シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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80話

◎・ゲーム開発部 部室・

 

 エンジニア部から銃を入手してゲーム開発部の部室に戻ってきた俺たち。部室に入るとモモイはすぐさま寝ころんでゲーム機に手を伸ばす。

 

「さてっ、もう廃部の危機は免れたんだし、安心してゲーム三昧できるね! じゃあアリス、今日はレイドに行こう! 準備できてる?」

「攻略法は把握しました。レイド専用装備も獲得済。【初心者歓迎/「燃える森」へ遠征/4人/ヒーラー、遠距離アタッカー募集】で告知。あっ、【Perorochan32さんが合流しました】」

 

 モモイの言葉にアリスは素早く準備を整える。……おい、それでいいのか?

 

「ちょ、ちょっと気を緩めるには早くない!? ユウカにはもう言ったの? 部員が4人になったから、部の資格要件を揃えたって」

 

 ミドリが心配の声を上げるが、アリスとモモイはその声にまともに取り合おうとはせずゲームに熱中する。

 

「もっちろん、それで今日の午後に、アリスの資格審査に来るって……あっ、アリス! それブレス攻撃の呼び動作!」

「危険を察知、バリアの魔法を展開します!」

 

 アリスの操作するキャラはバリアを正面に展開して見事に攻撃を防ぎ切った。そしてアリスが褒めて褒めてというようにこちらに振り返ってきたので頭を撫でる。

 

「今は現実の方が危険だよ! 資格審査って何!? そんなの初めて聞いたんだけど!? その『資格審査』に、私たちの部の存続がかかっているのに……呑気にレイドバトルしてる場合じゃないでしょ!?」

「心配し過ぎだって、アリスの準備についてはもう完璧なんだし。」

 

 モモイが自身満々に答える。俺は先生の方を向くが、先生も首を傾げる。やっぱりそんな風に練習している様子はなかったか。

 

「え、そうなの?」

 

 ミドリも知らんとか、ホントに大丈夫なのか?

 

「アリス、自己紹介を!」

「私の名前はアリス・ザ・ブルースカイ、ドワーフ族の槍騎士。使用武器はガンランス『火竜の牙』、出身地は鋼鉄山脈。幼い頃、魔族の襲撃により家族を失って、燃え上がる鉱山の中へと単身入り込み……」

「それゲームの設定じゃないか?」

 

 思わず口を出してしまった。

 

「そうだよ! アバターのプロフィールじゃなくて、アリス自身の!」

「あ、理解しました」

 

 俺とモモイの言葉にアリスは自分の勘違いに気づいたようだ。

 

「私の名前はアリス、ミレニアムサイエンススクールの1年生。最近転校してきたばかりで受講申請のタイミングを逃してしまったため、まだ授業の登録が出来ていない状態なのですが、来月から正式に授業へ参加する予定です。授業にはまだ参加できなくても、部活動への参加は可能とのことでしたので、ゲーム開発部に入部しました」

「あ、結構それっぽい」

「良く出来たなアリス」

 

 アリスの頭をポンポンと撫でる。

 

「ゲーム開発部で担っている役目は、タンク兼光属性アタッカー……」

「違う違う、役割はプログラマー!」

「ぷ、プログラマーです! 生まれたときから、母国語より先にJavaを使っていまして……」

「そ、それは無理があるんじゃないかな~」

 

 かなり無理のある設定に今まで静観していた先生も苦笑いでそう言う。それもそうだろう。母国語よりも先にって……。これ、本当に大丈夫か……?

 

 

◎・ゲーム開発部 部室 午後・

 

「……あり得ないわ」

 

 怪訝そうな顔を浮かべたユウカはモモイからの話を聞いてそう言い放った。

 

「ゲーム開発部に新入部員が入ったなんて、あり得ない……!」

「残念だけど、事実だよ!」

 

 そんなユウカとは正反対にしたり顔で宣言するモモイ。

 

「ユウカ……」

「……?」

 

 疑いの目をアリスに向けるユウカ。その様子を心配そうに見るミドリと不思議そうに見つめ返すアリス。するとユウカは何を思ったのかフッと笑みを浮かべる。

 

「あなたが、噂のアリスちゃんね。ゲーム開発部に入った4人目のメンバー。ふーん、ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握していると思ってたけど……私がこんな可愛い子のことを知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね」

「人の妹に色目を使うんじゃない」

 

 そっとアリスを自分の後ろに隠す様にしてユウカから遠ざける。

 

「い、色目なんか使ってないわよ!」

 

 声デッカ。

 

