問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~   作:bliz

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最近塾に行き始めたのに執筆時間が増えてる……なぜだ?
まあ、そんなことは置いておきまして今回でペスト戦終了です。
二章は後一、二話で終わると思います。

それでは本編をどうぞ!


完全決着!

黒い風が俺の目の前に迫り、あと少しで当たるという距離になった時、急に風が拡散する。その様子はまるで俺の目の前に何かがあるようだった。そこで、その辺りを詳しく見てみる。

 

「……これって、もしかして」

 

「良かった。間に合った」

 

それの正体に思い当たったとき、耀が隣に降りてくる。

 

「ありがとな。それじゃあこれを何とかしないとな」

 

「大丈夫だよ。……来てるのは私だけじゃない」

 

耀の言葉と同時に風が霧散する。

それを見たペストが風をもう一度放とうとするが、横から伸びてきた巨大な拳によって中断させられる。

 

「ったく、これでさっきの借りは無しだぜ?」

 

「私は貸し一つかしら?」

 

「……十六夜、飛鳥……」

 

さっきの流れは十六夜が風を散らし、飛鳥がディーンでペストを牽制したものだった。

隣に来た二人はいつものように冗談っぽく言う。……この二人だと冗談に聞こえないけど。

 

「……悪ぃな。助かった」

 

「礼なんていらねぇよ。言っただろ?借りはなしだって」

 

「十六夜君、冗談を言ってる場合じゃないでしょ。それと、お礼がいらないのは本当よ」

 

「私達は仲間なんだから、助け合って当たり前。吹雪が皆を守ろうとする気持ちはわかるよ。でも、それで吹雪が欠けたら意味ないよ。だから、吹雪が皆を守るって言うなら、私達が吹雪を守る」

 

「…………そっか、そういうもんだよな」

 

俺は、三人の言葉で自分の中の何かが変わっていくのを感じながら前に耀に相談をした時のことを思い出す。

耀は言っていた。『考えは簡単には“変えられない“けど、ふとしたきっかけで“変わる“んじゃないか』って。

耀達に助けられたこの状況で俺はそのことを実感する。

 

仲間だから守るのは当然で、何も間違ってない。でも、それが一方的だったらそれは本当に仲間を守っていると言えるのだろうか?

仲間とは協力して、信頼して、助け合って、時にはぶつかって、そういうものだと今なら言える。

だからこそ、大切な仲間だから、俺は皆を守りたいと改めて思う。

 

「………………ありがとな三人とも」

 

「どうしたの? 急に」

 

「いや、改めて自分の目標と言うかそういうのを確認できたから。俺は一人じゃないんだって思って」

 

「……そうだよ。吹雪には私達がいる。それに、こっちに来る前も親友がいてくれたんでしょ?」

 

「ああ。ここで守れなきゃあいつらに何言われるかわからないしな。だから、俺は自分が守りたいと思うものを守る! 」

 

新たに覚悟を決めたとき、頭の中に何かが流れ込んでくるような感覚に陥り、意識が薄れていく。しかし、それは俺に害のある感じではなくむしろ。

 

「…………懐かしい?」

 

そのことに気づいた時に意識が一瞬なくなり、すぐに意識を取り戻す。しかし、周囲の景色はさっきまでのハーメルンの街並みではなく、以前に来たことのある真っ白な世界だった。

 

「さっきのは何だったんだ? 懐かしかった気がするけど」

 

「それは当然だ。あれはお前の記憶だからな。ま、直ぐには思い出せないだろうからきっかけをやるよ。…………俺の名前はイヴェールだ」

 

その言葉で俺が今まで忘れていたであろう記憶が蘇る。そして、今話している相手にどこで会ったのかを思い出す。

 

「…………あの時か。……ギフトを手に入れたときの」

 

「どうやら思い出したみたいだな。それじゃあ最近話したときの意味もわかるだろ? 」

 

「確か、『過去』と『誓い』……だったな」

 

俺があの時のことを思い出そうとするとすぐに記憶が浮かんでくる。

 

~~~~~

 

「ここ、どこだ? 」

 

「ようこそ、俺の世界へ」

 

「だ、誰だっ! 」

 

気がつくと知らない場所にいて、急に話しかけられれば誰だって普通は驚く。

 

「俺はイヴェール。とりあえず本題に入るぞ。俺はお前の覚悟を見た。もしお前が望むのなら覚悟に見会った力を与えてやる」

 

「本当か!? なら、早く力をくれ。早くしないと皆が」

 

「落ち着け、ここでは時間は進まないから。一つ聞くぞ、お前は何のために力を望む? 」

 

「それは……皆を守りたいから! 今何もしなかったら絶対に後悔する」

 

答えてから少しの間音がなくなる。少しして、イヴェールが話し出す。

 

「……そうか、今はそれでいいか。今のお前に必要な分だけの力を使えるようにする。この事が終わったらお前の答えを見つけろ。俺が認められる『仲間はどういうものか、そしてお前はどうするのか』を」

 

「よくわからないけど、わかった」

 

「今はそれでいい。俺はお前が答えを見つけるのを待ってる」

 

その言葉を最後に俺は意識を取り戻し、ギフトを使って強盗を氷漬けにしたのだった。

 

 

