『部員との交流』
◎・シャーレオフィス・
レッドウィンターの騒動から数日たった。今日は俺と先生、そして当番の早瀬の3人で書類仕事に勤しんでいた。ふと視界の端で先生が変わった動きをしたのが目に入り、仕事の手を止めて先生の方を見る。先生は手元の端末を少しの間眺めては画面をいじっている。モモトークだろうか? 少しの間眺めていると先生がガタッとデスクから立ち上がる。
「今日は陽射しが気持ちいいから散歩してくるね!」
「は、はぁ? って、ちょ! 先生!?」
立ち上がった先生はそのままダッシュでシャーレのオフィスから出ていった。急に奇行に走り出した先生に早瀬が驚愕の声を上げるるそして早瀬もガタン、と音を立てて立ち上がる。恐らく先生を追うのだろう。
「早瀬、先生のことは追わなくていい」
「え? でも、大の大人が仕事をホッポリだして散歩だなんて……」
「先生は仕事を投げ出してなんかいない……。仕事を『抱え』に行ったんだよ」
「仕事を抱えに……?」
先生を追おうとしていた早瀬を呼び止める。どうせモモトークで生徒に呼び出せれただけだろう。……シャーレの激務の原因の一つだが、先生が生徒に助けを求められたらノータイムで直行してしまう、というのがある。唯でさえ仕事が多いのにそうやって自分から仕事を増やしに行くのだ。仕方がない人だ。
「いい機会だ、少しばかり部員と話してみたい。『シャーレの部長』として、な」
「……わかりました」
手で早瀬をデスクから談話用のソファに座るように手で指示をする。早瀬は俺の言葉に少し考える素振りを見せた後指示に従ってソファに座った。俺もデスクから立ち上がり一度給湯室によってコーヒーを2つ淹れてソファに座る。
「ブラックだ。ミルクと砂糖は好きに入れてくれ」
「あ、ありがとうございます」
「硬いな……」
「へ?」
「先生相手のようにとは言わないが、俺に対してもそこまでかしこまる必要はない」
「そうで……。んん゛っ。それじゃあ、そうさせてもらうわ」
口調がかなり砕けた感じになった。最近
「さて、まず最初に色々確認させてもらうぞ」
「確認?」
シャーレの部長用デスクから所属部員のプロフィールが載ったファイルを取り足す。えーと、早瀬……は、は、はや、はやせ……あった。
「『早瀬ユウカ』ミレニアムサイエンススクール2年生。ミレニアムの生徒会『セミナー』所属の会計。理系生徒の多いミレニアムでも指折りの鬼才、ミレニアムの予算管理を統括している。ミレニアムの予算管理……大変だな」
「そうなのよ! C&Cの損害補償もバカにならないし、エンジニア部の謎の爆発に、なにもしないゲームかいは……あっ、ごめんなさい、急に」
「ああ、気にするな」
プロフィールを呼んでいるときにふと呟いてしまった一言に早瀬は物凄く反応してきた。ほんとうに大変なんだな。
「にしてもエンジニア部か……。
「そういえばそうだったわね。そう考えると『ODI ET AMO』とミレニアムは大分前から交流があったのね」
早瀬はそう言いながら頷いて、コーヒーを飲む。あ、顔を顰めた。
「あ、うぇ……その……」
「はっきり言っていいぞ」
「その……代表、コーヒー淹れるの苦手なんですね」
「……っ」
そうか……。もうそこら辺の感覚ももうダメかぁ。コーヒー好きだからいろいろ勉強したし、キサキに飲ました時には『店でも出したらどうじゃ』と言われていたんだがな。
「それは済まなかった。あまりにダメだったら捨てても良い」
「い、いやそれほどじゃないし、頂くわ」
そう言ってコーヒーに再び口を付ける早瀬。
「それで話って?」
「……」
特に話題という話題はないんだよな。
「実は大した話題はないんだ」
「そうなの?」
「ああ。そうだな……先生についてでも語るか」
「先生について……」
俺が先生の名を出すとほんのり頬を赤く染める早瀬。ほーん、当番の時からたまに思っていたがやっぱり早瀬は……。
「早瀬って先生と話すときに若干声高くなるよな」
「え!? なッ! そ、そんなことは!」
俺が以前から気になっていたことを指摘すれば早瀬は思いっきり顔を赤くして手を顔の前で振る。
「せ、先生のことは! 私が面倒を見ないとすぐに無駄遣いしたり、食事をおろそかにするから仕方がなく! そう仕方がなく! 私が面倒を見ているだけです!」
「ふーん」
慌てふためいて早口でそう語る早瀬を肴にしてコーヒーを飲む。うん、味は相変わらずあんまり感じないが、さっきよりも旨く感じる。
「しかし、こう何回もミレニアムから来るのも大変だろう? それにシャーレの財政状況をミレニアムの生徒に任せるというのも外聞が悪い。……俺の個人的な友人だが、連邦生徒会財務室のアオイという奴がいる。そいつに話をしてみるか」
「え?」
俺の言葉に早瀬の体がビタリと止まる。もう少しか?
