◎・アヤネの家・
「う、うぅ……ん?」
知らない天井だ。目を覚ましたらまったく知らない部屋のベッドの上で裸で寝ていた。確か昨夜は……。
「ん……」
「ん?」
隣で誰かがもぞもぞと動くのを感じる。そちらの方を見ると自分と同じように裸のアヤネが。……あぁそっか。
「アヤネとシたんだったな」
昨晩のアヤネの艶姿が脳裏に思い出される。初めてでありながら懸命に尽くそうとして来る、月明かりに揺れる身体。戸惑いから痛みへ。痛みから快感へ。少しずつ変わっていったアヤネの声。昨夜の事を思い出しながら隣に寝るアヤネを起こさないようにしながらベッドを出る。
「……シャワー、借りるか」
タオルの位置やらは昨夜使った時に教えてもらったから覚えている。タオルを取ってシャワーに向かう。熱いお湯を頭からかぶる。あ゛あ゛あ゛~~、あったけぇ……。朝からあっついシャワーを頭から浴びると夏だろうが、冬だろうが関係なく気分が良くなる気がするのは気のせいだろうか。しばらく熱いシャワーを浴びた。
そうして体や頭を洗い終わった後シャワーから出るとアヤネが起きていた。
「おはよう。すまないシャワーを借りた」
「はい。おはようござ……って、えぇっ!? グランさん、服着てください! 服!」
挨拶しながら眼鏡をかけるアヤネ。そしてしっかりとした視界で俺の姿を捕らえ叫ぶ。そういえば体の水滴やらは拭いていたが全裸で出てきていたな。しっかし……。
「裸なんて昨日沢山見ただろう、というか、触りもしただろう?」
「そ、それとこれとは別の問題なんです!」
そうなのか。じゃあさっさと着替えるか。
「わ、私、シャワー浴びて来ますっ!」
そういってアヤネはタオルで体を隠しながらシャワー室に向かおうとする。その手を掴んで止める。
「アヤネ、その前に」
「えっ?」
一瞬、呆けたアヤネを抱き寄せて唇を奪う。タオル越しの肢体にまた押し倒しそうになるが、ぐっと堪える。
「すまない、まだしっかりとしてなかっただろ?」
「……ふ、ふふ。はい、そうでしたね」
キスしたあと、そう伝えるとアヤネは少し呆けた後笑ってくれた。おかしな話だよな、あれだけのことをやったのに普通のキスを一切していなかったなんて。
「グランさん、もう一回いいですか? 今度は私から」
「ああ、構わない」
「大好きです、グランさん」
そう言って今度はアヤネの方からキスをしてきた。……俺はアヤネの言葉に返事をすることが出来なくて只々キスを受け入れるだけだった。
◎・・・
あの後アヤネの家で朝食までご馳走になってしまった。味は味覚異常のせいでいまいちわからなかったが僅かに感じた感じからに真っ当な味ではあったのだと思う。あの時は『美味しいよ』とは言ったが、俺はしっかり笑えていただろうか? アヤネに気づかれなかっただろうか?
アビドスからD.U方面行きの電車に乗りながら携帯に来ていたメールを確認する。
| 開発部門:有澤チーフがいつの間にかマルチプルパルスの砲身を全てグレネード砲に変えていたことが発覚しました。 |
| ノノミ:ちょっとお時間良いですかー? |
| キサキ:今日は開いておる。 |
……有澤は一体何をしている? あのグレネード狂いによるマルチプルパルスの改造……? いかんな少し気になる。いつか使うときが来るかもしれないからそれはそれとして取っておくように連絡しておく。あとは……ノノミの所に行って最後にキサキの所かな。
「まずはノノミからか」
ノノミの連絡に返信をして現在どこにいるのかを聞く。返信が来た……。どうやらD.U郊外のショッピングモールに居るらしい。随分遠くにまで来ているな。あぁ、でも確かにこのショッピングモールなら駅も近いし、路線もアビドスから一本だしな。このまま電車に揺られていれば着くな。
暫く外の景色を見ながら少しずつ電車の中に人が増えてくるのを感じる。そうしてノノミがいるショッピングモールの最寄り駅についた。駅から出てバスロータリーを挿んで反対側にあるショッピングモールに歩いていく。
「さて、ここら辺のはずなんだが……」
「グラン先輩! ここです~こちらへ~」
ノノミが手を大きく振りながら声をかけてきた。うお、デッカ。手のふりに合わせて大きく揺れる二つの果実に一瞬目が奪われる。
「お待ちしておりました☆」
「すまない、待たせたか?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。それに私が勝手に待っていただけだすので☆」
ノノミはそう言って笑いながら自然に俺の腕に抱き着いてきた。……ホントに凄い自然だったな、気が付いたら抱き着かれていた。
「それで? 今日は何をするんだ?」
「はい☆ 今日は対策委員会のみんなに為に色々買い出しをしたいと思ってます。それでグランさんにもご一緒してほしいと思ってお呼びしました~」
なるほど、そういうことか。買い出し……アビドスじゃ買い物できる店もそんなに多くないからなぁ。確かに買い出しは重要だな。
「そうか……どこから行く?」
「はい! それでは出発~☆ 楽しいデート……いえ、ショッピングの時間です!」
「ん? デートだろ?」
なぜか遠慮した言い方をしたノノミに訂正をして抱き着かれた腕を外し、ノノミの腰に回す。
「え、あ、は、はい~」
ノノミが赤くなって縮こまって動かなくなってしまった。気絶はしていないのだが、動き出す気配が全くない。しかし行先はノノミしか知らない。仕方がないのでノノミの耳元に顔を寄せて話しかける。