~~~~~

 

「……そうか、それじゃあ俺の記憶がそこだけ無かったのと凍らせることへの制限は枷みたいなものか」

 

「そういうことだ。あの力は使いこなせなければ全てを滅ぼす可能性もある」

 

「で、俺は合格か? 」

 

「その前にお前の答えをもう一度聞かせてもらおうか」

 

俺は答えを固める為に皆のことを思い出す。

十六夜、飛鳥、黒ウサギ、レティシア、ジン君、そして耀。

 

「仲間は信頼して、助け合って、時にはぶつかって、そういうことを一緒に経験していくものだと思う。だから、俺は皆を守りたい……いや、守る! 」

 

「それがお前の答えか。それなら今はあの時と同じようにしてやる。このゲームが終わったら俺のコミュニティへ行け。そこで試練をクリアすれば自由に力を使えるようになる」

 

「わかった。それと、ありがとな。あんたがいなかったら今の俺はなかったし、皆と出会うこともなかった」

 

「礼はいらねえよ。俺が好きでやってることだ」

 

「それじゃあ俺は行くぞ。皆が待ってるからな」

 

俺の意識が薄れていき、気がつくとハーメルンの街に戻ってきていた。

さっきまで体力が無かったのが今はなぜか問題ない。

 

「大丈夫? ボーッとしてたけど」

 

「大丈夫。黒ウサギ、後どれくらいかかる? 」

 

「そうですね…………後四、五分いただければ」

 

「……そうか。十六夜、飛鳥少しだけあの風の対処を任せていいか? 」

 

「大丈夫だけど、流石に全部は無理よ」

 

「言い方が悪かったな。少しだけ違うことに集中するからその間に漏れてきた風を任せたい。大半は俺が抑える」

 

「でも…………」

 

隣にいる耀が心配そうに尋ねてくる。俺は耀を安心させるために頭を撫でる。

 

「大丈夫だ。皆のお陰でもう問題ない。それで、耀は俺に力を貸してくれるか?」

 

「もちろんだよ」

 

「で、どうするつもりだ? 」

 

「風を凍らせる。今ならきっと出来る」

 

「信じていいんだな? 」

 

「おう。任せとけ」

 

俺が自信の無いことを言っている訳ではないことを察し、何も聞かずに信じてくれる十六夜。

こういうときの十六夜はほんとにありがたい。

 

「それじゃあ行くか」

 

「「「「うん(おう)(ええ)(はい)」」」」

 

作戦が決まり、俺達はペストの方を向く。

 

「あら、もういいの? 」

 

「随分と余裕だな。待つ義理なんてないだろうに」

 

「ただ待ってたわけじゃないわ。こっちも準備させてもらったもの」

 

その言葉は嘘ではないようで、空の風から感じる圧力のようなものはさっきまでとは比べ物にならない。

 

「何をしようとしているのかは知らないけど、無駄よ。死になさいっ! 」

 

「やらせねぇって言ってんだろ!」

 

さっきと同じように風と雪がぶつかり合う。風の勢いはとても強くなっていて、さっきまでの俺なら抑えられなかっただろう。

しかし、今はそれと拮抗させることが出来ている。

 

「吹雪、私はどうしたらいいの? 」

 

「そういえば言ってなかったな。まとめてあの風を凍らせる為に耀にはグリフォンのギフトでサポートしてほしい」

 

「どういうこと? 」

 

「俺が耀の風に凍結の性質を加える。だから、耀はあれの全体に風をぶつけてほしい」

 

「わかったけど、できるかな……」

 

「心配するなよ。それなら俺の方だって成功するかなんてわからないし。でも、やるしかない。それに……俺達は一人じゃない。だろ?」

 

「……そうだよね。私、吹雪がいてくれるなら何でもできる気がするよ」

 

「それじゃあこうした方がいいか」

 

俺は耀に左手を差し出し、耀がそれを握る。

手を繋いだことで、耀が隣にいてくれることを更に強く感じることができる。自分が一人じゃないという安心感からなのか今まで以上に力が沸いてくるのを感じる。

 

「吹雪、私できそうな気がしてきた。なんだか力が沸いてくるみたい」

 

「俺もだ。これならいけそうだ」

 

耀が風を最大量まで作り出し、俺は性質を付与するためにもう一度集中する。

 

「……大丈夫、吹雪ならきっとできる」

 

一瞬失敗した時のことを想像してしまうが、耀のお陰でそんなイメージもなくなる。

俺は左手を握り直し、悪いイメージがもう一度浮かんでくる前に性質を付与する。

 

「これで、たぶん大丈夫だろ」

 

「吹雪」

 

「おう。十六夜! 飛鳥! 下がれ! 」

 

俺は十六夜と飛鳥を下がらせ、壁を解除する。

耀と互いの顔を見ながらうなずきあい、風を放つ。

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」」

 

