◎・エンジニア部 部室・
光の剣を抜いたアリスを見たヒビキが思わず声を漏らす。
「嘘……信じられない……」
「えっと、ボタンは……これがBボタンでしょうか?」
「ま、待って……!」
アリスがキョトンとした顔でトリガーらしき場所に指をかける。ッ!
「全員伏せろ!」
「っ、光よ!!」
ドカアアァァァァァン!!
瞬間、聞こえる轟音と眩しい光。それが収まった後視界に入ったのは青空だった。……いい天気だなぁ。
「ああああっ! わ、私たちの部室の天井がぁっ!?」
「……すごいです。アリス、この武器を装着します」
吹き飛んだ天井を見て、コトリは絶叫し、アリスは笑顔を浮かべていた。同じ景色を見ているはずなのにここまで違う表情を浮かべられるんだな、人って。
「ほ、本当に使えるなんて……で、ですがそれだけは、その……! 予算とか諸々の問題で、できれば他のでお願いしたく……!」
「おいおい、使えるなら持ってても良いんじゃなかったのかコトリよぉ~」
「ぐ、グランさん! でも、それは……その……」
なにやらアリスに懇願し始めたコトリの方に腕を回して文句を言う。
「おいおい、なんでもって言ったのはそっちだしアリスはしっかりとその武器を扱えるのを証明したぞ。それに予算の問題じゃないと言ってたじゃないか……。今更予算を引き合いに出すんじゃァないぜ」
そうネチネチと言いながらコトリのスカートの肩紐を上に引っ張る。驚いたコトリは急いでスカートを抑える。
「ちょ、ちょちょちょちょちょちょ!スカート上げないで下さいグランさん!」
「はっ、だったら制服はちゃんと着るこったなぁ! 一体どんな訳でこんなかっこうしてるのか解説してもらおうか!」
「う、ウタハせんぱぁぁい!」
あ、ズリィ。ウタハに助けを求めやがった。
「……はぁ、グラン。コトリをいじめるのもそこまでしてくれ。レールガンに関しては構わないさ、持って行ってくれ」
よし。ウタハから言質はとったのでコトリのスカートから手を離す。……いやー、コトリはやっぱ弄ると良い反応して楽しいわー。
「って!」
「……」
突如脇腹に鋭い痛みを感じて確認すると俺にしか見えないようにしてウタハがむくれ顔でつねってきていた。ああホント、普段は女子生徒からも人気の癖に時たまこういう顔をするからずるいよなぁ。
「ウタハ先輩……本当に良いんですか?」
「ああ、どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね」
ミドリに声をかけられて振り返って返事するときには既にいつもの顔に戻っていた。
「ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ」
「分かった。……前向きに考えると、実戦データ取れるようになったのはありがたいかも」
そう言って、ヒビキは作業の準備に入る。その様子を見ていたモモイはアリスに抱き着いて喜び合っている。
「うわ! 何だか物凄い武器を貰っちゃったね! ありがとう!」
「あ、ありがとうございます!」
モモイとアリスがそう笑顔でお礼をするとウタハは何やら怪しげな笑みを浮かべながら別の倉庫の方に近づいていく。
「いや、お礼にはまだ早いさ」
「え?」
「さて……ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとUNAC、全機出してくれるかい」
「……うん」
ウタハの言葉にヒビキは一度、準備をやめてその場を離れる。それにしてもUNACか……。かなりの速度で普及しているようで何よりだ。何か場の空気が変わったのを感じ取ったのかミドリが身を固くする。
「えっと……ウタハ先輩? なんだか展開が可笑しい様な……」
「これってもしかして、『そう簡単に武器は持って行かせない!』みたいなパターンじゃない!?」
「なんで少し楽し気なんだお前は」
モモイが笑顔で話しているのに思わず突っ込みを入れる。
「その通りさ。その武器を本当に持っていきたいのなら……」
「私たちを倒してからにしてください!」
そう言ってエンジニア部の面々が武器をもって立ちはだかる。それと同時にセッティングが完了したのか後ろの倉庫の扉が開いて中からUNACやドローンが出てくる。
「!」
「ええっ! そんな、ウタハ先輩どうして!?」
「ぶ、武器一つの為にここまで……?」
「他の武器なら、喜んで渡しただろうけど……。その武器については、確認が必要かなと思ってね」
「か、確認?」
ウタハの言葉にミドリが聞き返す。
「いや……『資格』と呼んだ方がふさわしいかな」
「資格? それって……」
