シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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77話

◎・エンジニア部 部室・

 

 モモイに連れられてやってきたエンジニア部の部室。そこにいたエンジニア部の面々に軽く挨拶をして用件を話すモモイ。

 

「……なるほど、だいたい把握できたよ。新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい……と。そういうことであれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。ミレニアムにおける勝敗というのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ。そっちの方に、私たちがこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある。そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ」

「やった! ありがとう、先輩!」

 

 モモイ達はそう言ってウタハの示した方に走っていった。ヒビキもついて行ったので色々説明してくれることだろう。そうして俺は一度アリス達から目をはずしてさっきからチラチラと俺のことを見ていたウタハの方を見る。

 

「やっほ、ウタハ」

「やぁ、グラン。それにしても驚いたよ、君があの子たちと一緒に居るなんてね」

「シャーレの業務の一環……ってところだ」

「シャーレ……あぁそうか、君は部長だったね」

「笑えるだろ?」

 

 二人で歩いて部室の端にあるちょっとした休憩用であろうベンチに腰掛ける。アリス達がわいわいと話している風景を眺めながらウタハと話す。

 

「いや、似合っているんじゃないかな。『シャーレ』につい調べたことがあるんだが、かなりの権限を持った組織じゃないか。これは私の考えになるが、君と先生は恐らく互いに『最終安全装置』だ」

「『最終安全装置』?」

 

 ウタハの言葉に俺は首を傾げる。

 

「連邦捜査部『S.C.H.A.L.E』表の世界では随一の権限を持っている組織だ。もし、その『シャーレ』が悪用されたり、先生自身が悪に走った際に止めれるのは表の世界にはないだろう。だからこそ裏の世界で随一の権力をもつ君を傍に置いて監視といざというときの『保険』にしたんじゃないのかな? そして『互いに』と言った通り君相手の『保険』が……」

「先生、か」

 

 俺の言葉にウタハが頷く。

 

「しかし、どれも私の推測だ。そこまで重く考える必要はない。単純に『シャーレの部長がどこかの学園に所属しているのはマズイ』という理由かもしれないしね」

「俺も最初はそうだと思っていたんだが……。ウタハの考えはあまり俺は考えていなかった、だからありがとう」

「いやいや、役立てたようで何よりだ」

 

 ウタハに礼を言ってベンチから立ち上がる。そしてどうしても気になっていたことをウタハに聞く。

 

「拳銃に何故Bluetooth機能を付けたんだ?」

 

 俺の質問にウタハを目を丸くたしあとニンマリと笑う。

 

「ちょっと質問の意味が分からないな、載せちゃダメなのかい? 本当はなくても銃としては成り立つさ、でもあったほうがかっこいいじゃないか!」

「……そうか」

 

 そういえばそういう人間だったな、お前は。そう自分を納得せたあと再びアリスの方に目を向ければ何やら大きな機械を眺めているのを見つける。

 

「ウタハ、アレは?」

「ん? おや、アレに目を付けたのか。それじゃあ説明の為にも彼女の元に向かおうか。ちょうどコトリも向かっているし、彼女に解説してもらおう」

 

 二人でアリスの元に向かうがそのときスルッとウタハが隣に来て俺の右腕に腕を絡ませてくる。

 

「これは……?」

「ふっふっふ……お客さん、お目が高いですね」

「え、えっと?」

 

 後ろから突然現れたコトリにアリスは困惑しているようだ。それもそのはず、そいつの格好は一見普通に見えるがよくよく見ると大変訳の分からない恰好になっている。

 

「説明が必要なら、いつでもどこでも答えをご提供! エンジニア部のマイスター、豊見コトリです!」

 

 それならまず自分のファッションについて解説してほしい。

 

「あなたがアリスですね。ゲーム開発部、四人目のメンバー!」

「あ、コトリちゃん久しぶり。ところで、アリスちゃんが見ているこの大きいのは何? まるで……『大砲』みたいだけど」

「良い質問ですね、ミドリ。これはエンジニア部の下半期の予算、そのうちの約70%近くをかけて作られた……『宇宙戦艦搭載用レールガン』です!

 

 思わずウタハの方に顔を寄せて話しかける。

 

「70%……マジか?」

「ひぅっ、ほ、本当だ。いきなり耳元で囁かないでくれ!」

 

「宇宙戦艦、って……また何かとんでもないことを……」

「前にも、確かコールドスリープしようとして、『未来でまた会おう』って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」

 

 ミドリの言葉を聞いて、そんなこともあったなぁと思いだす。ここでウタハが遂に口を出す。

 

「その『未来直行エクスプレス』なら、今でもよく使っているよ。……まぁ、冷蔵庫として、だがね。食べ物をもっと先の未来にまで送れるようになったから、失敗ではないさ」

「使い道の割に、名前が大袈裟!」

 

 んー……ミレニアムの生徒って頭は良いんだが、ネーミングセンスやらデザインセンスやらが残念な奴が多いんだよなぁ。

 

「話を戻しますとエンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです! このレールガンは、その最初の一歩です。大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」

「かっこいい……聞いただけでワクワクしてくる!」

「さすがミレニアムのエンジニア部! 今回は上手くいっているんだよね!?」

 

 キラキラとした目で才羽姉妹がレールガンをキラキラとした目で見ている。無言だがアリスも目が輝いている。いやぁ……でもエンジニア部だしなぁ。絶対何か一癖あるぞ。

 

「ふっふっふっ、もちろんです! と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして……」

「えええっ!? なんで! 期待したのに!」

 

 コトリの言葉にモモイががっかりする。

 

「いつものことながら技術者たちの足を引っ張るのは、いつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです……」

 

