◎・ゲーム開発部 部室・
アリスが自分の名前を認識してグランに挨拶を返した後、モモイはすぐに学生証を作りに行ってしまった。部室に残されたミドリ、先生、グランはアリスにどうやって喋り方を教えるか考えていた。
「うーん……。えっと、アリスちゃん?」
「肯定。私はアリスです」
「うん、じゃあアリスちゃんって呼ぶね。それにしても話し方かぁ……よく考えると、どうやってするんだろ?」
ミドリが考えていると隣に先生が腰を下ろす。
「普通、子供たちはテレビから流れている音声や、両親たちの話している言葉を真似している間に身に着くものなんだけど……それは言葉を覚える為のもので喋り方、口調の矯正の仕方じゃないしね……」
「うーーん。子供用の教育プログラムでも試してみましょうか?」
「それも……ありかなぁ?」
先生とミドリがアリスの教育について話し込んでいる間グランはアリスの相手をしていた。アリスは胡坐をしているグランの足の上に座って部室をキョロキョロと見回している。グランはそんな風に物珍し気に辺りを見回しているアリスの頭を撫でている。するとアリスは何かを見つけたのかグランの足の上から離れて歩き出す。
「? 正体不明の物を発見、確認を行います」
「お? どうしたアリス」
「これを」
何かを持ってきたアリスは再びグランの足の上に座りグランに持ってきたものを見せる。
「これは雑誌か……?」
グランの言葉に先生と反応したミドリが先生との会話を一旦中断して雑誌の方に意識を向ける。
「それは……えっと、ちょっと……恥ずかしいんだけど、実はその中に、私たちの作ったゲームが載っているの。まぁ、凄い酷評されちゃったんだけどね。……あ、そうだ! クソゲーランキングでは1位になっちゃったし、アリスちゃんがどう思うかは分からないけど……アリスちゃん、私たちのゲーム……やってみない? 『会話』をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも勉強になるかも」
「……。ここまでの言動の意図、完璧には把握しかねます。しかし……。肯定、アリスはゲームをします」
「ほ、本当に!? ちょ、ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」
ミドリは嬉しそうにゲーム機の準備を始める。アリスも立ち上がってゲーム機の前に移動する、しかし座らずにゲーム機の前に立ち尽くしている。他の三人がアリスにどうかしたのかと聞こうとする直前にアリスはグランの前まで戻ってきてグランの手を引っ張る。
「移動を要請します」
「ん? 俺がか?」
「肯定」
グランはアリスに手を引かれるままにゲーム機の前に移動させられそこで座らされる。するとグランの足の上にアリスが座る。その様子を見て先生とミドリは微笑ましいものを見る目線を向ける。その目線を受けてグランは気恥ずかしくなり体が痒くなる。
「よし、準備完了!」
「アリス、ゲームを開始します……」
ミドリがゲームの準備を終えたのを確認してアリスはコントローラーを持ってゲームを始める。その表情には変化が見えないが、なんとなく意気込んでいる雰囲気が伝わった。
「タイトルから分かるかも知れないけど、このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの」
「『テイルズ・サガ・クロニクル』という文字から俺は王道ファンタジーRPGを想像できないんだが」
「しっ」
コスモス世紀2345年、人類は却火の炎に包まれた……
「……?」
「おい、どこが王道だ」
「えっと、王道とは言っても、色々な要素を混ぜてたりするんだけどね。トレンドそのままでもダメだけど、王道に拘り過ぎても古くなるからってことで」
「ボタンを押します……」
チュートリアルを開始します。まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください。
「Bボタン……」
―ドカーーーン!―
「???」
<GAME OVER>
「!?!?」
「ちょ、え、はぁ!? おい、どういうことだ、才羽ァ!」
チュートリアルの指示通りにアリスがBボタンを押すと突如として画面から爆発音が響いて画面に『GAME OVER』の文字が浮き出てきた。あまりに突然のことでアリスはフリーズしてグランはミドリの方を向いて問いただす。
「あはははっ! 予想できる展開ほどつまらないものはないよね! 本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」
「お姉ちゃん……? 学生証を作りに行ったんじゃなかったの?」
「行ってきたんだけど、遅い時間だったから誰もいなかったの。また明日行く」
グランがミドリの方を向いたのとほぼ同時に反対側からモモイが現れて笑いながら説明する。
「それはさておき、改めて見てもこの部分はちょっとひどいと思う」
「『予想通りの展開』が詰まらないのは俺も賛成するが、せめチュートリアル位は正直でいてくれ……」
「えぇー! やっぱり最初にガツン! とインパクトを与えるべきでしょ!」
「それは、そうなんだが……これは……」
ミドリとグランが難色を示すもモモイは持論を展開して批判を躱す、その意見自体は真っ当なためグランは頭を抱えた。頭を抱えているグランの足の上でアリスは再びしっかりとコントローラーを握る。