「第一に、代表の妹ってどういうことよ! 名字も顔も全然違うじゃない!」

「家族とは血の繋がりをだけを言うのか? 俺はそうは思わない。慈しみ合う心が人を家族にするんだよ。血はその助けに過ぎない。血が繋がっていてもダメな奴等もいるしな……

 

 脳裏に思い浮かぶ自身の家庭。……ほんと、ままならないな。

 

「ま、まぁ、アリスちゃんが代表を兄と呼んでいるのは良いとして……。最初私が部室に入ってきたときこの子、私のこと『妖怪』って言ったわよね!」

「か、勘違いだよ! 『妖精』って言ったのを聞き間違えたんでしょ、もう、アリスは嘘がつけないんだからー」

「くっ……悪役には慣れているとは言え、まさか初めて会う子に妖怪扱いされるだなんて」

 

 ……哀れ、早瀬ユウカ。会計責任者は往々にして嫌われるものだが、まさか妖怪とは……。

 

「良い度胸してるじゃない……!」

「お、落ち着いて! 生徒会が個人的な感情を挟んじゃダメでしょ!? とにかく、部の規定人数は満たしたよ! これでゲーム開発部は存続ってことでOKだよね?」

「存続……。確かにそうね……この子が本当に、自分の意思でここに来た部員だったら、の話だけど」

 

 ユウカの言葉にモモイが緊張した表情を見せる。ここからが本番だな、アリスがボロを出せば折角の今までの努力がパァになる。

 

「本来の部員の加入を申告すれば、それだけで良かったのだけれど……。最近は部活の運営規則も少し変わって、もう少し厳しく確認する必要が出てきたの。だからねアリスちゃんに簡単な取り調べ……あら、思ってもない言葉が……」

「おい、若干白々しいぞ」

「……ふふ」

 

 俺の言葉にユウカは意味深な笑みを浮かべる。あぁ、黙っていろってことか。

 

「じゃあ、いくつか簡単な質問をするわね。そんなに時間はかからないわ」

「……(ゴクッ)。せ、選択肢によっては、バッドエンドになることもありますか?」

「バッドエンド……まぁ、そういうこともあるかもね。それじゃあ……アリスちゃん。質問を、始めるわ」

 

 ユウカはアリスに目線を合わせるように屈む。

 

「……アリスちゃん。もしゲーム開発部に脅されて仕方なくこの場にいるのなら、左目で瞬きをして」

「……?」

「ちょっと、最初から何その質問!? 小声で言っても聞こえているから! っていうかそんなことしないって!! ほら見て、このまぶしい学生証を! ミレニアムの生徒だっていうまごうことなき証明!」

 

 モモイが、アリスに近づいてアリスの胸元にある学生証を引っ張ってユウカに見せつける。

 

「ふーん……確かに、生徒名簿にアリスちゃんが登録されていることも確認したけれど……。私は、そんな簡単に騙される女じゃないわ」

「(ビクッ)」

「(ば、バレた!?)」

 

 今の発言録音しておきたかったな。そしてシャーレに当番で来た時に流してやりたい。『私は、そんな簡単に騙される女じゃないわ』キリッ! てな。……ノアに送っても良かったかもな。惜しいことをした。

 

「さて、それじゃあ取り調べを再開しましょうか」

「取り調べって言った!」

「もう隠すつもりないじゃん……」

 

 先生とモモイが、同時に突っ込む。

 

「アリスちゃん、あなたがゲーム開発部に来た切っ掛けは何?」

「気が付いた時はすでにここに、ではなく……」

 

 おいおい、初回から結構不味くないか?

 

「モモイ、なんでそんなにアリスちゃんを睨んでいるわけ? やめてあげなさい」

「えっと、『魔王城ドラキュラ』がやりたくって……それで、ゲーム開発部の存在を知って……」

「ふーん……そうなの」

 

 アリスはすぐに元々用意していたカバーストーリーを話し出してひとまずユウカの追求を躱した。

 

「でもここはレトロゲーム部じゃない、あくまでもゲーム開発部。つまり、あなたもゲーム作りに参加するということよね? 何を担当するの?」

「タンク兼光属性アタッカー……」

「えっ?」

 

 あー、これはダメかもしれない。俺はユウカからは見えないようにしながら上を向いて顔を手で覆う。

 

「じゃなくて、えっと、ぷ、ぷ、ぷ……プログラマすです!」

「……はい? プログラマー、じゃなくて?」

「あ、はい。そうです、その通りです。間違いなく私は完璧なプログラマーです」

 

 視界の端で、モモイが焦った顔をしているのが見える。

 

「プログラマーね……すごく難しい役割だと聞くけれど」

「はい、そ、そうです。ぷ、プログラマーは大変です。たまに過労で、意識を失ったりもします」

「な、なんですって!?」

 

