シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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62話

◎・レッドウィンター連邦学園 本校舎 近辺・

 

「……クーデターがあったという割には随分静かなものだ」

 

 ハルミは森林の中から本校舎の様子を観察していた。レッドウィンター連邦学園はクーデターが発生して、生徒会長が入れ替わっているというのに大きな騒ぎは起きていなかった。

 学園都市キヴォトスに置いて生徒会は行政機関と変わりはない、生徒会長ともなればそれは一国の王だ。そんな重要な存在が交代したというのに何の反応もないレッドウィンター生たち。

 

「図太いのか、阿呆ばかりなのか……」

 

 余りに何もない雰囲気にハルミは自身が隠れながら偵察しているのが馬鹿馬鹿しくなった。無造作に森林から出てレッドウィンターの街並みを歩いていく。白い髪に白い服、白く雪化粧した町を歩くハルミはとても様になっていた。

 

「ん?」

 

 ふと、ハルミのポケットが震える。ハルミはポケットから携帯を取り出して画面を確認すると先生からメールが来ていた。

 

「図書館で戦闘、『知識解放戦線』を味方にした……。……? なぜ図書館で戦闘に? そもそも『知識解放戦線』とは?」

 

 ハルミは携帯の画面を眺めながら首を傾げる。疑問に思いながらも順当にアレグロブリーズまでたどり着く。車内に乗り込み、車内後部のクローゼットを開ける。そして事前に積み込んでいた衣服を取り出して着替え始めるハルミ。そうして黒スーツに伊達メガネをかけて、ある場所に車を走らせはじめるハルミだった。

 

◎・・・

 

 暫く車を走らせたハルミがたどり着いたのはレッドウィンター外郭の山脈、その間にある秘密拠点だった。ハルミは車をおりて両手を上げながら拠点に近づく。すると拠点の方から銃を持った生徒が5、6人現れてハルミを取り囲む。

 

「お久しぶりです、『ルビコン解放戦線』のみなさん」

「貴様は……」

「『ODI ET AMO』の大鷲ハルミです。ミドル・フラットウェルに伝えたいことがあってきました」

 

 ハルミは自身の身分を名乗る。するとハルミを囲んでいた生徒たちは驚いたようで挙動不審になる。そして一人がどこかに連絡を入れる。そしてしばらくして連絡をしていた生徒がハルミの前に出る。

 

 

「確認が取れました。どうぞ、ご案内します」

「ありがとうございます」

 

 ハルミは一人の生徒に案内されながら、拠点の中を歩いていく。拠点自体の状態はレッドウィンター旧校舎とは大差はないが、立地で薄暗いのと所々に施された武器のせいで旧校舎よりも冷たい印象を受ける。そんな拠点の奥の部屋、そのなかには『ルビコン解放戦線』の実質的指導者ミドル・フラットウェルがいた。

 

「ようこそ、ハルミ殿。それで? 私に伝えたいこととは?」

「フラットウェル様は現在のレッドウィンターの状況を把握していますか?」

「なに?」

「現在、レッドウィンター生徒会長、連河チェリノは失脚しています」

「なんだとっ!?」

 

 ハルミの言葉にフラットウェルは席を立ちあがった。その様子を見ながらハルミは言葉を続ける。

 

「失脚したのは今朝です。現在レッドウィンター連邦学園は元親衛隊の池倉マリナが掌握しています。しかし急ごしらえの生徒会、今だ指揮系統は確立できていませんし、レッドウィンターの生徒たちもこの事態を把握しきれていません。ただいま連邦生徒会直属の連邦捜査部『S.C.H.A.L.E』の先生が事態の収拾にあたっています」

「……」

 

 フラットウェルは黙り、ハルミの言葉を聞いていた。

 

「まだ、生徒会の辺りは混乱が続いています。しかし先生が事態を収拾してはその混乱も消えてしまうでしょう。……蜂起するならお早めに」

「……部下を急ぎ状況把握に派遣する」

 

 フラットウェルは椅子に座り直して、部下を呼びつける。そしてその部下に指示をだす。

 

「それで、どうしてそのことを私たちに伝えに来た?」

 

 ハルミを真っすぐ正面から見据えるフラットウェル。二人の間に独特の緊張感が張り詰める。そうして時間がたった。恐らく実際に経過した時間は10秒程度だろう。しかしフラットウェルや部屋の隅で待機していたルビコン解放戦線の生徒たちにとっては10分にも、1時間にも感じられた。そして唐突にハルミが笑みをこぼす。

 

「ふふ……」

「何が可笑しい?」

「いえ、凄むのは構いませんが、震える拳は隠して言いなさい。青二才(ボーイ)

「っく」

 

 ハルミの言葉に机の上に置いていた拳を握りしめて、無理やり震えを抑えるフラットウェル。

 

「私の……私たち『ODI ET AMO』の目的は一つ。先日取引した『UNAC』こちらを戦闘で使用してほしいのです」

「それだけか?」

「ええ、それだけです」

 

 ハルミの言葉で呆気にとられるフラットウェル。数秒たったあとどっと疲れたような表情をして椅子の背凭れに思いっきり寄りかかるフラットウェル。その様子を見てさらに笑みを深めるハルミ。フラットウェルは護衛をしていた部下たちを部屋から出す。そして部屋の中にはフラットウェルとハルミの二人になる。するとハルミは口調を崩して話かける。

