問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~ 作:bliz
今回は丸々戦闘だったので難しかったです。
……戦闘描写ってどうやったら上手くなるんだろ?
それでは本編をどうぞ!
時間はゲーム開始まで遡る。
一人で動き出し、他の参加者から距離を取った十六夜はヴェーザーを探していた。
「さて、あいつはどこだ?性格からして早々に動いてもおかしくないんだがな」
「よくわかってるじゃねえか!坊主っ!!」
十六夜の立っていた建物の下からヴェーザーが姿を現す。挨拶代わりと言わんばかりの笛での攻撃を十六夜は防御する。
「ハッ、随分な挨拶じゃねえか! 」
「初日にお前が先にやっただろうが! 」
体勢を立て直した十六夜はヴェーザーに接近するとお返しに全力で殴る。防御するも吹き飛ばされたヴェーザーを十六夜が追う。
追い付くとそこは近くを川が流れている森のような場所だった。
「さっさと全力でこいよ。こっちは早く魔王様の相手をしなくちゃいけないんでな」
「……その言葉、後悔するんじゃねえぞ!」
その言葉と共にヴェーザーから放たれる圧力が段違いに増す。
「こっちは神格を得てんだ。全力でこなきゃならないのはお前だ」
「ハッ、随分と俺好みのバージョンアップしてくれてんじゃねえか。こいつは楽しめそうだ」
次の瞬間、二人の姿が消える。片方は神格を得た悪魔、もう片方は人間でありながらの人外、常人ならば視認することが不可能なレベルで移動しながらの攻防が始まる。
先手は十六夜、接近して蹴りを放つ。ヴェーザーはそれを回避して十六夜の脚を掴み、そのまま地面に叩きつけようとするが、降り下ろされる十六夜の拳によって中断させられバックステップして少しだけ下がる。
「チッ、これでもくらっとけ! 」
すぐに、ヴェーザーは笛を水平に薙ぎ反撃するが、十六夜は拳を降り下ろした勢いのまま屈んでやりすごし、笛が過ぎ去ると同時に踏み込むがバランスを崩してしまう。その隙をヴェーザーが見逃すわけもなく、放たれた蹴りによって吹き飛ばされる。
「クソッ、随分と卑しい手を使ってくれるじゃねえか。だが、これぐらいの方がやりがいがあっておもしれえ」
ヴェーザーは十六夜の踏み込みに合わせて地面を陥没させバランスを崩したのだ。
「どうだ坊主、さっきのは効いたんじゃねえか?」
「ああ、流石に今の不意打ちは効いたぜ。そういや地精寄りの悪魔なんだったな。でもよ、こんなに早くばらしてよかったのかよ」
「別に問題ねぇよ。ばらした所でお前がギフトを封じられるわけじゃねえ。それに、この状態の方がお前に厳しいだろうしな」
「はぁ……お前もかよ」
ヴェーザーの考えと同じような考え方をする人物を思い出した十六夜から溜め息が出る。
「どうした、諦めたのかよ」
「いや、身内に今のお前みたいな考え方をする奴がいるから思い出しただけだ」
「そうか。それじゃあ、そろそろ死んどけ! 」
ヴェーザーは突っ込むのと同時に十六夜の足元の地面を崩壊させる。
十六夜は崩れたことで出現した岩の上を飛び移りながら足場以外のものをヴェーザーに向かって蹴る。蹴られた岩は砕け、散弾となってヴェーザーを襲う。
「これぐらい問題ねぇよ。オラァァァ! 」
ヴェーザーは笛を水平に薙ぎ、その風で石を全て打ち落とす。しかし、笛を振り切った直後のヴェーザーを狙っていたとばかりに十六夜が迫る。
「吹っ飛べやァァァ!」
ヴェーザーの顔面に十六夜の拳が入り、吹き飛ぶ。十六夜は木を折りながら飛んでいくヴェーザーを追い、止まった所で立ち上がろうとするヴェーザーを殴るが、手応えが違うことに気づく。
十六夜は違和感の正体を確かめようとするが、突然横からの衝撃に襲われ吹き飛ぶ。
「グッ、そういうことかよ」
十六夜が飛ばされながら見たのは
大きな木にぶつかって止まり、立ち上がろうとする十六夜にヴェーザーが歩み寄ってくる。
「俺からのプレゼントは気に入ってくれたか?」
「ああ。まさか、土を使って自分と同じ姿の人形を作れるとは思わなかったぜ」
「人形って部分は訂正させてもらうぜ。こいつらは兵士だ。ちゃんと動くし、実力だって神格を得る前の俺に近いぜ。まあ、お前相手だと耐久力が不安だがな」
“こいつら“というヴェーザーの言葉に偽りはなく、ヴェーザーの背後から何人もの兵士が現れる。
「何言ってやがる。お前みたいな奴が何人もいると思うだけで十分な嫌がらせだぜ」
「それじゃあ諦めるか?」
「いや、やってみねぇとどうなるかなんてわからないだろ?」
