問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
遅れてしまいほんとに申し訳ございません。
次回はこうならない…………はずです。
テストなんて大っ嫌いだ!!
それでは本編をどうぞ
ゲーム開始当日、あと少しで始まるという時を耀と二人で過ごしていた。
「いよいよいだな」
「……うん」
ゲームのことを意識しているせいで、いつものような感じではなく、静かな雰囲気が俺達の間にある。
「……私達、勝てるよね?」
「ああ、もちろんだ。この戦いに負けたら俺達の目標も達成出来なくなるからな。絶対に勝つ。だから、力を貸してくれ」
「それを言うのは私の方だよ。私の為だけど、私に力を貸してください」
「つまり、お互いに協力するってことだな。当たり前だけど」
「……ふふっ、そうだね」
「そろそろ時間みたいだし、行くか」
俺と耀が集合場所に着くと、既に殆どの参加者が集まっていた。誰がどこにいるのかを確認していると十六夜が話しかけてくる。
「よう、やっと来たのか」
「まあな、これで全員か?」
「たぶんな。で、ペストの方は大丈夫なのか?」
「ああ、ほんとに理由は謎だけどな」
結局、ゲームの開始日になっても俺はペストを発病しなかった。
「それじゃあ、俺は護衛メインで遊撃みたいな感じだよな?」
「ああ、援護の必要がなければ護衛だけなんだけどな」
「てか、護衛以外の援護ってお前のとこぐらいじゃね?ペストはどっちかっていうと足止めに近いし」
「ハハッ、それじゃあ援護の仕事はないと思っとけ」
「うわ、それフラグだろ」
「それをぶち壊すのが俺だろ」
「回収するに一票」
ゲームの開始前だというのに全く緊張感のないやり取り。でも、これが俺達らしくていい。
「そろそろ時間みたいだな。それじゃあ、行きますか」
「おう」
すぐにゲームが始まりその瞬間に、周りの風景が変化する。建物の建築様式が別のものになることで、街の雰囲気がガラッと変わり、突然のことについていけない参加者達は呆然と立ち尽くす。
「ジン君、これはハーメルンの街並みってことでいいのか?」
「はい、おそらくは」
「それじゃあ参加者に軽い説明と行動方針を。ステンドグラスを見つけないことには進まない。……おーい、方針を説明するからこっち注目してくれ!」
参加者の注意を引き、後はジン君に任せる。
「……わかりました。皆さん、ここは召喚されたハーメルンの街です。ステンドグラスの場所はわかりませんが、おそらくはゲームに縁のある場所にあるはずです。ですから、教会を中心に捜索してください」
「……後は士気だな」
俺は、ジン君の説明を受けた参加者達が動き出そうとするのを制する。
「いいか、このゲームには俺達の未来がかかってる。負けたときに後悔したくなければ全力を出せ!常に勝つことを考えろ!未来は与えられるものじゃない。俺達の手で掴むんだ!……俺の言いたいことは以上だ。それじゃあ、行くぞっ!!」
「「「「「おおーっ!!!」」」」」
士気の上がった参加者達はすごい勢いで町中に散っていく。
すると、少し離れた所にいた耀が近づいてくる。
「意外。吹雪って司令塔とかの裏方向きで、こういう表に立ってやることはあんまり向いてないと思ってた」
「実際それに近いけどな。こういうのも出来なくもないが、やっぱり裏方の方が楽だし」
「二人とも、そろそろ行くぞ」
話しているとレティシアもやってくる。そろそろ俺達も動くみたいだ。
それに合わせて意識をゲームをクリアするために動くように切り替える。
「その前に作戦を確認しとくか。相手を見つけるまでは少し離れて、見つけ次第攻撃。耀がシュトロムを、俺とレティシアがラッテンをメインに戦う。これでいいよな?」
「ああ」
「わかった。吹雪、あれお願いね」
「わかってる。どうにかして隙は作るさ。それじゃあ、行くか」
俺達は作戦通りに周囲を警戒しながらステンドグラスの保護と破壊を進めていく。しばらくして教会の近くに辿り着いた時、
「はぁ~い、参加者の皆さん。これからあなた達には素敵な同士討ちをしてもらうわよ」
軽い感じとは裏腹に、物騒なことを言いながらラッテンが現れた。
「お前がラッテンか」
