第にこんな感じの眼を俺に向けてきていた気がするんだが……。

 

「でもね、変わらなかったものもあるんだよ!」

「お、おう」

 

 ビックリしたぁ……。急に大声出すじゃん。情緒不安定か? あの別れ方はやっぱりストレスが大きかったか? でも、ああするしか方法はなかった……。

 

「私はね……やっぱりグランの事が大好き!

「ンむッ!?」

 

 気が付いたらホシノに押し倒され、馬乗りされて口付けをされていた。な、ななな、なななな!!?? 

 

「ぷはっ、なにを!?」

「駄目だよ、グラン。もっとぉ……」

 

 急いでホシノの体を押して唇を離すが、力で無理やり手を押さえつけられ再び口付けされる。目の焦点も合ってないし、声色も変、完全に正気じゃないっ! どうにかホシノの体を引きはがそうとするが、俺の腕力じゃホシノには敵わないし、息が上手く出来なくて体に力が入らない……。しばらくの間ただ、ジュルジュルと唾液を吸われたり飲まされたりホシノのなすが儘になった。

 

「うへへ、グラン可愛いー」

「ごほっ、ごほ。……ほし……ホシノ、どうして?」

 

 やっと口が離れた。勢いと不規則に動く舌のせいで乱れた呼吸を落ち着かせていく。鈍く、上手く働かない頭をどうにか動かして問いかける。

「……」

 

 俺の質問を聞いたホシノは顔から笑顔が消えた。なんの感情も読み取れない真顔になりこちらを見下ろしてくる。その昔を思い出す表情ら思わず背筋がゾクゾクする。

 

「グランが悪いんだよ。せっかく昔にみたいになると思ったのに、あんな事言うから……。けどグランの言うことも理解できたんだ。それでね、あることに気が付いたの」

「ある事?」

「グランがアビドス生じゃなくても、どこの所属でも、私とグランが付き合うことには関係なくない? 別に同じ学校の生徒同士じゃないと付き合っちゃいけないなんて法律どこにもないんだし……だからね、グラン」

 

あなた(水戸グラン)をもう一度(小鳥遊ホシノ)に惚れさせる。何度だって私に惚れさせてあげるし、何度だってグランに惚れる。もう誰にも渡さないから」

 

 力強くそう宣言するホシノ。……マジかよ。

 

「本気か……?」

「本気だよ。『もう昔みたいには戻れない』だよね。だからまた一から私たちの関係を始める、今日はその宣言。だからこれくらいにしておいてあげる」

 

 そう言ってホシノは俺の上から退いていく。や、やっとどいたか。立ち上がりながら、ホシノの方を見る。

 

「うへへ、体からグランの匂いがする……」

 

 どうにか目のハイライトも笑顔も復活していたが自身の体を抱きしめながら恍惚の表情を浮かべていた。うーん、医学交流会の面子に連絡するか? にしても、『一から私たちの関係を始める』か……。成程そういう結論に至ったわけか。そうやって考えていると、小鳥遊ホシノは一度身なりを正してこちらに向き直り手を差し出す。

 

「それじゃあ、これからよろしくね。『代表のグラン』くん」

「ッッ!……あ、ああ、よろしく頼む。『対策委員会委員長』小鳥遊ホシノ」

 

 握手か……。自分の腕を見ると真っ赤に染まっているのが見える。やっぱりな、小鳥遊ホシノが近くに居ると俺は自分の手が血で真っ赤になる幻覚を見るらしい。しかしさっき咄嗟にホシノの体を引きはがそうとしたときは見えなかった辺り俺からホシノに触れようとすると見えるらしい。幻覚と分かっていても、この手で小鳥遊ホシノに触れるのはどうかと少し戸惑う。

 

『何かをしようとするたびに誰かを傷つけて、暴力でしか訴えることしかできない戦争屋。それが俺らだろうが』

 

 そんな風に迷っていると百鬼夜行でのオールドキングの言葉が頭をよぎる。

 

『本気だよ。『もう昔みたいには戻れない』だからまた一から私たちの関係を始める』

 

 更に先ほどの小鳥遊ホシノの言葉が思い出される。……そうだな。もう戻れないって言ったのは俺自身だった。これからも多くの人を傷つけて時には命を奪うというんだ、こんな幻覚、嫌というほど見ることにだろう。手が血に塗れた程度で(・・・・・・・・・・)戸惑ってたら俺の目標は達成できない。俺は最終的に全身血まみれになるんだ、このぐらいで戸惑っていたらどうしようもない。……小鳥遊ホシノは前に進んだ、俺も進まないと。意を決して手を差し出す。手が触れる。幸いなことはこの赤い血の幻覚は他の人や物に付着しないことだ。

 

「これからシャーレの為に力を貸してくれよ? あと、部長命令で後で空崎には謝罪しておくように」

「うへー、おじさん、そんなに怖がらせた記憶ないんだけどなー。ま、りょーかい」

 

 笑いながら小鳥遊ホシノと握手する。……制服を捨てたときにもう戻れないとは思っていたさ。でも、これで本当に過去(水戸グラン)とはお別れってことか。こうして俺と小鳥遊ホシノの新たな関係が始まってしまった(・・・・・・・・)

 

「くしゅっ!」

「おー? グランくん風邪でも引いた?」

「……んー? 修行部の部室で雑魚寝したのが悪かったか?」

 

 ああ、風邪か。だからこんなに鼻がグズるし、目頭が熱いのか。

 





 ずっとずっと愛してるよグラン♡


 グランとホシノの感動的な和解シーンです。祝福してください。

正義実現委員会でグランくんと仲が良いのは? ハスミはプロローグで出会っているため除外

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