シャーレの部長はブラックマーケットの代表   作:四脚好き

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84話

◎・ミレニアム ヴェリタス部室・

 

 唖然とするゲーム開発部相手にハレは机の上にあったエナドリを取って説明しだす。

 

「メイド部はミレニアム最強の武力集団。どうして『最強』と呼ばれているのか……それはもちろん、素晴らしいエージェントのメイドが揃っているからというのもあるけれど……何より大きいのは、『彼女』の存在」

「……メイド部の部長、コールサイン・ダブルオー……美甘ネル先輩」

「……そう」

 

 ハレの話の途中でミドリが思い当たる人物の名前を上げる。そり言葉を聞いて、ハレはエナドリを一口を口に含んでから肯定する。

 

「けど、今彼女は――

 

◎・ミレニアム自治区、セミナー所有ビルの屋上・

 

「ね、ネル先輩がいない!?」

 

 アカネの言葉を効いて思わずユウカは立ち上がる。力が入りひしゃげたコーヒー缶がユウカの驚きようを如実に表していた。

 

「はい、ミレニアムの外郭に個人的な用事があるそうでして。ですが、ご心配なく」

 

 そこまで言ってアカネは一口紅茶を含んでから目を細めるて語りだす。

 

「厳密に言うと私たちのリーダーは守ることより『壊すこと』に特化した人ですから。もちろん、リーダーがいる時のC&Cが一番強い……というのは紛れもない事実です。ただ、『守る』ことに関しては……もしかしたら、私たちだけの方が良いかもしれません」

 

 苦笑いをして再び紅茶に手を伸ばすアカネ。しかしカップの中は空になっていることに気が付いたアカネは、カップを脇に置いて立ち上がる。そしてユウカに正面から向き合いカーテシーをする。

 

「ではあらためまして、依頼はお受けします。約束の時間まで、ゲーム開発部を生徒会の差押品保管所に近づけないこと……お約束いたしましょう」

 

 礼をしたアカネの眼鏡が妖しく光った。

 

 

◎・ミレニアム ヴェリタス部室・ 

 

「正面衝突を避けて、『鏡』だけを奪って逃げる……うーん……」

「……やってみよう、お姉ちゃん」

 

 ハレの説明を聞いて悩むモモイ。そんな姉の背中にミドリは静かに話しかける。

 

「ええっ!? でもネル先輩がいないからって、相手はあのメイド部だよ!?」

 

 モモイは思わず振り返ってミドリの顔を見る。

 

「分かってる、でも……このままゲーム開発部をなくすわけにはいかない。ボロボロだし、狭いし、たまに雨漏りもするような部室だけど……もう今は、私たちがただゲームをするだけの場所じゃない」

 

 ミドリはそこまで言ってから目を閉じてから深呼吸をする。そして目を開いて姉の顔を真っすぐと見据える。

 

「……みんなで一緒にいるための、大切な場所だから。だから、少しでも可能性があるなら……私はやってみたい。ううん、もしメイド部と対峙することになっても、それがどれだけ危険だとしても……! 守りたいの。アリスちゃんの為に、ユズちゃんの為に……私たち、全員のために!

「ミドリ……」

 

 ミドリの言葉にモモイは目を潤ませる。そんなモモイにアリスが近づいてモモイの手を握る。

 

「私たちならできます。伝説の勇者は……世界の滅亡を食い止める為に、魔王を倒します。アリスは計45個のRPGをやって……勇者が魔王を倒すために必要な、一番強力な力を知りました」

「一番強力な力……レベルアップ? あ、装備の強化?」

「盗聴ですか?」

「EMPショックとか!?」

「魔剤」

「怨恨とかか?」

「ち、違います……」

 

 アリスはモモイ、コタマにマキ、ハレとグランが上げた物に若干引きながら否定する。気を取り直してアリスはモモイに笑いかけながら口を開く。

 

「一緒にいる仲間です」

「アリス……。うん、よし」

 

 モモイは数舜考えこんだ後に自身の頬をひっぱたき気合を入れる。

 