「あら、あなたがマスターの言ってた銀髪ね。何で動けるのかは知らないけど関係ないわ。あなたは私の手駒になるのだから」
そう言いラッテンは笛で曲を演奏し始める。その曲はとても幻想的で、それが奏でられるのに合わせて俺の周りの火龍たちが動きを止め、どこかボーッとしたような感じになる。
しかし、俺の感覚には変化がなく、いつまでたっても操られない様子にラッテンの表情は曇っていく。
「あなたたち、本当に何者なのよ。昨日の金髪の子にも効いてなかったし。ほんとにノーネームなのかしら」
「
そう言ってはいるが、ペストにかかってないことや、今の出来事、俺が箱庭に来る前とはどこかが変わってきているのは確かなのかもしれない。
「こんなことしてないで早く始めようぜ。そっちも準備出来たんだろ?」
「あら、気付いてないのかと思ったけれど意外ね」
俺の周りには操られた火龍が集まり、その口からは炎が漏れている。攻撃準備は万端らしい。
「それじゃあ……」
「「くらえっ(くらいなさい)!!!」」
俺とラッテンが同時に攻撃を放ち、ラッテンには周りに配置しておいた俺の武器が、俺の方には火龍のブレスが向かう。
俺は雪で壁を作るが、ブレスはしばらくすると壁を貫通して俺の方に向かってくる。しかし、勢いはなくなっているので簡単に回避することが出来る。
ラッテンの方は全てはかわせないと瞬時に判断したのか、武器の進路上に操っている火龍を立たせる。同士討ちが禁じられているので、当たりそうな武器は止めるしかなく、ラッテンに届く数が少なくってしまう。
「流石悪魔だな。あの一瞬でコースを見極めてそこに火龍を立たせられるのはなかなかだ」
「あなたもすごいわね。ブレスをかわしながら火龍に当たりそうな武器を止めていたもの」
「さて、遠距離だと分が悪そうだし。近距離でいかせてもらう!!」
俺はギフトカードから短剣を取り出し、それを両手に持ってラッテンに迫る。短剣にしたのは少しでもラッテンとの距離を詰めてブレスを放つのを躊躇わせるためだ。
俺は左手の剣で斬りつけ、ラッテンがそれを弾く。俺は弾かれる瞬間に剣を離すことでバランスを崩すことを防ぎながら、もう一本の剣で突きを放つ。ラッテンは回避しようとするが間に合わず、肩を軽く抉る。
ラッテンは一度離れようとするが、それをさせないためにさっき弾かれた剣をラッテンに当たるようにして手元に戻す。俺は急に攻撃が当たったことで一瞬硬直したのを見逃さず、戻ってきた剣で斬ろうとするがその瞬間、
「吹雪! 横に跳んで!! 」
耀が叫んだのでその通りにする。すると、さっきまで俺達がいたところを火龍のブレスが貫いていた。
ブレスの来た方向から考えると、ラッテンは自分の背後に火龍を移動させ、ブレスを放つのと同時にその場を離れたみたいだ。
「……危なかった。耀、サンキュー」
「あら、残念ね。上手くいったと思ったのだけれど」
「俺一人なら当たってたさ」
「そう。でも、流石にこの戦い方は限界があるわね。……シュトロム!」
ラッテンの声に応じてシュトロムが出現する。その数は見える範囲で七体。俺達を取り囲むように立っている。
「これは気を引き締めていかないとな。耀、ラッテンの近くにいるやつを放っておいて一人三体ずつだ。レティシアは操られている火龍を頼む」
「わかった」
「了解した」
俺は短剣をしまい、ギフトカードからハンマーを取り出す。
「それじゃあ、行くぞ!」
俺はハンマー担ぎ、レティシアは槍を構えて、耀は拳に旋風を纏わせてそれぞれの相手に向かっていく。シュトロムは迎撃のためにその体から風を出し俺達を近づかせないようにする。
まともに近づこうとすれば風の影響を受けるので、壁を作りそれと一緒に進む。完全に近づく前に一体のシュトロムが横からパンチを放ってくる。それを足場を作って上に跳ぶことで回避し、落下する勢いに任せてハンマーを降り下ろす。当たりどころがよかったのか、腕を砕くことに成功する。
「砕けるのはわかったけど、これじゃあ効率が悪いな。こいつらにいつまでも構ってるわけにもいかないし、まとめて潰すか」
俺は大きな氷塊を取り出しシュトロムの頭上に移動させて、それをいくつかの巨大なハンマーに変える。
「これで倒れてくれよ?