「ハハッ、それもそうだな。そういう奴は嫌いじゃねえ。それじゃあ、せいぜい俺を楽しませてくれや! 」
ヴェーザーは兵士を動かし、絶妙な時間差で色々な方向から十六夜を攻撃させる。
十六夜は兵士の攻撃をいなし、攻撃してきた最後の一体を殴り破壊する。
「クソッ、連携されると厄介だな」
「どうやら、数で押した方が良さそうだな」
上手くやれば十六夜が反撃することができないのがわかったヴェーザーは更にたくさんの兵士を造る。
「……冗談キツいぜ。こっから増えるのかよ」
「まあ、そういうことだ。そろそろ終われや」
数が増えた兵士達はさっきと同じ要領で一度に沢山の数で攻撃する。
最初はうまく対処して反撃の隙を伺っていた十六夜だが、次第に処理が追い付かなくなっていく。そして、攻撃が少しずつ当たるようになった時にヴェーザーが地面を崩壊させる。
「しまっ……」
隙ができ、十六夜に攻撃が当たると思われた瞬間、兵士達が一斉に吹き飛ぶ。
「ったく、フラグをぶち壊すって言ってたのは誰だよ」
「お前、そっちはどうした」
「一応一段落した。押されぎみみたいだったから一応来てみただけだ」
兵士が吹き飛び、現れたのは吹雪だった。
さっきのは爆風でやったようだ。
「十六夜みたいな戦い方するかと思ってたけど、随分器用なことやってくるんだな。アンタ」
「お前がマスターの言ってた銀髪か。一人増えた所で関係ねえ。やっちまえ! 」
ヴェーザーは兵士達を吹雪に向かわせる。
「確かに、十六夜みたいな奴には有効かもしれないけど、俺には問題ない! 」
吹雪は手榴弾を使い、迫ってくる兵士を吹き飛ばす。ならばとヴェーザーは地面を崩壊させ、川の水で竜巻を作り兵士と共に襲わせる。
「……残念、そいつも問題ねえよ! 」
竜巻は一瞬にして凍り、雪で出来た足場によって地面を崩壊させたのも意味がなくなり、同じように兵士達が吹き飛ばされる。
「坊主とは違うタイプみたいだな。それじゃあ直接やらせてもらうぜ! 」
数で押すことは効果がないとわかり、ヴェーザーは接近戦に切り替える。
ヴェーザーは吹雪に接近すると笛を水平に薙ぐ。吹雪はそれを二本の剣で一瞬だけ受け止めると、下に受け流し地面に叩きつけさせ、すぐに左手の剣で斬る。
しかし、神格を得たことで強化されたヴェーザーの肉体には少ししか傷をつけることができない。
「うわ、俺の一番やりたくないタイプかよ」
「こういうスタイルなら相性が良さそうだな」
手数や不意打ちを使って攻撃する吹雪にとって十六夜や今のヴェーザーのような肉体が頑丈な相手が一番苦手なのだ。
逆に、攻撃があまりダメージにならないと判断したヴェーザーは、多少の傷を気にせず攻撃する作戦にする。
戦いが再開すると、吹雪は防戦一方に近いものになる。ヴェーザーにあまりダメージが与えられない以上当然の結果だ。
戦いの中で吹雪は十六夜に向かって叫ぶ。
「十六夜! いつまでボサッとしてんだ!お前はこの程度で諦めるような奴じゃないだろ! 快楽主義で、娯楽が大好きで、自己中心的で、問題児で、それでも仲間想いで、何より、どんな逆境だって自分の力で打ち砕く。お前はそういう奴だろ!! 」
その言葉に十六夜は衝撃を受ける。
(何やってんだ俺は。吹雪の言ってる通りじゃねえか。ここでこんなことしてんのはらしくねえ。何より、どうなるかわからねえって言ったのは俺だろうが! )
「そこまで言われて黙ってるわけにはいかねえな。不利だろうと関係ねえ! 俺の力でやれるところまでやってやる! 仲間の為、お前の横に並ぶ為、俺はこの手でどんなものだって打ち砕く!! 」
十六夜が叫んだのと同時に景色が一変する。
そこは何もなく、ただ一面が白い世界だった。
「お前の覚悟、見せてもらった」
「てめぇは何者だ?」
「今はそんなことを気にしている場合ではないだろう? あいつを倒すだけの力がいるんじゃないか?」
「それもそうだが、信じろと?」
「今はそうしてもらいたい」
「いいぜ、乗ってやるよ。あいつを倒せるんなら今はそっちが優先だ」
「今からお前に力を与える」
声の主がそう言うと十六夜が光に包まれる。
「今までのお前はここで終わり、新たなお前がここから始まる。お前に与えた力は『月光』と『月影』、これをどう使うかはお前次第だ」
十六夜を覆っている光がなくなっていき、それに合わせて景色が元のものへと戻っていく。
「結局、お前は何者なんだ?」
「さあな、お前とはもう会わないかもしれないから別にいいだろ」
声の主が言い終わるのと同時に景色が完全に元通りになる。