 あー、これはダメかもしれない。(2回目)というか、先生アンタ何後ろで腕組み理解者ヅラしてんだ。あれか? 『プログラマーではないけど私も過労で意識を失うよ』って言いたいのか? ……そのたびにセリナやワカモが先生を自宅まで送っているらしいのだか、あの二人はほんといつの間にかシャーレに居るよな、シャーレのセキュリティはそれなりに高いはずなんだけど。

 

「それでも大丈夫です!」

「いや、大丈夫じゃないでしょ……ちゃんと休みなさいよ……」

「宿屋で寝て起きるか、聖堂にお金を払えば、仲間たちと一緒に復活できます!」

 

は?

 

「そっそんな訳ないでしょ!?」

「そんな訳ないのですか……? 常識のはずですが……もしかして、『英雄伝説』や『聖槍伝説』をご存じないのですか? 本当に神ゲーですよ」

 

 あぁ、そうか。アリスはゲームで常識を学んだから、『人間』が復活するものだと思っているのか。そっか、そうなのか。……これは後で少し『お話し』した方が良いかもしれない。アリスが取り返しのつかないことをする前に。

 

「終わった、全てが……」

「……」

 

 アリスの言葉に絶望するモモイ。一方ユウカは何かを考えこんでいる。

 

「……ありがとう、分かったわ。短い時間だったけれど、アリスちゃん。あなたの事については概ね理解できた」

 

 ユウカはゆっくりと目を開きながらそういう。

 

「それで? 結果は?」

「ちょっと怪しいところはあるけれど……ゲームが好きだってこと。それに、新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなんだってことは、十分伝わってきた……。そんなあなたがゲーム開発部の部員だというのは、何も不思議なことじゃないわ」

 

 お。

 

「え……?」

「っていうことは!?」

「規定人数を満たしているので、ゲーム開発部を改めて正式な部活として認定……部としての存続を承認します。」

 

 おぉ! 

 

「やったぁ!」

「良かったぁっ!」

「そ、そしたら部費も貰えるし、このまま部室を使っててもいいんだよね!?」

「ええ、もちろんよ。『今学期』までは……ね」

 

 そんなにうまい話はないか……。

 

「わーぃ……え?」

「な、な、なんで!?」

 

 モモイとミドリは驚愕の余りユウカに詰め寄る。ユウカの奴なんか若干詰め寄られて笑ってないか? アリスに対しての色目だったり、今の笑いと言い……ロリコンか?

 

「どうして! 規定人数も満たしたのに!?」

「あら、知らなかったのかしら。今は部活の規定人数を満たすだけでなく、同時に部としての成果を証明しないといけないの。もちろん、最近急に変わった要件だから、猶予期間はあるけれど……。その期間は今月末まで。今月中に結果を出せなければ、あなたたちの部はたとえ4人いても400人いても、廃部になるのよ」

 

 あぁー。そういうことか。それにしてもそんな重要なことをなぜゲーム開発部は知らなかったんだ。

 

「嘘だ、あり得ない!」

「あり得るの! この間、全体の部長会議でちゃんと説明した内容なんだから」

 

 そうなのか。なら余計にどうしてモモイ達は知らなかったんだ?

 

「ただ、あなたたちの部長、ユズはそこに参加してなかったけれど」

「!?」

「そういうことか」

「つまり、あなたたちの責任よ」

「くっ……卑怯者め!」

「『鬼』とかならまだ分かるけど、規則通りに事を運ぶことの何が『卑怯』なのよ……」

 

 正論過ぎるな。モモイの講義も虚しく、ユウカにバッサリと切られる。

 

「正直な所アリスちゃんの正体も怪しいし、本当なら今日すぐに退去を要請しようかとも思っていたけれど……」

「!?」

「……正体はさておき、ゲームが好きっていう純粋な気持ちは本物だと思った。猶予を与えたのは、その気持ちに相応しい成果がキチンと出せることを期待してるからよ」

 

 そこまで言うとユウカは目を細めて笑う。

 

「モモイ、あなた言ったわよね? ミレニアムプライスで、びっくりするぐらいの結果を出して見せるって」

「それは、そうだけど」

「新しいメンバーも増えたことだし、前よりもちゃんと面白いゲームが作れるんでしょうね? それじゃあ、楽しみにしてるわよ。じゃあね~」

 

 そう言ってユウカは部室を出ていった。あとに残されたのは、呆然としたゲーム開発部と部室に響く静寂のみだった。

 

「さて……これからどうすることやら」

 アリス知ってます! それを言うと話が終わって次回に続くんです!」

 

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