57話
◎・レッドウィンター・
「うぅー、寒いねーハルミちゃん」
「ああ、そうだな先生。代表がこの場に居れば人肌で温め合うのだがな……」
レッドウィンターの極寒の地で先生は本来シャーレの生徒ではないキッド1こと大鷲ハルミと共に訪れていた。なぜこうなったのか、それは少し前までさかのぼる。
◎・・・
シャーレオフィスで今日も仕事に勤しむ先生。しかしいまいち、その手の動きは鈍い。
「グラン……まだ来てない。帰り際にはホシノもグランも普通にしてたから大丈夫かと思ったけど、やっぱり何かあったのかな。……私もあの場に居るべきだったかな? でもあのヒナを放っておけなかったし……うーん、どうすれば良かったのかな……」
今日当番のはずのグランが朝からシャーレに現れないのだ。百鬼夜行から帰ってきたときにホシノがシャーレに訪れていてグランと二人きりになる時間があった。先生としては生徒の事を信じたいが、あの二人は先生が知る限りアビドスで出会った時……二人にとっては再会したときからその関係は危ういものを感じていた。
先生がうんうんと唸っているとシャーレのドアが思いっきり開かれる。
「失礼する!」
「うわあっ!? って、確かグランの所の……」
「大鷲ハルミだ。先生」
大きな声を上げながらシャーレのオフィスに入ってきたのはグランの部下であるキッド1こと大鷲ハルミだった。先生は珍しい来客に目を丸くするが、すぐに笑顔を浮かべ応対する。
「珍しいね、どうしたの? あ! シャーレに所属してくれるなら歓迎するよ! 所属しなくても歓迎するけどね! 偶にお喋りに来るだけでも全然いいし!」
先生は笑顔でハルミに話しかけながらソファーに着席を促す。ハルミが席に座ると自身は席を立ってオフィス脇の冷蔵庫を上げる。
「飲み物何が良い?」
「……コーヒーで」
「おっけー」
缶コーヒーを二本持って自分も席に座る、そして片方をハルミに渡す。
「それで今日は『連邦捜査部S.C.H.A.L.E』に何の御用で? もしグランに秘密にしたいことなら今日は止めた方が良いよる今日グラン当番だから……まだ来てないけど」
「ふふふ……先生も面白いことを言う。この大鷲ハルミが代表に秘密だと? はははっ、そんなもの無いに決まっている。私は全て代表にさらけ出している*! そう! 全て! 〇〇〇〇も! ***も! あぁ! 興奮してきた!!!」
「うぉっ、デッカ……じゃなくて!? い、いきなり脱がないで!? ちょ、ちょっと待って! ねぇ! ホントに不味いって! 」
暫く興奮して服を脱ぎだすハルミを抑えるのに時間がかかった。
「はぁ…はぁ…はぁぁぁ。 落ち着いた?」
「あぁ、すまないな先生。手間をかけた。……本題に入ろう」
「う、うん」
しっかりと座り直して、真剣な表情をするハルミ。先生は先程とのギャップに少し困惑気味だが、生徒からの話とならば聞かない訳はなく、耳を傾ける。
「今日、代表は当番に来ない」
「え!」
「代表は風邪をひかれて療養中だ」
ハルミの言葉を聞いてグランが当番に来なくなったのが先日の出来事が原因ではないと知って安堵する先生。背凭れに思いっきり寄りかかる。
「風邪かぁ……良かった……」
「良かった?」
ハルミの眼が鋭くなる。慌てて先生は首を振る。
「あ、えっと、そういうのじゃなくて! ちょっとグランが当番に来なくなるかもしれないことが前にあったからそれが心配で……」
「……小鳥遊ホシノか?」
「エッ!?」
ハルミの口からホシノの名前が出てきておどろく先生。
「……代表の過去、私もそれとなく知っている。キッドの中ですべてを詳しく知っているのはキッド2だけだがな。悔しいが代表の様子の急変にはあの女の影響が大きい、肉体的にも、精神的にも」
「そ、そうなんだ」
「というより今朝、小鳥遊ホシノは『塔』に看病するための荷物を持って現れた。今頃キッド2と代表をどちらが看病するかで争っているだろう」
「な、何やってるのさ」
もう、驚きすぎたせいか、リアクションが薄くなり呆れているようにも見える先生。