「やろう! 生徒会に潜入して、『鏡』を取り戻す! ハレ! なにか良い計画とかない!?」

「任せて。ただその計画を実行するには……いくつかの準備が必要だね。さっき言っていた盗聴もそうだし、EMPショックもそう……それに……。あとはやっぱり『仲間』かな」

 

 そこまで言い切ったハレは先生の方を見る。突然先生の方を見つめだしたハレをモモイは疑問に思いながら自分も同じように先生を見てみる。

 

「そう、『仲間』 でも、私たちはそんなに親しい仲ってわけじゃないから……先生にお願いしないとね」

「私にできることなら、任せて」

仕事(シャーレの部長として)

 先生もハレとモモイをしっかりと見つめ返して胸を張り答える。

 

「うん。恐らく彼女たちの力無しに、この作戦は成立しない。頼んだよ先生」

 

 

◎・ミレニアム エンジニア部室・ 

 

「なるほど、それは確かに的確な判断だ。君の言う通り、その方法なら私たちじゃないと難しいだろうね。うん、分かった。協力しよう」

 

 作戦の概要の説明を受けたウタハは何度も頷いたあと、作戦への参加を表明した。

 

「ほ、本当に良いんですか? エンジニア部は実績もたくさんありますし、こんな危ない橋を渡る必要は……」

 

 ミドリは驚いた後、困り顔でウタハに再び問いかける。

 

「そうだね。そうかもしれない」

「それなりにどうして、メイド部と戦うなんていう危険な計画に乗ってくれるんですか?」

「それは……」

 

 ミドリの質問にウタハが答えようとしたときウタハの後ろから他のエンジニア部の面々が出てくる。

 

「うん、その方が面白そうだから、かな」

「そうです! それに私たちも、もっと先生と仲良くなりたいですから!」

 

 ヒビキとコトリがきゃいきゃいと先生の方に群がる。そんな中ウタハは笑みを携え静かにアリスに近寄る。

 

「そうだね、それと……」

「?」

「……?」

 

 ウタハは自身のを不思議に見上げるアリスを見てフッ、と声を出して笑う。その後誤魔化す様にグランの方に向くウタハ。

 

「好きな男に頼られるのは悪くない」

「……俺はいつもお前に頼っている気がするが?」

「それは仕事関連(『ODI ET AMO』の長として)だろう、それ以外で頼ってくれたのが嬉しいんだ」

「……これも仕事(シャーレの部長として)だが」

 

 ウタハの言葉に目を細めてそう返答するグラン。それを聞いた後ウタハはニタリと笑いグランの腕に抱き着く。

 

「それじゃあ、個人としても(本当のグランにも)頼ってもらえるように努力しないとね」

「……期待してるよ、ウタハ」

 

 互いに挑戦的な笑みを浮かべるウタハとグラン。そんな様子をみたアリス以外のゲーム開発部は顔を赤くして、エンジニア部は親類の雌の顔を見てしまった時のような微妙な表情をしていた。

 

「お、大人だ」

「ウタハ先輩ってあんな顔するんだ……」

 

◎・ミレニアム ヴェリタス部室・ 

 

「これで、メンバーは揃ったよね?」

「うん、準備も出来てる」

「よしっ! あ、そういえば、作戦はいつ始まるの?」

 

 モモイがハレにそう確認する。モモイの言葉を聞いたハレは手元のタブレットを操作しながら答える。

 

「いつ……? もう始まってるよ」

 

◎・ミレニアム自治区、セミナー所有ビルの屋上・

 

「あ、一つだけ質問をしたいのですが」

「どうしたの?」

 

 話がひとまとまりしてユウカが屋上を後にしようとしていた時その背中にアカネが声をかける。

 

「ゲーム開発部とヴェリタスが生徒会を襲撃する……そのことを、あなた達はどこから知ったのですか? 情報戦に関して、ミレニアムでヴェリタスを超える集団はいないと思っていましたが……」

「……その通りよ」

 

 アカネの質問にユウカは静かに答える。

 

「だから、ヴェリタスが教えてくれた。それだけの話」

「……はい?」

 

 ユウカの発言にアカネはポカンとしてしまう。

 

「私たちにヴェリタスとゲーム開発部がやってくることを教えてくれたのは……ヴェリタスの部長、ヒマリだもの」

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