全スタンドの能力を持つ俺がヒーローとヴィランの間で揺れ動く   作:八木小太郎

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第2話

 個性が目覚めた夜から数年、俺は中学生になっていた。目覚めた個性に関しては素直に「スタンド」としておいた。個性届には”スタンドっぽいことが出来る”と書かれている。当然スタンドとはなにかと聞かれたがなんとなく心にうかんできたとごまかした。

 

 そんな俺だが中学校生活は順風満帆だった。今世の俺は顔が良かった。イケメンってやつだった。それに加えて勉強もできた。一応前世では大学生をやっていた。いまさら中学校レベルの勉強は苦にならない。そして極めつけが個性だ。様々なことが出来る強個性。学校で俺以上の個性を持つ奴は存在しなかった。だから俺は女子から人気だった。そのことは純粋にうれしかった。ただある日、それが原因でこの出来事が起こった。

 

 

 

 それは唐突に起こった。放課後にとくに用もなしになんとなく校内をぶらついていた時のこと。俺に一人の人物が寄ってくるのが見えた。同じクラスの女子、トガヒミコだった。彼女とは特に接点はなかったはずだが明らかに俺に向かって歩いてきている。どこか様子がおかしいように見えるのは気のせいだろうか。

 

 「何か用?」

 

 問いかけを無視して彼女は依然近寄ってきた。その距離によもや抱き着こうとしているのかと思ったその時、腹部にするどい痛みが走った。

 

 (え?)

 

 下を見れば腹に刺さっているナイフ。いきなりの出来事に思考がうまくまとまらない。彼女がこちらを押してきた。あまり力の込められていないその腕にも簡単によろけてしまい床に倒れこむ。すると彼女は俺にまたがると傷口からあふれる血をチウチウと吸い出した。

 

 (なんだこいつ!とにかく反撃を!)

 

 殴り飛ばしてやろうとにらみつけたとき、気が付いた。彼女は、トガヒミコは泣いていた。口元は血で汚れ、その表情は笑顔だった。それなのに彼女は泣いていた。

 

 その涙を見たとき、腹を刺され、血を吸われているのにも関わらず、俺の目に彼女はただ泣いている一人のかわいそうな女の子に映った。気づけば攻撃しようと振り上げた手で慰めるかのように彼女の頭をなでていた。

 

 腹の痛みに耐え、少しの間彼女の頭をなで続けていた。すると教室のドアの開く音が聞こえた。まずいと思い慌てて能力を発動する。選んだのはメタリカ。磁力を操り鉄分を操る能力の応用でこぼれた血の鉄分を使い俺と彼女を覆って透明にする。ドアを開けた生徒は俺たちに気が付かずに離れていった。

 

 しばらくすると彼女はぴたりと血を吸うのをやめた。

 

 「なんで何もしないんですか」

 

 泣きながら彼女は見つめてくる。

 

 「私しってます。共行くんつよいの。私を吹っ飛ばすくらい訳ないって。それにこの透明になってるのも共行くんがやってるんですよね」

 

 「なんで、なんで優しくしてくれるんですか?」

 

 そういうと彼女はぐずぐずと泣き出してしまった。とりあえずゴールドエクスペリエンスの能力で傷口を癒すと彼女を持ち上げゆっくりと横に座らせた。

 

 「泣いてる女の子は放っとかないたちでね」

 

 立ち上がって彼女にそっと手を差し伸べる。

 

 「よかったら話聞かせてよ」

 

 彼女は泣きながらおずおずとその伸ばした手をつかんだ。

 

 

 

 それから空き教室に二人で移動してから話を始めた。普通であることの強制、抑圧された欲望、たまりにたまった行き場のない思いの結果、今回のような凶行に出たのだろう。

 

 彼女の話を聞いて一瞬迷う。ヘブンズドアーを使うかどうか。もし使えば彼女は普通の少女になれるだろう。彼女の親が望むような普通の少女に。しかし、それでは彼女を抑圧した両親と同じだ。いやもっと悪い。

 

 「トガさん、友達になろうぜ」

 

 きょとんとこちらを見つめてくる彼女。

 

 「俺にはトガさんのことはまだよくわからない。でも俺はトガさんを理解したい。理解して、そして受け入れたい」

 

 「俺のでよければ血なんていくらでも吸えばいい。それでも我慢できなくてもし君がヴィランになったとしても俺はずっとトガさんの友達だ。どうかな?」

 

 俺が言い終わると彼女は言葉を飲み込むかのようにしばらく呆けて、しばらくするとその目からはまた涙がこぼれだした。

 

 「ごめんっ、キモかった?」

 

 慌てて謝ると彼女はそれを手で制してくる。そして顔を上げてこちらを向いた。

 

 「はいっ!よろしくお願いします!」

 

 涙目で、口元は血に汚れていたが、その表情はとても幸せそうでかわいらしい笑顔だった。俺は思わずドキッとした。

 

 これが俺とトガヒミコとの出会いだった。

 

 

 

 

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