「ノノミ、ほらどこへ行くんだ?」
「ひうっ!?」
大きくビグンッ!と震えるノノミ。そして急いで距離を取られてしまった。その後深呼吸して落ち着いたノノミの先導で買い物をして回る。
「うーん、やっぱりディフューザーも買った方がいいですよね? 教室に置いたらよさそうです。あら、 これはオセロゲーム? こういうのも一つあると……」
「かなり買い込むな」
次から次へと物を買い物カゴに入れるノノミにそう話しかけるとノノミは若干頬を膨らましてこちらに向き直る。
「だって、アビドスからこのショッピングモールまで、凄く遠いのですから! 何度も頻繁に来るわけにもいかないので、これぐらいは買わないとダメです。それに……みんな自分のアルバイト代を、学校の借金を返すのに使っているので……このままじゃ学校の教室じゃなくて、まるでアルバイトの休憩室みたいでかわいそうなんです」
「それは……そうかもな」
確かに今は、アルバイトの休憩所という方が正しい例えか。自分がいたころはユメ先輩、ホシノ、俺と全員武闘派なせいで、傭兵の拠点というか、前線の兵舎みたいな感じだったな。
「さぁ! ショッピングを続けましょう!」
その後もショッピングを続けてアビドスに戻るときにはかなりの大荷物になっていた。荷物をノノミと二人で抱えてアビドスへの電車に乗る。
「グラン先輩本当に良かったんですか? 私のカードの限度額オーバーまでまだまだ余裕があったのに」
「構わないさ。……俺は、お前たちに何もしてやれてなかったしな」
今までブラックマーケットでのし上がることしか考えていなかった俺にできることはこのぐらいだろう。何せ、今だに俺、というより『ODI ET AMO』が直接現金の支援をアビドスにするのをホシノは嫌がっているしな。こうして物品を間に挟めばいいんだけど。
「グラン先輩……」
ノノミが心配そうに俺を見ている。……しんみりさせ過ぎたか。誤魔化す様にノノミの頭を撫でる。
「何、気にするな……。ん? この感じ」
昔にも、こうやって金髪の子を撫でた気がする。電車の近くで……。そう、あれは駅で……。俺がアビドスに通ってた時に……。その子はセイント・ネフティスの令嬢で……そして、ノノミはセイント・ネフティスの令嬢で……。つまりノノミがあの時の……あぁ、思い出した。確かにあの時の子だ。俺は以前にノノミと出会っていたんだ。そうか、あの時の引っ込み思案の娘がこんな風に成長したのか……。
「ノノミ、アビドス高校に戻る前に少し寄り道をしても良いか?」
「? 構いませんけど……」
現在のアビドスの最寄り駅のコインロッカーに荷物を預けてノノミを連れてある場所を目指す。懐かしい景色が見えてくる。ノノミも途中から俺がどこに向かっているのか気が付いてきたのだろう。なんだかそわそわしている。
「ここだ」
「……」
そして到着したのは一つの廃駅。……というか廃駅になってたのか。
「そーれっ!」
シャッターが下りて封鎖されていたのを無理やり持ち上げて開ける。そうして駅の中に入るとノノミも何も言わずについてくる。そして駅の中を歩いてノノミと初めて出会ったホームに到着する。そこでノノミの方に振り返る。するとノノミは目に涙をためて両手を胸の前で祈るようにしながらこちらを見つめていた。
「思い出してくれたんですか?」
「ああ、全部な。驚いたよ、前髪もだけど雰囲気がまるで違ったから今まで気が付かなかった」
「そうですか。そうだったんですか。……良かった、覚えてくれていたんですね」
ついにシクシクと泣き出してしまったノノミをそっと抱きしめる。
「私、ずっと貴方に伝えたかったことがあるんです! でもあなたはこの駅には来てくれなくなって。 ずっと待ってたんです! ずっと、ずっと! そしてやっと出会えた! そしたらあなたは私のことに気が付いてくれなくて……分かってます! 貴方にとって私は一回しかあったことがない女の子で、いつもあなたを物陰から見ていた私みたいに何時間も相手のことを見ていなかったんですから記憶に残らなくて当然です!」
なんだか今の言葉の中に突っ込まなきゃいけないような気がするが、あのいつもにこやかに笑っていたノノミがこんなに泣きながら自分の感情を吐露している。ここは聞くことに集中するべきだろう。
「私……私! 私、十六夜ノノミは水戸グランさん、あなたの事を愛しています! あの日からずっとあなたを想い慕っています! この想いはホシノ先輩にも!アヤネちゃんにも! 他のグランさんを想っている女性の誰にも負けません!」
胸に手を当てながらそう宣言するノノミ。廃駅の中ということをありかなり響いた。しかしそれが逆にノノミの思いを表現しているようにも思える。そうか……あの時からずっとか……。もしかしたら俺に好意を持っている期間はホシノよりも長いんじゃないか? あの頃、ホシノはまだトゲトゲしてたはずだし。そんなことを考えて俺が返事をできずにいるとノノミはクスリと笑って顔を近づけてきた。唇に感じる熱。
「ぅえ?」
「お返事はまだしなくていいです。それに誰を愛そうが、どんなにあなたの手が汚れていようがかまいません。 ただし、最後にこのノノミの横に居てくださいね☆」
「……」
何だか、ノノミには一生敵わないような気がするよ。
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