「も、もう一度始めます……。再開……テキストでは説明不可能な感情が発生しています」
「あっ、私それ分かるかも! きっと『興味』とか『期待』とか、そういう感情だと思う!」
「どう考えても『怒り』か『困惑』だと思うけど……」
「アリス、嫌ならやめておこう。これは……あまりにも……」
「いえ、アリスはこのゲームを続行します」
グランがアリスを心配してゲームをやめさせようとするがアリスは強く反対してゲームを続行した。しかしこの『テイルズ・サガ・クロニクル』はあまりに突拍子なく意味不明な展開が多く、そのたびにアリスは戸惑いエラーを起こした。そして約三時間が経過したころ……
「こ、ろ、し、て……」
「凄いよアリス! 開発者二人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!」
「そ、それもそうだけど、もしかして本当にゲームをやればやるほど……アリスちゃんの喋り方のパターンがドンドン多彩になってきている……!?」
「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」
「いや、これ大丈夫か?」
グランは確かに喋り方は多彩になっているがこれは果たして正解だったのかを自分に内心問いかけながらアリスの頭を撫でる。
「うん、まぁ、最初よりかは……良い……かも?」
「ゲームからそのまま覚えたせいで、ちょっとまだ不自然かもだけど……言葉を羅列してただけの時よりかは、かなり良くなったと思う! と、ところでその……」
モモイとミドリがアリスの喋りの上達を褒めている、そんな中ミドリが急にもじもじしだしてアリスの傍に遠慮がちに寄ってくる。
「こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど……わ、私たちのゲーム、どうだった? 面白かった!?」
「……説明不可」
「え、えぇっ!? なんで!?」
アリスの一言にショックを受けたのかモモイの身が固まる。
「……類似表現を検索。ロード中……」
「も、もしかして、悪口を探してる……? そんなことないよね……?」
「……面白さ、それは明確に存在……」
「おおっ!」
アリスの口から貰た言葉ミドリはほっとした表情を浮かべ、モモイは声を上げて喜ぶ。
「プレイを進めれば進めるほど……まるで別の世界を旅しているような……夢を見ているような、そんな気分……もう一度……。もう一度……」
アリスはそう口にしている最中、一筋の涙を流す。
「アリスっ!? どっか痛いのか!? やっぱ脳にダメージがっ……」
「ちょ、グランは言い過ぎだよ!」
「あ、アリスちゃん!? どうして泣いてるの!?」
「決まってるじゃん! それぐらい、私たちのゲームが感動的だったってことでしょ!」
グランが慌ててアリスの脳や精神状態を心配して、グランの発言に先生が突っ込みを入れて、ミドリがアリスの心配をしてモモイはマイペースだった。
「い、いくらなんでもそれは……というかこのゲーム、ギャグ寄りのRPGのはずだし……」
「ありがとうアリス! その辺の評論家の言葉より、その涙の方が100倍嬉しいよ! あー、早くユズにも教えて上げたい!」
「あー、その『ユズ』ってのはロッカーの中に居る奴か?」
グランはそう言いながら後ろを振り向き、後ろのほうでこちらを眺めていた先生の隣にあるロッカーを見つめる。グランがそう言うとロッカーがガタンと大きく震え、先生がびっくりする。そしてロッカーがゆっくりと開く。
「え? ロッカーが勝手に開いて……あ! ユズ!」
「ユズちゃん、あれだけ探しても見つからなかったのに! いつからロッカーにいたの?」
「みんなが廃墟から帰って来た時から……」
ロッカーから出てきたのは赤毛の長髪に小柄な体躯でオーバーサイズのパーカーを来ている少女だった。
「大分前からじゃん!? その時からずっとロッカーに居たの? あ、もしかしてアリスちゃんやグランさんが怖かったから? モモトークか何かで伝えてくれれば良かったのに、びっくりしたよ……」
「あ、アリスや先生たちは初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長、花岡ユズだよ」
モモイから紹介を受けたユズはゆっくりとアリスの近くまで寄ってくる。
「えっと、あの、その、あ、あ、あ」
「「あ……?」」
アリスとグランがユズが繰り返す『あ』をオウム返しする。尚、グランの『あ』はそれなりに圧があったのかユズは『ひぃ』と怖気づいて少し後ずさる。
「……ぁりがとう」
それでもユズは勇気を振り絞り再びアリスの近くによって感謝を伝える。
「ゲーム、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて……。泣いてくれて……本当にありがとう」
「???」
「面白いとか、もう一度とか……そういう言葉が、ずっと聞きたかったの」
ユズはアリスの手をしっかりと握ってそう言い切ったのだった。
パヴァーヌ編のグランくんはゲーム開発部の空気にあてられて若干、感性が普通の子供よりになってます。ブラックマーケットに戻ったらキッド2がしっかり"調整"してくれることでしょう。
『代表の性活』 いる?
-
いる
-
いらない