「私にも分からん。今朝方、代表の風邪が発覚した。そしてその20分後には道具を持って『塔』の前に現れた。代表から小鳥遊ホシノへの連絡は
「う……うーん。少し愛が重いのかな……? というより、ハルミちゃんはグランの看病しなくて良かったの?」
先生がそういうとハルミは胸を張りどや顔をする。そしてコーヒー缶を一気飲みして缶をテーブルに勢いよく置いてから喋り出す。
「ふ、これはちょっとした自慢だが、私は所謂天才という奴だ」
「ほほう?」
「無論、医療についても完璧だという自負がある。しかし代表の治療はキッド2でもできる、なんなら他のキッドでもできることだ。しかし代表の代わりに戦うことは他キッドの戦闘力ではできない。まぁ……キッド4なら出来るかもしれないが。それは置いておくとして、つまり
胸の前で手を組み、まるで祈るかのようにグランへの思いを真剣な顔で語るハルミ。それを見る先生も途中まではどんな発言が飛び出るか警戒していたが次第に真剣に聞き入っていた。
「グランのこと大好きなんだね」
「あぁ! 大好き、愛しているとも!それは―――」
「あ、ヤバ。スイッチ入った」
再びハルミを落ち着かせに入る先生であった。
「ふっー、ふっー……すまない先生。代表のことになるとすぐに昂ってしまって……」
「う、うん、大丈夫だよ。む、夢中になれることがあるのは良いことだから」
落ち着きを取り戻したハルミは先生に礼を言う。
「とりあえずだ、今日は代表の代わりにシャーレに来たんだ。なんでも言って欲しい」
「わかったよ。ありがとう、ハルミちゃん。それじゃあ……」
先生は自身のデスクに向かって何かの紙を持ってきてハルミに見せる。
「『レッドウィンター事務局』から学園への招待状が来ているんだけど、一緒に来てくれる?」
「レッドウィンターか……。かなり距離があるし、用件によっては泊まりになるな」
「泊まり。……アレグロブリーズがあるから寝床はどうにかなるけど……服とか―――」
「寝る時は裸だからそこは大丈夫だ」
「……そうなんだ」
もうハルミに対しては突っ込むことを諦めたらしい先生。
「というか、泊まりになっても大丈夫なの? 『ODI ET AMO』のお仕事とか」
「それなら大丈夫だ。今回『シャーレへの出張』ということになっているから元々何日か『ODI ET AMO』を開けても良いようになっている」
「そっか、それじゃあ行こうか! ハルミちゃんとの初仕事だね!」
「ああ、シャーレの先生。お手並み拝見といこう」
そうして先生とハルミの初仕事が始まった。そして話は冒頭に戻る。
◎・・・
「学園の駐車場まではアレグロブリーズで来れたから温かかったけど正門までの距離でここまで冷えるとは……」
「うむ、そうだな。だが、招待状にあった待ち合わせ場所まであと少しだ、頑張ろう先生」
二人は寒さに耐えながらレッドウィンターの正門に到達した。すると正門前にいた女子がこちらに寄ってくる。それに気づいた先生が懐から招待状を取り出す。
「貴女が手紙をくれた佐城トモエさん?」
「はい、その通りです。ようこそお越しくださいました、先生。レッドウィンター連邦学園を代表し、先生のご来訪を心より歓迎いたします。そちらの方は?」
「『ODI ET AMO』所属、大鷲ハルミ。先生の付き添いとして来た」
「……成程。ハルミさん、ようこそレッドウィンターへ」
深々と頭を下げるトモエ。その所作は礼儀正しく美しかった。
「さぁ、チェリノ会長が中でお待ちです。こちらへどうぞ……」
トモエはそう言って歩きだした。その後ろをついて行く先生とハルミ。
「さぁ、今回は一体どんなお仕事かな」
「楽しそうだな先生」
「そりゃあ、生徒の為だからね」
というわけで大鷲ハルミちゃんがやってきました……。今回は先生もグランも曇りません。ただし先生はハルミに振り回されます。
正義実現委員会でグランくんと仲が良いのは? ハスミはプロローグで出会っているため除外
-
ツルギ
-
マシロ
-
イチカ
-
正実モブ