◎・レッドウィンター連邦学園 中央市街・
「進めー! 権力の犬どもに労働者の力を見せてやれー!」
「「「Уллаааааааа」」」
工務部の部長、安守ミノリの掛け声で工務部の生徒たちが攻撃を仕掛けてくる。先生がすかさず物陰に隠れて指示をだす。
「第一目標はチェリノの安全確保! 工務部の子たちを全滅させる必要はないからね!」
「そうは言っても、この様子だと全員相手することになりそうなんだが」
「待っていてください、チェリノちゃん!」
ハルミが前線に立ち、左右にステップなどをして工務部の攻撃をできるだけ回避しながら射撃する。トモエは先生の傍で先生に銃弾が当たらないように壁になりながらスナイパーライフルで攻撃する。
「工務部の連中は全員同じアサルトライフルを使っているな。あの部長らしいやつが違う種類のアサルトライフルを使ってるだけだ」
「とはいえ工務部の部員数はレッドウィンター1、総火力はかなりの物です。気を付けていきましょう」
『トモエちゃん、右側手前から3棟目の建物の看板落としちゃって。ハルミちゃん、看板が落ちたら一時的に攻撃が止まるはずだから20m先の赤い車のとこまで前進』
トモエが看板の留め具を狙撃することで、看板が外れ落下する。その下に居た工務部は看板に押しつぶされ、行動不能になる。戦闘開始してから初めての大規模反撃に工務部の連中は一瞬攻撃の手が止まる。その隙にハルミは指定された場所に移動して距離を詰める。
『ハルミちゃん、こちらが合図したら一気に敵中央に突っ込んじゃって。相手もそこまで接近されたら同士討ちが怖くて撃てなくなると思う! グランは貴方の事を「俺より強い」と言っていた。その言葉信じるからね』
先生の言葉を聞いて目を輝かせるハルミ。車の後ろに隠れて再び攻撃を開始した工務部の射撃から身を守りつつ、手を開いたり、閉じたりしていた。
「そうか……代表が私の事を……。そう言われたら期待に応えずにはいられないな」
攻撃タイミングを待つハルミ。先生も何かを待っいるようでジッとしている。そして先生の持っているシッテムの箱の画面が光る。それを見て先生は笑みを浮かべる。
「来た……!」
「せんせーーい!! お待たせいたしましたー!」
「おーおー、工務部が相手かー。ちょっと頑張ろうか、ノドカ」
227号の生徒たちがこちらに走り寄ってきた。先生を見て笑顔のノドカと時たま転びそうになるノドカを支えつつ、工務部に向かってスキットルを放り投げるシグレ。スキットルからあふれた謎の液体が発火する。
「……シグレちゃん。あのスキットルの中身は?」
「嫌だな―先生。ちょっと発酵しただけのジュースだよ」
「ならいいけど……。ノドカちゃんはここから敵の位置を観測して前線支援して! シグレちゃんはここからハルミちゃんの左側にある歩道に沿ってグレネード斉射」
シグレとノドカは先生の指示を受けてすぐに行動に入る。ノドカは背の望遠鏡を使ってスポッターとなり前線のシグレやハルミ、さらに狙撃をしているトモエに正確に工務部部員の位置を伝える。さらに、後方の工務部部員たちが爆発で吹き飛ぶ。
「皆さん、お待たせしました!」
「モミジちゃん!」
爆発の原因は知識解放戦線の秋泉モミジだった。肩に担いだロケットランチャーで工務部を吹き飛ばしていく。ハルミが前線で大立ち回りして工務部を引き付ける。そこにシグレのグレネードランチャーとモミジのロケットランチャーで次々に工務部を爆撃する。そして爆発から逃れた部員たちをトモエがスナイパーライフルで仕留めていく。
「くっ、怯むなー! この腐敗した学園を破壊するんだ! そして、新しい学園を打ち立てるんだ! 進め労働者よー! 平等な社会の実現! 労働者の権利の確保! そして独裁者と貴族階級の打倒と根絶だー! 労働者にとって、これは聖戦なんだ 「話自体は興味深い内容だが……遅すぎる」
そうしてついに工務部の部長、安守ミノリの元にハルミが到達する。
「なっ!」
ミノリはハルミが近すぎると判断しアサルトライフルを捨て、咄嗟に背負っていたショベルで殴りかかる。しかし、それをハルミは片手で受け流す。そらにその勢いを利用してその場で回転して回し蹴りを頭に叩き込む。ミノリの被るヘルメットが大きな音を立てて割れる。頭を押さえてふらつくミノリ。足の震えを抑えて無理やり殴り掛かるが、ハルミにそんな見え見えの攻撃が効くはずもなく足払いされて倒れた所を上から押さえつけられ拘束される。周りの工務部部員も倒れており、先生がチェリノを助けていた。