「もしアオイが引き受けてくれれば早瀬も今ほど頻繁にシャーレに来る必要はなくな「い、嫌よ! 私が! 私が先生の傍にいるんだからそんな必要はない……わ……よ?」
早瀬がソファから立ち上がり大声でそう言い放つが、途中で俺がにやにやとしているのを見て茶化されているのに気が付いたらしい。
「なんだ、やっぱり随分お熱なんじゃないか」
「あ、あ、あ、あ、あああ!」
「で? 具体的にどこが好きなんだ。ん? ちょっと部長に教えてくれよ」
「あうあうあうあう」
しかしノアから事前に聞いていたが打てば響くとはこのことか。確かにこれは構いたくなるな。このあと先生が帰ってくるまで早瀬に先生について思っていることを吐き出させそれをつまみにコーヒーを飲んだ。
『アヤネの決意』
◎・アビドス高校・
もし……もし俺がユメ先輩が亡くなった後もアビドスに居たとしたら……。セリカの騙されやすさに頭を抱え、アヤネと共に金策に悩み、ノノミの買い出しについて行って、シロコとサイクリングに勤しみ……ホシノと……ホシノとはどうなっていたんだろうな。今のようにユメ先輩の真似を始めるのか、あのホシノのままなのか……。
「やめよう。もう、どうしようもないことだ」
思考の海にとらわれていた意識を無理やり覚醒させる。もう対策委員会の教室まえだ。ドアを開いて中を見渡す。
「いない、か」
しかし教室内にも人影はおらず静寂がその場を包んでいた。しかし机の上にアヤネの鞄があることからアヤネが校舎のどこかに居ることは確定だろう。
――ガタガタッ!――
「きゃあぁぁーっ!」
「アヤネッ!?」
隣の教室かッ! ショットガンを構えて隣の教室の扉を蹴り破って中に入る。
「グ、グランさん……」
教室に入った俺の眼に飛び込んできたのは本の山で転んでいるアヤネだ。問題だったのはその格好だ。上から大量に本が落ちてきて尻餅をついたのだろう、スカートが捲りあがり真っ白なショーツが丸見えになっている。俺の目線に気が付いたのだろう。アヤネが顔を真っ赤にする。
「あっ、きゃ、きゃあああっ! み、見ないで下さい、グランさん!」
「うおっ!? 悪かった、悪かったから物を投げるのは勘弁してくれ!」
「う、ううこんな姿を見られちゃうなんて……」
羞恥から近くにあった本をこちらに向かって投げるアヤネ。危なっ!! 本を回避しつつ教室から退避する。逃げるように教室を出てて対策委員会の部屋でアヤネを待つことにする。
「……」
暫くすると、ドアが開いて顔を赤くしたアヤネがもじもじしながら教室に入ってきた。
「……こんにちは、グランさん」
「あぁ、こんにちは。ケガはなかったか?」
「はい。転んだだけでしたので怪我はありません。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました。その……本を取ろうと棚に乗ったらバランスを崩してしまって。それで、あんな姿に……」
涙目になりながら駄々っ子のように両手を上下にブンブンとするアヤネ。
「横着しようとした結果がショーツ丸見えの姿か。足場をしっかりと持ってくるべきだったな」
「う、うぅぅ……。わ、忘れてください、グランさん」
「横着したことをか? それともショー――
「わっー! わっー! わっー! 全部、全部です!」
ポカポカとこちらの胸を殴ってくるアヤネ。少しの間、アヤネを慰めることになった。そしてアヤネが落ち着いた後、本題に入る。
「それで、グランさんをお呼びした理由ですが……。普段使っていない資料室の片付けをしていたらこんなものを見つけまして」
「……あぁ、懐かしい」
アヤネが古びた漫画本を渡してきた。それはかつてユメ先輩が俺に『女の子の扱い方を学ぶため』という名目でよく読むように言っていた。少女漫画たちだった。懐かしいなぁ。それにしてもこんなにあったのか、めちゃくちゃ数あるやん。
「懐かしい……やっぱりそうでしたか。恐らく、かつての在校生の方が残していったものだろうと思っていました」
「正解だ、アヤネ。これは俺が1年生のころに在学していた先輩の物だ」
「そうなんですか、こういう漫画が好きな方だったみたいですね」
「何故そう思う?」
ふと疑問に思ったことを聞く。するとアヤネが一冊の本を手に持ちながらこちらに向き直る。
「この本『あなたに伝えたくて』という作品ですが、良作としてとても有名なんです。昔映画化もされたことがあるとか」
