問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に訪れる冬~   作:bliz

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また遅くなってスイマセン。戦闘描写で詰まったり、部活で疲れて書けなかったりと色々ありまして。(戦闘描写が八割ぐらいの原因ですが)
今回で試練は一応終わりです。後二話ほど書いたら巨龍編に入ります。
後、ラストエンブリオ読みました。二部もやっぱり面白かったです。あえて一つだけ言うなら、早く耀に出番を!

それでは、本編をどうぞ!


想いは届く

俺の目の前に現れた二匹の狼は体が白い体毛に覆われ、片方はオレンジ、もう片方は金色の毛が所々に混じっている。この特殊な色合いには何か意味があるのかもしれない。

 

「ラスボスも狼か。どうせ一筋縄じゃいかないだろうけど、やってやるよ」

 

『汝は何を求める』

 

「お前らしゃべるのかよ。そうだな……俺が求めるのは力だ」

 

『なぜ力を求める』

 

「仲間を、皆を守るために。俺はその為に力が欲しい。何かあったときに後悔したくない」

 

『よかろう。それならば力を示し、試練をクリアするのに値することを示せ』

 

「言われなくても!」

 

俺は剣を取り出し、そのままオレンジのほうに斬りかかる。それはかわされ、反撃で足が水平に振るわれる。足の先には体の大きさに見合った大きな爪があり、くらったらひとたまりもなさそうだ。俺はそれをしゃがんで回避するのと同時に狼の懐に潜り込み、もう片方の前足を斬る。続けて腹を斬ろうとするとオレンジがその場を飛び退き、入れ替わりに金色の足が降り下ろされる。

それを横に転がることで回避すると、続けざまに別の足が降り下ろされる。それは後ろに下がってかわす。すると更に何度も同じ攻撃で追撃してくるので左右や後ろに動きかわす。何度か繰り返していると急に背中に焼けるような痛みがはしり呻き声をあげる。

 

「……ぐっ、……こっちは陽動ってことか」

 

痛みの原因は後ろからオレンジに引っ掻かれたことだった。金色の攻撃をかわすのに集中しすぎて完全に背後への警戒が疎かになっていたところをつかれたらしい。

俺は一端体勢を立て直すために足元にハンマーを叩きつけて雪を舞い上げ視界を塞ぎ、その間に狼達から距離をとる。

「くっそ! 完全に油断してた。ここからは二匹いることを考えて動かないといけないか。後はあのコンビネーションをどうにかしないと倒せないな」

 

舞い上がった雪が収まり、周囲の様子を見ていた狼達は俺を見つけ、同時に突進してくる。今度は片方を囮にしたりせず、連撃で仕留めるつもりだろう。

俺は剣を取り出し、狼達を迎え撃つ。狼達は片方の攻撃を避けた先にもう片方の攻撃が来るようにして襲ってくる。バックステップして片方を避ければすぐさまもう片方が足を降り下ろしてくる。俺は攻撃をギリギリでかわし、一度だけ斬りつけて次をかわすのを繰り返しているがダメージが通っている気配が見られない。それどころか攻撃は更に激しさを増し、反撃する回数も減り、こっちが傷を負う回数も増えてきた。

そんなこっちが不利な状況が続き、あるときついにダメージのせいでフラついたところを狙われモロに攻撃をくらってしまう。俺はオレンジが足を横薙ぎに振ったのに当たり大きく吹き飛ばされる。

 

「ガハッ、……くっそ、流石に今のはヤバイな……」

 

フラフラになりながら立ち上がるが、腹からは血が流れていて、少し意識が霞み始める。

狼達はゆっくりと近づいてくる。

 

『なぜ諦めない。もうお前に勝ち目はない』

 

「……そうかも……しれないな。でもな」

 

俺は息を大きく吸い込み、自分を奮い立たせる為に叫ぶ。

 

「俺はあの時誓ったんだ。皆を守るって! だから、こんなところで立ち止まってる暇はねぇんだよ! とっととこのゲームクリアして耀が、十六夜が、飛鳥が、皆がいる所に帰る! それに、耀と約束したしな、絶対に帰るって。まあ、そういう訳だ。俺は絶対に諦めない」

 

決意をもう一度固め狼達と向き合ったその時、身に付けていたブレスレットが光を放つ。

 

 

 

 

~~~~~

 

その頃、扉の外では耀とボレアス、ヘルがゲームのクリアを帰ってくるのを待っていた。

 

「そろそろ半日が経つ。君も一回休んだ方がいい」

 

「大丈夫。まだ平気。これは私のわがままだけど、吹雪が頑張ってる間はここで待ってたい」

 

「……そうですか。それじゃあ、必要な物があったら言ってください」

 

「私達は一度向こうにある部屋にいくから何かあったらこれで読んでくれ」

 

耀の意思を尊重した二人は、用があるのか一度部屋を出ていく。

それから少しして、耀が身に付けていたブレスレットが光だす。

 

「……そっか、吹雪が。……吹雪、私待ってるよ。だから必ず帰ってきてね」

 

何となくではあるが今の中の状況を感じ取った耀は吹雪が帰ってくるように祈る。自分の思いが届いていると信じて。

 