「ほ、本当に、腕が折れると思った」
「チェリノ会長! 大丈夫でしたか?」
拘束が外れたチェリノが腕の様子を確かめていると、トモエが急いで駆け寄ってくる。
「トモエ、カムラッド……怖かった……うわああああん!」
駆け寄ってきたトモエを見て緊張がほどけたのか次第に泣き出してしまうチェリノ。トモエはそんなチェリノを抱きしめる。
「くっ、会長を排除できるいいチャンスだったのに……。なぜ、邪魔をした先生! いくらシャーレだろうとあたしたちの革命を邪魔するならば容赦はしない!」
ハルミに拘束されながらもミノリは先生を睨みながらそう言い放つ。その言葉に先生が返答に困っていると、トモエが間に割って入る。
「待ってください、工務部のみなん。私たちはみなさんとこれ以上戦うつもりはありません。労働者としての権利を得るためにも、今は同じ仲間同士で戦うのではなく、力を合わせるべきです! そもそも一体全体、チェリノ会長のどういったところが、みなさんの革命の邪魔になるというのですか? もちろんチェリノ会長は労働もしないですし、おやつばっかり食べながら、お昼寝だけをする使えない会長ではありますが……。ことが自分の思い通りに進まないからと言って、むやみやたらに粛清を乱発する、独裁的な会長ではありますが!」
「待て、トモエ秘書室長。お前、今までおいらをそんな目で見ていたのか?」
トモエが早口に述べていった事実にチェリノは我慢できずに突っ込みを入れる。
「ふん、下のミスは上が責任を負うもの! よって、このレッドウィンター連邦学園で起きる全ての責任は、代表であるチェリノ会長にあるのだ! 旧校舎の復旧が遅れているのも、プリンがきちんと配給されないのも、今日がこんなに寒いのも―――すべてチェリノ会長のせいだ!」
「その理屈は分からん」
ミノリの言葉を聞いたハルミが今度は突っ込みを入れる。
「そして生徒会長である限り、チェリノ会長はありとあらゆる全ての非難を受け、永久に許されることはない!」
「そんな無茶な! その理論だと、誰が会長であっても非難を免れぬではないか!」
「もちろんだ! 権力者への非難は闘争の基本! 闘争の末に、生徒会長という存在が無くなり、真の平等が結実するその日まで……あたしたちの闘争は止まらない!」
「ぐっ、なんという乱暴な革命家だ……」
チェリノの言葉にも毅然として自分の考えを述べるミノリ。そのアナーキーな考えに一同愕然とする。すると何処からか拍手の音が聞こえる。それと同時にハルミはミノリの拘束を解いて立ち上がり敬礼をする。
「その通り、全く持ってその通りだ、名も知らぬ生徒よ。上に立つ者は常に非難を受け、永久に許されない。しかしそういった非難を潰すための戦力を上が持っていることも忘れてはいけない。そしてお前のような中途半端に力を持った存在が一番潰しやすい勢力だということも理解しているのか?」
「ハッ、そんなくだらない脅し、レッドウィンターじゃ挨拶にもならないぞ」
「ますますお前の事が気に入りそうだ」
拍手の音源とハルミの敬礼した先を他の面子が見ればいつもより厚着をしているブラックマーケット代表、水戸グランと相変わらずの格好の衛府フセがそこにいた。
「グラン! ……と、隣の子は誰!? 寒くないの!?」
先生がフセを見て驚愕の声を上げて、フセに自分の上着をかける。フセはいきなり上着をかけられて最初こそは驚いたがしだいににっこりと笑って、上着に顔を埋める。
「えへへ、ありがとうございますっス! 自分、衛府フセっす! 代表の部下で、『ODI ET AMO』の商業部門と外交部門のトップをさせてもらってるっス! 寒いのは平気っスけど、あるほうが温かいんでいただきますっス!」
「上着ぐらい用意したんだがな……」
グランがそう言うとフセは首を振るう。
「いえ、本当に平気で寒くないっス。ただ上着があれば暖かく感じるだけ、という話っス」
「ならいいが」
そう言い放ちグランはミノリの方に歩いていく。そしてミノリの隣にいたハルミを一瞥する。
「ご苦労」
「もったいないお言葉です」
膝をついて頭を下げるハルミ。その頭を撫でるグラン。頭にグランの手が触れた瞬間、一瞬ハルミの体がビクンビクンと撥ねる。
