シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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58話

◎・レッドウィンター生徒会 会長執務室・

 

 トモエに連れられて、会長執務室に入る先生とハルミ。先生は部屋を一通り見回して、壁に掛かった肖像画に目が止まる。

 

「あれは……」

「ん? ……あぁ、校舎の上の方にもあった絵か」

「あの肖像画ですか? あの御方こそ、我がレッドウィンター連邦学園の生徒会長であり、環境美化部部長兼、書記長兼、運動部代表兼、清掃部部長兼、風紀委員長兼、給食部部長のチェリノ会長で御座います」

「なんだって?」

 

 トモエの早口にハルミが聞き返す、聞き取れなかったわけではない。脳が一瞬理解を拒んだのだ。

 

「我がレッドウィンター連邦学園の生徒会長であり、環境美化部部長兼、書記長兼、運動部代表兼、清掃部部長兼、風紀委員長兼、給食部部長のチェリノ会長で御座います」

 

 繰り返すトモエ。

 

「……代表よりも多くの役職を抱えているな」

「髭がナイス」

 

 ハルミはこれ以上繰り返されてはたまらんと無理やり話を切り上げる。その横で先生は肖像画のヒゲを気に入ったらしく、褒める。

 

「はい、あのヒゲこそ、レッドウィンターの権威の象徴なのです。お気に召されたのでしたら幸いです。書記長、先生をお連れいたしました」

 

 トモエは先生の言葉に機嫌を良くしながら肖像画の解説をする。そして執務室のデスクに近づいて声をかける。

 

「……ご苦労だった、トモエ秘書室長。忠実な我が右腕よ。褒美として後日、勲章を授けよう」

「光栄です、書記長」

 

 トモエは頭を下げ、脇に移動する。デスクの椅子を回転させてこちらを向く書記長。

 

「そして……我がレッドウィンター連邦学園へようこそ、カムラッド。私こそがチェリノである! このレッドウィンター連邦学園の生徒会長であり、環境美化部部長兼、書記長兼、清掃部部長……ええと……あとは……あと何だっけ……」

「運動部部長兼、風紀委員長兼、給食部部長……!」

「それだ! とにかく、凄いことは何でも任されている偉い人なのだ! こうして出会えたことを光栄に思うが良い、カムラッド!」

 

 レッドウィンター連邦学園生徒会長、連河チェリノがその姿を露わにする。そこに居たのは肖像画とは全く違う、ちんちくりんだった。そんなチェリノの姿を見て、先生は首を傾げる。

 

「肖像画とはちょっと違う……?」

「ちょっとではないだろう」

「はっ! そのような些細なことは気にするな! あれは私の将来の姿を描いたものだから問題ない! それともカムラッド、私の肖像画に何か不満でも! 大人ならそのぐらいは空気を読ん……うひゃっ!?」

 

 先生とハルミの方にズカズカと詰め寄るチェリノだったが途中でカーペットに躓いて転んでしまう。

 

「しょ、書記長!?」

「いたた……。トモエ!! ここは転びやすいから、カーペットをちゃんと整えておくようにと言っただろう! 粛清するぞ!?」

「チェ、チェリノちゃん! ヒゲ、オヒゲが!」

 

 立ち上がったチェリノの顔には先ほどまであったはずのヒゲが無くなっていた。そのことをトモエが焦りながら指摘する。トモエの声にチェリノは自分の鼻の下を摩る。

 

「……ん? えっ、う、うひゃあ! おいらのヒゲがっ!」

 

 トモエを伴って執務室の端の方に走っていくチェリノ。その様子を見つめている先生。

 

「一人称『おいら』なんだ……」

「――――」

「というかハルミちゃんさっきから静かだけど、どうかした?」

 

 先生が先ほどから黙り込んで微動しているハルミを心配して声をかけるとその様子を見る。

 

「……っ! だ、大丈夫!?」

 

 先生の隣のハルミはどうかしたのか、白目で口から涎を垂らして震えていた。

 

「大人の代表……体に細かい傷が増えて、日々の業務の影響から髪には若干の白髪が混じってしまう。ただ、年を重ねたことで落ち着きと更なる色気を手に入れている! 厚くなった胸板と少し血管が浮き出ている腕。ロングコートでタバコを咥えながら雨の降るブラックマーケットを歩く代表、その髪は雨に濡れ雨粒がしたり落ちる。無論タバコの火も消えてしまう、しかしそんな中でも代表は笑顔を浮かべ天を見上げる! 『まいったな、今日は傘を置いて来てしまったよ』と隣の私に軽く笑いかける。私も傘は持っていないから私たちは近くのホテルで一休みするんだ…… そしてそこで成長した代表の○○○がワタシの中にいぃぃぃっっっ!!!