俺はハンマーを操り、全力でシュトロムの頭上に降り下ろす。シュトロムがそれに反応したのは当たるギリギリだったので避けられることもなく、三体とも砕くことに成功する。
耀の方を見ると、どのシュトロムにもダメージは入っているが、決定打が与えられないようだ。
俺はハンマーを耀の戦っているシュトロムの上
に移動させる。
「耀! そいつらから離れろ! 」
耀が離れたのを確認するとハンマーを降り下ろし、シュトロムを破壊する。
自分が戦っていたシュトロムが急に破壊されたことに驚きながら、耀がやってくる。
「ありがと。また助けられちゃったね」
「今はそこ気にしてる場合じゃないぞ。これからラッテンの目の前にいるシュトロムを吹き飛ばすから、その隙に突っ込んで殴ってやれ。後、炎が出るからそれの対処は任せる」
「わかった。吹き飛ばして炎ってことは……」
「そういうことだ。レティシア! 」
俺の声に反応してレティシアがやってくる。
「言ってたあれをやろうと思うから手伝ってほしい」
「了解した。それで、私は何をすればいい?」
「シュトロムの破片が飛ぶだろうから、それを耀と周りの参加者に当たらないようなしてほしい」
作戦が決まったところでシュトロムに気づかれないように準備を進める。ハンマーがシュトロムに当たる位置まで移動させ、準備が完了する。
「それじゃあいくぞ。
「何度もやらせないわよ! 火龍達、やりなさい! 」
シュトロムを六体も破壊されてその威力がわかっているラッテンは火龍のブレスを使いハンマーを止める。
火龍の全てがハンマーに向かってブレスを放っているのを確認すると見つからないように火を着けた手榴弾をシュトロムの体に空いている穴から体内に入れる。
数秒後、炎の中からシュトロムの破片だと思われる物が飛んでくる。
「行けっ! 耀! レティシアは援護! 」
耀はグリフォンのギフトを使い炎が当たらないようにしながら進み、レティシアは自分の影を龍の形に変えて全ての破片を打ち落とす。
炎が収まると、かなり吹き飛ばされたラッテンとその場で拳を振り抜いている耀がいた。
「リベンジ成功ってとこだな。戦況を把握してどうするか判断したほうが良さそうだな。とりあえず耀を…………うおっ!」
戦況を確認するために耀を呼ぼうとしたら、既に目の前にいて俺に抱きつこうとしていたので、受け止める。
耀の表情はけじめが付けられてスッキリしたのか嬉しいのがよくわかる笑顔だった。その顔はこんな状況じゃなければまだ見ていたいと思うぐらいには可愛かった。
「吹雪、ありがと!」
「……あ~、耀。スッキリしたのはわかるけど、今は戦況を確認してほしい。お礼なら後で聞くから」
「わかった」
耀はギフトを使って最大限まで五感を強化して周囲の状況を確認する。
「ペストは離れすぎててよくわからない。他の参加者の所にシュトロムが現れてるってこともなさそうかな。ヴェーザーは見たときは十六夜が押されてる感じだったから行った方がいいかも」
「……一瞬のことだといいんだけどな。俺は一応十六夜の援護に行くから耀はここを頼む。いくつか武器を渡すから使ってくれ。ラッテンの笛は遠距離から狙えばどうにかなるはず」
俺はギフトカードから銃や剣、ハンマーなどを取り出し耀に渡す。
「それじゃあ俺は行」
「行かせないわよ」
戦況を確認している間に戻ってきていたラッテンが新たなシュトロムを呼び出す。
仕方なく戦おうとしたその時、シュトロムの横にあった建物の陰から紅い鋼鉄の腕が出てきてシュトロムを砕く。建物の陰から、シュトロムを砕いた腕の主だと思われる巨人が出てくる。
俺と耀はその肩に乗っている人物を見て驚く。
「「飛鳥!?」」
「何をそんなに驚いているのよ」
「だって、私のせいで……」
耀は最初の魔王の襲撃のことを思いだし、表情が少し暗くなる。
俺は飛鳥がこんな新戦力を連れて戻ってくるのは予想してなかったのでかなり驚いてる。
「春日部さん、その話は無しよ。あれは私の力不足だもの」
「でもっ!」
「とりあえず、話は後。今はゲームクリアが優先よ」
「そうだな。飛鳥、一応これを渡しておくから上手く使ってくれ。俺は十六夜の所に行ってくる」
俺が飛鳥に渡したのは巨大なハンマーだ。あの巨人の大きさなら大丈夫なはずだ。
「増えたところで関係ないわ。シュトロム、まとめて潰しなさい!」
ラッテンがシュトロムを使い、俺達を倒そうとする。しかし、それとほぼ同時ぐらいに飛鳥が巨人に指示を出す。
「まとめて薙ぎ払いなさい、ディーン!!」
「DeeeeeeeN!!」
巨人の名前はディーンというらしい。
ディーンは俺が渡したハンマーを持って腕を水平に振る。その延長線上にいたシュトロムはまとめて破壊されていく。
「こりゃスゲーな。飛鳥、耀、後は任せた!」
俺は十六夜のいる方向に向かって全力で走り出す。
「そういえば、誰かと横に並んで戦うのは初めてかしら。今までは後方支援みたいな感じだったし」
「そうかも。でも、飛鳥は問題児だから大丈夫」
「それどういう意味よ。問題児なら春日部さんもじゃない」
「十六夜と吹雪もだけどね」
「それもそうね。ここは問題児らしく派手に暴れましょうか」
「賛成」
波乱のゲームはまだ始まったばかりだ。
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