「うわぁ」
その一瞬のハルミの表情を盗み見た先生は思わず声をこぼしてしまう。そんなことには気が付かず、ミノリに向かって手を差し伸べるグラン。
「よろしくアナーキー」
「私の名前は安守ミノリだ。覚えておけ」
握手をしているようで実際はお互いの手を握りつぶさんとしてギリギリと力を込めている。それによく見れば笑顔を浮かべているようでガンを飛ばし合っている。再び空気が怪しくなってきたときに先生が空気を入れ替える為、喋り出す。
「ミノリちゃんだったよね。そもそも今、チェリノちゃんは生徒会長じゃないよ」
「……なに? チェリノ会長が会長じゃなかったら、今は一体誰が?」
先生の言葉を聞いてグランから手を離して、先生の方に向き直るミノリ。その間にグランはハルミを立たせてフセの元に行き「状況報告」と短く告げる。そして、ハルミの報告をフセと共に聞く。
「悔しいが……今、レッドウィンター事務局で会長としての権力を持っているのは、おいらではなく、マリナ保安委員長だ。マリナ保安委員長がクーデターを起こしたせいで、おいらは会長の座から失脚し……今は逃げている最中だからな!」
「チェリノちゃん、そんな自慢気に話すことではありませんよ」
チェリノが胸を張ってそう話していると、トモエが苦笑いで後ろからたしなめる。
「なんと。では、今権力を握っているのはマリナ保安委員長で、チェリノ会長は単なるチビにすぎないということか……」
「なっ、チビ!? 今、チビって言ったな!?」
「よし、みんな。目標を変更だ! あたしたちの新たなる敵は、チェリノ会長のような大したことないチビではなく、事務局の新たな権力者であるマリナ委員長だ!」
「またチビって言ったな! しかも今度は『大したことないチビ』って! この偉大なチェリノ様の声が聞こえないのか! みんな粛清だ、粛清!」
チェリノが地団駄を踏んでアピールするが、周りは各々のやるべきことに集中していて気が付かない。
「よし、あたしたち労働者の権利と自由、そして……えっと……他にも色々と大事なことのため、事務局に突撃だッ!」
「「「Уллаааааааа!!」」」
ミノリを先頭に事務局に向かって突撃していく工務部の生徒たち。今まで戦闘をして倒れていたとは思えない士気と行動の速さだった。
「あの耐久力と数、やっかいだな……」
「ええ、厄介でした」
「皆さん、楽しそうっス」
『ODI ET AMO』の3人は工務部の連中を見てそう語る。そこにトモエがやってきて話に参加する。
「ええ、工務部の生徒たちは敵に回すと厄介ですが、味方にすると心強いという噂がありますから」
「成程な……」
トモエはグラン達から離れ、チェリノの傍に行く。
「完全に無視された……」
「さぁ、チェリノ会長。私たちも工務部に続いて事務局に向かいましょう!」
トモエたちが工務部に続いて事務局に向かって走り出したその時、レッドウィンター本校舎の一部が爆発した。そして黒い下地に白でなにかを描いた旗を掲げた生徒たちがどこからともなく現れる。そして本校舎に向けてほぼほぼ無差別な攻撃を始める。
「「「灰被りて我らあり!」」」
「な、何々今度はどこの生徒さん?!」
突然の襲撃に先生が驚く。グランはチラリとハルミを見ると、ハルミはしっかりと頷く。それを見て、グランは戦闘準備をしつつ先生に話しかける。
「あいつらは、『ルビコン解放戦線』細かい説明は省くが、あれもクーデター勢力だ先生。つまり、今このレッドウィンター連邦学園はチェリノ派、マリナ派、ルビコン派の三つ巴の戦闘が始まったということだ」
「そ、そうなんだ。ともかく、あの無差別な攻撃は止めさせないとだね。グラン、病気はもう大丈夫なの?」
先生が心配しながらそう聞くと、グランはニィッと笑いながら武器を構える。
「ああ、問題ない。それにキッド1とキッド4もいる」
「そっか、それじゃあ行こうか。多分これがレッドウィンターでは最後の戦いになるよ!」
「あ、先に下着替えてきていいですか」
「ハルミちゃんさぁ!!」
元々嫌いではなかったんですが、最近イオリが自分の中で熱いんですよ。イオリ単独ヒロイン物とか書きたくなるぐらいには。
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