「本当にどうしたのハルミちゃぁぁん!?」

 

 先生の絶叫が響き渡る。

 

◎・しばらくして・

 

「……ふう。今日もいい天気だな、トモエ、そう思わないか?」

「仰る通りかと、書記長」

「あぁ、いい天気……」

「と、トモエ、カムラッドはどうしていきなりあんな遠い目を……」

「さ、さぁ?」

 

 ヒゲを付け直してきたチェリノは先生が遠い目をしているのをみてトモエに質問する。しかしトモエもその理由が分からずに困惑する。因みに、ハルミは何も知らない風を装っていた。

 

「あ、ぁぁ、ごめんね。ところで今日は何の用事で?」

 

 先生は意識を戻してチェリノに用事を聞く。するとチェリノはその言葉を持っていたとばかりに語りだす。

 

「ふふふ、聞いて驚け……それは、『イワン・クパーラ』の準備のためだ!

「い、いわん・くぱーら?」

「レッドウィンター連邦学園の夏至の祭りだったか?」

 

 先生が聞きなれない言葉をオウム返しする。そして隣のハルミは自身の記憶を遡って質問をする。

 

「その通りだ! カムラッドも知っていると思うが、そろそろ『夏至』の季節。つまり、一年でもっともお昼の時間が長い日が近づいている……。雪も少し解け始め、新緑が芽吹くこの時期に、レッドウィンター連邦学園では毎年、夏至祭『イワン・クパーラ』を開いているのだ! 『イワン・クパーラ』はレッドウィンター連邦学園における古き良き伝統! そのため事務局としても、これを盛大に開催できるよう、生徒たちを総動員し、最高の『イワン・クパーラ』とするため準備をしているのである! そうだな? トモエ秘書室長」

「はい。会長の指示に従って2交代制を実施し、模範労働者には法相を与えた結果、先週は対前週比の250%の生産量を達成できました」

「えっと……それはつまり、上手くいっているという意味で良いのか?」

……ほう

 

 チェリノはは自信満々に『イワン・クパーラ』の説明をしてトモエに現在の状況を確認する。しかしトモエからの報告を今一理解しきれていないチェリノ。そんな様子を見てハルミは周りに聞こえない声で小さく感嘆の声を出す。その目は鋭く、声は低かった。そしてそんなハルミの様子にトモエだけは気が付いた。

 

「……そうか! よし、よし! それなら今回の『イワン・クパーラ』も完璧だな!」

「夏至ってまだ一か月は先じゃない?」

 

 先生がチェリノに聞く。

 

「おいらをバカにしているのか! それぐらい分かっている! このタイミングでカムラッドを呼んだ理由は……お前がシャーレの先生だからだ。シャーレの先生として、他の学校の生徒たちと頻繁に交流をしているのだろう? その繋がりを生かし、我がレッドウィンター連邦学園の雄姿を広めるために、シャーレの先生を買収……いや、売り渡……?」

「チェリノちゃん、引き入れ、です。引き入れ!」

「そ、そう! シャーレの先生を引き入れるのが、我がレッドウィンターの名声を高めるのに最善の手段だと考えたのだ! さぁ、カムラッド! 夏至祭に向けて準備しているレッドウィンター連邦学園の、この素晴らしい姿をきちんとその目に焼き付け、各学校の生徒たちを通じてキヴォトス全域へと広めるのだ!」

「おぉ……」

 

 チェリノの宣言を聞いて先生は少し低い声を出した。

 

「どうした先生?」

 

 ハルミがグランから聞いていた先生像とその声色や溜息に近い声を出すという行為自体がが少し違うと思い先生に聞く。先生はハルミの問いかけに対し若干の苦笑いをしながら答える。

 

「いやー、お祭りは楽しみだし、生徒の頼みだからね。全力で取り組むよ。でも『百夜ノ春ノ桜花祭』の時も色々な騒動があったからね、今回も何かが起きる気がしてね……。特に今回は、なんというか、えっと……」

「どうした先生、私を見て。そんなに見ても私の肢体は代表のものだからな」

一番の心配の種はハルミちゃんなんだよなぁ……」

 





「ねぇ、グランの面倒は私が見るからあなたは仕事に戻っていいよ」
「いいえ、私は代表の主治医です。部外者のあなたこそお戻りになられては?」
「胡散臭い女が……」
「昔の女がしつこいですよ……」

「ハルミに代役を頼んだが……迷惑をかけていないだろうか……ゴホッ、ゴホッ!」

正義実現委員会でグランくんと仲が良いのは? ハスミはプロローグで出会っているため除外

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