問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~   作:bliz

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更新が遅くなってしまい本当にすいません。(本気の土下座)
原因はオリジナルだから構想に時間がかかった(一割)、春休みの課題(九割)です。……はい、ちゃんとやってれば問題ありませんでした。

とりあえずは更新ペースを戻せるようにしていきたいと思います。

それでは、本編をどうぞ!


冬の継承
手掛かり


ペストとの戦いからも時間が経ち、俺達ノーネームにも日常が戻ってきていた。

そして俺は本拠の近くの大きな木の下でうたた寝をしながら耀を待っていた。

日差しも丁度よく、今日一日寝て過ごしたい気分になる。

 

「お待たせ……私も寝たいけど、ここは我慢だね。ほら、起きて」

 

「……ぁ、ごめん。気持ちよかったからつい」

 

寝始めてすぐくらいに耀がやって来て起こされる。

一緒にゲームをしに行く予定だったのならそれを中止して一緒に昼寝をしてもいいのだが、今日はそういうわけにもいかない。

 

「昼寝は今度にお預けして、行くか」

 

「…………ちょっとでいいから寝てたかったな」

 

少し残念がっている耀と一緒に目的地へと向かう。

話しながら歩いていると時間が経つのが早く感じ、あっという間に目的地に着く。

やって来たのはヒルンヴィウムの東側の支店だ。本拠は北側にあるらしい。店の外装は白を基調としたもので、所々に氷や雪の結晶をあしらったものが飾ってある。

 

「……何か冬って感じだな」

「それじゃあ吹雪にぴったりだね」

 

「いや、別に……」

 

「どうせなら私達のリーダーでもしてみるか? 」

 

「冗談はやめてくださいよ。ヘルさん」

 

店の前で冗談を言い合っているとヘルさんが出てきてとんでもないことを言う。

来てすぐに出て来てくれているので俺達を待っていてくれたのかもしれない。

 

「案外本気かもしれないぞ? 」

 

「ほら、中行きましょう」

 

このままやっていてもからかわれる気しかしないので店の中に入ることで流れを変えることにする。

店の中に入ると、そこにはたくさんの商品が並べてあった。その中には北側で見たことがある物もあれば見たことがない物もある。

 

「それじゃあ早速だが、お願いするよ。作業は向こうのスペースを使ってくれて構わない。工具は準備してある。素材は必要な物を言ってくれ」

 

ヘルさんが指差した場所には大きな机があり、その上にはたくさんの工具があった。

今回の用件とは火龍誕生祭のときに言っていた俺と耀が作品を作るものだ。

 

「俺は氷でお願いします」

 

「私は氷と木をお願い」

 

「木もやるのか?」

 

「うん、どうせならやってみようと思って。そうだ、吹雪もやろうよ」

 

「俺もか? 」

 

「うん。いいでしょ? 」

 

「……そうだな。それじゃあ俺もお願いします」

 

どうするか悩んだが、やっても損はないと判断して俺も木に挑戦してみることにする。別に、耀が頼んでくるときに上目遣いになっていてそれに負けたとかではない。俺の方が背が高いので偶然だと思うが。

 

「それにしても、木は何彫ろうかな」

 

「私は動物にするつもりだけど」

 

「動物か、よしあれにしよう」

 

「何にするの? 」

 

「それはお楽しみだ」

 

俺が彫ろうとしているのは日本で有名なあれだ。

 

「準備ができたぞ」

 

準備ができると俺と耀は黙々と作品を作り始める。それからは会話が無くなり、部屋の中には氷や木を削る音だけが響く。その状態がどれくらい続いたのか分からないがある時、

 

「ふぅ、どうにか完成だ」

 

「私も」

 

二人とも作品が完成する。

 

「お疲れ様。随分と集中していたができはどうだ」

 

「氷の方は大丈夫です。木の方は個人的には微妙ですね」

 

「そういえば、結局何作ったの? 」

 

「これだよ」

 

俺は出来上がった彫刻を耀に見せる。そこにあるのは熊が魚をくわえているものだった。一番に思い付いたのでやってみたのだが、イメージしたようなものからは少し離れてしまった。

 

「これで微妙なの? 十分凄いと思うけど」

 

「イメージしてたのとは少し違うんだよな。本物を作ってる人の凄さがよくわかった」

 

実際にやってみると細かい所の難しさがよく分かる。

 

「耀は木の彫刻も完璧じゃないか」

 

「私だって気に入ってない所はあるよ」

 

「それならもう少し作ったらどうだ? 」

 

「そうはしたいんですけど、疲れたんで次にします」

 

「私も」

 

「そうか。それなら休んでから帰るといい。お茶を淹れてこよう」

 

ヘルさんはお茶を淹れにいくと言ってすぐにいなくなってしまった。

 

「こうして平和に過ごせるのっていいことだよな……」

 

「そうだけど、急にどうしたの? 」

 

「いや、少し前は魔王と戦ってたんだなって思ってさ。あれを経験したからなのかこういう日常のありがたみが改めて実感できる」

 

「……そうだね。でも、私達はずっとこうしてるわけにもいかないよ。魔王と戦って名と旗印を取り戻すって決めたんだから」

 