~~~~~

 

 

 

 

 

「今のは一体…… 」

 

ブレスレットの放っていた光が収まり、それと同時に俺は耀が外で待っていることを何となくだが感じ取る。それのお陰だろうか、霞んでいた意識がハッキリとしてくる。

 

「まあ、なんにしても耀が外で俺が帰ってくるのを待ってくれてるのはわかったし、尚更負けられないな」

 

『何だったのかはわからないが、今更関係ない。早く負けを認めろ!』

 

俺の前後に立っていた二匹が同時に跳びかかってくるが、俺はそれを横に跳ぶことで避ける。しかし、着地しようとした時に何かに躓き転んでしまう。街が廃墟になっていたのなら何かに引っ掛かるのも納得がいくが、ここはそんな面影もない場所なので普通に考えればあり得ないことだ。

これを見逃すと何か取り返しのつかないことになってしまうような気がしたので俺は大急ぎでその場所を掘り返す。すると、

 

「……何で神具がここに」

 

出てきたのは神具だった。これも街と一緒に消えてしまったと思っていたので驚かされる。

驚いていられたのも一瞬で、攻撃をかわされた狼達が爪で俺を引き裂こうとしているのが見えたので急いで神具をギフトカードに入れてその場を離れる。

 

「これってこいつら呼び出す為の鍵じゃなかったのか? ……となると、他にも用途があるのか。……くっそ!」

 

今までは普通に戦っても良くて数撃与えるだけだったのが、神具についての考察を始めたことにより、なんとか致命傷をかわす余裕があるかどうかになってしまう。

流石に、平面的に逃げ回るだけではすぐにやられてしまうので足場を作り空中へと逃げる。

なんとか狼達が届かない高さまで逃げることができ、そこで考察を始めるが、傷の痛みや出血のせいでいつもよりも頭が回らない。

 

「これは早くケリをつけないと本格的にヤバイな。とりあえずゲーム内容を確認するか」

契約書類を取り出してもう一度読み直し、街で見た石盤の内容を思い出すと自分のしていた勘違いに気がつく。

 

「あいつら倒したらクリアなんて書いてない。……そういや太陽を追う者と月を追う者について考えてなかったな。さっきみたいに何かを例えてるのかそれとも他の………………は? おい、お前らそれは反則だろ!」

 

チラッと下を見てみると狼達が同時にこっちに向かって跳び、最高点に達した所でオレンジが金色を踏み台にしてもう一度跳び上がるという荒業をしていた。その勢いは俺のいる場所に確実に届くもので、今から更に上に行く余裕もないので飛び下りる。幸いにも狼から離れた所に着地できたので襲われなかった。

 

「空中もダメか。……はぁ、これほんとにクソゲーすぎだろ。さてと、キーワードは太陽を追う者と月を追う者、後は終焉か」

 

ここまで考えた所で再び狼達が襲ってくる。正直、このゲームは考察を妨害することを狙ってるとしか思えない。一つ考えて次をというタイミングで襲われることが多すぎる。相手のやりたいことをやらせないってそんなに楽しく…………いや、状況によるけど楽しいな。

ゲーム制作者への愚痴が軽くブーメランになりそうなのでここら辺でやめておこう。

 

「これだけじゃ情報が足りないな……他には何かないか…………狼もか? とりあえずこれも候補に……うおっと!」

 

狼、太陽、月、このキーワードが該当するものが何かあった気がするがなかなか思い出せない。ゲームが始まってからギフトの性能が落ちているのはわかっているが、もしかしたら能力が低下しているのはそれだけではなく思考力などもなのかもしれない。これが事実なら本当にクソゲーである。

 

「後一つ、何か一つキーワードがあれば……森……ループ……狂気……争い…………これじゃない、けど、何かヒントはあったはず。もっと細かく思い出せ…………あれも違う……これも違う…………」

 

俺の考えていることがバレているのか、後一つを探していると狼達の攻撃が激しくなってくる。

それのせいでかすったりする回数が増え、立っているのがやっとの状態になり、致命傷をくらっていないのが奇跡のように思える。

 

「ハァ……ハァ……後一つ…………街の名前は? ……確か…………黄昏へと続く街……そういうことか!」

 

ようやく後一つのキーワードが見つかり、謎が解ける。

 

「たぶんわかったぜ。お前らの正体」

 