 予算かぁ……コトリの言うことも分かるんだが、上に居るものとしては金銭管理が大変なんだよ……。

 

「このレールガンを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら……」

「そんなの計画段階で分かることじゃん! どうしてこのレールガン、完成まで待って行っちゃったのさ!?」

「愚問だね、モモイ。……ビーム砲は、ロマンだからだよ」

 

 その言葉にヒビキとコトリが肯定する。

 

「その通りです! ビーム砲の魅力が分からないなんて、全くこれだからモモイは」

「バカだ! 頭良いのにバカの集団がいる!」

「諦めろモモイ。これがエンジニア部だ」

 

 モモイの絶叫にそう合わせる。モモイが勢いよくこちらを振り返るので首を振って諦めろという意思も伝える。

 

「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は……『光の剣:スーパーノヴァ』!」

「まだ無駄に大げさな名前を……」

「名前負けしているだろ」

 

 ヒビキが仰々しく発表した武器の名前に思わず突っ込む。ミドリも同時に鋭い突っ込みを入れる。中々ひどいことをしてしまった。

 

「ひ、光の剣……!?」

「あ、アリス……?」

 

 アリスが何やらワクワクした様子でさらにレールガンを眺める。まさか……これ、気に入ったのか?

 

「あ、アリスの目が輝いてる……!?」

「わぁ、うわぁ……!」

「アリスちゃんがこんな興奮しているの、初めて見たかも」

 

 アリスは笑顔を浮かべてレールガンの周りをぐるぐると回る。なんだこれ、天使か?

 

「……これ、欲しいです」

「ウタハ、これ幾らだ! 買うぞ!」

 

 こんなに可愛いアリスが欲しがっているんだ。多少の散財は良いだろう。よこに居るウタハに話しかける。周りの面子が何やら驚いた表情で俺を見ているが知ったこっちゃない! それにアリスはアリスでヒビキの方に詰め寄っている。

 

「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」

「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど……。あと、グラン近い」

「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ないご相談です!」

 

 アリスと俺の懇願も虚しく、エンジニア部に却下される。

 

「なんで!? この部屋にあるものなら何でも持っていって良いって言ったんじゃん!」

「そうだ、モモイ! もっと言ってやれ!」

 

 モモイが抗議の声を上げたのに便乗する。後ろで先生がなにやら呆れた顔をしているが関係ない。

 

「……それは理由があって」

 

 ヒビキが、恐る恐るといった様子で話し出す。それを聞いてグリンとヒビキの方を向く。ヒビキが小さく、悲鳴を上げる。

 

「理由? もしかして、私のレベルが足りてないから……装着可能レベルを教えてください!」

「いや、悪いがそういった問題ではなくてだね……もっと現実的な問題なんだ」

「お金? それならさっきグランが払ってくれるって言ったじゃん!」

 

 ……いや、確かに払うとは言ったが、何故モモイが得意げなんだ。

 

「……お金の問題でもないよ」

「現実にお金以上の問題なんて無いでしょ!」

 

 まぁこれはモモイの言う通りだな。これは持論だが、よく金で買えないものがあるという。愛とか幸せとか友情とかだ。だが、そういったものは金に余裕があること前提の物ばかりだと思う。金があり生活に何一つ不自由がない状態になって人はそれらを手に入れられるようになる。私はそう思う。

 と、まぁ持論を述べたわけだが、結局何が言いたいかというと……。

 

「金でないなら何が問題だ?」

 

 ウタハの方に改めて向き直る。

 

「この武器は、個人で運用するには大きくて重すぎる」

「あぁ、そういう……」

「なんと、基本重量だけで140キロ以上です! さらに光学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200キロを超えます!」

 

 あ、そういう問題か。しかし、その話を聞くと渡せないというのも納得できる。俺なら絶対にもてないな。

 

「これをカッコイイと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。持って行けるならば、本当にあげたいところなのだけど……」

 

 ウタハはそう言いながら少し悲しそうな表情する。

 

「……? ……! 汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」

「ん? この子、また喋り方が……」

「た、多分ですが、『本当なのか』って聞いてるんだと思います」

 

 ミドリがアリスの言葉を翻訳してウタハに伝え直す。

 

「もちろん嘘は言っていないが……それはつまり、アレを持ち上げるつもり、ということかい?」

 

 ウタハの言葉を聞いてアリスはこくりと頷く。そしてアリスはゆっくりレールガンに近づいて手を伸ばす。

 

「おい、アリス。別に無理はしなくてもここなら他にも良い武器は手に入るぞ?」

 

 俺の言葉に首を振るアリス。……どうしてもこの武器が欲しいのか……。

 

「この武器を抜く者……此の地の覇者になるであろう!」

 

 アリスがレールガンを掴んでグッと力を入れる。大丈夫だよな……、凄く心配なんだが。後ろで見てた先生もさすがに心配なのかこちらに寄ってくるのを止める。俺達でも危険なレベルの重量、先生が下敷きになったら大変だ。

 

「ふっ……」

「無理はしない方がいい……クレーンでも使わないと持ち上がらな―――」

「んんんんんんっ……!」

「……まさか」

「えぇぇっ!」

「おいおい、ウタハ。持ち上がったよ」

「も、持ち上がりました」

 

 俺も、ゲーム開発部も、エンジニア部も驚愕の顔で光の剣を抜いたアリスを見ていた。その様は……確かに覇者、いや、勇者のようだった。

 

 




 
 自分、アビドススナオオカミとか、ゲヘナシロモップとか、アビドスユメモドキとか生徒に学名風の呼び名つける奴好きなんですよ。ということで活動報告の方でグラン君の学名を大募集します。いつか、生態紹介系の回も書きたいので皆さまのご協力よろしくお願いいたします。
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