「それじゃあ俺達がもっと力をつけないとな。魔王に負けて日常を失ったりしないように。その為にも……」

 

「イヴェールのことだね」

 

そう、俺が力をつける為にはイヴェールのコミュニティへ行き、試練をクリアしなければならない。しかし、今は情報が何もない。

 

「何か話し込んでいたようだが、どうかしたのか」

 

少し考えているとヘルさんが戻ってきて俺達の前にお茶を置く。

 

「吹雪、聞いてみたら? 」

 

「それもそうだな。…………ヘルさん、イヴェールって知ってますか? 」

 

「………………そうか、遂にそこまで」

 

耀に促され聞いてみると、ヘルさんは驚いた表情をしてから何かを呟いた。

 

「その人なら知っている。話すことは出来るが私の役割ではない。すまないが明日もう一度来てくれないか。いくつか準備をしなければならない」

 

「わかりました」

 

そのままその日はノーネームに帰った。

 

 

 

 

 

そして次の日の朝。

 

「準備はこんなもんだな。そのまま試練のことも考えて武器も……大丈夫だな」

 

準備を終えて部屋を出ようとすると、コンコンと扉がノックされる。

扉の向こうから聞こえてきたのは耀の声だった。

 

「吹雪、準備出来た? 」

 

「大丈夫だ。すぐ行く」

 

部屋から出て、そのままヒルンヴィウムに向かって歩き出す。

 

「耀も来てくれてよかったのか? 元々ゲームの予定が入ってたみたいだったけど」

 

「昨日あの場にいて今日行かないなんてことはしないよ。それに、吹雪は一人だとどんな無茶をするかわからないし」

 

「……うっ、否定できない」

 

「後は私にも出来ることがあるかもしれないからね」

 

「それじゃあもしもの時はよろしくな」

 

「もちろんだよ」

 

そのまま歩いてヒルンヴィウムに着くと、ヘルさんが店の前で待っていた。

 

「早速だが、場所を移動するから私に着いて来てくれ」

 

ヘルさんに着いていくと、辿り着いたのは店の奥にある扉の前だった。

 

「この扉の奥ですか? 」

 

「まあ間違ってはいないな。この扉は境界門と同じようなものでな、別の場所に繋がっている」

 

「どこに繋がってるんですか? 」

 

「君が必要な場所と今は言っておこう。詳しくは向こうに着いたら説明する」

 

ヘルさんは扉を開けるとその中に入っていく。

「それじゃあ行くか」

 

「うん」

 

俺は耀と顔を見合せ頷きあうと扉をくぐる。くぐった先には大きな門があり、その前にはヘルさんがいた。

 

「ようこそ。“ネージュグラース“へ」

 

「ここは? 」

 

「君の探していたコミュニティだ。リーダーはイヴェールだった」

 

「だった? 」

 

「正確に言えば今もリーダーだが行方不明で実質はリーダー不在だ。詳しくは中で話す」

 

「それじゃあ行きましょうか…………ん、耀は?」

 

中に行こうとしてさっきから耀が何も反応していないことに気がつき、辺りを見回してみる。すると、耀は門の近くにいる犬を撫でていたので呼び掛ける。

 

「おーい、中行くぞ」

 

「わかった」

 

「あの犬は番犬みたいなものですか? 」

 

「ああ、名前はガルムと言ってな。不当に入ろうとする者がいればだいたいは追い返せる。今の状態なら魔王クラスか空間跳躍のギフトを持つ者でなければ入れない」

 

「そう言えばここって何桁なんですか? 今の話聞いてるとかなり実力がありそうですし」

 

「ここは五桁の最上層だ。コミュニティの全盛期は四桁の時もあったのだが」

 

さっきからヘルさんの話には驚かされることがたくさんある。どうやら俺はそうとうなことに巻き込まれているらしい。

 

「随分と話し込んでしまったな早く中に行くとしよう」

 

ヘルさんと一緒に門をくぐるとそこには広い庭が広がっていて、そこでは子供たちが遊んでいたり、剣や槍で稽古をしている者がいたりした。

そのまま庭を抜けて建物に入ると入口に一人の男性が立っていた。見た目は好青年という感じだが、雰囲気からはかなりの力を持っていることがわかる。

 

「ようこそ。お待ちしておりました。俺はボレアスと言います」

 

「ボレアスってあのボレアスか? 」

 

「どんな想像をしているのかはわかりませんが恐らくその通りです。立ち話もなんですし、奥の部屋に行きましょう」

 

案内されて着いたのは広間のような場所だった。そして、そこにあった椅子に各々が座る。

 

「それじゃあ簡単にでいいからイヴェールについて教えてくれ」

 

「わかりました。それでは……俺との出会いでも話しましょうか。昔、俺は別のコミュニティに所属してました。そこは俺と他に三人の四人で活動してました。ゲームを開いたり、難易度の高いゲームに挑戦したりするのが日常でした。そしてある日噂を聞いたんです。……俺達のように四人で活動しているコミュニティがあり、全員がかなり強いという噂を」

 

「その内の一人がイヴェールか? 」

 

