全スタンドの能力を持つ俺がヒーローとヴィランの間で揺れ動く 作:八木小太郎
事の始まりは中国、とある病院で発光する赤子がうまれたことだった。それ以来、多くの人々が特異体質となった。超常は日常となり、今や全人口の8割が「個性」と呼ばれる特異体質を持つ世界となった。
そして俺は気づけばそんな世界に転生していた。しかも俺の大好きな漫画ジョジョの奇妙な冒険に出てくるすべてのスタンドの能力を身に着けて。
転生したは良いものの、この世界で俺は孤児だった。物心ついた時にはすでに孤児院にいた。別に親に捨てられたりしたわけではないらしい。どうやら両親ともにヴィラン、個性を悪用した犯罪を行ったもの、だったらしく俺を産んですぐに刑務所に入れられたようだ。
このことは孤児院の職員から聞いた。まだ小さい子供に親がヴィランだと伝えるのは酷だと思ったのかはじめは言うのを渋っていたが、親がどんな人か知りたいとしつこく迫ったら教えてくれた。
親がヴィランであると知っても特にショックを受けるとかいうことはなかった。顔も見たことがない覚えていない相手であるし、自分には転生する前の両親の記憶もあるため今生の親をあまり家族と認識していないからだ。
ただ一つだけこの話で厄介なことがおこった。センシティブな話であることから当然この話は職員と二人きりで行われたのだが、内緒話に興味をそそられたのか施設にいるひとりのいたずら小僧が盗み聞きをしていたのだ。そしてそのいたずら小僧はその話を施設中に言いふらしてしまった。
それから俺に対するいじめがはじまった。とはいっても対してつらくはなかった。施設にいるのはまだ幼い子ばかりだ。そんな子供がいくら悪口を言ってきたとしても俺の目にはかわいらしいものにしか思えなかった。これがもう少し成長していたとしたらもっと深厚ないじめが行われていたのかもしれない。それを考えると運がよかったと思う。
ただいじめの一環で物を隠されるのには困ったものだった。この世界について知るために様々な本を読んでいたのだがそれを隠されたり、みつけたと思ったら落書きがされていたりと大層ないたずら具合であった。どうしたものかと頭を悩ませていたらある日転機が訪れた。
孤児院の寝室、たくさんのベッドが並べられた部屋には子供たちの寝息が聞こえている。そんな中俺はベッドに横になってどうするかを考えていた。職員が子供たちを注意してはくれるが四六時中監視できるわけではない。実際嫌がらせは職員の目を離したときに行われていた。もしも俺が暴力的に反撃に出たとするならばいじめは止まるだろうが、さすがに子供に暴力をふるうのはためらわれた。
(もしも俺がヘブンズドアーが使えたらおのガキどもに速攻で書き込んでやるのに・・・)
そう考えた瞬間だった。突然左手の感覚がなくなった。慌てて飛び起きて左手を見る。
(なんだ!何が起こった?)
そこにはまるで本の様になった手があった。それはまさしく俺の知っている光景、ヘブンズドアーを使われた時のものだった。心臓の鼓動が速くなり息も浅くなる。震えるもう片方の手でページをめくり文字を読んでいく。そこには俺の情報がずらりと載っていた。次々とページをめくっていく。そしてあるページが目に留まった。
そこに書かれていたのは俺の個性に関する情報だった。
(「知っているジョジョのスタンドの能力を再現できる個性」!)
この文章を読んだときとても興奮したのを覚えている。俺の大好きなジョジョ、その能力を使えるなんて!と。ただそこで後悔もした。”知っている”ことが条件ならそれ以外のスタンド能力は使えないということだ。前世で俺はまだジョジョを読んでいる途中だった。ちょうど5部が終わったところまでだ。つまり6部以降のスタンドを俺は使えないということだ。そのことを十分に悔しがったあと、早速さっき考えていたことを実行しようと思った。周りの子供たちを起こさないようにそぉーっとベッドを降りる。そのままペンを手に取り、俺と職員の話を盗み聞きしていた奴のところへ向かう。
(ヘブンズドアー!)
俺が心の中で叫びながら触れるとその部分が本に変わる。じっくりと読み込んでみたい気もするが時間がない。開いたページに”傍立共行(そばたち ともゆき)へのいじめをやめる、また今までのことへの謝罪を行う”と書き込む。
これでいいはずだ。俺はにやりと笑みを浮かべた。その勢いのまま他の子どもたちへも同様に書き込んでいった。そして次の朝、俺が謝罪を受けたのは言うまでもない。すべての子供に書き込んだ後、再びベッドに横になりながら俺は思った。
(この世界を、スタンド能力と共に思うがままに生きてやる!)と。