『ほう……遺言代わりに聞いてやろう』

 

「お前らの正体は北欧神話に登場するスコルとハティ、そうだろ? 」

 

『なぜそう思う』

 

「このゲームのキーワードは太陽、月、終わり、後はヒントとして狼と黄昏へと続く街という名前。こんなところだろ。そして、これが当てはまるのは北欧神話における終末の日、ラグナロク。これは神々の運命を意味すると共に神々の黄昏とも訳される。街の名前はこれから取ったんだろうな。そして、ラグナロクでは太陽と月を飲み込む二匹の狼が登場する。それがスコルとハティ。恐らくだが、石盤に記されていた惑わす者と憎しむ者はお前達の別名じゃないか? そしてその体毛は見分けをつけることが出来るようにするため。オレンジがスコル、金色がハティだろ」

 

『……正解だ。だが、それがわかったところでお前に我らは倒せない』

 

「別に倒さなくても問題ない。お前達を倒せばクリアなんて一言も書いてないからな。力を示せと言われて完全に騙されてたぜ。このゲームをクリアする方法は冬を終わらせること。そしてその時には月日は流れず、世界が闇に包まれる。俺達は太陽と月が上り、沈み、また上ることで月日が経過するのを数える。つまり、月日が流れないのは空から太陽と月がなくなること(・・・・・・・・・・・・・・)、お前達に飲み込まれることを意味するんじゃないか? 後者の文も同じようなものだ」

 

『もしそうだとして、どうやって我らにそれをさせる気だ』

 

「その辺も問題ねえよ。ある程度の目星はついてる。ま、そういうわけだ、正真正銘のラストバトルといこうぜ」

 

その言葉を皮切りに戦闘が再開する。正体がバレ、ある程度クリアの目処が立っていることを知った狼達は今まで更に上回る激しさの攻撃をしてくる。対する俺は相手のとある行動を待ってひたすら剣で攻撃を捌き続ける。ギフトがいつも通りに使え、もう少しダメージが少なかったならいくつか手段はあるが今の状態ではこれしかない。

俺は何度か撃ち合って相手に隙ができた時に神具を取り出し、ある操作をする。後は相手が俺の待っている行動をしてくれることを待つだけになる。

更に何度も撃ち合い、二匹が一度距離をとる。そして、大きく口を開き同時に噛みつこうとする。俺がほとんどその場から動けないことに気づき、弾かれない攻撃をしようとしたのだろう。

 

「待ってたぜ、お前らが同時に噛みついてくるのをな!」

 

俺は剣を手放し、両手に神具を持ってそれを二匹の口の位置に合わせる。

その結果、俺の肘辺りに牙が食い込み激痛がはしる。

 

「ぐあぁぁぁ! ……いくらクリアの為とはいえ……こんなの……二度とやりたくないな」

 

俺が手に持っている神具は中身が入れ替えてあり、太陽と太陽、月と月という組み合わせになっている。俺の考えたクリア方法はこの状態にした神具を飲み込ませるというものだ。これが外れていたら正直打つ手なしになる。

 

「頼む、これでクリアになってくれ!」

 

俺は祈りながら両手に持った神具を押し込む。すると、二匹は噛みつくのをやめ、俺から離れていく。

 

『見事だ。汝の力を認める。このゲーム盤を出ればギフトが使えるようになる』

 

『後、イヴェールから渡すように言われていた物がある』

 

そう言うと俺の目の前に鍵が現れる。

 

「これはどこの鍵だ? 」

 

『この試練に挑むのに使った扉に使うと聞かされている。扉の先に何があるかはわからん』

 

「わかった。そういえば、俺はどうやって向こうに戻ったらいいんだ? 」

 

『我らが念じれば送れるようになっている』

 

「それじゃあ頼む。また会えるといいな」

 

『汝は必ず会いにくる。そう言っておこう』

 

「おい、それって」

 

言葉の真意を確かめる前に俺の体は浮遊感に包まれ、それがなくなると俺は部屋に戻ってきていた。そして目の前には耀がいた。

耀は急に俺が現れたことに驚いたようだが、状況を把握して俺の怪我に気がつく。

 

「吹雪、また無茶したよね」

 

「いや、これはゲームのレベル的に仕方がないし……」

 

「……無茶するのはわかってたから別にいいよ。……帰ってきてくれてよかった」

 

よく見ると耀は少し泣きそうだ。相当俺のことを心配してくれていたらしい。

俺は痛む腕を無理矢理動かし耀の頭を撫でる。

 

「悪かったな、心配させて」

 

「ほんとに心配したんだから…………でも、信じてたよ吹雪なら必ず帰ってくるって。約束もしたしね」

 

耀は俺から少し離れて真っ直ぐ俺を見る。

 

「吹雪、おかえり」

 

「ただいま」




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