「はい。俺達はすぐにその四人を探しました。結果を言うならすぐに居場所がわかり会いに行きました。そして会って直ぐに俺達は……憧れ、とでも言うんでしょかね。そういうのを感じたんです。だから、この人たちに着いていってみたいと思いました。その頃彼らは各々をリーダーにしたコミュニティを作ろうとしていました。だから俺達は一人ずつ彼らのコミュニティに所属することにしました。そして、その内の一つがここです。他の三つは南と東と西にあります」

 

「それからコミュニティを大きくしていったってことか。……そう言えば、ヘルさんはどういう関係なんですか?」

 

「……そうか、話してなかったな。私もこのコミュニティに所属している。ここはサウンドアイズのようなものだと考えてくれればいい」

 

「ちなみにここの最古参ですよ。活動を初めてからすぐです」

 

「まあ、ここの発足当時を知るぐらいには長い付き合いになる」

 

それを聞いて俺にはある疑問が浮かんでくる。

 

「それじゃあ、火龍誕生祭にいたのは何か理由があったんですか?」

 

発足当時を知っているということはヘルさんのコミュニティはかなりの実力を持っているはず。

それならヘルさんが来なくても多少の問題ぐらいなら対処が可能なのでリーダーが来なくても問題はなさそうなのだ。

 

「いくつかあったが、やはり最大の理由は君だな。私のコミュニティは下層にも店を出しているからそこの噂も耳にするのだが、少し前に東側でこんなことを聞いてな。『ノーネームがペルセウスを倒し、そこの新人は化け物レベルばかりだ。そして、その内の一人が氷と雪を操る、と』」

 

その噂を広めた奴を突き止めたくなったが、今は放っておく。

 

「しかも、そこにはサウンドアイズの審判業を請け負っている箱庭の貴族もいるときた。それなら白夜叉も主催者である誕生祭に招かれる可能性がある。だから、私が直接出向いた」

 

「どうして吹雪なの? 」

 

「それは俺から。イヴェールさんが『俺がいなくなったら“冬の体現者“を探せ。ただし、俺かコミュニティのことを知るまではアクションを起こすな』と言ってたので」

 

「……それじゃああのゲームでギフトカードを確認していたのも……」

 

「所持しているギフトの確認だ。名前から氷などを操るギフトなのだろうとは思っていたが確証はなかったのでな」

 

「イヴェールはよっぽど信頼されてたんだな」

 

「このコミュニティにいるなら誰でもあの人に何らかの好意のようなものを持っています。ここに入ろうと思うのは俺みたいなやつばっかりす。入りたいやつが入ればいい、ここはそれで大きくなってきました」

 

「……そうだな。私は興味からだったが、今では入ってたよかったと思っているよ」

 

「吹雪、そろそろ本題」

 

「そうだな」

 

耀に言われて今回ここを訪れた本当の目的を切り出す。

 

「俺はイヴェールにここで受けられる試練をクリアすればギフトの力を自由に使えるって言われた。何か心当たりはないか?」

 

ヘルさんとボレアスは顔を見合せ、そんなのがあったのか思い出しているようだが、すぐに思い当たったような表情になる。

 

「一つあるぞ。前から開かない扉が一つあってな。それかもしれない」

 

「それはどこに? 」

 

「あれです」

 

ボレアスが指差したのはこの部屋の奥にある扉だった。とりあえずそこまで行ってみてそれを見ると、それは特に特徴もない普通の扉だった。

 

「その扉はなぜかドアノブすら回らなくてな。力自慢の者が何人もやったのだがびくともしなかった」

 

俺は、回るはずもないのでふざけ半分ぐらいの気持ちでドアノブに手をかけて回してみると、

 

「え? 」

 

ドアノブが回った。とりあえず扉を開けることはせず、手を離す。

 

「当たりのようだな。特定のギフトに反応する仕掛けなのかもしれないな」

 

「それじゃあこの先が? 」

 

「恐らくは」

 

「てことは、一人でってことだよな……」

 

扉がギフトに反応するタイプである可能性があるので、入る場合もそれが適用される確率が高い。その結果、試練に挑めるのは俺一人ということになる。

 

「吹雪だけしか挑めないかもしれないっていうのはわかってたから、私が言いたいことは一つだけだよ。必ず帰ってきてね」

 

「もちろんだ。耀を置いていなくなったりしないさ。必ずクリアして帰ってくる」

 

「約束だよ? 」

 

「おう」

 

この短いやり取りだけで、力が沸いてきて何があっても帰ってこようと思える。それに、帰ってくる理由ができたので負けられなくなる。

 

「それじゃあ行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 

『ギフトゲーム名 ”大いなる冬への挑戦”

・プレイヤー一覧 白銀 吹雪

冬は巡る。 何度も巡る。

 

春は来ず、夏も来ず、秋も来ない。冬だけが何度も巡り来る。

 

巡り行く中、月日も繰り返す。 冬の中では全てが埋もれ凍る。

 

冬の終わりには月日が流れず終わりが始まる。

 

終わりの始まりし時世界は闇に包まれるだろう。

 

その手で冬を終わらせよ。

 

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 ”イヴェール” 印』

 




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