俺達の放った風はペストのものとぶつかり合う。最初は拮抗していたが、次第にぶつかっている所からペストの風が凍り始める。そして、完全に凍るまで後半分ぐらいになったとき、

 

「私は負けられない。怠惰な太陽に復讐するため

、こんな野望の為に私に尽くしてくれたあの二人の為にっ!! 」

 

ペストの風の勢いが再び増し、凍らなくなる。

 

「仲間の為に負けられない、か…………でもな、それはこっちもなんだよっ! 俺にいろんなことを気づかせてくれた皆の為に! 」

 

「私だって皆を守りたい。それに、私は吹雪の力にって決めたんだから!」

 

俺と耀は互いの手を強く握り直し、もう一度力を込める。それによって再び風が凍り始める。

そこからは俺達とペストの意地のぶつかり合いだった。ペストが凍らせまいと力を込めれば、それに応じて俺達も力を込める。その結果、ペストの風が徐々に凍っていく。

そして遂にペストの風が完全に凍り、一気に砕け散る。

 

「黒ウサギっ! 」

 

「はいっ! それでは、皆さんを月までご招待します♪」

 

辺りが光に包まれ、体が浮遊感に襲われる。そして、それがなくなると俺達は月にいた。

 

「ヤハハ、これが箱庭の貴族の力か。おもしれぇ」

 

「チャ、月界神殿(チャンドラマハール)!月神の神格を持つギフト……!」

 

「YES! このギフトこそ我々月の兎が招かれた神殿月界神殿でございます!! 」

 

「黒ウサギ、俺達はどうすればいい?」

 

「はい、策はありますので飛鳥さん以外でペストを抑えてください」

 

「了解」

 

俺は十六夜と耀を呼び簡単に説明する。

 

「十六夜がメイン、俺と耀でサポートでいこうと思う。いけるよな、十六夜? 」

 

「誰に向かって言ってると思ってんだ。それぐらい任せとけ」

 

「耀はさっきみたいに風を潰すのを任せる。俺はこれで十六夜を援護する」

 

俺は今操作できる限界の量の武器を作り出す。

 

「それじゃあ行くか」

 

まずは俺が銃で先制し、その間にペストに近づいた十六夜が殴り飛ばし、飛んでいくのを追いかける。

 

「……っと、見てる場合じゃないな。耀、追いかけるぞ」

 

「うん」

 

そう言って追いかけ始めるが、十六夜とペストも移動しているので少しずつしか差が埋まらない。その間にも十六夜とペストは一進一退の攻防を繰り広げる。

 

「…………ねえ、吹雪」

 

「……わかってる、時間稼ぎだけなら十六夜だけでいいんじゃいかとは俺も思う。メインでやってくれとは言ったけど……」

 

「吹雪さん! 準備が出来ましたのでペストの動きを一瞬止めてください! 」

 

「だとさ。それじゃあ風で防御させてそれを潰すのでいいか。耀、潰すのは任せた」

 

「わかった」

 

俺達はもう一度十六夜達を追いかけ、更にその後ろから黒ウサギも追ってくる。

 

「十六夜! 下がれ! 」

 

十六夜が離れたのを確認すると、ペストの頭上に大きな氷塊をいくつも作り出す。

 

氷星の軌跡(アイスミーティア)ァァァ!」

 

「この程度!」

 

「耀っ!」

 

ペストは風で受け止めようとするが耀がそれを凍らせることで阻止する。

 

「私は……太陽に復讐するまで負けられない!あの二人に報いる為に! 」

 

「それでは、その太陽の輝きを乗り越えてご覧なさい」

 

ペストが死の風を放とうとするのと同時に黒ウサギがギフトカードを掲げる。すると、黒ウサギが光輝く鎧を身に纏う。

 

「まさか月神に軍神、太陽神。三天を操るなんてこの化け物! 」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないと思うけど?」

 

俺はペストが黒ウサギに気をとられた隙に氷塊をぶつける。それを受けたペストはフラフラになりながらも立ち上がる。

 

「……ま、まだよ……私は負けるわけには……」

 

「いや、これで終わりだ」

 

俺が指差した方向にはギフトカードを掲げる飛鳥がいた。

 

「穿ちなさい、ディーンッッッ!!」

 

「DEEEeeeeeeeN!!」

 

現れた槍がディーンによって放たれる。ペストはかわそうとするが、ダメージのせいで動けず槍が貫く。

 

「こ、こんなもの……」

 

「無駄でございますよ。その槍は正真正銘、勝利の加護を持つ槍なのですから」

 

そのまま槍が効力を発揮し、雷鳴が轟く。その場で爆発が起こり、収まった頃にはペストの姿が消えていた。

 

「……終わったんだな」

 

「うん」

 

「……流石に疲れたから後よろしく」

 

そのまま俺は隣にいた耀に向かって倒れこむように眠った。




今回の話はかなり前から決まっていたのですぐ書けると思ってたんですが上手く進まないものですね。……最初は月には行かなかったのに。

感想、評価よろしくお願いします。
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