 

「まだ、上に立つものとしては未熟だな、フラットウェル」

「くっ、そ、そうか。ドルマヤン先輩からルビコン解放戦線の指導者を受け継いだが……上手くいかんな」

「代表に比べてお前は色々(・・)な経験が足りなさすぎる……。一度ブラックマーケットに来て殺しでも体験するか?」

「こ、殺っ!? ……いや、ブラックマーケットならあり得る話か。お前たちの代表はそんな経験もあるのか……?」

 

 フラットウェルが恐る恐ると言った様子で聞くと、ハルミは胸を張り誇らしげに語りだす。

 

「当たり前だ! 代表は様々な経験をしているし、今まで何人も殺しているぞ! それに代表は単に殺すだけじゃなくて元部下の腕やら足を吹き飛ばして自殺に追いやるという搦手もできる。その自殺の報を聞いた時も『そうか』の一言で済ますほどの冷徹さも持ち合わせている」

「それは凄まじいな。しかし、ルビコン解放戦線はあくまで独裁に抵抗する反抗組織、殺人者に堕ちるつもりはない」

 

 真剣な眼差しでハルミを見るフラットウェル。その視線には確かな気高さがあった。そんな表情を見て、ハルミは苦笑いをする。

 

「清濁併せ吞んでこそとは思うんだがな」

「それでも"その一線"は超えちゃいけないものだ」

「「……」」

 

 無言で互いに視線をずらさない二人、やがてハルミの方から視線を外す、そして席を立ちあがる。ドアに向かって歩き出すハルミ。

 

「武装蜂起するなら早めにするんだな。『先生』……私もまだそれ程計り切れていないが……あの大人は厄介だぞ」

「忠告感謝する。それから『UNAC』の投入だが……前向きに検討させてもらう」

 

 フラットウェルの言葉に軽く手を上げて返事とするハルミ。そのまま振り返ることなく部屋の外に消えていった。

 

「……ふぅ」

 

 ハルミが出て行ったドアをしばらく見つめた後、息を吐くフラットウェル。

 

「『ODI ET AMO』の連中と話すときはいつも気が休まらんな。油断してるとすぐに手の上で転がされそうだ。……直接だけでなく、間接的にでも人に殺すことができる無情な存在。……合ってみたいものだな『代表』」

 

 天井を見上げながらそう呟くフラットウェル。一息ついてから立ち上がる。部屋の外で待機していた部下を呼びつける。

 

「これからレッドウィンター本校舎の方に仕掛けるぞ! ミレニアム武器を投入しろ! ……『UNAC』も起動しろ!」

 

◎・レッドウィンター本校舎 近郊・

 

「先生、すまない。遅れた」

「ハルミちゃん! 良かった、怪我とかしてない?」

「ああ、大丈夫だ」

 

 本校舎近くの街で先生と合流したハルミはいつもの服装に戻って先生に話しかけた。先生はハルミを見つけると駆け寄りハルミの体をペタペタと触る。

 

「それよりも先生の方こそ何かあったのだろう? 何だったか……『知識解放戦線』だったか?」

「うん。彼女たちも味方に引き入れたから次はいよいよ本校舎に向かうよ!」

「そうか……もうそこまで」

 

 先生の言葉に顎に手を当てて考え込むハルミ。そんな様子のハルミに先生は首を傾げる。

 

「どうかしたのハルミちゃん?」

「いや、ただ……三つ巴の戦いになるなと思ってな」

「一体何をしてきたのハルミちゃん」




『ルビコン解放戦線』
 学園自治区の急激な寒冷化気候変動によって学園運営が出来なくなりレッドウィンター連邦学園に吸収された「ルビコン第3高校」の元生徒たちが所属している団体。ルビコン第3高校の復活を目標として活動している。創始者は現在は卒業したドルマヤンという生徒。現在のリーターはミドル・フラットウェル。『ODI ET AMO』はグランの指示のもと解放戦線に決して少なくない額の支援をしている。部下たちはなぜグランがここまで解放戦線を支援をするのかは分かっていない。

◎・そのころのグラン・

「大分熱下がったね」
「ええ、一時はどうなるかと思いましたが、この様子なら今日1日休めば大丈夫でしょう」

 寝ているグランを両隣から眺めているホシノとムイ。グランの寝顔を見てにっこり笑顔を浮かべていた二人だが、ホシノは急に目つきを変えて、ムイを見つめる。

「あとは、私一人で十分だよ。白羽ちゃんはお仕事に戻っても良いんじゃない?」
「その言葉そのままお返ししますよ。ご自分の学園に戻られたらいかがですか? まぁ、学園と呼べるかは少々疑わしいですが」

 ムイの言葉に目じりがピクリと動くホシノ。

「それが本性?」
「貴女相手なら隠す必要もないでしょう?」
「そうやって猫を被ってグランに近づいたのか」
死人の皮(ユメ先輩)を被るよりかはましかと」

 ホシノは咄嗟に銃に伸びかけた腕を止めた自分を褒めてやりたかった。

(なんか寒気する)

 グランの部屋の空気は過去最悪を迎えていた。

グランくんの夏休み! どこ行こう?

  • ヒフミが戦車を強奪?ウィッシュリスト 
  • チナツから連絡? 何だ? 委員長の夏休み
  • リゾート運営か……。 海の家FC
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