「そこまでなのか」
「はい。しかもこの漫画は初期の方に生産されたものなので筆者のサイン入りで現在プレミア価格がついているものなんです!」
「お、おおう」
興奮した様子で、本を持ってこちらに詰め寄るアヤネ。その余りの勢いにたじろぐ。
「ホシノ先輩に聞いてもこの漫画の存在自体知らなかったのでグランさんに相談してみたんです」
「……プレミア価格。売るつもりなのか?」
「え!?」
俺がそう聞くと、アヤネは驚いた表情になりしどろもどろになる。
「あ、あのえっと、空き教室を整理してたら偶然出てきた効果な物だったのでつい気になってしまって……」
「売って良いと思うぞ」
「え、でもその卒業した先輩が取りに来るという可能性は?」
……ユメ先輩。
「……そんな可能性、絶対にないから安心しろ」
「ぐ、グランさん?」
おっと、不安にせてしまったか? 遠慮がちに俺の名前を呼ぶアヤネに「悪い」と一言かけて頭を撫でる。
「さて、それじゃあその古本を売りに行くか」
「グランさんも来てくれるんですか?」
「そりゃあここまで来たんだ、最後まで付き合うよ。ただ……」
「ただ……?」
ここで態と言葉を区切る。そしてアヤネの手を取って教室の外に連れ出す。
◎・ブラックマーケット・
あの後、外に止めてあった車にアヤネと本を乗せて出発する。近くの古本屋に向かうのではなく一度アヤネの家に向かう。そしてアヤネに以前俺がオーレリアの店で買った服に着替えてくるように言った。そう、今回の目的はアヤネと以前約束したブラックマーケットを案内するということをするためだ。
ブラックマーケットについたあと、車は『塔』に止めて歩く。アヤネと逸れないようにしっかりと手をつないでブラックマーケットの道のりを歩いていく。隣を見ればベレー帽にAラインワンピースにワイドベルト、デニムジャケットを羽織りハイヒールパンプスを履いたアヤネ。
「うん。似合っているぞアヤネ」
「あ、ありがとうございます、グランさん」
照れて下の方を向いてしまうアヤネ。ふふっ、あんな大胆な告白をしたとは思えないぐらいに初心だな。今日は珍しく行政区に雨が降っていなかったので、古本を売るだけでなく、喫茶店や骨董品店に向かった。しかし……アヤネが骨董品好きとは意外な一面を見たな。……ペロロの陶磁器とかいうヒフミが喜びそうなものもあったが、アレは骨董品に入れていいのか?
そうして時間は過ぎていき、日が既に落ちて空が暗くなったころアヤネを家に送り届けていた。玄関先で別れの挨拶をする。
「グランさん、今日はありがとうございました。本も高値で売れましたし、珍しい骨董品も見れました。それにオシャレなレストランでご飯までご馳走していただいて……」
「楽しんでもらったのなら良かった。……あぁ、だが一人では来るんじゃないぞ? またあの辺りの店に
行きたくなったら俺に声をかけてほしい」
そう言いながらアヤネの頬に手を伸ばす。するとアヤネは俺の手の甲に自分の手を添えて、手のひらの方には頬ずりをしてきた。ほんと、愛い奴め。
「分かりました。また連れて行ってくださいね」
「約束だな。それじゃあ」
アヤネの方から手を離して。背を向けて歩き出す。
「……?」
しかし、途中でアヤネに手を掴まれて動きが止められる。何かあったのかと振り返ろうとするとアヤネが背中に抱き着いてくる。
「アヤネ?」
首をできる限り曲げて背中の方に視線を向ける。俺の背中に顔を埋めて居るアヤネの頭頂部と夜でもはっきりと分かるぐらいに真っ赤になったアヤネの耳が目に入る。
「……ませんか」
「なに?」
「と、と、泊っていきませんか!」
声と同時に顔が上げられる。顔を真っ赤にして若干涙目になりながら、しかし何かを決意した顔でこちらを見上げるアヤネ。
「……ダメ……ですか?」
「"そういう意味"だって誤解しちまうぞ?」
「そ、そういう意味です」
アヤネの正面に向き直り、後ろ手にアヤネの部屋の鍵を閉める。そうして俺とアヤネは一夜を共にした。
先生の陽射し発言はヒナちゃんの絆エピソードです。あと作者はコーヒーは缶で飲むだけなのでよくわかっていないんですが、淹れる人の味覚がイカれるとコーヒーの味ってブレるんですかね? そこらへん考えないでただグランくんに苦しんでほしくて書いたのでいまいちわからん。
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