「何だったんだ今のは? そんなことより今はあいつらの方だ」
十六夜は辺りを見渡し、吹雪とヴェーザーを見つけそこへ向かおうとするが、兵士達が立ち塞がる。
「またお前らか。だが、今は負ける気がしねぇ!! 」
十六夜は兵士の一団の中に突っ込み、今までと同じように時間差をつけた連携攻撃が襲ってくる。
十六夜はさっきまでと同じように対処していく。そのまま捌き続けていくと、対処しきれなくなるということはなくむしろ、
「余裕が出来てきてんのか?」
時間が経てば経つほど相手の動きがわかるようになり、反撃する余裕が生まれてくる。
少しすると兵士達の数が減っていき、遂にはいなくなる。
「どういう力かはよくわからねぇが、ヴェーザーを倒せるんならそれでいいか。早く追い付かねぇと」
十六夜は兵士達と戦っている間に離れていっていた吹雪達を追いかける。その途中でまた兵士達が立ち塞がるが瞬殺されて足止めの意味を成さない。
「やっと追い付いたぜ」
「やっと来たのか。遅いんだよ」
「悪かったな、遅くてよ。それで、頼みがある。こいつは俺にやらせてくれ」
「任せていいのか?」
「ああ。絶対勝つ」
「わかったよ。俺はペストの所にでも行ってくる」
十六夜の決意を認め、吹雪はその場を去る。
「待たせたな。第二ラウンドといこうぜ」
「いいぜ。足止めの兵士達を倒してきたみたいだし、考えなしってわけでもなさそうだな。但し、最初から全力だけどな!! 」
その言葉通り、ヴェーザーは自分が接近するのと同時に兵士達を襲いかからせ、竜巻を作り、十六夜の足場を崩す。
さっきまでならば対処しきれずやられていたであろう十六夜だが、その顔に焦りはない。
「まずは攻撃を見切る」
全ての攻撃が十六夜のいる場所に殺到すると水飛沫と土煙が発生し、お互いの視界を塞ぐ。そして、それらが晴れると無傷の十六夜がヴェーザーの後ろに立っていた。
「次は、今までよりも強い一撃を! 」
十六夜がイメージして殴り、ヴェーザーが踏ん張ってそれを防御する。今までなら押されるぐらいだったが、今回は吹き飛ばされる。
「ガッ、……てめぇどうなってやがる。さっきまでとは別人みたいじゃねぇか」
「かもな。俺だって驚いてるぐらいだ。まあ、なんとなくどんな力かはわかってきたけどな」
(兵士達とは戦えば戦うほど力が湧いてくるような感じだった。そして今はイメージしたのが強化されて、その後は少し力が減った気がした。これ以外にもまだありそうだが、今はこれだけで十分か)
「なあ、次で決着にしないか?早く行きたいってのもあるが、お互い余力のある内に全力でやってけりを付けようぜ。お前とは納得のいく決着が付けたい」
「不本意だが乗ってやるよ。決着を付けたいのは俺もだ。それに、このままやってると不利になる可能性もありそうだしな」
お互いに次で決着を付けることで納得したので距離をとり、全力の一撃を放つための準備をする。
(イメージしろ。最大の一撃を、今の俺の全力を)
十六夜がイメージするのに合わせて右手に青白い光が集まっていく。
対するヴェーザーも笛に力を集める。
「それじゃあ行くぜ」
「ああ、こっちもOKだ」
「「くらえっ!!!! 」」
お互いの全力の一撃が交錯する。それによって生まれた衝撃は周囲の木々を地面から引き抜いて吹き飛ばし、大地をも抉る。
その衝撃は二人のことも吹き飛ばす。
「ハハッ、流石悪魔だぜ。お陰で右腕が使えなくなっちまったぜ」
「それで済むような一撃じゃなかったはずなんだがな。坊主、お前の勝ちだ」
「何言ってんだ、お前はまだ大丈夫だろ」
「悪ぃな。召喚の触媒が砕けちまったから俺はここまでだ」
そう言うヴェーザーの体が少しずつ粒子となって消え始める。
「そうか、お前とやれてよかったぜ」
「俺もだ。久しぶりだったぜ俺と正面からやりあった奴は。楽しませてもらった、あの銀髪にも礼を言っといてくれ。そうだ。坊主、お前にこれを渡しとく」
ヴェーザーが何かを投げる。
受け取った十六夜が見ると、それはグリムグリモワールハーメルンの旗印が刻まれた指輪だった。
「これは?」
「俺らの忠誠の証みたいなもんだ。俺を倒したお前に渡しときたくてな」
「そうか、それじゃあこれは俺が受け取っておく」
「そろそろお別れだ。あばよ」
「ああ」
ヴェーザーの体が完全に粒子となって消える。
「……行くか」
ゲームは終わりへと向かって進んでいく。
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