「よくゲームである奴だろ? 『勇者』が伝説の武器を手に入れるのに必要なやつ」
「勇者……」
俺の言葉を聞いたアリスは数舜何か考えるようにしたあと顔を上げて宣言する。
「はい! アリスは勇者になります!」
「よく言った。 構えろゲーム開発部! 先生、指揮頼んだ! UNACは半端な製品じゃないからな!」
「任せて!」
―オペレーション開始します―
無機質な機械音声と共にUNACが起動して攻撃してくる。俺は近くに居たアリスを抱えて一度障害物の所までジャンプする。相手のUNACは……ライフル装備の汎用射撃型とスナイパーライフル装備の遠距離型か。
「先生! 相手は中距離汎用型と遠距離特化型UNAC、それから警備ドローン多数だ!」
「了解」
UNACは射撃をしながらじりじりと距離を詰めてくる。先生は倉庫内の別の部屋に隠れて指揮を出す。腐ってもエンジニア部の倉庫だ。対弾性能は十分だろう、先生を守る必要はなさそうだな。
「グラン、前衛。相手を倒さなくても良いよ! モモイとミドリはアリスの援護に集中して! アリス、レールガンチャージ、最大出力準備!」
先生の言葉を聞いて行動を始める。アリスの頭を撫でてから障害物から飛び出す。倉庫内ということもあり足場は多い。オールドキング戦の時のように縦横無尽に跳び回る。
「流石にこの動きはまだ学習していないか」
跳び回る俺に大して銃口が全く追いついていない。UNACも俺の方をより脅威と認定したのか俺ばかり狙ってくるようになり、アリス達のほうには攻撃をしなくなった。ドローンたちは俺の脇を何機か抜けていくがそこには連携抜群の才羽姉妹が待ち構えている。
「いっくよーミドリ!」
「うん、お姉ちゃん」
才羽姉妹の攻撃でドローンは次々と落とされていく。やっぱりあの二人は揃うと強いな。ん?
「整備完了、作動開始。これがミレニアムの猛獣だ」
「オーバークロック、ファイア!」
一気に弾幕が濃くなり被弾が増える。原因を探ればウタハが自身の持つサブマシンガンとあの……なんの玉座だったか?の二門のガトリングが火を噴いている。それにコトリがUNACに大して防御シールドを展開した。削れないな、これはアリスの火力にかけるしかないか。
「随分本気だな? ウタハ」
「私はいつでも君に本気だよ」
「くくっ、嬉しいことだな」
軽口を言いながら攻撃の応酬、ウタハの隣に居るコトリの視線が大分痛いな。まぁ、仕方がない。俺の仕事は時間稼ぎだけだ。……ん? アレは……。
「それなりに、大変なことになるかも?」
「大変なことになるに決まっておろうがぁっ!」
ヒビキがまさかの迫撃砲の準備をしていた。冗談だろうと思いたかったが、うん。駄目だ、冗談じゃないな。
――ドヒュゥ! ドヒュウ!――
くっそ、思いっきり撃ちやがって! ちっ、前線から離れるが一度離脱を……、あれ?
「っあ゛!」
「なに……?」
「グラン!?」
「『お兄様』!?」
離脱しようとして足に力を入れたがいざ跳ぼうとした瞬間、ふっと今まで足に貯めていた力が霧散した。その結果大して移動することはできずにヒビキの迫撃砲をモロに喰らう。そうして大きく吹き飛ばされた。そんな俺の様子を見てウタハが怪訝な表情をして先生とアリスが心配の声を上げている。というか、今呼び方変じゃなかったか?
「ったく……迫撃砲とは相性が悪いのか、俺は……」
仰向けに吹き飛ばされた状態から上半身を起き上がらせる。悪態をついて余裕を演出する。が、不味いな……右足に力が入らなくなってる。立ち上がろうとしても義足の左足だけが反応して右足が追い付かない。
「モモイ、ミドリ! 敵UNACに攻撃を集中! グランの援護を!」
「おっけー!」
「関節部を狙って……ドットを打つように緻密に……!」
モモイが派手に乱射してヘイトを集めてその隙にミドリが正確にロボットたちの関節を撃ち抜いていく。そうしているとアリスが声を上げる。
「魔力充填100パーセント…行けます!」
「よーし、やっちゃえアリス!」
「アリスちゃん、お願い!」
「目標、敵UNAC。アリス派手に決めちゃって!」
モモイ、ミドリ、先生の声を受けてアリスはしっかりと武器を構える。ちらりと、アリスが俺の方を見る。
「やれ、アリス」
俺がそういうとアリスは所謂キメ顔になりトリガーに指をかける。
「ターゲット確認!出力臨界点突破! 光よ!」
レールガンから眩い光が溢れ出し、飛んでいく。光はコトリのシールドごとUNACを吹き飛ばした。
火力……やっばいなぁ。
アリスにお兄様って呼ばれたら全力でお兄様を遂行するしかないよな!!
活動報告にてグランくんの学名風あだ名を募集してます。よろしければご参加下さい。